名A壊れかけた二人 第22章① 81
名A壊れかけた二人 第22章① 81
妻の詩織(しおり)は家に帰り、メールで俺に≪駅まで迎えにいこうか?≫といってくれたが、俺は少しでも対面するのを先延ばしにしたかったので≪大丈夫、来なくていいよ。≫と断る。やはり直接に詩織の顔を見るのが怖かったからだ。《離婚したいと言われても仕方ない》とすら思った。
俺は、《詩織が翔太に恋い焦がれる余り、俺の元を去っていく危険性がある。詩織自身が魅力を感じる男にお相手になってほしい。そして、その好きな男と一つになって、思う存分、性の悦びによがり狂ってほしいと願う》のです。
でも、しばらく時間が経ったせいでしょうか、今抱いている感情は、詩織に対する怒りや嫉妬といった類のものではなく、詩織が体を開き、翔太とのセックスに悦びを感じてしまったことを、今まで以上に愛おしく思う気持ちなのです。
まさに、《私だけの妻(詩織)・・・私の申し出を素直に受け入れて、女の悦びに身を溶かした妻(詩織)》が愛おしいのです。
それから2時間後、俺は勇気を奮って家に帰った。心配をしたが、詩織は、普通に出迎えてくれる。『おかえり、たっくん。』と、目を細め、控えめに口端を持ち上げて少し首を傾げる。いつも通りの詩織の笑顔だった。
けれど、俺と視線を合わした瞬間、詩織の瞳からぽろぽろと大粒の涙が零(こぼ)れた。詩織はその場に座り込み、激しく泣き出した。そして泣きじゃくりながら、『ごめんなさい。』『ごめんなさい。』と、何度も俺に謝罪を繰り返した。
詩織は泣きながら、途切れ途切れに昨夜のことを話し出した。その概要は次のとおりだった。
『俺の存在を忘れるほどに、翔太とのセックスに没頭してしまったこと。』
『コンドームを着けずに中出しを許してしまったこと。』
『セックスの気持ち良さに流されて、思ってもいないことを口走ってしまったこと。』
『体が気持ち良くて、良すぎて、流されてしまった。拓海の妻として失格。』
を全部、泣きじゃくりながら詩織は話してくれた。
それらを、俺の顔を見た瞬間に『わたしはなんという過ちを、罪深い裏切りを拓海にしてしまったのだとの罪悪感に襲われた。』と嗚咽を交えて告白。俺も泣きながら「詩織は悪くない、俺がこんなことをさせたからだ。」と、詩織を強く抱きしめていた。
そして俺は「なにがあっても詩織を愛しているから。」と、何度も何度も詩織に伝えた。それからずっと二人で肩を寄せ合って、互いに謝り合いながら泣き続けた。
俺も詩織に「今までのプレイ中のことを全て翔太から聞いて知っている。」と教えた。(流石に覗き穴のことまでは言えなかったけど・・)生セックスのことも知っていると告白した。詩織はそれを聞くと、『なぜすぐにでもこんなこと止めてくれなかったの?』と、嗚咽を漏らしながら怒った。
また詩織は、プレイ中に翔太へ言ったことは『全部嘘。』だとも言い切っていた。何を言ったかは具体的には言わなかったし、(俺は無論全部知っていたが)その場では問い質さなかった。
そのまま夜まで、二人で肩を寄せ合いながら無言で座っていた。いつの間にか詩織は寝ていて、それで俺も一緒に寝た。
2015/04/27
妻の詩織(しおり)は家に帰り、メールで俺に≪駅まで迎えにいこうか?≫といってくれたが、俺は少しでも対面するのを先延ばしにしたかったので≪大丈夫、来なくていいよ。≫と断る。やはり直接に詩織の顔を見るのが怖かったからだ。《離婚したいと言われても仕方ない》とすら思った。
俺は、《詩織が翔太に恋い焦がれる余り、俺の元を去っていく危険性がある。詩織自身が魅力を感じる男にお相手になってほしい。そして、その好きな男と一つになって、思う存分、性の悦びによがり狂ってほしいと願う》のです。
でも、しばらく時間が経ったせいでしょうか、今抱いている感情は、詩織に対する怒りや嫉妬といった類のものではなく、詩織が体を開き、翔太とのセックスに悦びを感じてしまったことを、今まで以上に愛おしく思う気持ちなのです。
まさに、《私だけの妻(詩織)・・・私の申し出を素直に受け入れて、女の悦びに身を溶かした妻(詩織)》が愛おしいのです。
それから2時間後、俺は勇気を奮って家に帰った。心配をしたが、詩織は、普通に出迎えてくれる。『おかえり、たっくん。』と、目を細め、控えめに口端を持ち上げて少し首を傾げる。いつも通りの詩織の笑顔だった。
けれど、俺と視線を合わした瞬間、詩織の瞳からぽろぽろと大粒の涙が零(こぼ)れた。詩織はその場に座り込み、激しく泣き出した。そして泣きじゃくりながら、『ごめんなさい。』『ごめんなさい。』と、何度も俺に謝罪を繰り返した。
詩織は泣きながら、途切れ途切れに昨夜のことを話し出した。その概要は次のとおりだった。
『俺の存在を忘れるほどに、翔太とのセックスに没頭してしまったこと。』
『コンドームを着けずに中出しを許してしまったこと。』
『セックスの気持ち良さに流されて、思ってもいないことを口走ってしまったこと。』
『体が気持ち良くて、良すぎて、流されてしまった。拓海の妻として失格。』
を全部、泣きじゃくりながら詩織は話してくれた。
それらを、俺の顔を見た瞬間に『わたしはなんという過ちを、罪深い裏切りを拓海にしてしまったのだとの罪悪感に襲われた。』と嗚咽を交えて告白。俺も泣きながら「詩織は悪くない、俺がこんなことをさせたからだ。」と、詩織を強く抱きしめていた。
そして俺は「なにがあっても詩織を愛しているから。」と、何度も何度も詩織に伝えた。それからずっと二人で肩を寄せ合って、互いに謝り合いながら泣き続けた。
俺も詩織に「今までのプレイ中のことを全て翔太から聞いて知っている。」と教えた。(流石に覗き穴のことまでは言えなかったけど・・)生セックスのことも知っていると告白した。詩織はそれを聞くと、『なぜすぐにでもこんなこと止めてくれなかったの?』と、嗚咽を漏らしながら怒った。
また詩織は、プレイ中に翔太へ言ったことは『全部嘘。』だとも言い切っていた。何を言ったかは具体的には言わなかったし、(俺は無論全部知っていたが)その場では問い質さなかった。
そのまま夜まで、二人で肩を寄せ合いながら無言で座っていた。いつの間にか詩織は寝ていて、それで俺も一緒に寝た。
2015/04/27
名A壊れかけた二人 第22章② 82 《終》
名A壊れかけた二人 第22章② 82 《終》
第22章① 81
朝起きると、妻の詩織(しおり)が朝ごはんを作ってくれていた。それを黙々と二人で食べていると『・・・今日は、一人で外出するね。色々考えたいから・・。』と、目を伏せたまま、詩織がそう言った。俺は目を合わさない詩織に対して、「わかった。」と、だけ返した。
詩織が車で出て行くと、俺はこっそりと翔太のマンションへ向かった。ふたりを信用していないとかではなく、そうならそうと、ちゃんと自分の目で見届けたかったからに過ぎない。
そのまま、翔太のマンションを監視しながら何時間も経過したが、家に一人でいるよりはマシだと思った。途中コンビニへ行ったりしていると昼過ぎに翔太が部屋から女を連れて出てきたのが見えた。(その瞬間ハッとした。)目を凝らすと、それは、詩織ではなくて会社の後輩の女子社員だった。普段ならここぞとばかりに騒ぐネタだが、その時ばかりはどうでも良かった。というより正直俺は安堵し
た。
その後、俺が家に急いで戻ると、詩織はすでに帰っていた。どこか物悲しそうな表情で『拓海・・どこに行っていたの?』と、聞いてきた。俺が正直に「詩織を探しに行っていた。」と、答えると詩織は眉を困ったように八の字にして『どうして?』と尋ねてきた。俺は「もう帰ってきてくれないかと思ったから。」と正直に告白をした。
詩織は、また悲しそうに顔を伏せて、『あのね・・・あたし、やっぱりたっくんのお嫁さんでいたい。』と、つぶやく。「いや俺の方こそお願いします。」と、頭を下げた。詩織が『ホントごめんね。』と、謝る。「俺こそ、詩織に馬鹿なことをさせてしまってごめん。」と、謝罪を繰り返す二人。
それから、ちょっと沈黙の時間があって、詩織が『ねぇ?』と、口を開いた。何かを決意した表情で詩織から『お願いがあるの。』とあらたまって言われる。「え、なに?」って、『1回だけ、たっくんを殴らせてくれますか?』
俺としてもそれくらいは当然なことだと思い、「いいよ。」と驚くほど冷静に承諾した。椅子に腰掛けながら、俺は静かに目を瞑った。そして、詩織に思いっきりグーで殴られた。鼻血が“どばどば”と出た。
『わっ!血が出た。ごめんね痛かった?』と自分で殴っておいて詩織が慌てている。俺は「大丈夫だよ。」と、云いながらも(本当は目から火花が出るほど)実際は痛かった。
詩織は俺の手当てをしながら、『・・・もう、やめようね?こんなことは。』と、またぽろぽろと大粒の涙を流しながら言った。俺が「わかっている。すまなかった。」と、再度謝ると『・・ごめんね。たっくん。』って、詩織も謝ってくる。
詩織が俺にしがみついてキスをしたので、俺は瞬間、顔をしかめる。詩織は『まだ痛い?』俺が「めちゃくちゃ痛い!」と即答すると、二人は泣きながら、クスクスと笑いあった。
その後で、詩織が『たっくん、ちょっと一緒にいて。』と、言うと詩織は、あの時(嘘出張の夜)に着ていたミニスカートとTバック、そしてあの水着を全てハサミで切り刻み始めた。何故それらの衣服なのかは、詩織は何も言わなかった。(それは最後のプレイに着用していたからこそだったと思う。)
全てを覗き穴から見て知っているだけに俺は何も尋ねることが出来ずにいた。詩織は俺の顔を一度ちらりと見ると、また視線を手元のハサミと切り刻まれる下着に落とし、こうつぶやいた。『許せないから・・・あの時の自分自身が・・。』と、だけ言いながらジョキジョキと切っていた。
全部を切り終わると、それをゴミ袋に詰める。詩織は明るい口調で、『はい、おーしまい!』と、俺に突き付けた。『これ、明日のゴミの日(月曜日)によろしくね。』と、そこには、無理やり作った笑顔とは真逆に真っ赤な目をした俺の嫁である詩織がいた。《翔太とセックスをした時に着ていた服や下着などを処分したのは多分それらが詩織の中では性欲に流された自分の象徴になったのだと推測しました。》
あれから3週間が過ぎた。最近は、子作りに励む毎日です。それは俺が「もう勘弁してくれ!」と、いうほど詩織が求めてきます。これまでの出来事は、二人の間では、まだまだ未消化な部分と不純なセックスがあと一歩で二人の仲を破壊したという後悔と共に、再結合された喜びが入り混じっているためなのか、この件は日常の話題に出せない雰囲気があったのです。
それでも、最近では、俺が夜の営みでつい弱音を吐くと、詩織は、ニヤニヤしながら『あいつはもっとすごかったよ~。』と、挑発をしてきます。俺が「もうそのことは勘弁してくれ・・。」と、言っても、『だ~め~しばらくは許してやんないよ。』と、やはりニヤニヤしながら虐めてきます。こんな“会話”が出来るレベルにはなってきています。
詩織は、事前に俺の許可を取った上で、翔太に最後の電話をしました。俺の目の前で、『もう会わないから・・でも今まで・・ありがとう・・・さようなら・・・。』と、別れを告げていました。その間、詩織はずっ~と俺の右手を、ぎゅっと力強く握り締めていました。後日に翔太と話す機会があり、〔やっとおれもお役御免ですな。〕と、肩の荷が下りたように笑っていました。
詩織からの、最後の桜さんへのメールにはこう書かれていました。
≪『色々な過ったセックスをしてしまったし、勢いだけで流されて心にもない馬鹿なことを口走っちゃったりもしてしまいました。それを許してくれた本当に大事な人の傍に寄り添いながら、この罪を、一生掛けて償っていきたいと思っています。』≫
最後の文章に、≪『もうこのようなプレイは止めます。今まで付き合って下さりありがとう。』≫とありました。桜さんからの返信はわかりません。付け加えると、このメールを見て、詩織と俺も同じ気持ちになった。そして、これからは詩織のPCを覗くことも無いでしょう。 《終》
2015/05/02
第22章① 81
朝起きると、妻の詩織(しおり)が朝ごはんを作ってくれていた。それを黙々と二人で食べていると『・・・今日は、一人で外出するね。色々考えたいから・・。』と、目を伏せたまま、詩織がそう言った。俺は目を合わさない詩織に対して、「わかった。」と、だけ返した。
詩織が車で出て行くと、俺はこっそりと翔太のマンションへ向かった。ふたりを信用していないとかではなく、そうならそうと、ちゃんと自分の目で見届けたかったからに過ぎない。
そのまま、翔太のマンションを監視しながら何時間も経過したが、家に一人でいるよりはマシだと思った。途中コンビニへ行ったりしていると昼過ぎに翔太が部屋から女を連れて出てきたのが見えた。(その瞬間ハッとした。)目を凝らすと、それは、詩織ではなくて会社の後輩の女子社員だった。普段ならここぞとばかりに騒ぐネタだが、その時ばかりはどうでも良かった。というより正直俺は安堵し
た。
その後、俺が家に急いで戻ると、詩織はすでに帰っていた。どこか物悲しそうな表情で『拓海・・どこに行っていたの?』と、聞いてきた。俺が正直に「詩織を探しに行っていた。」と、答えると詩織は眉を困ったように八の字にして『どうして?』と尋ねてきた。俺は「もう帰ってきてくれないかと思ったから。」と正直に告白をした。
詩織は、また悲しそうに顔を伏せて、『あのね・・・あたし、やっぱりたっくんのお嫁さんでいたい。』と、つぶやく。「いや俺の方こそお願いします。」と、頭を下げた。詩織が『ホントごめんね。』と、謝る。「俺こそ、詩織に馬鹿なことをさせてしまってごめん。」と、謝罪を繰り返す二人。
それから、ちょっと沈黙の時間があって、詩織が『ねぇ?』と、口を開いた。何かを決意した表情で詩織から『お願いがあるの。』とあらたまって言われる。「え、なに?」って、『1回だけ、たっくんを殴らせてくれますか?』
俺としてもそれくらいは当然なことだと思い、「いいよ。」と驚くほど冷静に承諾した。椅子に腰掛けながら、俺は静かに目を瞑った。そして、詩織に思いっきりグーで殴られた。鼻血が“どばどば”と出た。
『わっ!血が出た。ごめんね痛かった?』と自分で殴っておいて詩織が慌てている。俺は「大丈夫だよ。」と、云いながらも(本当は目から火花が出るほど)実際は痛かった。
詩織は俺の手当てをしながら、『・・・もう、やめようね?こんなことは。』と、またぽろぽろと大粒の涙を流しながら言った。俺が「わかっている。すまなかった。」と、再度謝ると『・・ごめんね。たっくん。』って、詩織も謝ってくる。
詩織が俺にしがみついてキスをしたので、俺は瞬間、顔をしかめる。詩織は『まだ痛い?』俺が「めちゃくちゃ痛い!」と即答すると、二人は泣きながら、クスクスと笑いあった。
その後で、詩織が『たっくん、ちょっと一緒にいて。』と、言うと詩織は、あの時(嘘出張の夜)に着ていたミニスカートとTバック、そしてあの水着を全てハサミで切り刻み始めた。何故それらの衣服なのかは、詩織は何も言わなかった。(それは最後のプレイに着用していたからこそだったと思う。)
全てを覗き穴から見て知っているだけに俺は何も尋ねることが出来ずにいた。詩織は俺の顔を一度ちらりと見ると、また視線を手元のハサミと切り刻まれる下着に落とし、こうつぶやいた。『許せないから・・・あの時の自分自身が・・。』と、だけ言いながらジョキジョキと切っていた。
全部を切り終わると、それをゴミ袋に詰める。詩織は明るい口調で、『はい、おーしまい!』と、俺に突き付けた。『これ、明日のゴミの日(月曜日)によろしくね。』と、そこには、無理やり作った笑顔とは真逆に真っ赤な目をした俺の嫁である詩織がいた。《翔太とセックスをした時に着ていた服や下着などを処分したのは多分それらが詩織の中では性欲に流された自分の象徴になったのだと推測しました。》
あれから3週間が過ぎた。最近は、子作りに励む毎日です。それは俺が「もう勘弁してくれ!」と、いうほど詩織が求めてきます。これまでの出来事は、二人の間では、まだまだ未消化な部分と不純なセックスがあと一歩で二人の仲を破壊したという後悔と共に、再結合された喜びが入り混じっているためなのか、この件は日常の話題に出せない雰囲気があったのです。
それでも、最近では、俺が夜の営みでつい弱音を吐くと、詩織は、ニヤニヤしながら『あいつはもっとすごかったよ~。』と、挑発をしてきます。俺が「もうそのことは勘弁してくれ・・。」と、言っても、『だ~め~しばらくは許してやんないよ。』と、やはりニヤニヤしながら虐めてきます。こんな“会話”が出来るレベルにはなってきています。
詩織は、事前に俺の許可を取った上で、翔太に最後の電話をしました。俺の目の前で、『もう会わないから・・でも今まで・・ありがとう・・・さようなら・・・。』と、別れを告げていました。その間、詩織はずっ~と俺の右手を、ぎゅっと力強く握り締めていました。後日に翔太と話す機会があり、〔やっとおれもお役御免ですな。〕と、肩の荷が下りたように笑っていました。
詩織からの、最後の桜さんへのメールにはこう書かれていました。
≪『色々な過ったセックスをしてしまったし、勢いだけで流されて心にもない馬鹿なことを口走っちゃったりもしてしまいました。それを許してくれた本当に大事な人の傍に寄り添いながら、この罪を、一生掛けて償っていきたいと思っています。』≫
最後の文章に、≪『もうこのようなプレイは止めます。今まで付き合って下さりありがとう。』≫とありました。桜さんからの返信はわかりません。付け加えると、このメールを見て、詩織と俺も同じ気持ちになった。そして、これからは詩織のPCを覗くことも無いでしょう。 《終》
2015/05/02