名K【矛盾】第1話
名K【矛盾】第1話
(原題:雲の上を歩く 投稿者:MMさん教えて 投稿日:20050118 連載期間:20050118~20050323 BBS2)
私(渡部篤史:わたべ・あつし:41歳)、妻(渡部香澄:かすみ:37歳)、小学校三年生の娘(真凛:まりん)がいます。この話は半年前のある金曜日にさかのぼります。仕事が終わって車に乗り込むと携帯が鳴り、見覚えの無い番号だったので不審に思いながらも出てみると、聞き覚えの無い低い声でした。
〔突然申し訳ない。香澄のご主人か? わしは河北組の河北だ。いつも香澄には世話になっとります。〕
それは、妻が一年前から事務の仕事に行っている先の、建設会社の河北玄一(かわきた・げんいち:66歳)社長でした。その会社は、今では多少事業を縮小したもののバブル期に急成長した会社です。妻の父親も数年前までは会社を経営していて、以前この社長と一緒に商工会議所の役員をしていた事から懇意になり、その関係で妻の香澄は雇ってもらったと聞いていました。
それは、妻が一年前から事務の仕事に行っている先の、建設会社の河北玄一(かわきた・げんいち:66歳)社長でした。その会社は、今では多少事業を縮小したもののバブル期に急成長した会社です。妻の父親も数年前までは会社を経営していて、以前この社長と一緒に商工会議所の役員をしていた事から懇意になり、その関係で妻の香澄は雇ってもらったと聞いていました。
「お世話になっています。妻が何か?」
〔電話では話せないので、これから一緒に飯でも食いながら話そう。わしの会社を知っているか?会社から500m位北に行った所の右側に“天嵐”という寿司屋が有る。そこで待っているからすぐに来てくれ。〕
そう言い終ると、私の都合も聞かずに一方的に電話を切ってしまい、余りの強引さや、会社ではそうなのかも知れませんが、私に対しても妻を呼び捨てにする事に良い気持ちはしませんでしたが、香澄の事を考えると邪険にも出来ません。
〔電話では話せないので、これから一緒に飯でも食いながら話そう。わしの会社を知っているか?会社から500m位北に行った所の右側に“天嵐”という寿司屋が有る。そこで待っているからすぐに来てくれ。〕
そう言い終ると、私の都合も聞かずに一方的に電話を切ってしまい、余りの強引さや、会社ではそうなのかも知れませんが、私に対しても妻を呼び捨てにする事に良い気持ちはしませんでしたが、香澄の事を考えると邪険にも出来ません。
妻の携帯に電話しましたが電源が切られていたので、いつもの様に実家に行っていると思い、一応そちらにも電話しましたがやはり出ません。それと言うのも、義父は心臓の病気になり入院していたのですが、今は自宅で義母が看ており、妻はほとんど毎日仕事が終わると実家に行っていました。それに義父の心臓にはペースメーカーが入れてあるので、実家にいる時は携帯を切っています。
建設会社(河北組)の建物は、隣街に有る妻の実家に行く途中の国道沿いに有り、建物自体はそう大きくはないのですが、周りがほとんど田んぼで、わりと目立つために以前から知っていました。そこを通り過ぎて寿司屋に着いた。河北社長の名前を告げるとすぐに個室に案内されると、そこには高そうなスーツを着た小太りの男が、大皿に盛られたハマグリを手掴みでガツガツと食べています。
〔すまんな。少し待ってくれ。〕
初対面なのに、それも自分から呼び出しておいて、なんて失礼な奴だと思いながらも、少ない髪に垂れそうなほど整髪料を付けてオールバックにしている頭と、異様に大きく突き出たお腹で汗を掻きながら、必死に食べている姿が何処か滑稽で、そんな姿を私が見詰めながら待っていました。
それで、ようやく食べ終わっておしぼりで手を拭きながら河北社長が口を開く。
初対面なのに、それも自分から呼び出しておいて、なんて失礼な奴だと思いながらも、少ない髪に垂れそうなほど整髪料を付けてオールバックにしている頭と、異様に大きく突き出たお腹で汗を掻きながら、必死に食べている姿が何処か滑稽で、そんな姿を私が見詰めながら待っていました。
それで、ようやく食べ終わっておしぼりで手を拭きながら河北社長が口を開く。
〔悪かったな。わしは酒が呑めんのにハマグリの酒蒸しには目が無くて、温かい内に全部食ってしまわないと気が済まん。女のハマグリはもっと大好物だが。ワッハハハハハハ。おーい、ビールと料理を持って来てくれ。〕
テーブルの上には伊勢海老のお造りなどの豪華な料理が並びます。
社長から、ビールを勧められますが
「車なので、アルコールはご遠慮します。それよりも妻が何かご迷惑でもお掛けしましたのでしょうか?」
〔そう焦らずに料理を食べてくれ。人間、腹が減っていては短気になる。〕
「いいえ。先に要件を聞かせて頂かないと、落ち着いてご馳走にはなれません。」
私(渡部篤史)は河北社長と一緒に食事をする気に成れず、早く帰りたくて焦っていました。 第2話へ続く
テーブルの上には伊勢海老のお造りなどの豪華な料理が並びます。
社長から、ビールを勧められますが
「車なので、アルコールはご遠慮します。それよりも妻が何かご迷惑でもお掛けしましたのでしょうか?」
〔そう焦らずに料理を食べてくれ。人間、腹が減っていては短気になる。〕
「いいえ。先に要件を聞かせて頂かないと、落ち着いてご馳走にはなれません。」
私(渡部篤史)は河北社長と一緒に食事をする気に成れず、早く帰りたくて焦っていました。 第2話へ続く
20160227
名K【矛盾】第1章2話 02
名K【矛盾】第1章2話 02
第1章1話 01
河北玄一社長は返事もしないでガツガツと料理を食べていましたが、突然こちらも見ずに。
〔渡部(わたべ)くん、香澄をわしにくれ。〕
「は? 意味が分かりませんが。」
〔意味?聞いたとおりだ。香澄とわしが結婚するから離婚してくれ。〕
こんな理不尽な事はもっと怒って、きつく断れば良かったのですが・・・・。
「そんなこと勝手に決められても・・香澄の気持ちも有るし、離婚など出来ません。」
あまりにも突然の事で頭がついて行かず、断る言い訳をしていました。
〔香澄はもう承諾しているから後は君だけだ。香澄もわしと一緒になりたいと言っている。付き合い出して半年経つから、君も薄々は知っていたのだろ?〕
自分でも仲の良い夫婦だと思っていましたので私(渡部篤史:わたべ・あつし:41歳)に思い当たる事は全く無く、それどころか、先週の金曜日の夜も普通にセックスをしたばかりです。
この男は妄想癖が有るのか、もしくは狂っていると思って席を立つと、ようやく箸を置いて私を睨む。
〔付き合っていると言っても誤解するな。法に触れるような事はしていない。中学生のような清い交際だ。いや、今時の中学生なら半年も付き合えばやっているか。ワッハハハハ。〕
「香澄に限ってそんな筈は無い。訳の分からない事を言うな。」
〔そうカッカするな。だから先に飯を食えと言っただろ。〕
「こんな馬鹿な話は、腹が減っていようが満腹だろうが関係ない。」
〔そう喧嘩腰にならないで男らしく諦めろ。香澄はわしの事を好きだと言っている。結婚していても気持ちまでは縛れんぞ。君よりわしの方を好きになったのだから仕方が無いだろ?君にはまた君に合った女が現れる。気持ちが他の男に移ってしまったら一緒に居る意味が無いだろ?毎日香澄を見ていて、早くわしのマラでヒーヒー言わせたくて仕方が無いから、出来るだけ早く離婚してくれ。ワッハハハハハハ。〕
「あんた頭がおかしいのか?はっきりと断る。」
店を出て、車に乗っても、まだ心臓がドキドキしていて訳が分かりません。
私は大学生の時に相次いで両親を亡くし、親の借金が残りましたが、今の家を手放すのが嫌で相続を放棄せずに大学を中退して働き、少しずつですが毎月返済していました。借金を返し終わるまで恋愛など出来ないと思っていましたが、あるサークルでの隣町との交流会で橋爪香澄と知り合う。純粋で世間に擦れていないところが可愛く好きになりました。
何故か香澄は両親に対して、恋愛をしている事に罪悪感を持っていて、彼女の希望で秘密
の交際を続けましたが、私の借金が完済出来た時に、香澄との結婚をお願いしに行きます。しかし彼女の両親は激怒し、借金は返し終わっていてもお金が無い事、大学を出ていない事、何より家柄がつり合わない事を理由に、何回行っても門前払いだったので、最後には、親兄弟のいない身軽な私は、香澄も1人っ子なので養子に入る覚悟もしたのですが、異常にプライドの高い彼女の父親(橋爪寛治)は、私の事を「野良犬」とまで言って受け付けません。
結局何にでも一途な香澄が、初めて親に逆らって家を飛び出し、私(渡部篤史:わたべ・あつし)の家に来て一緒に暮らし出しました。何年かは子供に恵まれませんでしたが、その後娘(真凛:まりん)が生まれると、やはり孫は可愛いのか、妻と娘は何かに付け家に行けるように成りましたが、大事な一人娘を奪った憎い私(渡部篤史:わたべ・あつし)の事は受け付けません。
義父(橋爪寛治)が入院した時も見舞いに行くと妻(渡部香澄:かすみ:37歳)に言ったところ、その日に義母(橋爪千恵子)から電話で、「あなたに会うと興奮して良くないから、出来れば遠慮して下さい。」と、歳を取ってから出来た一人娘が可愛いのは分かっても、この執念深さには怒りを覚えましたが、正座して私に謝る妻を見て、その時はぐっと怒りを飲み込みました。
そのような思いまでして結婚し、その様な思いまでして私に付いて来てくれた妻に限って、河北玄一(66歳)が言ったような事は決して無いと信じています。これまで、ほとんど大きな喧嘩もしないで仲良くやって来たし、そして今でも毎週金曜日の夜は愛を確かめ合っていました。 第1章3話 03に続く
2016/03/07
第1章1話 01
河北玄一社長は返事もしないでガツガツと料理を食べていましたが、突然こちらも見ずに。
〔渡部(わたべ)くん、香澄をわしにくれ。〕
「は? 意味が分かりませんが。」
〔意味?聞いたとおりだ。香澄とわしが結婚するから離婚してくれ。〕
こんな理不尽な事はもっと怒って、きつく断れば良かったのですが・・・・。
「そんなこと勝手に決められても・・香澄の気持ちも有るし、離婚など出来ません。」
あまりにも突然の事で頭がついて行かず、断る言い訳をしていました。
〔香澄はもう承諾しているから後は君だけだ。香澄もわしと一緒になりたいと言っている。付き合い出して半年経つから、君も薄々は知っていたのだろ?〕
自分でも仲の良い夫婦だと思っていましたので私(渡部篤史:わたべ・あつし:41歳)に思い当たる事は全く無く、それどころか、先週の金曜日の夜も普通にセックスをしたばかりです。
この男は妄想癖が有るのか、もしくは狂っていると思って席を立つと、ようやく箸を置いて私を睨む。
〔付き合っていると言っても誤解するな。法に触れるような事はしていない。中学生のような清い交際だ。いや、今時の中学生なら半年も付き合えばやっているか。ワッハハハハ。〕
「香澄に限ってそんな筈は無い。訳の分からない事を言うな。」
〔そうカッカするな。だから先に飯を食えと言っただろ。〕
「こんな馬鹿な話は、腹が減っていようが満腹だろうが関係ない。」
〔そう喧嘩腰にならないで男らしく諦めろ。香澄はわしの事を好きだと言っている。結婚していても気持ちまでは縛れんぞ。君よりわしの方を好きになったのだから仕方が無いだろ?君にはまた君に合った女が現れる。気持ちが他の男に移ってしまったら一緒に居る意味が無いだろ?毎日香澄を見ていて、早くわしのマラでヒーヒー言わせたくて仕方が無いから、出来るだけ早く離婚してくれ。ワッハハハハハハ。〕
「あんた頭がおかしいのか?はっきりと断る。」
店を出て、車に乗っても、まだ心臓がドキドキしていて訳が分かりません。
私は大学生の時に相次いで両親を亡くし、親の借金が残りましたが、今の家を手放すのが嫌で相続を放棄せずに大学を中退して働き、少しずつですが毎月返済していました。借金を返し終わるまで恋愛など出来ないと思っていましたが、あるサークルでの隣町との交流会で橋爪香澄と知り合う。純粋で世間に擦れていないところが可愛く好きになりました。
何故か香澄は両親に対して、恋愛をしている事に罪悪感を持っていて、彼女の希望で秘密
の交際を続けましたが、私の借金が完済出来た時に、香澄との結婚をお願いしに行きます。しかし彼女の両親は激怒し、借金は返し終わっていてもお金が無い事、大学を出ていない事、何より家柄がつり合わない事を理由に、何回行っても門前払いだったので、最後には、親兄弟のいない身軽な私は、香澄も1人っ子なので養子に入る覚悟もしたのですが、異常にプライドの高い彼女の父親(橋爪寛治)は、私の事を「野良犬」とまで言って受け付けません。
結局何にでも一途な香澄が、初めて親に逆らって家を飛び出し、私(渡部篤史:わたべ・あつし)の家に来て一緒に暮らし出しました。何年かは子供に恵まれませんでしたが、その後娘(真凛:まりん)が生まれると、やはり孫は可愛いのか、妻と娘は何かに付け家に行けるように成りましたが、大事な一人娘を奪った憎い私(渡部篤史:わたべ・あつし)の事は受け付けません。
義父(橋爪寛治)が入院した時も見舞いに行くと妻(渡部香澄:かすみ:37歳)に言ったところ、その日に義母(橋爪千恵子)から電話で、「あなたに会うと興奮して良くないから、出来れば遠慮して下さい。」と、歳を取ってから出来た一人娘が可愛いのは分かっても、この執念深さには怒りを覚えましたが、正座して私に謝る妻を見て、その時はぐっと怒りを飲み込みました。
そのような思いまでして結婚し、その様な思いまでして私に付いて来てくれた妻に限って、河北玄一(66歳)が言ったような事は決して無いと信じています。これまで、ほとんど大きな喧嘩もしないで仲良くやって来たし、そして今でも毎週金曜日の夜は愛を確かめ合っていました。 第1章3話 03に続く
2016/03/07
名K【矛盾】第1章3話 03
名K【矛盾】第1章3話 03
第1章2話 02
とにかく私(渡部篤史:わたべ・あつし:41歳)は妻(渡部香澄:わたべ・かすみ:37歳)の話が聞きたくて急いで帰ると、そこにはいつもと変わらぬ笑顔の香澄がいたので少しホッとしました。
『パパ、今日はいつもより遅かったのですね。真理だけは食事を済ませたので、私達の食事をすぐに仕度しますから、先にお風呂に入って来て下さい。』
「いや、それより話がある。」
私の深刻そうな顔を見て、娘はお風呂に入るようにと言って連れて行き、戻って来ると、下を向いて小さな声で。
『何か有ったのですか?』
「ああ、ママの勤めている会社の河北社長の事だ。」
すると妻の顔が見る見る青ざめていきます。
「あいつ(河北玄一)に話が有ると言われて今まで会っていたが、あいつは気が狂っているぞ! 〔体の関係は無い清い交際だが、(ママと)半年も付き合っている〕とか、〔(ママが)自分の事を好きで結婚したがっているので、早く離婚してくれ〕と言われた。そんな事は有るはずが無いのに、あの社長は変だし気味悪いから勤めは辞めろ!」
すると妻の目に見る見る涙が溜まり、それが流れ落ちるのと同時に声を出して泣き崩れました。
「エッ。どうして泣いている? なぜ否定をしない? 悪い冗談は止めてくれ。」
泣き崩れた香澄の両肩を掴んで起こした時、妻が小さな声で一言。
『ごめんなさい。』
香澄の肯定した言葉を聞いてその瞬間、思い切り頬を叩いてしまいます。思わず叩いてしまいましたが、今の状況が自分でも理解仕切れずに動揺していると、妻の泣き声を聞いた娘が慌ててお風呂から出て来て。
〚ママをいじめないで! パパなんて嫌い!〛
そう言いながら娘も泣き出しました。
『真理、違うの。ママが悪いの、パパは悪くない。ママが悪いの。ごめんね、ごめんね。』
「ママが悪い? うそだろ? そんな馬鹿な事って。」
『ごめんなさい、この子の前では・・・。明日きちんとお話ししますから今日は許して下さい。』
妻の香澄は泣きながら逃げるように、娘を子供部屋に連れて行って出て来ません。すぐに後を追おうと思いましたが、あまりに急な展開に、これが現実に起きている事なのかどうかも判断出来ずに、私は後を追う気力も問い詰める気力も湧いて来ませんでした。
私にとっては、それほど予期しない突然の出来事だったのです。しかし次第に不安は怒りに変わり、中々寝付かれずに何度も娘の部屋の前まで行きましたが、その度に妻のすすり泣く声を聞いて、事実を受け止めるのが嫌で何も言わずに戻って来ました。それから、いつの間にか眠ってしまい、起きると会社へ行っていなければ時間だったので、一瞬慌てます。でも今日は土曜日だった事に気付き、それと同時に昨夜の事も思い出し、娘の部屋に行きましたが香澄も娘もいませんでした。 第1章4話 04に続く
2016/12/19
第1章2話 02
とにかく私(渡部篤史:わたべ・あつし:41歳)は妻(渡部香澄:わたべ・かすみ:37歳)の話が聞きたくて急いで帰ると、そこにはいつもと変わらぬ笑顔の香澄がいたので少しホッとしました。
『パパ、今日はいつもより遅かったのですね。真理だけは食事を済ませたので、私達の食事をすぐに仕度しますから、先にお風呂に入って来て下さい。』
「いや、それより話がある。」
私の深刻そうな顔を見て、娘はお風呂に入るようにと言って連れて行き、戻って来ると、下を向いて小さな声で。
『何か有ったのですか?』
「ああ、ママの勤めている会社の河北社長の事だ。」
すると妻の顔が見る見る青ざめていきます。
「あいつ(河北玄一)に話が有ると言われて今まで会っていたが、あいつは気が狂っているぞ! 〔体の関係は無い清い交際だが、(ママと)半年も付き合っている〕とか、〔(ママが)自分の事を好きで結婚したがっているので、早く離婚してくれ〕と言われた。そんな事は有るはずが無いのに、あの社長は変だし気味悪いから勤めは辞めろ!」
すると妻の目に見る見る涙が溜まり、それが流れ落ちるのと同時に声を出して泣き崩れました。
「エッ。どうして泣いている? なぜ否定をしない? 悪い冗談は止めてくれ。」
泣き崩れた香澄の両肩を掴んで起こした時、妻が小さな声で一言。
『ごめんなさい。』
香澄の肯定した言葉を聞いてその瞬間、思い切り頬を叩いてしまいます。思わず叩いてしまいましたが、今の状況が自分でも理解仕切れずに動揺していると、妻の泣き声を聞いた娘が慌ててお風呂から出て来て。
〚ママをいじめないで! パパなんて嫌い!〛
そう言いながら娘も泣き出しました。
『真理、違うの。ママが悪いの、パパは悪くない。ママが悪いの。ごめんね、ごめんね。』
「ママが悪い? うそだろ? そんな馬鹿な事って。」
『ごめんなさい、この子の前では・・・。明日きちんとお話ししますから今日は許して下さい。』
妻の香澄は泣きながら逃げるように、娘を子供部屋に連れて行って出て来ません。すぐに後を追おうと思いましたが、あまりに急な展開に、これが現実に起きている事なのかどうかも判断出来ずに、私は後を追う気力も問い詰める気力も湧いて来ませんでした。
私にとっては、それほど予期しない突然の出来事だったのです。しかし次第に不安は怒りに変わり、中々寝付かれずに何度も娘の部屋の前まで行きましたが、その度に妻のすすり泣く声を聞いて、事実を受け止めるのが嫌で何も言わずに戻って来ました。それから、いつの間にか眠ってしまい、起きると会社へ行っていなければ時間だったので、一瞬慌てます。でも今日は土曜日だった事に気付き、それと同時に昨夜の事も思い出し、娘の部屋に行きましたが香澄も娘もいませんでした。 第1章4話 04に続く
2016/12/19
名K【矛盾】第1章4話 04
名K【矛盾】第1章4話 04
第1章3話 03
おそらく妻(渡部香澄:わたべ・かすみ:37歳)は寝ずに私(渡部篤史:わたべ・あつし:41歳)が眠るのを待って、家を出たのだと思います。携帯に電話しても繋がらず、妻の実家に電話すると義母(橋爪千恵子)が出た。[香澄? 何を言っているの、今日は土曜日よ。いつもの様に真理を預けて仕事に行ったわよ。あなた大丈夫?]義母は本当に何も知らないようです。
この様な時に会社に行っているはずは無いと思っていても、妻の携帯に繋がらないので探しようが無く、あの社長(河北玄一:かわきた・げんいち:66歳)の所へ行ったのか? とも思いましたが、自宅も分からないので、取り敢えずは妻の勤め先に行ってみるしか有りません。
会社(河北組)に行くと、何故か事務所は暗くて誰もいなかったので、外でトラックに重機を積んでいた二人組に尋ねる。「あの、社長にお会いしたいのですが・・。」、≪社長? 今日はたぶん来ないよ。土曜日は現場の者だけで事務は休みだから、部長に任せて社長はめったに来ないよ。部長ならもう来る頃だから、部長では駄目か? どうしても社長に急用なら自宅へ行きな。ただ土曜日は急に行くと機嫌が悪いから電話してからの方がいいぞ。≫
香澄は『土曜日も仕事よ。』って言って、毎週出社していたので不安は大きくなり、河北の自宅を聞いた後に、妻の事を何か聞き出せないかと思い、
「そういえば以前、飲み屋で意気投合した夫婦の奥さんの方が、ここに勤めていると聞いた覚えが有るのですが、元気にしていますか? たしか香澄さんという名前だったと思いますが・・。」
≪香澄? そんな人はいないな。≫
〈おい、あの人の事じゃないのか? 社長のさ・・・。〉
もう一人の男が小指を立てながら言うと。
≪そうだ。あの色が白くてオッパイのでかい奥さんの名前・・確か香澄とか言ったな。彼女なら最初ここの事務をしていたが、半年ぐらい前から社長の家のお手伝いさんをしているよ。事務をしているより給料がいいらしいぜ・・。≫
〈いや、給料と言うよりあれはお手当てだろ。お手伝いと言っても前から一人いるし、大きな家だと言っても、二人も必用なほど仕事も無いから、両手に花でいったい何のお手伝いをさせている事やら。社長は女癖が悪くて、それも人妻専門だからな。いけねー! 調子に乗って喋り過ぎた。社長に会っても今の話は内緒にしてくれよ!〉
私は妻の事を完全に信用していて、何も知らない間抜けな亭主でした。まさかと思っている事が、どんどん現実の物と成っていきます。
河北の家は会社から車で5分程の所に有り、高い塀で囲まれていて、大きく立派なアルミ製の門扉がある、寄棟作りの豪邸でした。あの二人組の言っていたとおり門が閉ざされていたので、インターホンを押しますが返事が有りません。諦めきれずに押し続けていると、ようやくあの社長の声がして、家の中から開ける事が出来るのか、次の瞬間ガチャッという鍵の開く音がしました。〔今開けたから入って来い! 家に入ったら玄関のすぐ右の部屋にいるから、勝手に上がって来い!〕私だと分かった事が不思議で上を見ると、そこには防犯カメラがこちらを見ていました。 第1章5話 05 に続く
2017/04/08
第1章3話 03
おそらく妻(渡部香澄:わたべ・かすみ:37歳)は寝ずに私(渡部篤史:わたべ・あつし:41歳)が眠るのを待って、家を出たのだと思います。携帯に電話しても繋がらず、妻の実家に電話すると義母(橋爪千恵子)が出た。[香澄? 何を言っているの、今日は土曜日よ。いつもの様に真理を預けて仕事に行ったわよ。あなた大丈夫?]義母は本当に何も知らないようです。
この様な時に会社に行っているはずは無いと思っていても、妻の携帯に繋がらないので探しようが無く、あの社長(河北玄一:かわきた・げんいち:66歳)の所へ行ったのか? とも思いましたが、自宅も分からないので、取り敢えずは妻の勤め先に行ってみるしか有りません。
会社(河北組)に行くと、何故か事務所は暗くて誰もいなかったので、外でトラックに重機を積んでいた二人組に尋ねる。「あの、社長にお会いしたいのですが・・。」、≪社長? 今日はたぶん来ないよ。土曜日は現場の者だけで事務は休みだから、部長に任せて社長はめったに来ないよ。部長ならもう来る頃だから、部長では駄目か? どうしても社長に急用なら自宅へ行きな。ただ土曜日は急に行くと機嫌が悪いから電話してからの方がいいぞ。≫
香澄は『土曜日も仕事よ。』って言って、毎週出社していたので不安は大きくなり、河北の自宅を聞いた後に、妻の事を何か聞き出せないかと思い、
「そういえば以前、飲み屋で意気投合した夫婦の奥さんの方が、ここに勤めていると聞いた覚えが有るのですが、元気にしていますか? たしか香澄さんという名前だったと思いますが・・。」
≪香澄? そんな人はいないな。≫
〈おい、あの人の事じゃないのか? 社長のさ・・・。〉
もう一人の男が小指を立てながら言うと。
≪そうだ。あの色が白くてオッパイのでかい奥さんの名前・・確か香澄とか言ったな。彼女なら最初ここの事務をしていたが、半年ぐらい前から社長の家のお手伝いさんをしているよ。事務をしているより給料がいいらしいぜ・・。≫
〈いや、給料と言うよりあれはお手当てだろ。お手伝いと言っても前から一人いるし、大きな家だと言っても、二人も必用なほど仕事も無いから、両手に花でいったい何のお手伝いをさせている事やら。社長は女癖が悪くて、それも人妻専門だからな。いけねー! 調子に乗って喋り過ぎた。社長に会っても今の話は内緒にしてくれよ!〉
私は妻の事を完全に信用していて、何も知らない間抜けな亭主でした。まさかと思っている事が、どんどん現実の物と成っていきます。
河北の家は会社から車で5分程の所に有り、高い塀で囲まれていて、大きく立派なアルミ製の門扉がある、寄棟作りの豪邸でした。あの二人組の言っていたとおり門が閉ざされていたので、インターホンを押しますが返事が有りません。諦めきれずに押し続けていると、ようやくあの社長の声がして、家の中から開ける事が出来るのか、次の瞬間ガチャッという鍵の開く音がしました。〔今開けたから入って来い! 家に入ったら玄関のすぐ右の部屋にいるから、勝手に上がって来い!〕私だと分かった事が不思議で上を見ると、そこには防犯カメラがこちらを見ていました。 第1章5話 05 に続く
2017/04/08
名K【矛盾】第1章5話 05
名K【矛盾】第1章5話 05
第1章4話 04
社長(河北玄一:かわきた・げんいち:66歳)の家に入ると、そこにはバスローブを着た河北が座っていた。私(渡部篤史:わたべ・あつし:41歳)は思わず怒鳴る。
「妻(渡部香澄:わたべ・かすみ:37歳)を出してくれ! ここにいるだろ?!」
〔残念ながらここには来ていない。君に殴られて口の中が切れ、頬も腫れているので、今日は休ませてくれと電話があった。暴力も立派な離婚理由になるから、診断書を貰っておけと言っておいた。女を殴るとは男として最低だな。女を手荒に扱ってもいいのはアレの時だけだ。ワッハハハハ。〕
その時、年の頃四十二、三歳の着物を着た綺麗な女の人が、お茶を持って来てくれたのですが、慌てて着たのか何処となく着崩れしている様に見えました。私が目で追っていると、河北もそれに気付いたのか。
〔今まで何をしていたか分かってしまったか? ワッハハハハ。着物ぐらいきちんと着て来い!〕
彼女は下を向いて、恥ずかしそうに小さな声で。
[申し訳ございません。]
「そんな事はどうでもいい。妻の香澄は本当にいないのか?」
〔君の想像通り、わしは今こいつを抱いていたから、わしには何処にいるのか分からん。たぶん今頃はわしが指定した病院で、診断書を貰う為に診てもらっている頃じゃないのかな。疑うなら家中探してみるか?〕
「今までこの人を抱いていた? お前は妻と結婚したいのだろ?」
〔それとこれとは話が別だ。いけないのか? わしは毎日出したくて仕方が無い。浮気が駄目なら香澄を抱いてもいいのか? ワッハハハ。〕
「ふざけるな!」
〔そんな事より早く探さなくてもいいのか? おい、家中を案内してやれ!〕
[はい、旦那様。]
河北があまりに落ち着き払った態度で、自信ありげな声だった。
「もういい! 必ず訴えてやるからな!」
〔訴える? 何の罪で? よその奥さんと付き合っているだけが何の罪だ? うちの弁護
士先生によると、身体の関係を持てば不貞行為とやらで民法に触れるらしいが、キスぐら
いでは罪にならないらしい。今のわし達はそれすらも無い。仮にもう香澄を抱いた事が有ったとしても、刑法には触れないから金で済む。それに第一証拠も無い。さあ、何で訴え
るんだ?〕
それまで法律の事など何も知らなかった私は河北に言い返す事も出来ず、情け無い事に負
け犬が尻尾を丸めて逃げるように車に戻りました。 第1章6話 06へ続く
2017/11/11
第1章4話 04
社長(河北玄一:かわきた・げんいち:66歳)の家に入ると、そこにはバスローブを着た河北が座っていた。私(渡部篤史:わたべ・あつし:41歳)は思わず怒鳴る。
「妻(渡部香澄:わたべ・かすみ:37歳)を出してくれ! ここにいるだろ?!」
〔残念ながらここには来ていない。君に殴られて口の中が切れ、頬も腫れているので、今日は休ませてくれと電話があった。暴力も立派な離婚理由になるから、診断書を貰っておけと言っておいた。女を殴るとは男として最低だな。女を手荒に扱ってもいいのはアレの時だけだ。ワッハハハハ。〕
その時、年の頃四十二、三歳の着物を着た綺麗な女の人が、お茶を持って来てくれたのですが、慌てて着たのか何処となく着崩れしている様に見えました。私が目で追っていると、河北もそれに気付いたのか。
〔今まで何をしていたか分かってしまったか? ワッハハハハ。着物ぐらいきちんと着て来い!〕
彼女は下を向いて、恥ずかしそうに小さな声で。
[申し訳ございません。]
「そんな事はどうでもいい。妻の香澄は本当にいないのか?」
〔君の想像通り、わしは今こいつを抱いていたから、わしには何処にいるのか分からん。たぶん今頃はわしが指定した病院で、診断書を貰う為に診てもらっている頃じゃないのかな。疑うなら家中探してみるか?〕
「今までこの人を抱いていた? お前は妻と結婚したいのだろ?」
〔それとこれとは話が別だ。いけないのか? わしは毎日出したくて仕方が無い。浮気が駄目なら香澄を抱いてもいいのか? ワッハハハ。〕
「ふざけるな!」
〔そんな事より早く探さなくてもいいのか? おい、家中を案内してやれ!〕
[はい、旦那様。]
河北があまりに落ち着き払った態度で、自信ありげな声だった。
「もういい! 必ず訴えてやるからな!」
〔訴える? 何の罪で? よその奥さんと付き合っているだけが何の罪だ? うちの弁護
士先生によると、身体の関係を持てば不貞行為とやらで民法に触れるらしいが、キスぐら
いでは罪にならないらしい。今のわし達はそれすらも無い。仮にもう香澄を抱いた事が有ったとしても、刑法には触れないから金で済む。それに第一証拠も無い。さあ、何で訴え
るんだ?〕
それまで法律の事など何も知らなかった私は河北に言い返す事も出来ず、情け無い事に負
け犬が尻尾を丸めて逃げるように車に戻りました。 第1章6話 06へ続く
2017/11/11
名K【矛盾】第1章6話 06
名K【矛盾】第1章6話 06
第1章5話 05
私(渡部篤史:わたべ・あつし:41歳)は車の中でしばらく考えていると少し冷静さを取り戻す。しかし相手の情報が無い事には対処の仕様も無いと思っていると、車を走らせてすぐに、玄関先で立ち話をしていた五十代らしい奥さん二人を見つけた。
車から降り、
「突然すみません。そこの角を曲がった所の、河北さんについて少し教えて頂きたいのですが。」
〚な~に? 東京にいる娘さんの縁談? それとも外国にいる息子さん?〛
「詳しくは話せませんが、その様なもので。河北さんとはどの様な方ですか?」
〚縁談だと話し難いわね。娘さんも息子さんも凄く良い子だから。ただ父親は・・。〛
「決してお聞きした事は言いませんからお願いします。」
〚言い難いけど、あの人の事を良く言う人はいないわ。かなりお金を持っているらしいからチヤホヤする人もいるらしいけど、この近所では真ともにお付き合いしている人は誰もいないわ。ただ、縁談となると子供さん達は本当に良い子だから、これ以上は言い難いわ。〛
言い難いと言いながら、初対面の私にこの様な事を話す事から、近所では嫌われているのだと思いました。
「いいえ、実はお子さんの縁談ではなくて、河北玄一(かわきた・げんいち:66歳)さんについて調べているのです。奥さん達の事は決して言いませんから、知っている事が有りもしたら、どの様な事でも結構ですから教えて頂け無いでしょうか?」
〚分かった、興信所の人でしょ? またよその奥さんに手を出したの。〛
「またと言いますと?」
この奥さんの話では、河北は若い時に年上の人妻に手を出して妊娠させてしまい、散々揉めた挙句、その人と結婚して子供を二人もうけたのですが、その後も人妻に手を出す癖が治らずに夫婦喧嘩が絶えず、結局奥さんを家から追い出してしまったそうです。
金儲けは上手いらしく、バブルの時代に可也土地の売買で儲け、悪運が強いのか鼻が利くのか、バブルが弾ける前に全て売り払い、それを掴まされた人の中には何人か自殺までした人がいると噂さがありました。その後は金に物を言わせて人妻に手を出し続け、奥さんに手を出されたらしいご主人と、玄関先で言い争っていたのを何回か見ているとの事です。
〚未だに殺されないのが不思議なくらいだわ。反面教師なのか子供達は二人共、真面目で優しい子共達だったから、そんな父親が嫌で高校を出ると相次いで家を出たのよ。あなたはお隣だから、もっと知っているでしょ?〛
するともう一人の奥さんが、待っていましたと言わんばかりに話し出しました。
〚住み込みでいるお手伝いさんも、元は河北さんが手を出した人妻さんだったと聞いているわ。その事が原因で離婚されて行く所が無かったので、住み込みで働くようになったという噂よ。その他にも、たまに来ている人妻らしい人を何人か見ているけど、良し悪しを別にすれば六十代半ばで凄い精力ね。うちの亭主も少しは見習って欲しいわ。もしかして調べているのは、もう一人お手伝いとして、毎日通いで来ている色白の若い奥さんの事なの?〛 第1章7話 07
2018/01/01
第1章5話 05
私(渡部篤史:わたべ・あつし:41歳)は車の中でしばらく考えていると少し冷静さを取り戻す。しかし相手の情報が無い事には対処の仕様も無いと思っていると、車を走らせてすぐに、玄関先で立ち話をしていた五十代らしい奥さん二人を見つけた。
車から降り、
「突然すみません。そこの角を曲がった所の、河北さんについて少し教えて頂きたいのですが。」
〚な~に? 東京にいる娘さんの縁談? それとも外国にいる息子さん?〛
「詳しくは話せませんが、その様なもので。河北さんとはどの様な方ですか?」
〚縁談だと話し難いわね。娘さんも息子さんも凄く良い子だから。ただ父親は・・。〛
「決してお聞きした事は言いませんからお願いします。」
〚言い難いけど、あの人の事を良く言う人はいないわ。かなりお金を持っているらしいからチヤホヤする人もいるらしいけど、この近所では真ともにお付き合いしている人は誰もいないわ。ただ、縁談となると子供さん達は本当に良い子だから、これ以上は言い難いわ。〛
言い難いと言いながら、初対面の私にこの様な事を話す事から、近所では嫌われているのだと思いました。
「いいえ、実はお子さんの縁談ではなくて、河北玄一(かわきた・げんいち:66歳)さんについて調べているのです。奥さん達の事は決して言いませんから、知っている事が有りもしたら、どの様な事でも結構ですから教えて頂け無いでしょうか?」
〚分かった、興信所の人でしょ? またよその奥さんに手を出したの。〛
「またと言いますと?」
この奥さんの話では、河北は若い時に年上の人妻に手を出して妊娠させてしまい、散々揉めた挙句、その人と結婚して子供を二人もうけたのですが、その後も人妻に手を出す癖が治らずに夫婦喧嘩が絶えず、結局奥さんを家から追い出してしまったそうです。
金儲けは上手いらしく、バブルの時代に可也土地の売買で儲け、悪運が強いのか鼻が利くのか、バブルが弾ける前に全て売り払い、それを掴まされた人の中には何人か自殺までした人がいると噂さがありました。その後は金に物を言わせて人妻に手を出し続け、奥さんに手を出されたらしいご主人と、玄関先で言い争っていたのを何回か見ているとの事です。
〚未だに殺されないのが不思議なくらいだわ。反面教師なのか子供達は二人共、真面目で優しい子共達だったから、そんな父親が嫌で高校を出ると相次いで家を出たのよ。あなたはお隣だから、もっと知っているでしょ?〛
するともう一人の奥さんが、待っていましたと言わんばかりに話し出しました。
〚住み込みでいるお手伝いさんも、元は河北さんが手を出した人妻さんだったと聞いているわ。その事が原因で離婚されて行く所が無かったので、住み込みで働くようになったという噂よ。その他にも、たまに来ている人妻らしい人を何人か見ているけど、良し悪しを別にすれば六十代半ばで凄い精力ね。うちの亭主も少しは見習って欲しいわ。もしかして調べているのは、もう一人お手伝いとして、毎日通いで来ている色白の若い奥さんの事なの?〛 第1章7話 07
2018/01/01
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