名K【矛盾】第1章5話 05
名K【矛盾】第1章5話 05
第1章4話 04
社長(河北玄一:かわきた・げんいち:66歳)の家に入ると、そこにはバスローブを着た河北が座っていた。私(渡部篤史:わたべ・あつし:41歳)は思わず怒鳴る。
「妻(渡部香澄:わたべ・かすみ:37歳)を出してくれ! ここにいるだろ?!」
〔残念ながらここには来ていない。君に殴られて口の中が切れ、頬も腫れているので、今日は休ませてくれと電話があった。暴力も立派な離婚理由になるから、診断書を貰っておけと言っておいた。女を殴るとは男として最低だな。女を手荒に扱ってもいいのはアレの時だけだ。ワッハハハハ。〕
その時、年の頃四十二、三歳の着物を着た綺麗な女の人が、お茶を持って来てくれたのですが、慌てて着たのか何処となく着崩れしている様に見えました。私が目で追っていると、河北もそれに気付いたのか。
〔今まで何をしていたか分かってしまったか? ワッハハハハ。着物ぐらいきちんと着て来い!〕
彼女は下を向いて、恥ずかしそうに小さな声で。
[申し訳ございません。]
「そんな事はどうでもいい。妻の香澄は本当にいないのか?」
〔君の想像通り、わしは今こいつを抱いていたから、わしには何処にいるのか分からん。たぶん今頃はわしが指定した病院で、診断書を貰う為に診てもらっている頃じゃないのかな。疑うなら家中探してみるか?〕
「今までこの人を抱いていた? お前は妻と結婚したいのだろ?」
〔それとこれとは話が別だ。いけないのか? わしは毎日出したくて仕方が無い。浮気が駄目なら香澄を抱いてもいいのか? ワッハハハ。〕
「ふざけるな!」
〔そんな事より早く探さなくてもいいのか? おい、家中を案内してやれ!〕
[はい、旦那様。]
河北があまりに落ち着き払った態度で、自信ありげな声だった。
「もういい! 必ず訴えてやるからな!」
〔訴える? 何の罪で? よその奥さんと付き合っているだけが何の罪だ? うちの弁護
士先生によると、身体の関係を持てば不貞行為とやらで民法に触れるらしいが、キスぐら
いでは罪にならないらしい。今のわし達はそれすらも無い。仮にもう香澄を抱いた事が有ったとしても、刑法には触れないから金で済む。それに第一証拠も無い。さあ、何で訴え
るんだ?〕
それまで法律の事など何も知らなかった私は河北に言い返す事も出来ず、情け無い事に負
け犬が尻尾を丸めて逃げるように車に戻りました。 第1章6話 06へ続く
2017/11/11
第1章4話 04
社長(河北玄一:かわきた・げんいち:66歳)の家に入ると、そこにはバスローブを着た河北が座っていた。私(渡部篤史:わたべ・あつし:41歳)は思わず怒鳴る。
「妻(渡部香澄:わたべ・かすみ:37歳)を出してくれ! ここにいるだろ?!」
〔残念ながらここには来ていない。君に殴られて口の中が切れ、頬も腫れているので、今日は休ませてくれと電話があった。暴力も立派な離婚理由になるから、診断書を貰っておけと言っておいた。女を殴るとは男として最低だな。女を手荒に扱ってもいいのはアレの時だけだ。ワッハハハハ。〕
その時、年の頃四十二、三歳の着物を着た綺麗な女の人が、お茶を持って来てくれたのですが、慌てて着たのか何処となく着崩れしている様に見えました。私が目で追っていると、河北もそれに気付いたのか。
〔今まで何をしていたか分かってしまったか? ワッハハハハ。着物ぐらいきちんと着て来い!〕
彼女は下を向いて、恥ずかしそうに小さな声で。
[申し訳ございません。]
「そんな事はどうでもいい。妻の香澄は本当にいないのか?」
〔君の想像通り、わしは今こいつを抱いていたから、わしには何処にいるのか分からん。たぶん今頃はわしが指定した病院で、診断書を貰う為に診てもらっている頃じゃないのかな。疑うなら家中探してみるか?〕
「今までこの人を抱いていた? お前は妻と結婚したいのだろ?」
〔それとこれとは話が別だ。いけないのか? わしは毎日出したくて仕方が無い。浮気が駄目なら香澄を抱いてもいいのか? ワッハハハ。〕
「ふざけるな!」
〔そんな事より早く探さなくてもいいのか? おい、家中を案内してやれ!〕
[はい、旦那様。]
河北があまりに落ち着き払った態度で、自信ありげな声だった。
「もういい! 必ず訴えてやるからな!」
〔訴える? 何の罪で? よその奥さんと付き合っているだけが何の罪だ? うちの弁護
士先生によると、身体の関係を持てば不貞行為とやらで民法に触れるらしいが、キスぐら
いでは罪にならないらしい。今のわし達はそれすらも無い。仮にもう香澄を抱いた事が有ったとしても、刑法には触れないから金で済む。それに第一証拠も無い。さあ、何で訴え
るんだ?〕
それまで法律の事など何も知らなかった私は河北に言い返す事も出来ず、情け無い事に負
け犬が尻尾を丸めて逃げるように車に戻りました。 第1章6話 06へ続く
2017/11/11
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