中Y〖やり直すか?〗第1回
中Y〖やり直すか?〗第1回
(原題:妻と私の運命を感じた話 投稿者・投稿日:不明)
彼女(岩田優奈:いわた・ゆうな)とは高校1年生の時、同じクラスになったのをきっかけに付き合い始め、21歳の時に彼女が妊娠。優奈は短大を出て働いていましたが、私は学生だったので親に無理を言ってお金を借り、入籍して一緒に暮らし始めて早や22年。当時妻は妊娠、出産、育児と慌しく、私(衛藤直人:えとう・なおと)もまた学生を続けながら休日や夜間はバイトをし、就職活動、就職と忙しい日々で、甘い新婚生活とは程遠い暮らしを送っていました。
その後もすぐに2人目が出来た事で、ずっと子供中心の生活を送ってきたのですが、子供達が大きくなるに連れて2人の時間も増え、昨年下の息子が私達の手を離れて京都の大学に行ったので2人だけの暮らしが多くなった頃には、当時出来なかった事を取り戻すかのように休日には2人で出掛け、平日の夜も時間の合う日は仕事帰りに待ち合わせて、食事をしたりするようになります。
夜の生活も若い新婚夫婦のようにはいかないまでも、月に1度するかしないかに減りつつあったのが徐々に増えて、週に1度はするようになっていて、他の日でも眠る時にはどちらからとも無く手を繋ぐなど、周りの人には恥ずかしくて言えないような生活を送るようになっていました。特に妻(衛藤優奈:えとう・ゆうな:44歳)は完全にその気になっていて、セックスの時以外はしなくなってしまっていたキスを度々せがんで来るようになり、私(衛藤直人:えとう・なおと:44歳)はその度に妻を強く抱き締めてそれに応え、そんな妻が可愛:えとう・ゆうなから帰ると玄関に男物の靴が置いてあり、それを境に妻が徐々に変わっていってしまうのです。
〔大田和宏(おおた・かずひろ:33歳)と申します。図々しくお邪魔してしまって、申し訳ございません。〕
私は彼と初対面でしたが、初めて会ったような気がしません。それと言うのも、妻は役所に臨時職員で勤めていますが彼とは1年前から同じ課で働いていて、妻の話によく出て来ていた男だったからです。確か年齢は私達よりも11歳下で、子供が2人いると聞いたことがありました。2人が深刻そうにしていたので私は席を外しましたが、彼が帰った後の妻の話によると、彼の奥さんが浮気をして子供を連れて実家に帰っているので、その相談に乗っていたそうです。
『離婚は決まっているのだけれど、条件で揉めているらしいの。』
その後の妻は頼られたのが嬉しいのか、彼に没頭して行くのでした。
「今夜待ち合わせて、映画でも観ないか?」
『ごめんなさい。大田君が悩んでいるそうだから、今夜愚痴を聞いてあげようと思って・・。』
それは平日だけでなく、世話を焼けなくなった子供達の代わりを彼に求めているかのように、休日までも会うようになって行きましたが、年齢が離れている事や彼と会う時は私に必ず言っていくことから、浮気などは全く疑いませんでした。しかしそれは、次第に後輩の相談に乗ると言う範囲を超えていきます。 第2回に続く
2017/11/30
(原題:妻と私の運命を感じた話 投稿者・投稿日:不明)
彼女(岩田優奈:いわた・ゆうな)とは高校1年生の時、同じクラスになったのをきっかけに付き合い始め、21歳の時に彼女が妊娠。優奈は短大を出て働いていましたが、私は学生だったので親に無理を言ってお金を借り、入籍して一緒に暮らし始めて早や22年。当時妻は妊娠、出産、育児と慌しく、私(衛藤直人:えとう・なおと)もまた学生を続けながら休日や夜間はバイトをし、就職活動、就職と忙しい日々で、甘い新婚生活とは程遠い暮らしを送っていました。
その後もすぐに2人目が出来た事で、ずっと子供中心の生活を送ってきたのですが、子供達が大きくなるに連れて2人の時間も増え、昨年下の息子が私達の手を離れて京都の大学に行ったので2人だけの暮らしが多くなった頃には、当時出来なかった事を取り戻すかのように休日には2人で出掛け、平日の夜も時間の合う日は仕事帰りに待ち合わせて、食事をしたりするようになります。
夜の生活も若い新婚夫婦のようにはいかないまでも、月に1度するかしないかに減りつつあったのが徐々に増えて、週に1度はするようになっていて、他の日でも眠る時にはどちらからとも無く手を繋ぐなど、周りの人には恥ずかしくて言えないような生活を送るようになっていました。特に妻(衛藤優奈:えとう・ゆうな:44歳)は完全にその気になっていて、セックスの時以外はしなくなってしまっていたキスを度々せがんで来るようになり、私(衛藤直人:えとう・なおと:44歳)はその度に妻を強く抱き締めてそれに応え、そんな妻が可愛:えとう・ゆうなから帰ると玄関に男物の靴が置いてあり、それを境に妻が徐々に変わっていってしまうのです。
〔大田和宏(おおた・かずひろ:33歳)と申します。図々しくお邪魔してしまって、申し訳ございません。〕
私は彼と初対面でしたが、初めて会ったような気がしません。それと言うのも、妻は役所に臨時職員で勤めていますが彼とは1年前から同じ課で働いていて、妻の話によく出て来ていた男だったからです。確か年齢は私達よりも11歳下で、子供が2人いると聞いたことがありました。2人が深刻そうにしていたので私は席を外しましたが、彼が帰った後の妻の話によると、彼の奥さんが浮気をして子供を連れて実家に帰っているので、その相談に乗っていたそうです。
『離婚は決まっているのだけれど、条件で揉めているらしいの。』
その後の妻は頼られたのが嬉しいのか、彼に没頭して行くのでした。
「今夜待ち合わせて、映画でも観ないか?」
『ごめんなさい。大田君が悩んでいるそうだから、今夜愚痴を聞いてあげようと思って・・。』
それは平日だけでなく、世話を焼けなくなった子供達の代わりを彼に求めているかのように、休日までも会うようになって行きましたが、年齢が離れている事や彼と会う時は私に必ず言っていくことから、浮気などは全く疑いませんでした。しかしそれは、次第に後輩の相談に乗ると言う範囲を超えていきます。 第2回に続く
2017/11/30
中Y〖やり直すか?〗第2回
中Y〖やり直すか?〗第2回
第1回
『今日は大田(和宏:おおた・かずひろ:33歳)君の家に行って、食事を作ってあげたの。』
「一人暮らしの、男の家に行ったのか!」
『もしかして妬いているの? 彼とは11歳も違うのよ。私のようなおばさんを相手にする訳が無いじゃない。外食ばかりだから、たまにはと思っただけよ。』
あまりに明るく笑う妻(衛藤優奈:えとう・ゆうな:44歳)を見て、少しでも疑った自分を恥じましたが、そのような事が1カ月ほど続いた頃、妻の口から彼の話が出る事はピタリと無くなります。
「大田君はどうしている? もう相談に乗らなくても良くなったのか?」
『話が拗(こじ)れていて、専門家に頼んだみたい。それで暇も無いらしいから・・。』
しかし妻は、残業になったとか友達や同僚と食事に行くとか色々な理由をつけて、私と待ち合わせて食事をする事もなくなり、帰宅時間もかなり遅くなる日が増えたのです
勿論今までにも友人と食事をして来るぐらいの事はあり、残業で遅くなる事もあったのですが、このように頻繁に遅く帰る事は初めてで、私(衛藤直人:えとう・なおと:44歳)は心配で仕方がありません。出産育児で若い時に遊べなかった妻を可哀想に思っていた私は、妻が楽しければ遅くなる事は構わないのですが、その頃から元気が無くなり、時々何か考え込んでいるようだったので心配になったのでした。
『あなた、私のこと好き? 私はあなたが大好きよ。』
「急にどうした? 最近何か変だぞ?」
休日も私と話しているときは笑顔なのですが、注意して見ていると、時々家事の手を止めて考え込んでしまうなど、明らかに妻の様子が普通ではありません。しかし相変わらずセックスもあり、キスをせがんで来るのも変わらなかったのでやはり浮気などは疑いませんでしたが、妻を注意深く見るようにはなりました。
「何か心配な事でもあるのか?」
『どうして? 何も無いわよ。』
いつも妻は微笑みながら答えますが、無理に笑顔を作っているのが分かります。
『明日、仁美と恭子が旅行の相談に来るの。』
この2人は妻の高校の時からの親友で、同級生だった私も勿論よく知っていて、私達に影響された訳でも無いのでしょうが2人共結婚が早く、3人の内の一番下の子供が高校を卒業した昨年から、安い旅館や民宿などを探して3ヶ月に一度は旅行していました。
その旅行が来週末に迫っていて、比較的近くに嫁いでいる2人はその打ち合わせに来るとのですが、この時は楽しそうに話していた妻も、旅行から帰って来ると更に元気が無くなり、私を避けるようになってしまいます。 第3回へ続く
2017/12/17
第1回
『今日は大田(和宏:おおた・かずひろ:33歳)君の家に行って、食事を作ってあげたの。』
「一人暮らしの、男の家に行ったのか!」
『もしかして妬いているの? 彼とは11歳も違うのよ。私のようなおばさんを相手にする訳が無いじゃない。外食ばかりだから、たまにはと思っただけよ。』
あまりに明るく笑う妻(衛藤優奈:えとう・ゆうな:44歳)を見て、少しでも疑った自分を恥じましたが、そのような事が1カ月ほど続いた頃、妻の口から彼の話が出る事はピタリと無くなります。
「大田君はどうしている? もう相談に乗らなくても良くなったのか?」
『話が拗(こじ)れていて、専門家に頼んだみたい。それで暇も無いらしいから・・。』
しかし妻は、残業になったとか友達や同僚と食事に行くとか色々な理由をつけて、私と待ち合わせて食事をする事もなくなり、帰宅時間もかなり遅くなる日が増えたのです
勿論今までにも友人と食事をして来るぐらいの事はあり、残業で遅くなる事もあったのですが、このように頻繁に遅く帰る事は初めてで、私(衛藤直人:えとう・なおと:44歳)は心配で仕方がありません。出産育児で若い時に遊べなかった妻を可哀想に思っていた私は、妻が楽しければ遅くなる事は構わないのですが、その頃から元気が無くなり、時々何か考え込んでいるようだったので心配になったのでした。
『あなた、私のこと好き? 私はあなたが大好きよ。』
「急にどうした? 最近何か変だぞ?」
休日も私と話しているときは笑顔なのですが、注意して見ていると、時々家事の手を止めて考え込んでしまうなど、明らかに妻の様子が普通ではありません。しかし相変わらずセックスもあり、キスをせがんで来るのも変わらなかったのでやはり浮気などは疑いませんでしたが、妻を注意深く見るようにはなりました。
「何か心配な事でもあるのか?」
『どうして? 何も無いわよ。』
いつも妻は微笑みながら答えますが、無理に笑顔を作っているのが分かります。
『明日、仁美と恭子が旅行の相談に来るの。』
この2人は妻の高校の時からの親友で、同級生だった私も勿論よく知っていて、私達に影響された訳でも無いのでしょうが2人共結婚が早く、3人の内の一番下の子供が高校を卒業した昨年から、安い旅館や民宿などを探して3ヶ月に一度は旅行していました。
その旅行が来週末に迫っていて、比較的近くに嫁いでいる2人はその打ち合わせに来るとのですが、この時は楽しそうに話していた妻も、旅行から帰って来ると更に元気が無くなり、私を避けるようになってしまいます。 第3回へ続く
2017/12/17
中Y〖やり直すか?〗第3回
中Y〖やり直すか?〗第3回
第2回
「今夜いいかな?」
『ごめんなさい。旅行の疲れがとれなくて・・・。』
妻(衛藤優奈:えとう・ゆうな:44歳)が離れていってしまうような気がして連日誘うと、妻の答えは同じなのですが、疲れていると言いながらも遅く帰るのは変わりません。
『旅行の清算もまだなので、明日は仁美達と食事をして来るので遅くなります。』
会って食事をしてくるのは構わないのですが、今までなら全て旅行の帰りに清算していて、帰って来てから清算するなど聞いた事がありません。
「本当に仁美さん達と会うのか?」
妻に限って浮気は有り得ないと打ち消していた私(衛藤直人:えとう・なおと:44歳)も、流石に疑う様な言い方をしてしまいました。
『本当よ。他に誰と?』
私は妻に明るく笑い飛ばして欲しかったのですが、妻は小さな声でそう答えた後、辛そうな顔をして俯いてしまいます。
「今夜はどうだ?」
そのような妻を見ていると更に心配になり、疑念を振り払いたくて誘ってみると、意外に
も妻は首を縦に振ったのでした。が、今度は私がその気になれません。それと言うのも、気の弱い私は嫌な方へ、嫌な方へと考えが向かってしまっていたのです。
妻はあれからも大田(和宏:おおた・かずひろ:33歳)と会っていて、既に体の関係もあるのかも知れません。初めて私以外の男を知った妻は、彼に溺れてしまっているのかも知れません。
《最初は私以外の男に興味があっただけの妻も、何度も抱かれている内に心まで奪われてしまったので、私に疑いを持たれる危険を冒してまで、連日のように会いたいのかも・・・》そう考えると、《私が疑っていると感じて誤魔化す為にOKしただけで、本当は私とセックスなどしたくないのかも・・・。》完全に妄想の世界に入ってしまっていた私は、彼が白くて小柄な妻を組み敷いている姿までもが浮かび、自分の勝手な妄想で勃起する事は無く、吐き気まで催してしまう有様でした。
結局妻とセックスが出来ず、口では心配してくれているような事を言ってはいても、すぐに眠ってしまった妻が腹立たしくて眠れません。やはり妻の愛を確認したいのと、自分の妄想が間違っているのを確認する為に、夜中に妻を起こしてまた事に及んだのですが結果は同じで、更にイライラは募ります。
しかし朝になると、不思議と夜考えていたほどの深刻さは無くなり、やはり妻に限って私を裏切る事など有り得ないと思えたのですが、また夜になると同じような苦しみを味わうのではないかと思い、妻に限って有りもしない妄想に脅えて、このまま夫婦が壊れていく恐れがあるのなら、無駄になるのは分かっていても、確かめて自分に納得させた方が良いと思いました。 第4回に続く
2018/01/02
第2回
「今夜いいかな?」
『ごめんなさい。旅行の疲れがとれなくて・・・。』
妻(衛藤優奈:えとう・ゆうな:44歳)が離れていってしまうような気がして連日誘うと、妻の答えは同じなのですが、疲れていると言いながらも遅く帰るのは変わりません。
『旅行の清算もまだなので、明日は仁美達と食事をして来るので遅くなります。』
会って食事をしてくるのは構わないのですが、今までなら全て旅行の帰りに清算していて、帰って来てから清算するなど聞いた事がありません。
「本当に仁美さん達と会うのか?」
妻に限って浮気は有り得ないと打ち消していた私(衛藤直人:えとう・なおと:44歳)も、流石に疑う様な言い方をしてしまいました。
『本当よ。他に誰と?』
私は妻に明るく笑い飛ばして欲しかったのですが、妻は小さな声でそう答えた後、辛そうな顔をして俯いてしまいます。
「今夜はどうだ?」
そのような妻を見ていると更に心配になり、疑念を振り払いたくて誘ってみると、意外に
も妻は首を縦に振ったのでした。が、今度は私がその気になれません。それと言うのも、気の弱い私は嫌な方へ、嫌な方へと考えが向かってしまっていたのです。
妻はあれからも大田(和宏:おおた・かずひろ:33歳)と会っていて、既に体の関係もあるのかも知れません。初めて私以外の男を知った妻は、彼に溺れてしまっているのかも知れません。
《最初は私以外の男に興味があっただけの妻も、何度も抱かれている内に心まで奪われてしまったので、私に疑いを持たれる危険を冒してまで、連日のように会いたいのかも・・・》そう考えると、《私が疑っていると感じて誤魔化す為にOKしただけで、本当は私とセックスなどしたくないのかも・・・。》完全に妄想の世界に入ってしまっていた私は、彼が白くて小柄な妻を組み敷いている姿までもが浮かび、自分の勝手な妄想で勃起する事は無く、吐き気まで催してしまう有様でした。
結局妻とセックスが出来ず、口では心配してくれているような事を言ってはいても、すぐに眠ってしまった妻が腹立たしくて眠れません。やはり妻の愛を確認したいのと、自分の妄想が間違っているのを確認する為に、夜中に妻を起こしてまた事に及んだのですが結果は同じで、更にイライラは募ります。
しかし朝になると、不思議と夜考えていたほどの深刻さは無くなり、やはり妻に限って私を裏切る事など有り得ないと思えたのですが、また夜になると同じような苦しみを味わうのではないかと思い、妻に限って有りもしない妄想に脅えて、このまま夫婦が壊れていく恐れがあるのなら、無駄になるのは分かっていても、確かめて自分に納得させた方が良いと思いました。 第4回に続く
2018/01/02
中Y〖やり直すか?〗第4回
中Y〖やり直すか?〗第4回
第3回
確かめると言ってもプロに頼むような大げさな事では無く、妻(衛藤優奈:えとう・ゆうな:44歳)が仁美さん達と会うのを一目確認出来れば、私(衛藤直人:えとう・なおと:44歳)は元の私に戻れるのです。その日の午後に、入社以来始めて仮病を使って会社を抜け出した私は役所の前で張り込んでいて、沢山の人が出てくる中に妻の姿を見つけ、駅に先回りをしようとした時、有ろう事か妻は駅とは反対の方向に歩き出しました。
当然電車に乗って繁華街で会うと思っていたのですが、妻が歩いていく方向には私の知る限り寂れていくだけで、気の利いた店もありません。何より仁美さんや恭子さんが、車で来ない限り不便で不思議に感じたのですが、それでも妻を信じたくて、この方向に私の知らないお洒落な店でも出来て、そこで待ち合わせているのだと自分に言い聞かせながらついて行くと、妻は五百メートル以上歩いた所にあった、コンビニの駐車場に止まっていた車に乗り込んでしまいます。
私は仁美さんか恭子さんの車だと思いたかったのですが、それならこれ程離れた所のコンビニで待ち合わすのは不自然で、何より妻が乗り込む寸前、辺りを見渡す仕草を見せたのが気になり、車のエンジンがかかった瞬間、気が付くと両手を広げて車の前に立ちはだかっていました。やはり運転席にいたのは大田(和宏:おおた・かずひろ:33歳)で、助手席の妻は顔面蒼白になって固まってしまいましたが、彼は躊躇する事無く降りて来ます。
〔奥さんには、いつもお世話になっています。〕
私には、いつも妻の身体の世話になっているとも聞こえ、思わず胸倉を掴んでしまいました。私は昔から手が早く、昔を知っている友人達は、まさか私が気の弱い男だとは想像もしていないでしょうが、本当は緊迫した場面にいつまでも対峙しているのが怖く、早く決着を着けたくて先に手が出てしまうのです。その癖は今でも抜けておらず、私は右手を後ろに引いて殴ろうとしましたが、その瞬間ドアを開けて身を乗り出した妻が叫びました。
『あなた。やめて~!』
私が妻の声で我に返って殴る寸前だった手を下ろすと、彼はほっとした表情を見せますが、何も言葉が出てきません。しかし私も情けない事に、何か話せば涙が出てしまいそうで話せないのでした。仕方なく何も言えずにタクシーを拾ってその場を立ち去りましたが、タクシーの中での私は、殴れなかった自分、何も言えなかった自分、何より泣きそうだった自分が情けなく口惜しくて、身のやり場がありません。
家に戻るとまだ夢の中にいるようで、先ほどのことが現実に起こっている事とは思えませんでした。思えないと言うよりも、現実として認めたく無かったのかも知れません。私は妻を疑いながらも、本当に男と会うなどとは思っていなかったのです。それで尾行をしている時も、探偵にでも成った気分で少し楽しくさえ感じていました。私はただ妻が友人達と会っているのを確認して、妻を信用し切っていた元の私に戻りたかっただけなのです。いつしか涙が溢(あふ)れてきて、また嫌な妄想に苦しめられていました。 第5回へ
2018/01/26
第3回
確かめると言ってもプロに頼むような大げさな事では無く、妻(衛藤優奈:えとう・ゆうな:44歳)が仁美さん達と会うのを一目確認出来れば、私(衛藤直人:えとう・なおと:44歳)は元の私に戻れるのです。その日の午後に、入社以来始めて仮病を使って会社を抜け出した私は役所の前で張り込んでいて、沢山の人が出てくる中に妻の姿を見つけ、駅に先回りをしようとした時、有ろう事か妻は駅とは反対の方向に歩き出しました。
当然電車に乗って繁華街で会うと思っていたのですが、妻が歩いていく方向には私の知る限り寂れていくだけで、気の利いた店もありません。何より仁美さんや恭子さんが、車で来ない限り不便で不思議に感じたのですが、それでも妻を信じたくて、この方向に私の知らないお洒落な店でも出来て、そこで待ち合わせているのだと自分に言い聞かせながらついて行くと、妻は五百メートル以上歩いた所にあった、コンビニの駐車場に止まっていた車に乗り込んでしまいます。
私は仁美さんか恭子さんの車だと思いたかったのですが、それならこれ程離れた所のコンビニで待ち合わすのは不自然で、何より妻が乗り込む寸前、辺りを見渡す仕草を見せたのが気になり、車のエンジンがかかった瞬間、気が付くと両手を広げて車の前に立ちはだかっていました。やはり運転席にいたのは大田(和宏:おおた・かずひろ:33歳)で、助手席の妻は顔面蒼白になって固まってしまいましたが、彼は躊躇する事無く降りて来ます。
〔奥さんには、いつもお世話になっています。〕
私には、いつも妻の身体の世話になっているとも聞こえ、思わず胸倉を掴んでしまいました。私は昔から手が早く、昔を知っている友人達は、まさか私が気の弱い男だとは想像もしていないでしょうが、本当は緊迫した場面にいつまでも対峙しているのが怖く、早く決着を着けたくて先に手が出てしまうのです。その癖は今でも抜けておらず、私は右手を後ろに引いて殴ろうとしましたが、その瞬間ドアを開けて身を乗り出した妻が叫びました。
『あなた。やめて~!』
私が妻の声で我に返って殴る寸前だった手を下ろすと、彼はほっとした表情を見せますが、何も言葉が出てきません。しかし私も情けない事に、何か話せば涙が出てしまいそうで話せないのでした。仕方なく何も言えずにタクシーを拾ってその場を立ち去りましたが、タクシーの中での私は、殴れなかった自分、何も言えなかった自分、何より泣きそうだった自分が情けなく口惜しくて、身のやり場がありません。
家に戻るとまだ夢の中にいるようで、先ほどのことが現実に起こっている事とは思えませんでした。思えないと言うよりも、現実として認めたく無かったのかも知れません。私は妻を疑いながらも、本当に男と会うなどとは思っていなかったのです。それで尾行をしている時も、探偵にでも成った気分で少し楽しくさえ感じていました。私はただ妻が友人達と会っているのを確認して、妻を信用し切っていた元の私に戻りたかっただけなのです。いつしか涙が溢(あふ)れてきて、また嫌な妄想に苦しめられていました。 第5回へ
2018/01/26
中Y〖やり直すか?〗第5回
中Y〖やり直すか?〗第5回
第4回
私(衛藤直人:えとう・なおと:44歳)に彼(大田和宏:おおた・かずひろ:33歳)との秘密を知られた妻(衛藤優奈:えとう・ゆうな:44歳)は、もう帰って来ないかも知れません。それは私に対する罪悪感から、顔を合わす事が出来ないという思いからでは無くて、家に戻れば愛する彼との仲を引き裂かれるかも知れないという思いからだとすれば、今頃は彼に抱き付いて激しく唇を貪っているでしょう。しかしこのまま家庭や職場を放棄して逃げる訳にもいかず、そうなると妻に男気を見せたい彼が一人で来るかも知れません。その時です玄関の開く音が聞こえたので彼が来たと思った私は、弱い自分を見られたくなくて、慌てて顔を洗いに行って戻ってくると、妄想は外れていて妻が一人で立っていました。
妻は俯いて立っていて、よく見ると足が震えています。
『あなた、あれは・・・。』
「あれは、何だ? いつ残業があって、いつ同僚達と食事に行って、いつ仁美さん達と会っていたのか全て書き出してみろ! 仁美さん達のところには今から行って確かめる。職場にも明日行ってくる。」
妻は最初言い訳をしようと思ったようですが、隠し通せるものではないと観念したのか、膝から崩れ落ちて床に泣き伏しました。私は目の前で泣き崩れている。そんな優奈の姿が信じられませんでした。
隠れて大田と会っていた事もですが、何よりも妻が嘘を吐いていた事が信じられないのです。妻は嘘の嫌いな女でした。私達夫婦の約束事はただ一つ、お互いに嘘を吐かない事で、それは入籍する時に妻が言い出した事です。その言葉通り私は何でも話してきたつもりですし、妻も隠し事はしませんでした。妻が変わってしまったのは大田の影響だとすれば、妻も自分の信念を曲げるほど、あの男に溺れていた事になります。
仕切りに許しを請う妻の優奈を見ていると、生まれて初めて人を殺したいと思いましたが、その殺したい相手は妻ではなくてあの男でした。確かに私を裏切ったのは相手の男ではなくて妻なのですが、今までこれだけ愛してきた妻を、今でもこれだけ愛している妻をすぐに嫌いにはなれず、男に強引に誘われて、私しか男を知らない妻は騙されているのだと何処かで妻を庇ってしまい、怒りを相手の男に向けようとしてしまいます。
「今すぐに奴を呼べ! 俺は絶対に許さないぞ!」
妻は激しく泣き出して、千切れるほど首を横に振りました。
『あなたに嘘を吐いて会った事は、申し訳なかったと思っています。でも彼とはその様な関係ではないの・・。』
「それならどんな関係だ。今日だけでは無いだろ? ずっと嘘を吐いて、あの男と会っていたな?」
妻はゆっくり大きく頷きます。
「抱かれていたのか?」
これには激しく首を横に振りました。毎日のように会っていながら、男女の関係が無いなどとは信じられるはずも無かったのですが、ここ数時間の出来事に心の動揺を隠せず、これ以上自分を見失わない為にも、深くは追求出来ずにいました。 第6回に続く
2018/01/27
第4回
私(衛藤直人:えとう・なおと:44歳)に彼(大田和宏:おおた・かずひろ:33歳)との秘密を知られた妻(衛藤優奈:えとう・ゆうな:44歳)は、もう帰って来ないかも知れません。それは私に対する罪悪感から、顔を合わす事が出来ないという思いからでは無くて、家に戻れば愛する彼との仲を引き裂かれるかも知れないという思いからだとすれば、今頃は彼に抱き付いて激しく唇を貪っているでしょう。しかしこのまま家庭や職場を放棄して逃げる訳にもいかず、そうなると妻に男気を見せたい彼が一人で来るかも知れません。その時です玄関の開く音が聞こえたので彼が来たと思った私は、弱い自分を見られたくなくて、慌てて顔を洗いに行って戻ってくると、妄想は外れていて妻が一人で立っていました。
妻は俯いて立っていて、よく見ると足が震えています。
『あなた、あれは・・・。』
「あれは、何だ? いつ残業があって、いつ同僚達と食事に行って、いつ仁美さん達と会っていたのか全て書き出してみろ! 仁美さん達のところには今から行って確かめる。職場にも明日行ってくる。」
妻は最初言い訳をしようと思ったようですが、隠し通せるものではないと観念したのか、膝から崩れ落ちて床に泣き伏しました。私は目の前で泣き崩れている。そんな優奈の姿が信じられませんでした。
隠れて大田と会っていた事もですが、何よりも妻が嘘を吐いていた事が信じられないのです。妻は嘘の嫌いな女でした。私達夫婦の約束事はただ一つ、お互いに嘘を吐かない事で、それは入籍する時に妻が言い出した事です。その言葉通り私は何でも話してきたつもりですし、妻も隠し事はしませんでした。妻が変わってしまったのは大田の影響だとすれば、妻も自分の信念を曲げるほど、あの男に溺れていた事になります。
仕切りに許しを請う妻の優奈を見ていると、生まれて初めて人を殺したいと思いましたが、その殺したい相手は妻ではなくてあの男でした。確かに私を裏切ったのは相手の男ではなくて妻なのですが、今までこれだけ愛してきた妻を、今でもこれだけ愛している妻をすぐに嫌いにはなれず、男に強引に誘われて、私しか男を知らない妻は騙されているのだと何処かで妻を庇ってしまい、怒りを相手の男に向けようとしてしまいます。
「今すぐに奴を呼べ! 俺は絶対に許さないぞ!」
妻は激しく泣き出して、千切れるほど首を横に振りました。
『あなたに嘘を吐いて会った事は、申し訳なかったと思っています。でも彼とはその様な関係ではないの・・。』
「それならどんな関係だ。今日だけでは無いだろ? ずっと嘘を吐いて、あの男と会っていたな?」
妻はゆっくり大きく頷きます。
「抱かれていたのか?」
これには激しく首を横に振りました。毎日のように会っていながら、男女の関係が無いなどとは信じられるはずも無かったのですが、ここ数時間の出来事に心の動揺を隠せず、これ以上自分を見失わない為にも、深くは追求出来ずにいました。 第6回に続く
2018/01/27
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