名F【どうなるの?】その1
名F【どうなるの?】その1
(原作:よき妻 原作者:BJ 投稿日:2006/07/16)
結婚をして3年経った頃のことです。当時の私(中津川潤一:なかつがわ・じゅんいち:34歳)は妻の気持ちをはかりかねていました。本当に愛されているのかどうか、いつも疑問に思っていました。妻(中津川美穂:なかつがわ・みほ)は私よりも5歳年下の29歳。高身長(166㎝)でスリムな体型。冷たい印象を与える顔立ちで所謂(いわゆる)クールビューティー。夫婦の間にまだ子供はいません。
美穂とは見合い結婚でした。私は見合いの席で出会ったときから、美穂の端整な容姿や、年に似合わぬ落ち着いた物腰に惚れこんで、懸命に求婚しました。美穂はそれを受け入れてくれました。いつものように感情の分かりにくい顔でしたが・・。
結婚してすぐに分かったのですが、美穂は妻としては非の打ち所のない女でした。元来、働くのが好きな性質であるらしく、専業主婦となってからも、家事に手を抜くことなどまったくありません。友達の主婦連中と亭主そっちのけで遊び回ることも皆無です。
しかし、私は不満でした。というより、不安でした。美穂は表情に乏しい女です。いったい何を考えているやら、どんな気持ちでいるのやら、よく分かりません。おまけに無口です。私が気を遣ってあれこれと話しかけても、たいていは冷静で抑揚のない相槌を打つだけで、私はのれんに腕押しのような気分になります。
私は騒々しい女が嫌いだったので、美穂のそんな静かな佇まいが最初は好もしかったのですが、結婚してしばらく経つと、あまりに妻の気持ちが掴めないことに苛立ちを感じるようになっていきました。見合い結婚ということもあり、美穂が自分をどう思っているのか、本当に夫として愛しているのか、気になっていました。
夫婦間の愛情確認といえば、セックスもその大きな要素であると思います。しかしそれも上手くいきませんでした。私からベッドに誘えば美穂は否ということはありませんでしたし、彼女の裸はスリムな外見とは違い胸もお尻も魅力的で、若々しい肌の手触りは最高でした。私も最初は大いに発奮して、ベッドの上ではなんとか主導権を握ろうと、あれこれと趣向をこらしたのですが、美穂はそんなときでさえ至極冷静で、声をあげることもなく、私はお釈迦様の掌にのせられた孫悟空のようなむなしさを感じ、やがて冷めてしまいました。
結婚当初の私はこのうえなく幸福な人間でした。それがいつの間にか始終いらいらとした人間に変わっていったのです。それほどまで心をかき乱されるほど、私は美穂にのぼせていたと言えるのかもしれません。しかし、不幸なことに私も美穂ほどではないにせよ、自分の気持ちを率直に伝えることが不得手な人間でした。しかも、そのことに当時の私は気づいていませんでした。 その2に続く
2014/12/06
(原作:よき妻 原作者:BJ 投稿日:2006/07/16)
結婚をして3年経った頃のことです。当時の私(中津川潤一:なかつがわ・じゅんいち:34歳)は妻の気持ちをはかりかねていました。本当に愛されているのかどうか、いつも疑問に思っていました。妻(中津川美穂:なかつがわ・みほ)は私よりも5歳年下の29歳。高身長(166㎝)でスリムな体型。冷たい印象を与える顔立ちで所謂(いわゆる)クールビューティー。夫婦の間にまだ子供はいません。
美穂とは見合い結婚でした。私は見合いの席で出会ったときから、美穂の端整な容姿や、年に似合わぬ落ち着いた物腰に惚れこんで、懸命に求婚しました。美穂はそれを受け入れてくれました。いつものように感情の分かりにくい顔でしたが・・。
結婚してすぐに分かったのですが、美穂は妻としては非の打ち所のない女でした。元来、働くのが好きな性質であるらしく、専業主婦となってからも、家事に手を抜くことなどまったくありません。友達の主婦連中と亭主そっちのけで遊び回ることも皆無です。
しかし、私は不満でした。というより、不安でした。美穂は表情に乏しい女です。いったい何を考えているやら、どんな気持ちでいるのやら、よく分かりません。おまけに無口です。私が気を遣ってあれこれと話しかけても、たいていは冷静で抑揚のない相槌を打つだけで、私はのれんに腕押しのような気分になります。
私は騒々しい女が嫌いだったので、美穂のそんな静かな佇まいが最初は好もしかったのですが、結婚してしばらく経つと、あまりに妻の気持ちが掴めないことに苛立ちを感じるようになっていきました。見合い結婚ということもあり、美穂が自分をどう思っているのか、本当に夫として愛しているのか、気になっていました。
夫婦間の愛情確認といえば、セックスもその大きな要素であると思います。しかしそれも上手くいきませんでした。私からベッドに誘えば美穂は否ということはありませんでしたし、彼女の裸はスリムな外見とは違い胸もお尻も魅力的で、若々しい肌の手触りは最高でした。私も最初は大いに発奮して、ベッドの上ではなんとか主導権を握ろうと、あれこれと趣向をこらしたのですが、美穂はそんなときでさえ至極冷静で、声をあげることもなく、私はお釈迦様の掌にのせられた孫悟空のようなむなしさを感じ、やがて冷めてしまいました。
結婚当初の私はこのうえなく幸福な人間でした。それがいつの間にか始終いらいらとした人間に変わっていったのです。それほどまで心をかき乱されるほど、私は美穂にのぼせていたと言えるのかもしれません。しかし、不幸なことに私も美穂ほどではないにせよ、自分の気持ちを率直に伝えることが不得手な人間でした。しかも、そのことに当時の私は気づいていませんでした。 その2に続く
2014/12/06
【どうなるの?】その2
名F【どうなるの?】その2
私たちの住むマンションの一室はいつも清潔に管理されていて、塵一つ落ちていません。その完璧さ、静謐な趣は、妻の人柄そのもののようでしたが、私(潤一)はいつしかその家に居るときに、安らぎよりも重苦しさを感じるようになっていきました。
もともと私は品行方正には程遠い人間です。美穂と結婚した当初は、だらしない所業とは縁を切り、よき夫になるべく努力しようと心に誓ったものですが、当時の私はそんなことさえ忘れはて、夜の街で酒や女に溺れる生活に逆戻りしはじめていました。
そんな私を見つめる妻の瞳には、さすがに沈んだ色が濃くなっていたように思います。しかしどんなときも彼女は何も言わず、自分を崩すこともありませんでした。そのことが私をますます苛立たせます。暗い孤独が私を満たし、時には八つ当たりとしか言えない怒りを妻の美穂にぶつけるようになりました。私は日々、荒んでいきました。
ある夜のことでした。仕事を終えた私は、大学時代の旧友で宮森精二という男と久々に待ち合わせて、いっしょに夜の街に繰り出します。この宮森という男は昔からどこかひとを食ったようなところがあり、一風変わった凄みを感じさせる人間でした。
宮森はアダルトビデオの製作などを主たる業務としている、マクレガー企画というプロダクションに勤めていました。そんな仕事をしている男だけに、いかがわしい遊び場などには詳しく、若い頃はよく彼に付き合って悪い遊びを教わったものです。
〔久々に会ったってのに、いまいち表情が暗いな。何かトラブルでも抱えているのか?〕宮森の言葉に、私は顔をあげて彼を見返しました。酒場の暗い照明の中で、彼の鋭い目がじっとこちらを見ていました。「分かるか。相変わらず目ざといな。」、〔何があったんだ。〕私は宮森に妻との不和を話しました。
〔そうか、あの奥さんがね。お前には出来すぎた人だと思ったがなあ。〕
宮森も私の結婚式に出席してくれたので、妻のことは見知っています。
〔しかし、お前も昔から女にはとことん弱い奴だな。〕
「お前みたいに割り切れないからだろうな。」
〔ふん。女なんてベッドに転がせば、なんとでもなるもんだ。〕
下卑た笑いを浮かべつつ、宮森はグラスをあけました。
「たいした自信だな。」
〔お前こそ、らしくもなくメソメソしやがって。どこかおかしいんじゃないのか。それともよほど奥さんにいかれちまっているのか。たしかに美人だったけどな。美人なだけじゃなく、色気もあった。〕
「色気? それは眼鏡違いだぜ。あいつほど色気のない女をおれは見たことがないね。」
妻のことを「あいつ」と呼んだのはその日が初めてでした。
〔分かってないな。ああいう物堅い感じの女が一番そそるんだよ。とくに俺のような人間にはな。〕
「はっ、そんなものかな?」
〔そうさ。奥さんと結婚したのが、お前で残念だね。俺だったら女としての性能を、最大限まで引き出してやれるんだがな。〕
女としての魅力とは言わず、“性能”と言ったところが、いかにも宮森らしい言い方です。「ほざけ!」と、私は吐き捨てるように言いましたが、心の中では動揺していました。
2014/12/07
私たちの住むマンションの一室はいつも清潔に管理されていて、塵一つ落ちていません。その完璧さ、静謐な趣は、妻の人柄そのもののようでしたが、私(潤一)はいつしかその家に居るときに、安らぎよりも重苦しさを感じるようになっていきました。
もともと私は品行方正には程遠い人間です。美穂と結婚した当初は、だらしない所業とは縁を切り、よき夫になるべく努力しようと心に誓ったものですが、当時の私はそんなことさえ忘れはて、夜の街で酒や女に溺れる生活に逆戻りしはじめていました。
そんな私を見つめる妻の瞳には、さすがに沈んだ色が濃くなっていたように思います。しかしどんなときも彼女は何も言わず、自分を崩すこともありませんでした。そのことが私をますます苛立たせます。暗い孤独が私を満たし、時には八つ当たりとしか言えない怒りを妻の美穂にぶつけるようになりました。私は日々、荒んでいきました。
ある夜のことでした。仕事を終えた私は、大学時代の旧友で宮森精二という男と久々に待ち合わせて、いっしょに夜の街に繰り出します。この宮森という男は昔からどこかひとを食ったようなところがあり、一風変わった凄みを感じさせる人間でした。
宮森はアダルトビデオの製作などを主たる業務としている、マクレガー企画というプロダクションに勤めていました。そんな仕事をしている男だけに、いかがわしい遊び場などには詳しく、若い頃はよく彼に付き合って悪い遊びを教わったものです。
〔久々に会ったってのに、いまいち表情が暗いな。何かトラブルでも抱えているのか?〕宮森の言葉に、私は顔をあげて彼を見返しました。酒場の暗い照明の中で、彼の鋭い目がじっとこちらを見ていました。「分かるか。相変わらず目ざといな。」、〔何があったんだ。〕私は宮森に妻との不和を話しました。
〔そうか、あの奥さんがね。お前には出来すぎた人だと思ったがなあ。〕
宮森も私の結婚式に出席してくれたので、妻のことは見知っています。
〔しかし、お前も昔から女にはとことん弱い奴だな。〕
「お前みたいに割り切れないからだろうな。」
〔ふん。女なんてベッドに転がせば、なんとでもなるもんだ。〕
下卑た笑いを浮かべつつ、宮森はグラスをあけました。
「たいした自信だな。」
〔お前こそ、らしくもなくメソメソしやがって。どこかおかしいんじゃないのか。それともよほど奥さんにいかれちまっているのか。たしかに美人だったけどな。美人なだけじゃなく、色気もあった。〕
「色気? それは眼鏡違いだぜ。あいつほど色気のない女をおれは見たことがないね。」
妻のことを「あいつ」と呼んだのはその日が初めてでした。
〔分かってないな。ああいう物堅い感じの女が一番そそるんだよ。とくに俺のような人間にはな。〕
「はっ、そんなものかな?」
〔そうさ。奥さんと結婚したのが、お前で残念だね。俺だったら女としての性能を、最大限まで引き出してやれるんだがな。〕
女としての魅力とは言わず、“性能”と言ったところが、いかにも宮森らしい言い方です。「ほざけ!」と、私は吐き捨てるように言いましたが、心の中では動揺していました。
2014/12/07
【どうなるの?】その3
名F【どうなるの?】その3
夜遅くになって3軒目の酒場を出、さてこれからどうしようかというときでした。不意に宮森が言います。
〔お前の家、ここから近かったよな。次はお前の家で飲もうぜ。〕
「バカを言うな。いま何時だと思っているんだ?」
しかし、妻の美穂はまだ起きているだろう。私はそう確信していました。今までどんなに遅く帰っても、美穂は先に寝ているなどということはありませんでした。
〔いいじゃないか。たかが悪友ひとり、夜遅くに連れ込んだところで、そんなことに文句を言う女房でもないんだろ?〕
宮森は不敵な笑みを浮かべて言いました。美穂もたいがい何を考えているのか分からない人間ですが、この男も相当なものです。私はついに根負けして、宮森を自宅に連れて行くことにしました。
マンションに帰り着いたころには、もう深夜3時を回っています。鍵を回してドアを開けると、予想通り美穂はまだ起きていて、玄関へやってきましたが、宮森の姿を目にして、はっと立ち止まりました。
「友達の宮森だ。」
〔どうも奥さん、お久しぶりです。結婚式以来ですな。〕
「きょうは久々に会ったから、これから家で飲み直す。酒とツマミの用意を頼む。」
こんな夜更けに非常識な私の言葉に、しかし美穂はいやな顔をするでもなく、『分かりました。』と一言だけ言うと、宮森に会釈をしてから家の奥へ消えていきました。〔たしかに相当なもんだな。〕と宮森がそっと私に耳打ちしてきます。私は喉の奥で苦い気持ちを飲み下しました。
〔奥さんも我々に加わってくださいよ。男だけじゃ殺風景だ。〕とツマミを運んでからまた台所に消えていきかけた美穂に、宮森が声をかけました。『あの~わたし、お酒は・・。』って言いながら、美穂はそっと私を見つめてきます。「・・・お客さんがそう言っているんだ。座れよ。」私が低くそう言うと、美穂は伏目がちにそっと私の横に座りました。宮森はニヤニヤと笑いながら、そんな妻に粘っこい視線を向けていました。
私と美穂がぎこちない様子でいるのに比べて、宮森は普段とまったく変わらず(話の内容はずっと紳士的でしたが)、気軽な口調であれこれと妻に話しかけます。美穂は相変わらず伏目がちで、宮森の言葉に口数少なく答えていました。やけ気味な私はぐいぐい酒を飲みんでいましたが、やがて気分がわるくなり、付き添おうとする美穂をふりはらって浴室へ行きました。シャワーを浴びて戻ってくると、わずかに開いたドアから宮森の声が聞こえました。
〔ご主人とは上手くいっていないんですか?〕私は廊下に立ち止まり、美穂の声に耳を澄ませました。『・・・分かりません。』聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で、美穂が答えました。
〔妙な答えですな。私は昔から彼を知っているが、どこか抜けているものの、わるくない男ですよ。いったい何が不満なのかな?〕
『不満なんて・・・。』
〔あなたにはなくても、彼にはあるようですよ。あなたが冷たいと言っています。日常生活でも、ベッドの中でもね。〕
宮森の露骨な言葉に、私はかっとと頬を染めます。見えない妻の表情が気になりました。
〔セックスはお嫌いですか?〕
『・・・・・』
〔ご主人では満足できない?〕と宮森は追及する。
『・・・・・』
妻の美穂は答えません。その時、もはや耐え難くなった私は、居間のドアをさっと開けました。驚く妻の顔。一方の宮森は平然とした表情です。
2014/.12/13
夜遅くになって3軒目の酒場を出、さてこれからどうしようかというときでした。不意に宮森が言います。
〔お前の家、ここから近かったよな。次はお前の家で飲もうぜ。〕
「バカを言うな。いま何時だと思っているんだ?」
しかし、妻の美穂はまだ起きているだろう。私はそう確信していました。今までどんなに遅く帰っても、美穂は先に寝ているなどということはありませんでした。
〔いいじゃないか。たかが悪友ひとり、夜遅くに連れ込んだところで、そんなことに文句を言う女房でもないんだろ?〕
宮森は不敵な笑みを浮かべて言いました。美穂もたいがい何を考えているのか分からない人間ですが、この男も相当なものです。私はついに根負けして、宮森を自宅に連れて行くことにしました。
マンションに帰り着いたころには、もう深夜3時を回っています。鍵を回してドアを開けると、予想通り美穂はまだ起きていて、玄関へやってきましたが、宮森の姿を目にして、はっと立ち止まりました。
「友達の宮森だ。」
〔どうも奥さん、お久しぶりです。結婚式以来ですな。〕
「きょうは久々に会ったから、これから家で飲み直す。酒とツマミの用意を頼む。」
こんな夜更けに非常識な私の言葉に、しかし美穂はいやな顔をするでもなく、『分かりました。』と一言だけ言うと、宮森に会釈をしてから家の奥へ消えていきました。〔たしかに相当なもんだな。〕と宮森がそっと私に耳打ちしてきます。私は喉の奥で苦い気持ちを飲み下しました。
〔奥さんも我々に加わってくださいよ。男だけじゃ殺風景だ。〕とツマミを運んでからまた台所に消えていきかけた美穂に、宮森が声をかけました。『あの~わたし、お酒は・・。』って言いながら、美穂はそっと私を見つめてきます。「・・・お客さんがそう言っているんだ。座れよ。」私が低くそう言うと、美穂は伏目がちにそっと私の横に座りました。宮森はニヤニヤと笑いながら、そんな妻に粘っこい視線を向けていました。
私と美穂がぎこちない様子でいるのに比べて、宮森は普段とまったく変わらず(話の内容はずっと紳士的でしたが)、気軽な口調であれこれと妻に話しかけます。美穂は相変わらず伏目がちで、宮森の言葉に口数少なく答えていました。やけ気味な私はぐいぐい酒を飲みんでいましたが、やがて気分がわるくなり、付き添おうとする美穂をふりはらって浴室へ行きました。シャワーを浴びて戻ってくると、わずかに開いたドアから宮森の声が聞こえました。
〔ご主人とは上手くいっていないんですか?〕私は廊下に立ち止まり、美穂の声に耳を澄ませました。『・・・分かりません。』聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で、美穂が答えました。
〔妙な答えですな。私は昔から彼を知っているが、どこか抜けているものの、わるくない男ですよ。いったい何が不満なのかな?〕
『不満なんて・・・。』
〔あなたにはなくても、彼にはあるようですよ。あなたが冷たいと言っています。日常生活でも、ベッドの中でもね。〕
宮森の露骨な言葉に、私はかっとと頬を染めます。見えない妻の表情が気になりました。
〔セックスはお嫌いですか?〕
『・・・・・』
〔ご主人では満足できない?〕と宮森は追及する。
『・・・・・』
妻の美穂は答えません。その時、もはや耐え難くなった私は、居間のドアをさっと開けました。驚く妻の顔。一方の宮森は平然とした表情です。
2014/.12/13
【どうなるの?】その4
名F【どうなるの?】その4
「宮森!どういうつもりだ?」
〔別に。お前が訊きたくても訊けないことを、俺がかわりに訊いてやっているだけだ。〕
「そんなこと俺は一切頼んでいない!」
〔じゃあ、お前は奥さんの答えを聞きたくないのか?〕
私は、答えかけて、言葉に詰まります。それで妻の美穂を見ました。美穂もまた、私を見返しています。瞳を大きく見開いて、その口は何かを訴えたがっているようにかすかに動いていました。
私は言いました。
「どうなんだ、美穂。お前は俺では満足できないのか?」
自分の声ではないような声です。
「俺では―――駄目なのか?」
『そんなことは・・・ありませんっ。』
妻は、『私はあなたが大好きです。』と答えました。陶器のような肌を赤く染め、いつになく感情のこもった声で。
「それなら何故いつも、あんなに冷ややかなんだ?」
『違うんです。ごめんなさい、違うんです。私は・・・ただ・・・。』
その声には涙が混じっていました。
『ただ・・・恥ずかしくて・・。』
そう言って妻は両手を顔に押し当ててむせび泣きはじめました。その顔は耳まで赤く染まっていました。わたしはこのような妻の姿を初めて見ました。
「もういい。・・・きょうはもう帰ってくれ、宮森。」
〔分かった。〕
あっさりと言って宮森は立ち上がりました。そしてわたしの肩をぽんっと叩くと、にやっと笑い、そのまま出て行きました。まったくもって不可思議な男です。
私は、美穂のほうに向き直りました。初めて感情を露わにした妻。その肩はいつもよりいっそう小さく、その身体はいっそう細く見えます。私は妻へ駆け寄って抱きしめたい衝動に駆られました。しかしそうするかわりに私は言いました。
「許してくれ。美穂はいい女だ。一方的に尽くしてもらって、俺からは何も出来なかった。そればかりか、ひどいことばかりしてしまった。俺は最低な男だ。こんな男とはもう別れたほうがいい。」
泣いている美穂の肩がぴくりと動きます。
「明日、離婚届をもらってくる。本当にすまなかった。」
私はそれだけ言うと、一人、寝室へ行きました。
2014/12/22
「宮森!どういうつもりだ?」
〔別に。お前が訊きたくても訊けないことを、俺がかわりに訊いてやっているだけだ。〕
「そんなこと俺は一切頼んでいない!」
〔じゃあ、お前は奥さんの答えを聞きたくないのか?〕
私は、答えかけて、言葉に詰まります。それで妻の美穂を見ました。美穂もまた、私を見返しています。瞳を大きく見開いて、その口は何かを訴えたがっているようにかすかに動いていました。
私は言いました。
「どうなんだ、美穂。お前は俺では満足できないのか?」
自分の声ではないような声です。
「俺では―――駄目なのか?」
『そんなことは・・・ありませんっ。』
妻は、『私はあなたが大好きです。』と答えました。陶器のような肌を赤く染め、いつになく感情のこもった声で。
「それなら何故いつも、あんなに冷ややかなんだ?」
『違うんです。ごめんなさい、違うんです。私は・・・ただ・・・。』
その声には涙が混じっていました。
『ただ・・・恥ずかしくて・・。』
そう言って妻は両手を顔に押し当ててむせび泣きはじめました。その顔は耳まで赤く染まっていました。わたしはこのような妻の姿を初めて見ました。
「もういい。・・・きょうはもう帰ってくれ、宮森。」
〔分かった。〕
あっさりと言って宮森は立ち上がりました。そしてわたしの肩をぽんっと叩くと、にやっと笑い、そのまま出て行きました。まったくもって不可思議な男です。
私は、美穂のほうに向き直りました。初めて感情を露わにした妻。その肩はいつもよりいっそう小さく、その身体はいっそう細く見えます。私は妻へ駆け寄って抱きしめたい衝動に駆られました。しかしそうするかわりに私は言いました。
「許してくれ。美穂はいい女だ。一方的に尽くしてもらって、俺からは何も出来なかった。そればかりか、ひどいことばかりしてしまった。俺は最低な男だ。こんな男とはもう別れたほうがいい。」
泣いている美穂の肩がぴくりと動きます。
「明日、離婚届をもらってくる。本当にすまなかった。」
私はそれだけ言うと、一人、寝室へ行きました。
2014/12/22
名F【どうなるの?】その5
名F【どうなるの?】その5
ベッドに何かが入ってきた感触で目が覚めたのは、何時ごろのことだったか分かりません。ただカーテンの隙間から差し込む光は明るく、その光に照らされて、私はベッドに入ってきた妻の美穂の姿がはっきり見えました。妻は裸でした。その瞳は涙で赤く腫れあがっていました。何か言おうとした私の口を、美穂の口が塞ぎました。「ん・・・・。」
キスをしたままの妻の手が、私の服のボタンを解いていきます。私の手は自然に小ぶりで形の良い乳房へ伸びていきます。弾力のある滑らかな感触を楽しみ、その先端にある突起を親指の腹でなぞると、『あぅ!』妻が小さく声をあげました。潤んだ瞳が私を見つめています。
私は衣服を脱ぎさって裸になりました。妻の細い身体を抱き寄せ、そのすべやかな肌を私の肌に重ねます。美穂の腕が私の首を抱きました。熱い息遣いとともに、私の口は再び妻の口に塞がれます。私が舌をさしいれると、妻も舌の愛撫で応えてきました。私はゆっくりとベッドに仰向けに倒れこみ、妻の身体がその上へ覆いかぶさります。やがて私の股間のものはしなやかな指につかまれ、妻の中へ導き入れられました。
『はっ・・・あっ・・・っ。』情熱的に動く妻の腰。私は右手で美穂の引き締まった尻を掴み、左手で上下に揺れる乳房を揉みたてます。その柔らかさ、その冷たい肌の感触、そして何より今まで見たことのない、我を忘れた妻の表情に興奮をかきたてられ、やがて私は妻の中に濃くて熱い白濁をどろりと放って果てました。
妻の中に出した後、私はそのまま軽く眠ってしまったようです。ふと目が覚めたときには、ベッドの中に美穂の姿はありませんでした。ぼうっとした頭で、私はベッドから起きだします。妻の美穂は浴室でシャワーを使っていました。戸を開けて中へ入っていくと、美穂はハッと私を見て、瞳を逸らします。私はそんな妻を後ろから抱きすくめました。最初は強張っていた妻の身体から、次第に力が抜けていくのが分かります。
「さっきは驚いた。」
『・・・・・。』
「聞いてもいいのかどうか分からないが、あれはどういうつもりだったんだ?」
『・・・このままだとあなたが出て行ってしまう。そう思ったから・・。』
美穂は正面を向いたまま、細い声で呟くように言いました。
『私は不器用な女です。うまく喋れないし、うまく笑えないし・・・そんな私にあなたが不満を持っていることも知っていました。でもどうしても・・・恥ずかしくて。』
私は常々、妻の気持ちが掴めないこと、美穂が心を開いてくれないことに悩んでいましたが、妻のほうでも自分のそうした性質に悩んでいたのでした。
『あなたと結婚して、私はうれしかったんです。これからは私も変わっていけるとも思いました。でも、あなたがいろいろと気を遣ってくれているのに、私はうまくやれなくて・・・あなたを苦しませてしまって・・・。』
「もういい、分かったから。」
震える美穂の肩をもう一度ぎゅっと抱きしめました。心臓の高鳴りが腕に伝わってきます。
妻は振り向いて私にキスをしてきました。私もそれに応えます。しばらく抱き合ってキスを交わしていました。むくむくと起き上がった私のペニスが腹に当たるのを感じて、妻はその方を見つめました。それから恐る恐ると言った感じで、勃起したものを細やかな手で
掴みます。
妻の美穂はゆっくりとしゃがみこんで、いきりたった怒張を口に含もうとしました。私はそれを手で制して、
「フェラチオの経験はあるのか?」
妻は赤くなって、かすかに首を横に振りました。
「じゃあ、まだ今日はいい。」
『・・・いいんです、やらせてください。』
そう言うと、美穂は小さな口で私の男根を頬張ります。頭を前後に動かしながら、つたない舌使いで懸命に奉仕している妻に、私は今まで感じたことのない愛情を感じました。
2015/011/20
ベッドに何かが入ってきた感触で目が覚めたのは、何時ごろのことだったか分かりません。ただカーテンの隙間から差し込む光は明るく、その光に照らされて、私はベッドに入ってきた妻の美穂の姿がはっきり見えました。妻は裸でした。その瞳は涙で赤く腫れあがっていました。何か言おうとした私の口を、美穂の口が塞ぎました。「ん・・・・。」
キスをしたままの妻の手が、私の服のボタンを解いていきます。私の手は自然に小ぶりで形の良い乳房へ伸びていきます。弾力のある滑らかな感触を楽しみ、その先端にある突起を親指の腹でなぞると、『あぅ!』妻が小さく声をあげました。潤んだ瞳が私を見つめています。
私は衣服を脱ぎさって裸になりました。妻の細い身体を抱き寄せ、そのすべやかな肌を私の肌に重ねます。美穂の腕が私の首を抱きました。熱い息遣いとともに、私の口は再び妻の口に塞がれます。私が舌をさしいれると、妻も舌の愛撫で応えてきました。私はゆっくりとベッドに仰向けに倒れこみ、妻の身体がその上へ覆いかぶさります。やがて私の股間のものはしなやかな指につかまれ、妻の中へ導き入れられました。
『はっ・・・あっ・・・っ。』情熱的に動く妻の腰。私は右手で美穂の引き締まった尻を掴み、左手で上下に揺れる乳房を揉みたてます。その柔らかさ、その冷たい肌の感触、そして何より今まで見たことのない、我を忘れた妻の表情に興奮をかきたてられ、やがて私は妻の中に濃くて熱い白濁をどろりと放って果てました。
妻の中に出した後、私はそのまま軽く眠ってしまったようです。ふと目が覚めたときには、ベッドの中に美穂の姿はありませんでした。ぼうっとした頭で、私はベッドから起きだします。妻の美穂は浴室でシャワーを使っていました。戸を開けて中へ入っていくと、美穂はハッと私を見て、瞳を逸らします。私はそんな妻を後ろから抱きすくめました。最初は強張っていた妻の身体から、次第に力が抜けていくのが分かります。
「さっきは驚いた。」
『・・・・・。』
「聞いてもいいのかどうか分からないが、あれはどういうつもりだったんだ?」
『・・・このままだとあなたが出て行ってしまう。そう思ったから・・。』
美穂は正面を向いたまま、細い声で呟くように言いました。
『私は不器用な女です。うまく喋れないし、うまく笑えないし・・・そんな私にあなたが不満を持っていることも知っていました。でもどうしても・・・恥ずかしくて。』
私は常々、妻の気持ちが掴めないこと、美穂が心を開いてくれないことに悩んでいましたが、妻のほうでも自分のそうした性質に悩んでいたのでした。
『あなたと結婚して、私はうれしかったんです。これからは私も変わっていけるとも思いました。でも、あなたがいろいろと気を遣ってくれているのに、私はうまくやれなくて・・・あなたを苦しませてしまって・・・。』
「もういい、分かったから。」
震える美穂の肩をもう一度ぎゅっと抱きしめました。心臓の高鳴りが腕に伝わってきます。
妻は振り向いて私にキスをしてきました。私もそれに応えます。しばらく抱き合ってキスを交わしていました。むくむくと起き上がった私のペニスが腹に当たるのを感じて、妻はその方を見つめました。それから恐る恐ると言った感じで、勃起したものを細やかな手で
掴みます。
妻の美穂はゆっくりとしゃがみこんで、いきりたった怒張を口に含もうとしました。私はそれを手で制して、
「フェラチオの経験はあるのか?」
妻は赤くなって、かすかに首を横に振りました。
「じゃあ、まだ今日はいい。」
『・・・いいんです、やらせてください。』
そう言うと、美穂は小さな口で私の男根を頬張ります。頭を前後に動かしながら、つたない舌使いで懸命に奉仕している妻に、私は今まで感じたことのない愛情を感じました。
2015/011/20
名F【どうなるの?】その6
名F【どうなるの?】その6
その日は土曜日で会社は休みでした。私たち夫婦は週末をほとんど家から出ず、ただただベッドの中で絡まりあって過ごしました。それは今までのぎこちない時間を解きほぐすかのような、濃密なセックスの時間です。美穂の悩ましい表情、伸びやかな肢体、うねる腰、そして悦びを喰い締める仕草が、私を熱い欲望に駆り立てます。ふたりで繋がったまま、どろどろと溶けあっていく感覚は、他のすべてを忘れさせてくれました。
こうして私たち夫婦は以前よりも互いに近づきあうことが出来ました。一見、隙のない完璧さを持っていて、しかしその一方ではとても不器用で恥ずかしがりの妻を、私は深く愛しました。そんなある日、友人の宮森からの電話がかかってきたのです。
妻の美穂との仲が改善されてからは、会社から寄り道することもなく帰ることが多くなっていたのですが、その日は宮森の誘いにのり、待ち合わせて一緒に行きつけの酒場へ行きました。
〔ふうん、それで今のところは、奥さんと上手くやれているわけか。〕
グラスの氷をちりんと揺らしつつ、宮森は呟くように言いました。
〔よかったじゃないか。〕
「まあ一応、お前のおかげかな。礼を言っとく。ありがとう。」
〔よせよ。〕
宮森は特有の不敵な笑みを浮かべました。
〔別に俺はお前のことを考えて、あんなことを言ったわけじゃない。〕
「じゃあ何故だ?」
〔俺は職業柄、いろいろな女に接する機会が多いのは知っているだろ。最近じゃ見ただけで、その女がどんな種類の人間か、だいたい分かるようになってきた。〕
「・・・それで?」
私は宮森に話の続きを促しました。
〔お前の奥さんに会って感じたんだけどさ、あんなふうに始終張りつめているというか、心に鎧をつけているような女は、結局は愛情に飢えているのが多いんだよ。頭が良すぎるせいか、自意識が強すぎるせいか、馬鹿になれなくて、男にすがったり頼ったりすることができない。それでいて強い孤独を感じている。だからいったん歯止めが外れると、どこまでも抑制がきかなくて、ずるずる男に引きずられて身を持ち崩すタイプも多い。〕
「たいした心理学者だな?」
私が不快を滲ませて揶揄すると、宮森はにっと歯を見せて笑いました。
〔怒るなよ。正直言えばさ、奥さんみたいなタイプの女が、俺は一番好みなんだよ。だからあのときも、お前のことをどうこうというより、ちょっと奥さんを虐めてやりたくなったのさ。どうだ? 俺の言うとおりだっただろ。〕
「何が?」
〔前に話しただろ、お前の奥さんには色気があるって話。泣いている奥さんは、すごくセクシーだと思わなかったか?〕
「・・・・・。」
たしかにあのときの美穂の様子は、普段の毅然とした佇まいを知っているだけに、私には余計心を揺さぶられるものがありました。その後の妻との濃密な情事も、それまで私が知ることのなかった刺激がありました。
「そうだな。」
私は宮森の言葉を認めました。
「そういえばお前はこうも言ったな、〔俺だったら奥さんの女としての性能を、最大限まで引き出してやれる。〕と。」
〔それも当たってるぜ。〕
宮森がぬけぬけと言います。それで私は苦笑しました。
「ちくしょう。でも、そうかもしれない。」
私が結婚後3年も分からなかった美穂という女を、宮森は一瞬で彼女の中に隠されていたものを見抜いたのです。
2015/01/24
その日は土曜日で会社は休みでした。私たち夫婦は週末をほとんど家から出ず、ただただベッドの中で絡まりあって過ごしました。それは今までのぎこちない時間を解きほぐすかのような、濃密なセックスの時間です。美穂の悩ましい表情、伸びやかな肢体、うねる腰、そして悦びを喰い締める仕草が、私を熱い欲望に駆り立てます。ふたりで繋がったまま、どろどろと溶けあっていく感覚は、他のすべてを忘れさせてくれました。
こうして私たち夫婦は以前よりも互いに近づきあうことが出来ました。一見、隙のない完璧さを持っていて、しかしその一方ではとても不器用で恥ずかしがりの妻を、私は深く愛しました。そんなある日、友人の宮森からの電話がかかってきたのです。
妻の美穂との仲が改善されてからは、会社から寄り道することもなく帰ることが多くなっていたのですが、その日は宮森の誘いにのり、待ち合わせて一緒に行きつけの酒場へ行きました。
〔ふうん、それで今のところは、奥さんと上手くやれているわけか。〕
グラスの氷をちりんと揺らしつつ、宮森は呟くように言いました。
〔よかったじゃないか。〕
「まあ一応、お前のおかげかな。礼を言っとく。ありがとう。」
〔よせよ。〕
宮森は特有の不敵な笑みを浮かべました。
〔別に俺はお前のことを考えて、あんなことを言ったわけじゃない。〕
「じゃあ何故だ?」
〔俺は職業柄、いろいろな女に接する機会が多いのは知っているだろ。最近じゃ見ただけで、その女がどんな種類の人間か、だいたい分かるようになってきた。〕
「・・・それで?」
私は宮森に話の続きを促しました。
〔お前の奥さんに会って感じたんだけどさ、あんなふうに始終張りつめているというか、心に鎧をつけているような女は、結局は愛情に飢えているのが多いんだよ。頭が良すぎるせいか、自意識が強すぎるせいか、馬鹿になれなくて、男にすがったり頼ったりすることができない。それでいて強い孤独を感じている。だからいったん歯止めが外れると、どこまでも抑制がきかなくて、ずるずる男に引きずられて身を持ち崩すタイプも多い。〕
「たいした心理学者だな?」
私が不快を滲ませて揶揄すると、宮森はにっと歯を見せて笑いました。
〔怒るなよ。正直言えばさ、奥さんみたいなタイプの女が、俺は一番好みなんだよ。だからあのときも、お前のことをどうこうというより、ちょっと奥さんを虐めてやりたくなったのさ。どうだ? 俺の言うとおりだっただろ。〕
「何が?」
〔前に話しただろ、お前の奥さんには色気があるって話。泣いている奥さんは、すごくセクシーだと思わなかったか?〕
「・・・・・。」
たしかにあのときの美穂の様子は、普段の毅然とした佇まいを知っているだけに、私には余計心を揺さぶられるものがありました。その後の妻との濃密な情事も、それまで私が知ることのなかった刺激がありました。
「そうだな。」
私は宮森の言葉を認めました。
「そういえばお前はこうも言ったな、〔俺だったら奥さんの女としての性能を、最大限まで引き出してやれる。〕と。」
〔それも当たってるぜ。〕
宮森がぬけぬけと言います。それで私は苦笑しました。
「ちくしょう。でも、そうかもしれない。」
私が結婚後3年も分からなかった美穂という女を、宮森は一瞬で彼女の中に隠されていたものを見抜いたのです。
2015/01/24
名F【どうなるの?】その7
名F【どうなるの?】その7
〔お、来たな。こっちだ。〕宮森が不意に振り返って手を上げました。その視線の先には二十四、五歳くらいの若い女性がいます。背が高く、目鼻立ちのはっきりした美しい女でした。〔彼女はうちの会社でモデルをやってくれている東出愛梨(あいり)だ。個人的にぼくの秘書のようなこともやってくれている。愛梨、こちらは俺の旧友の中津川だ。前に話したことがあるだろう。〕
マクレガー企画でモデルと言えばAV女優を指すとは、以前に宮森から聞いていました。そう思って改めて愛梨を見ると、たしかに彼女にはこの年頃のかたぎのOLにはない、水商売的な艶っぽさがありました。愛梨はぱっちりとした瞳に色気を滲ませて、私に笑顔を向けました。《はじめまして。東出愛梨です。うちの宮森がいつもお世話になっています。》
それからしばらく、私たちは3人で飲みながら話をしました。
「ということは愛梨さんは宮森にスカウトされて、今の仕事につくようになったわけですか。それまでは普通のOLをされていたんですね。」
《そうなんです。このひと、わるいひとでしょう。》
愛梨は口元に笑みを浮かべながら、悪戯っぽい目で宮森を見ました。その目は明らかに自分の愛人を見る目です。
〔じゃあ愛梨は今の仕事が気に入ってないのかね。撮影のたびにたくさんのテクニック豊かな男に抱かれて嬉しいと言っていたのは嘘なのか?〕
宮森がからかうように言うと、愛梨は流石に顔を少し赤くしました。
《いやん、中津川さんの前で恥ずかしいことを言うのはよして。》
〔愛梨は露出症の気味もあってな、カメラの前でセックスすると余計感じるらしくて撮影のときはいつも大変なんだよ。〕
《いや、いや。》
愛梨は悶えるように全身を震わせて抗議しますが、その肌は宮森の言葉に興奮させられていたのか、ぽうっと赤く上気したようで、それがいかにも淫蕩な空気を漂わせていました。
「たしかに宮森はわるい男ですが、愛梨さんもよい職業につかれたようですね。」
私が言うと、愛梨は軽く睨んできました。
《まあ、中津川さんまで。でも本当にそうね。口惜しいけど、このひと、女を見抜く力はあるのよ。》
「・・・そのようですね。」
私の脳裏に美穂の顔が浮かびました。
《中津川さんの奥さんはどんな方ですの?》
すっかり酔いがまわったふうの愛梨が舌足らずな口調で聞いてきたのに、私が答えるより早く、
〔美人で、凄く色っぽいひとだよ。〕
宮森が言いました。
《あなたがそんなに誉めるなんて珍しいわね。ひょっとしてお気に入り?》
〔ああ。中津川が羨ましいよ。〕
「何言ってんだ。」
私は照れてそっぽを向きました。
「お前だってこんないいひとがいるじゃないか。」
私の言葉に宮森と愛梨は一瞬顔を見合わせ、そして笑い出します。
〔ははは、いやわるい。でも俺たちの関係はそんなんじゃないよ。そりゃときどきはプライベートで会ってデートもするがね。俺も愛梨も企業の一員で、商品としてのAVを撮る側だし、愛梨はそれに出演する側だ。割り切った関係だよ。〕
「独占欲とかはないんだな?」
〔ないね。だいたい男にしろ女にしろ、それぞれ特定の相手だけに縛られているのはもう
古いと俺は思う。夫婦やカップル同士でスワッピングってのも、今じゃありきたりな話だ
ろ。〕
「さあね?俺はお前とは違って、その辺りには詳しくないからな。簡単に割り切れるタイプでもないから。」
〔まあ、お前はそうだろうな。〕
宮森は真面目な顔で言ってから、ふと気がついたように愛梨を見ました。
〔そういえば新作のサンプルはもう出来たのか?〕
《きょう出来ました。ここに持ってきています。》
愛梨はカバンからDVDのディスクをいくつか取り出しました。
〔これは愛梨が出ているDVDで、監督は珍しくおれが務めているんだ。何枚かあるようだから、一枚お前にやるよ。〕
「いいのか、そんなことして?」
〔いいんだよ。お前、俺の関わった作品を一度も見たことないだろ。本当に友達がいのない奴だよな。〕
私と宮森のやりとりを、愛梨はクスクスと笑いながら聞いていました。
2015/01/31
〔お、来たな。こっちだ。〕宮森が不意に振り返って手を上げました。その視線の先には二十四、五歳くらいの若い女性がいます。背が高く、目鼻立ちのはっきりした美しい女でした。〔彼女はうちの会社でモデルをやってくれている東出愛梨(あいり)だ。個人的にぼくの秘書のようなこともやってくれている。愛梨、こちらは俺の旧友の中津川だ。前に話したことがあるだろう。〕
マクレガー企画でモデルと言えばAV女優を指すとは、以前に宮森から聞いていました。そう思って改めて愛梨を見ると、たしかに彼女にはこの年頃のかたぎのOLにはない、水商売的な艶っぽさがありました。愛梨はぱっちりとした瞳に色気を滲ませて、私に笑顔を向けました。《はじめまして。東出愛梨です。うちの宮森がいつもお世話になっています。》
それからしばらく、私たちは3人で飲みながら話をしました。
「ということは愛梨さんは宮森にスカウトされて、今の仕事につくようになったわけですか。それまでは普通のOLをされていたんですね。」
《そうなんです。このひと、わるいひとでしょう。》
愛梨は口元に笑みを浮かべながら、悪戯っぽい目で宮森を見ました。その目は明らかに自分の愛人を見る目です。
〔じゃあ愛梨は今の仕事が気に入ってないのかね。撮影のたびにたくさんのテクニック豊かな男に抱かれて嬉しいと言っていたのは嘘なのか?〕
宮森がからかうように言うと、愛梨は流石に顔を少し赤くしました。
《いやん、中津川さんの前で恥ずかしいことを言うのはよして。》
〔愛梨は露出症の気味もあってな、カメラの前でセックスすると余計感じるらしくて撮影のときはいつも大変なんだよ。〕
《いや、いや。》
愛梨は悶えるように全身を震わせて抗議しますが、その肌は宮森の言葉に興奮させられていたのか、ぽうっと赤く上気したようで、それがいかにも淫蕩な空気を漂わせていました。
「たしかに宮森はわるい男ですが、愛梨さんもよい職業につかれたようですね。」
私が言うと、愛梨は軽く睨んできました。
《まあ、中津川さんまで。でも本当にそうね。口惜しいけど、このひと、女を見抜く力はあるのよ。》
「・・・そのようですね。」
私の脳裏に美穂の顔が浮かびました。
《中津川さんの奥さんはどんな方ですの?》
すっかり酔いがまわったふうの愛梨が舌足らずな口調で聞いてきたのに、私が答えるより早く、
〔美人で、凄く色っぽいひとだよ。〕
宮森が言いました。
《あなたがそんなに誉めるなんて珍しいわね。ひょっとしてお気に入り?》
〔ああ。中津川が羨ましいよ。〕
「何言ってんだ。」
私は照れてそっぽを向きました。
「お前だってこんないいひとがいるじゃないか。」
私の言葉に宮森と愛梨は一瞬顔を見合わせ、そして笑い出します。
〔ははは、いやわるい。でも俺たちの関係はそんなんじゃないよ。そりゃときどきはプライベートで会ってデートもするがね。俺も愛梨も企業の一員で、商品としてのAVを撮る側だし、愛梨はそれに出演する側だ。割り切った関係だよ。〕
「独占欲とかはないんだな?」
〔ないね。だいたい男にしろ女にしろ、それぞれ特定の相手だけに縛られているのはもう
古いと俺は思う。夫婦やカップル同士でスワッピングってのも、今じゃありきたりな話だ
ろ。〕
「さあね?俺はお前とは違って、その辺りには詳しくないからな。簡単に割り切れるタイプでもないから。」
〔まあ、お前はそうだろうな。〕
宮森は真面目な顔で言ってから、ふと気がついたように愛梨を見ました。
〔そういえば新作のサンプルはもう出来たのか?〕
《きょう出来ました。ここに持ってきています。》
愛梨はカバンからDVDのディスクをいくつか取り出しました。
〔これは愛梨が出ているDVDで、監督は珍しくおれが務めているんだ。何枚かあるようだから、一枚お前にやるよ。〕
「いいのか、そんなことして?」
〔いいんだよ。お前、俺の関わった作品を一度も見たことないだろ。本当に友達がいのない奴だよな。〕
私と宮森のやりとりを、愛梨はクスクスと笑いながら聞いていました。
2015/01/31
名F【どうなるの?】その8
名F【どうなるの?】その8
『・・・どうかしました?』美穂の声で私はふと我に返りました。ベッドの傍らを見ると、妻が物問いたげな目で私を見つめています。シーツに半分だけ隠された裸の乳房が、艶めかしく映りました。「いや、なんでもない。」その日は帰ってから、妻と睦みあう最中でさえ、私は宮森の言ったことを思い返しています。あの夜の出来事をきっかけに、日常生活でもベッドの中でもより近づくことの出来た妻。私の腕の中ですこし遠慮がちに、しかし蟲惑的に乱れる美穂の姿を眺めながら、私はいまだ彼女の中に秘匿されているであろう〖女〗を幻視していたのでした。
たしかに宮森の言うとおり、彼なら私以上に妻の〖女〗としての性をより深く開花させられたかもしれない、と思いました。宮森は男の私の目から見ても魅力的な男でしたし(外見が、というよりも、その内面から仄(ほの)見えるぎらぎらした雰囲気がです)、私は妻を単純に〖女〗としてだけ見るには彼女を愛しすぎていました。宮森が愛梨を愛するようには、私は美穂を愛せないと思いました。しかし、愛しているからこそ、もっともっと妻を知りたい、もっともっと剥きだしの姿を見てみたい。そんな激しい欲望も私の中にはたしかにあったのです。
そんなことがあってから、しばらく時間が過ぎました。若い頃は孤独を好むところもあった私ですが、本当の意味で妻と生きるようになってからは、彼女のために働き、彼女とともに過ごす時間が何よりも大事に思えるようになっていました。
不思議なことに妻の美穂を愛している自分を自覚するたびに、より深く妻を知りたいという衝動が大きくなっていきました。以前は側にいるのに孤独を感じていて、それでも触れられない妻がもどかしくて堪らなかったのですが、そのときとはまた別の気持ち、しかも以前よりずっと強い灼けつくような衝動です。私のまだ見ぬ美穂の姿を思い描くたびに、ふっと宮森の顔が浮かんできて、私を動揺させることもありました。
その頃には美穂との営みもだいぶ馴れたものになってきていて、ときには妻の両腕を紐で軽く縛るなど、SMめいたプレイも楽しんだりはしていました。『痛い・・・。』って微(かす)かに呟いて、妻は顔をうつむけます。両手を背中で縛られた彼女の乳房を隠しているのは、折り曲げた白い膝です。首筋から肩にかけての細く、淡い線が美穂そのもののように繊細な美を描いています。
「強く縛りすぎたかな?」
私が言うと、妻は首を横に振りました。
『大丈夫です。』
そう言って見上げた妻の瞳は頼りなく潤んでいて、私の胸を妖しくざわめかせました。この従順な、柔らかい生き物。彼女はいまこの瞬間、何を考えているのだろうとふと思います。たとえ問うたとしても、真実のところはやはり謎のままでしょう。人と人との間には埋まらない隙間があるものですが、その壁となるものは互いのエゴや醜い部分ばかりでなく、互いへの愛や優しさであったりもするのだと思います。だからこそ、幸福と淋しさはいつも背中合わせなのです。
這うように近づいていった私がゆっくりと両膝を押し開いていくと、美穂は『く・・・・っ。』
と小さく呻いて、いやいやするように首を振りました。
『駄目です。』
「何が駄目なんだ。このままじゃできないだろ。」
『せめて電気を消してください。』
「いやだ、このまま美穂を見ながらしたい。」
『優しく・・・。』
「してるじゃないか。」
私たちはまるで愛を囁きあうようにそんな会話をかわしながら、一つに繋がりました。
2015/02/23
『・・・どうかしました?』美穂の声で私はふと我に返りました。ベッドの傍らを見ると、妻が物問いたげな目で私を見つめています。シーツに半分だけ隠された裸の乳房が、艶めかしく映りました。「いや、なんでもない。」その日は帰ってから、妻と睦みあう最中でさえ、私は宮森の言ったことを思い返しています。あの夜の出来事をきっかけに、日常生活でもベッドの中でもより近づくことの出来た妻。私の腕の中ですこし遠慮がちに、しかし蟲惑的に乱れる美穂の姿を眺めながら、私はいまだ彼女の中に秘匿されているであろう〖女〗を幻視していたのでした。
たしかに宮森の言うとおり、彼なら私以上に妻の〖女〗としての性をより深く開花させられたかもしれない、と思いました。宮森は男の私の目から見ても魅力的な男でしたし(外見が、というよりも、その内面から仄(ほの)見えるぎらぎらした雰囲気がです)、私は妻を単純に〖女〗としてだけ見るには彼女を愛しすぎていました。宮森が愛梨を愛するようには、私は美穂を愛せないと思いました。しかし、愛しているからこそ、もっともっと妻を知りたい、もっともっと剥きだしの姿を見てみたい。そんな激しい欲望も私の中にはたしかにあったのです。
そんなことがあってから、しばらく時間が過ぎました。若い頃は孤独を好むところもあった私ですが、本当の意味で妻と生きるようになってからは、彼女のために働き、彼女とともに過ごす時間が何よりも大事に思えるようになっていました。
不思議なことに妻の美穂を愛している自分を自覚するたびに、より深く妻を知りたいという衝動が大きくなっていきました。以前は側にいるのに孤独を感じていて、それでも触れられない妻がもどかしくて堪らなかったのですが、そのときとはまた別の気持ち、しかも以前よりずっと強い灼けつくような衝動です。私のまだ見ぬ美穂の姿を思い描くたびに、ふっと宮森の顔が浮かんできて、私を動揺させることもありました。
その頃には美穂との営みもだいぶ馴れたものになってきていて、ときには妻の両腕を紐で軽く縛るなど、SMめいたプレイも楽しんだりはしていました。『痛い・・・。』って微(かす)かに呟いて、妻は顔をうつむけます。両手を背中で縛られた彼女の乳房を隠しているのは、折り曲げた白い膝です。首筋から肩にかけての細く、淡い線が美穂そのもののように繊細な美を描いています。
「強く縛りすぎたかな?」
私が言うと、妻は首を横に振りました。
『大丈夫です。』
そう言って見上げた妻の瞳は頼りなく潤んでいて、私の胸を妖しくざわめかせました。この従順な、柔らかい生き物。彼女はいまこの瞬間、何を考えているのだろうとふと思います。たとえ問うたとしても、真実のところはやはり謎のままでしょう。人と人との間には埋まらない隙間があるものですが、その壁となるものは互いのエゴや醜い部分ばかりでなく、互いへの愛や優しさであったりもするのだと思います。だからこそ、幸福と淋しさはいつも背中合わせなのです。
這うように近づいていった私がゆっくりと両膝を押し開いていくと、美穂は『く・・・・っ。』
と小さく呻いて、いやいやするように首を振りました。
『駄目です。』
「何が駄目なんだ。このままじゃできないだろ。」
『せめて電気を消してください。』
「いやだ、このまま美穂を見ながらしたい。」
『優しく・・・。』
「してるじゃないか。」
私たちはまるで愛を囁きあうようにそんな会話をかわしながら、一つに繋がりました。
2015/02/23
名F【どうなるの?】その9
名F【どうなるの?】その9
そんな日々が続いていた、ある休日のことでした。妻の美穂は買い物に出かけていて、私はひとり家にいて、退屈紛れにインターネットでアダルトサイトを見ていました。素人が自身もしくは恋人の画像を投稿するサイトです。
こうしたサイトを見ていると、世の中には色々な男女がいると思わずにはいられません。投稿画像には夫が妻の裸身やプレイ中の姿などを撮ったものも多くあって、他人の性生活を覗き見る背徳的な楽しみを与えてくれます。素人が撮ったものらしく、妙に生々しい雰囲気がかえって興奮を誘います。
ある男性が撮った彼の妻の画像(顔を両手で隠しながら、細い裸身を晒し、カメラに向かって恥ずかしそうに股を開いている。)を見ながら、私はモザイク入りのその女性の顔にいつしか妻の顔を重ねていました。
その妄想は私を激しく昂ぶらせました。恥ずかしがる妻の美穂に向かってカメラを向けながら、「もっと股を大きく開け!」と命じる・・・。しかし不可解なことに妄想の中でカメラを構え、そう美穂に命じているのは、私ではなく宮森なのでした。
ふと私は思い出して、机の引き出しから、以前宮森にもらったDVDを取り出してパソコンに入れました。宮森が監督を務め、愛梨がモデルとして出ているという例のやつです。しばらくの間、私はそのDVDに見入りました。
映像の中で愛梨はまだ若い男優に絡みつき、甘え、悶えます。短い時間とはいえ、自分が直接会って話した女性のセックスシーンを見るのは初めてで、そのことも興奮を誘ったのですが、より刺激的だったのは、この映像を監督しているのが、彼女の愛人である宮森だという事実でした。
実際のところ、宮森が愛梨をどう想っているかは謎ですが、彼女が宮森を見る目は間違いなく愛人の目でした。その女が愛する男の前で、あられもない痴態を晒しては、淫らな声をあげているのです。時折、愛梨の視線が相手の男優を離れ、あらぬところを見ているとき、私はその先に宮森がいることを想像しました。
DVDが終わりました。私はぞわぞわと背筋を撫であげる何かを感じながら、しばらく呆然とソファに横たわっていました。そして私は立ち上がりました。美穂が帰ってくる前に宮森に電話をかけるためです。
私と妻の美穂が休暇を利用して岐阜の温泉郷へ出かけたのは、その年の八月半ばのことでした。美穂と旅行へ行くのは新婚のとき以来です。喧騒の街大阪を離れ、仕事も忘れて四日間ゆっくりと静かな山里で過ごすという計画に、妻も喜んでいるようでした。大阪難波駅から近鉄特急で二時間かけて名古屋駅へ到着し、それからJR特急で岐阜を経て高山駅です。天気は快晴で、抜けるような青空には何の翳りもありません。
美穂の表情も珍しく晴れ晴れとしていました。私はその顔を見て、今更に胸が痛むのを感じます。高山の駅で降りて、城山公園を巡り高山城跡を見てから、また市街地へ戻った時のことでした。
〔おい、中津川じゃないか。〕
すれ違いかけた男が声をかけてきました。宮森です。隣には愛梨がいて、これもびっくりしたように私を見つめています。
「どうしてお前がここに?」
〔それはこっちが聞きたいくらいだ。〕
宮森が美穂へ視線を向けました。同様に驚いた顔をしていた妻の美穂が、その瞬間恥ずかしそうに目を伏せます。それを見て宮森が苦笑を滲ませた表情を私に向けました。私は軽くうなずきました。
2015/03/13
そんな日々が続いていた、ある休日のことでした。妻の美穂は買い物に出かけていて、私はひとり家にいて、退屈紛れにインターネットでアダルトサイトを見ていました。素人が自身もしくは恋人の画像を投稿するサイトです。
こうしたサイトを見ていると、世の中には色々な男女がいると思わずにはいられません。投稿画像には夫が妻の裸身やプレイ中の姿などを撮ったものも多くあって、他人の性生活を覗き見る背徳的な楽しみを与えてくれます。素人が撮ったものらしく、妙に生々しい雰囲気がかえって興奮を誘います。
ある男性が撮った彼の妻の画像(顔を両手で隠しながら、細い裸身を晒し、カメラに向かって恥ずかしそうに股を開いている。)を見ながら、私はモザイク入りのその女性の顔にいつしか妻の顔を重ねていました。
その妄想は私を激しく昂ぶらせました。恥ずかしがる妻の美穂に向かってカメラを向けながら、「もっと股を大きく開け!」と命じる・・・。しかし不可解なことに妄想の中でカメラを構え、そう美穂に命じているのは、私ではなく宮森なのでした。
ふと私は思い出して、机の引き出しから、以前宮森にもらったDVDを取り出してパソコンに入れました。宮森が監督を務め、愛梨がモデルとして出ているという例のやつです。しばらくの間、私はそのDVDに見入りました。
映像の中で愛梨はまだ若い男優に絡みつき、甘え、悶えます。短い時間とはいえ、自分が直接会って話した女性のセックスシーンを見るのは初めてで、そのことも興奮を誘ったのですが、より刺激的だったのは、この映像を監督しているのが、彼女の愛人である宮森だという事実でした。
実際のところ、宮森が愛梨をどう想っているかは謎ですが、彼女が宮森を見る目は間違いなく愛人の目でした。その女が愛する男の前で、あられもない痴態を晒しては、淫らな声をあげているのです。時折、愛梨の視線が相手の男優を離れ、あらぬところを見ているとき、私はその先に宮森がいることを想像しました。
DVDが終わりました。私はぞわぞわと背筋を撫であげる何かを感じながら、しばらく呆然とソファに横たわっていました。そして私は立ち上がりました。美穂が帰ってくる前に宮森に電話をかけるためです。
私と妻の美穂が休暇を利用して岐阜の温泉郷へ出かけたのは、その年の八月半ばのことでした。美穂と旅行へ行くのは新婚のとき以来です。喧騒の街大阪を離れ、仕事も忘れて四日間ゆっくりと静かな山里で過ごすという計画に、妻も喜んでいるようでした。大阪難波駅から近鉄特急で二時間かけて名古屋駅へ到着し、それからJR特急で岐阜を経て高山駅です。天気は快晴で、抜けるような青空には何の翳りもありません。
美穂の表情も珍しく晴れ晴れとしていました。私はその顔を見て、今更に胸が痛むのを感じます。高山の駅で降りて、城山公園を巡り高山城跡を見てから、また市街地へ戻った時のことでした。
〔おい、中津川じゃないか。〕
すれ違いかけた男が声をかけてきました。宮森です。隣には愛梨がいて、これもびっくりしたように私を見つめています。
「どうしてお前がここに?」
〔それはこっちが聞きたいくらいだ。〕
宮森が美穂へ視線を向けました。同様に驚いた顔をしていた妻の美穂が、その瞬間恥ずかしそうに目を伏せます。それを見て宮森が苦笑を滲ませた表情を私に向けました。私は軽くうなずきました。
2015/03/13
名F【どうなるの?】その10
名F【どうなるの?】その10
すべて計画通りでした。私と宮森、それに愛梨は旅先で偶然出会ったことを装う計画を立てていたのです。知らぬは妻の美穂だけです。〚お久しぶり、中津川さん。それにしても驚きね。〛愛梨は、彼女はあらかじめ宮森に頼まれて私たちの協力者になっていましたが、この旅では私の大学時代のサークルの後輩という設定です。
「ああ、本当にな。」
〚そちらの方は奥さん?〛
「そうだよ。」
〚はじめまして。わたしは愛梨といいます。中津川さんとは大学のサークルが同じで、色々お世話になりました。〛
突然のことに困惑したようだった妻も、愛梨の年に似合わぬ落ち着いた物腰に普段の自分を取り戻したようで、『はじめてお目にかかります。中津川の妻で、美穂と申します。』と生真面目な挨拶を返しました。
「宮森のことはもう知っているだろう。愛梨くんは宮森の奥さんなんだよ。俺がふたりの間をとりもったんだ。」
『そうでしたの。』
〔おーい、こんな道端で立ち話もなんだ。どこか休める店に入ろう。〕
宮森の号令で私たち四人は歩き出しました。
「ふうん、それにしても奇遇だな。夫婦で旅行した先が同じ場所なんて。」
『あなたたち、よっぽど気が合うのね。』
〔よせよ、愛梨。潤一とは昔から因縁の仲なんだ。〕
『何よ、それ?』
私と宮森、そして愛梨が和気藹々(わきあいあい)の会話を交わしているのを、妻の美穂は所在なさそうに、ただし外見にはそんな思いは出さぬように気を遣いながら静かに聞いています。
適当に入った喫茶店はよくクーラーが効いていて、少し肌寒いほどでした。
〔お前と奥さんは泊まる宿は決めているのか?〕
宮森がふと思いついたように聞いてきました。
「ああ。北部の奥飛騨のほうに宿を決めてあるんだ。そこに3日間連泊してゆっくり過ごす。お前たちは?」
〔じつは俺たち、行きあたりばったりでさ。なにせ飛騨へ出かけることも昨日決めたくらいだから、宿も何も考えてないんだ。〕
「いい加減だな。」
〔それでさ、もしよかったら、お前と奥さんが泊まる宿を紹介してくれないか?〕
宮森が真剣な顔つきで頼んできた。
「いいけど、この季節だし、空いていないかもしれないぞ。」
〔電話番号は控えてあるんだろ。聞いてみてくれないか?〕
「しょうがないな。」
私はぶつくさ言いながら、店の外へ電話をかけに行くふりをしました。事実はすでに宮森たちの宿は確保されているのです。
2015/03/16
すべて計画通りでした。私と宮森、それに愛梨は旅先で偶然出会ったことを装う計画を立てていたのです。知らぬは妻の美穂だけです。〚お久しぶり、中津川さん。それにしても驚きね。〛愛梨は、彼女はあらかじめ宮森に頼まれて私たちの協力者になっていましたが、この旅では私の大学時代のサークルの後輩という設定です。
「ああ、本当にな。」
〚そちらの方は奥さん?〛
「そうだよ。」
〚はじめまして。わたしは愛梨といいます。中津川さんとは大学のサークルが同じで、色々お世話になりました。〛
突然のことに困惑したようだった妻も、愛梨の年に似合わぬ落ち着いた物腰に普段の自分を取り戻したようで、『はじめてお目にかかります。中津川の妻で、美穂と申します。』と生真面目な挨拶を返しました。
「宮森のことはもう知っているだろう。愛梨くんは宮森の奥さんなんだよ。俺がふたりの間をとりもったんだ。」
『そうでしたの。』
〔おーい、こんな道端で立ち話もなんだ。どこか休める店に入ろう。〕
宮森の号令で私たち四人は歩き出しました。
「ふうん、それにしても奇遇だな。夫婦で旅行した先が同じ場所なんて。」
『あなたたち、よっぽど気が合うのね。』
〔よせよ、愛梨。潤一とは昔から因縁の仲なんだ。〕
『何よ、それ?』
私と宮森、そして愛梨が和気藹々(わきあいあい)の会話を交わしているのを、妻の美穂は所在なさそうに、ただし外見にはそんな思いは出さぬように気を遣いながら静かに聞いています。
適当に入った喫茶店はよくクーラーが効いていて、少し肌寒いほどでした。
〔お前と奥さんは泊まる宿は決めているのか?〕
宮森がふと思いついたように聞いてきました。
「ああ。北部の奥飛騨のほうに宿を決めてあるんだ。そこに3日間連泊してゆっくり過ごす。お前たちは?」
〔じつは俺たち、行きあたりばったりでさ。なにせ飛騨へ出かけることも昨日決めたくらいだから、宿も何も考えてないんだ。〕
「いい加減だな。」
〔それでさ、もしよかったら、お前と奥さんが泊まる宿を紹介してくれないか?〕
宮森が真剣な顔つきで頼んできた。
「いいけど、この季節だし、空いていないかもしれないぞ。」
〔電話番号は控えてあるんだろ。聞いてみてくれないか?〕
「しょうがないな。」
私はぶつくさ言いながら、店の外へ電話をかけに行くふりをしました。事実はすでに宮森たちの宿は確保されているのです。
2015/03/16
名F【どうなるの?】その11
名F【どうなるの?】その11
奥飛騨の宿には夕方の5時過ぎに着きました。
「僕たちの部屋は隣同士らしいぞ!」
チェックインに行っていた私と宮森は戻ってきて、互いの相方へ言います。
「さっき部屋の空き状況を確認したときに僕が電話をかけたものだから、宿のほうが気を遣って、僕と美穂があらかじめ予約していた部屋を二間の部屋へ変えていたんだ。四人連れと思ったみたいだな。」
もちろんこの説明は嘘です。事実は最初に宿をとったときから、そう指定しておいたのでした。「二つの部屋の間は襖で仕切ってあるらしいが、どうだ?」愛梨が〚私はかまわないわ。〛って即座に答えました。妻の美穂はちらりと私を見ました。その瞳が何か言いたげであるように見えましたが、彼女の唇から出てきたのは『私もかまわないです。』という一言でした。
私たちの泊まる部屋は決して豪奢な造りではありませんが、小奇麗でさっぱりした感じのいい和室でした。窓の外には山深い奥飛騨の緑が、都会の騒がしさに馴れた者をやさしく
包むように広がっています。
「いい部屋じゃないか。」
『そうですね。』
妻の美穂は微笑みながら短く答えましたが、その微笑みはどこか弱々しく、無理をしているような印象でした。当然でしょう。夫婦水いらずで静かな温泉郷でゆっくりと休日をとるはずが、得体の知れない夫の友人とその妻が突然現れ、襖一枚ごしの隣室に宿をとり、以後の休日をずっと一緒に過ごす気配を見せているのですから。もともと人付き合いの苦手な妻には、なおさら負担になっているはずです。しかし、それでも彼女の物腰には、無
神経な夫への怒りや不満のようなものは見えず、なおさら私に罪の意識を覚えさせます。
“美穂を抱いてみたくはないか?”そんな私の非常識な提案にのった宮森が立てたのが今回の旅行計画でした。目的は〖スワッピング〗です。つまり私たち夫婦と宮森・愛梨のカップル(妻には夫婦と言っていますが)が、互いに相手を代えてセックスをするのです。いかにも身持ちの堅そうな妻を堕とすために、まず夫たる私が率先して他の女性(しかも人妻)と関係する場面を見せつけ、それから宮森が美穂を口説き落とすという計画でした。
「しかし愛梨さんはそんな役割を承知してくれるかな?」
〔あいつがこんな面白い話を蹴るはずがない。心配はいらないよ。それより問題はお前の
ほうだ。覚悟はちゃんと出来ているんだろうな。〕
電話越しに宮森が低い声で確認してきました。宮森の言う覚悟とはもちろん、妻の美穂を宮森の自由にさせる覚悟のことです。
正直、計画を立てた段階では、美穂が実際に宮森に抱かれることになるかは分かりませんし、もしそうならなかった場合、後の夫婦関係がどうなっていくのかも分かりません。また、もし美穂が宮森に抱かれたとしても、それから先がどうなるのか、まったく予想できません。まさに一寸先は闇、下手すると今まで築いてきた幸福すべてを失う可能性だってあるのです。それでも私は宮森に答えました。「覚悟は出来ている。何が起こっても後悔はしない。」その時、私はたしかに何かに憑かれていました。
2015/03/22
奥飛騨の宿には夕方の5時過ぎに着きました。
「僕たちの部屋は隣同士らしいぞ!」
チェックインに行っていた私と宮森は戻ってきて、互いの相方へ言います。
「さっき部屋の空き状況を確認したときに僕が電話をかけたものだから、宿のほうが気を遣って、僕と美穂があらかじめ予約していた部屋を二間の部屋へ変えていたんだ。四人連れと思ったみたいだな。」
もちろんこの説明は嘘です。事実は最初に宿をとったときから、そう指定しておいたのでした。「二つの部屋の間は襖で仕切ってあるらしいが、どうだ?」愛梨が〚私はかまわないわ。〛って即座に答えました。妻の美穂はちらりと私を見ました。その瞳が何か言いたげであるように見えましたが、彼女の唇から出てきたのは『私もかまわないです。』という一言でした。
私たちの泊まる部屋は決して豪奢な造りではありませんが、小奇麗でさっぱりした感じのいい和室でした。窓の外には山深い奥飛騨の緑が、都会の騒がしさに馴れた者をやさしく
包むように広がっています。
「いい部屋じゃないか。」
『そうですね。』
妻の美穂は微笑みながら短く答えましたが、その微笑みはどこか弱々しく、無理をしているような印象でした。当然でしょう。夫婦水いらずで静かな温泉郷でゆっくりと休日をとるはずが、得体の知れない夫の友人とその妻が突然現れ、襖一枚ごしの隣室に宿をとり、以後の休日をずっと一緒に過ごす気配を見せているのですから。もともと人付き合いの苦手な妻には、なおさら負担になっているはずです。しかし、それでも彼女の物腰には、無
神経な夫への怒りや不満のようなものは見えず、なおさら私に罪の意識を覚えさせます。
“美穂を抱いてみたくはないか?”そんな私の非常識な提案にのった宮森が立てたのが今回の旅行計画でした。目的は〖スワッピング〗です。つまり私たち夫婦と宮森・愛梨のカップル(妻には夫婦と言っていますが)が、互いに相手を代えてセックスをするのです。いかにも身持ちの堅そうな妻を堕とすために、まず夫たる私が率先して他の女性(しかも人妻)と関係する場面を見せつけ、それから宮森が美穂を口説き落とすという計画でした。
「しかし愛梨さんはそんな役割を承知してくれるかな?」
〔あいつがこんな面白い話を蹴るはずがない。心配はいらないよ。それより問題はお前の
ほうだ。覚悟はちゃんと出来ているんだろうな。〕
電話越しに宮森が低い声で確認してきました。宮森の言う覚悟とはもちろん、妻の美穂を宮森の自由にさせる覚悟のことです。
正直、計画を立てた段階では、美穂が実際に宮森に抱かれることになるかは分かりませんし、もしそうならなかった場合、後の夫婦関係がどうなっていくのかも分かりません。また、もし美穂が宮森に抱かれたとしても、それから先がどうなるのか、まったく予想できません。まさに一寸先は闇、下手すると今まで築いてきた幸福すべてを失う可能性だってあるのです。それでも私は宮森に答えました。「覚悟は出来ている。何が起こっても後悔はしない。」その時、私はたしかに何かに憑かれていました。
2015/03/22
名F【どうなるの?】その12
名F【どうなるの?】その12
〔おーい、これからおれたち、宿の温泉へ行くんだが、そっちはどうする?〕
「俺たちも行くよ。」
襖越しに聞こえてきた宮森の声に私は答えました。宿の背後に鬱蒼と茂る木立に臨んで、露天風呂が湯気をたてていました。近くに渓流があるのか、川のせせらぎの音も聞こえています。
私と宮森が先に風呂につかっていると、やがて愛梨が女用の更衣室から出てきました。タオルで腰を、腕で乳房を隠しているだけの姿です。私は眩しげに瞳を逸らしながら、「美穂(みほ)は?」と尋ねました。
〚奥さま、混浴だってことご存知なかったのね。恥ずかしがってしまったみたいで、いくら説得しても出てこないのよ。〛
妻ならいかにもありそうなことです。私は立ち上がって、女用の更衣室に近づきました。人影がひとつ、曇りガラス越しに見えています。
「美穂?」
『・・・・』
私はわざと冷たい口調で「早く出てくるんだ。子供じゃあるまいし、何を恥ずかしがっている。早く来い!」と言いました。これからのことを考えると、心を鬼にすることはどうしても必要です。普段とは違う私の冷酷な声音に、妻の美穂は一瞬びくりとしたようです。数分後、衣服を脱いだ妻が出てきました。
左手で乳房を隠し、右手に持ったタオルで股間を隠しながら、妻がゆっくりと歩いてきます。途中、ちらっと私と目が合いましたが、すぐに羞じたように目を逸らせます。時刻はもう夕暮れでしたが、夏のことでまだ日は高く、うっすらとした西日が妻の白い裸身をかすかに染めていました。
宮森を見ると、彼はいつものように鷹揚にかまえ、愛梨とふざけあっていましたが、その実、視線はちらちらと妻を見ています。愛梨はそんな宮森を見て、耳元で何か囁きました。
かけ湯を浴びた後、美穂はやっと湯船のところまでやってきました。私の浸かっている湯のすぐ近くに立って私を見ます。
私がうなずくと、美穂は諦めたようにタオルを置いて、皆の前で裸を晒しつつ、湯船に足を沈めました。〚美穂さんたら、いまどき混浴くらいでそんな悲壮な顔することないじゃない。私だって裸なんだから。〛愛梨が明るく声をかけて、美穂はかすかな微笑でそれに応えましたが、決して宮森や愛梨と視線を合わせようとはしませんでした。
「わるいな。うちのはこういうのになれてなくてね。」
〚あら、私だって別になれているわけじゃないですよ。〛
唇を尖らせた愛梨が、くねくねと肢体をゆすって抗議します。その仕草は美穂の抑制された色気とは別種の、挑発するような艶っぽさを放っていました。
〚それにしても美穂さん、白いし細いし、本当に綺麗な身体をしているのねえ、うらやましいわ。ね、そう思わない?〛
愛梨がはしゃいだ口調で宮森に問います。宮森は先ほどからはもはや遠慮のない視線を美穂に向けていましたが、
〔たしかに綺麗だけど、俺がうらやましいのは美穂さんじゃなくて中津川だよ。こんなひとを奥さんにしているんだからな。〕
そう言って、にかっと笑いました。その言葉に妻の美穂はますます身を縮こませ、その身体は湯の熱さのためばかりでなく、仄赤く染まっています。
2015/03/29
〔おーい、これからおれたち、宿の温泉へ行くんだが、そっちはどうする?〕
「俺たちも行くよ。」
襖越しに聞こえてきた宮森の声に私は答えました。宿の背後に鬱蒼と茂る木立に臨んで、露天風呂が湯気をたてていました。近くに渓流があるのか、川のせせらぎの音も聞こえています。
私と宮森が先に風呂につかっていると、やがて愛梨が女用の更衣室から出てきました。タオルで腰を、腕で乳房を隠しているだけの姿です。私は眩しげに瞳を逸らしながら、「美穂(みほ)は?」と尋ねました。
〚奥さま、混浴だってことご存知なかったのね。恥ずかしがってしまったみたいで、いくら説得しても出てこないのよ。〛
妻ならいかにもありそうなことです。私は立ち上がって、女用の更衣室に近づきました。人影がひとつ、曇りガラス越しに見えています。
「美穂?」
『・・・・』
私はわざと冷たい口調で「早く出てくるんだ。子供じゃあるまいし、何を恥ずかしがっている。早く来い!」と言いました。これからのことを考えると、心を鬼にすることはどうしても必要です。普段とは違う私の冷酷な声音に、妻の美穂は一瞬びくりとしたようです。数分後、衣服を脱いだ妻が出てきました。
左手で乳房を隠し、右手に持ったタオルで股間を隠しながら、妻がゆっくりと歩いてきます。途中、ちらっと私と目が合いましたが、すぐに羞じたように目を逸らせます。時刻はもう夕暮れでしたが、夏のことでまだ日は高く、うっすらとした西日が妻の白い裸身をかすかに染めていました。
宮森を見ると、彼はいつものように鷹揚にかまえ、愛梨とふざけあっていましたが、その実、視線はちらちらと妻を見ています。愛梨はそんな宮森を見て、耳元で何か囁きました。
かけ湯を浴びた後、美穂はやっと湯船のところまでやってきました。私の浸かっている湯のすぐ近くに立って私を見ます。
私がうなずくと、美穂は諦めたようにタオルを置いて、皆の前で裸を晒しつつ、湯船に足を沈めました。〚美穂さんたら、いまどき混浴くらいでそんな悲壮な顔することないじゃない。私だって裸なんだから。〛愛梨が明るく声をかけて、美穂はかすかな微笑でそれに応えましたが、決して宮森や愛梨と視線を合わせようとはしませんでした。
「わるいな。うちのはこういうのになれてなくてね。」
〚あら、私だって別になれているわけじゃないですよ。〛
唇を尖らせた愛梨が、くねくねと肢体をゆすって抗議します。その仕草は美穂の抑制された色気とは別種の、挑発するような艶っぽさを放っていました。
〚それにしても美穂さん、白いし細いし、本当に綺麗な身体をしているのねえ、うらやましいわ。ね、そう思わない?〛
愛梨がはしゃいだ口調で宮森に問います。宮森は先ほどからはもはや遠慮のない視線を美穂に向けていましたが、
〔たしかに綺麗だけど、俺がうらやましいのは美穂さんじゃなくて中津川だよ。こんなひとを奥さんにしているんだからな。〕
そう言って、にかっと笑いました。その言葉に妻の美穂はますます身を縮こませ、その身体は湯の熱さのためばかりでなく、仄赤く染まっています。
2015/03/29
名F【どうなるの?】その13
名F【どうなるの?】その13
〔・・・というわけで、愛梨は大学時代、先輩のお前に惚れていたんだって。〕
〚もうっ。そんな話、美穂さんの前でしなくてもいいじゃない。〛
〔いいじゃないか、四人こうして裸になって一緒の湯に浸かっているんだから、心の底まで裸になって語り合おうや。〕
相変わらず黙りこくったままの妻の美穂(みほ29歳)を残して、宮森精二(34歳)と東出愛梨(ひがしで・あいり26歳)は勝手な話をしています。むろん、全て作り話です。(愛梨は年齢を5歳も誤魔化しています。)
「その話は本当なのか?」
私(中津川潤一34歳)が問うと、愛梨は微笑んで、
〚そうね。好きだったかも。憧れの先輩としてね。〛
〔この前は好きだったって、はっきり言っていたじゃないか?〕
宮森が横から口をはさむと、愛梨はそのほうを軽く睨んで、
〚チャチャをいれないでよ、もう。でもあの頃、中津川さんに憧れている女の子は他にもいたのよ。だって凄く優しいし、ハンサムだし、それでいてちょっと翳りがあるところなんか魅力的だったの。とても私なんかとじゃ釣り合わないと思って告白も出来なかったのよ。〛
こちらが赤面するようなセリフを愛梨はさらっと言ってのけました。妻はいま、どんな表情をしているだろうと気になりました。
〚だからきょう美穂さんを見て、納得したわ。ほんと、お綺麗で女らしい方、中津川さんとお似合いだわ。〛
「僕らのことはともかく、愛梨だって宮森とお似合いだよ。幸せそうだ。」
〔優しくもないし、ハンサムでもないし、翳りなんかどこにもないおれとお似合いだってさ。〕
宮森はおどけたようにそう言うと、愛梨の裸の肩に手を回し、自らの元に引き寄せました。もう一方の手を愛梨の乳房に伸ばし、その先端の突起をちょっと摘まみます。
〚あん。もう、恥ずかしいことしないで。中津川さんと美穂さんの前なのよ。〛
甘えるような舌足らずの口調で抗議しながら、愛梨はちらりと美穂を見たようです。そのとき、私は湯の中で自分の手に妻の手が触れてくるのを感じました。私の手をぎゅっと握ったまま、美穂はやはりうつむいたままの格好です。その細やかなうなじと裸の背中に私は新鮮な欲望を覚えました。
夜になります。流石に山深い土地だけあって、辺りは森閑としていました。夕食は部屋で
とったのですが、その際には私たち夫婦の部屋と宮森・愛梨の部屋の間の襖を開け放って、四人でひとつのテーブルにつきました。
一緒に風呂に入った仲だというのに、美穂はまだ打ち解ける気配を見せず、会話にもあまり加わりません。もともと口数の少ない女ではありますし、夫の私とでさえ打ち解けるのにあれだけ時間がかかったのですから無理からぬことではあるかもしれません。それとも妻は妻で宮森と愛梨の偽りの夫婦を、どこか信用できない、なんとなくうさんくさいと思っていたのかもしれません。美穂は繊細な性質だけに、そういう感受性には特に敏感なところがありました。
夕食が終わり襖を閉めて私たちは自室に引き上げました。宮森との相談ではスワッピングは明日以降の晩に試みることになっています。しかし、ちっとも場に馴染んでいない美穂を見るにつけ、私にはその実現は期待できないように思われてきました。私は残念なような、それでいてどこかほっとしたような、複雑な心境です。
夜中にふと目覚めたのは午前一時を少しまわったくらいの頃でしょうか。色々と緊張した日中の疲れで、床につくとすぐに眠りに入っていったのですが、隣室から聞こえる声で目を覚ましたのです。
きれぎれに聞こえる女の喘ぎ声。高く細く、淫蕩な響きを持ったその声はたしかに愛梨のものです。私は傍らの妻を見ました。妻は目を瞑っていますがずっと起きていたようで、何かにじっと耐えているような表情です。私はそっと手を伸ばしました。妻がはっと目を開けます。私の意図を察したのか、その口が「いや」とかすかに動きました。
しかし、私は有無を言わせずに妻の布団に忍びこみました。美穂の首筋にキスをしながら、浴衣の懐に手を入れて乳房を揉みしだきます。と同時にもう一方の手を、そろそろと妻の下半身へ伸ばしました。
美穂は声をあげると隣室のふたりに気づかれると思ったのでしょうか無言のまま、いつになく激しく抵抗してきます。私は片腕で妻の両手を束ねて押さえつけ、身体を覆いかぶせるようにしてその抵抗を封じました。そうしておいて改めて、妻の下半身へ、下着の奥へ手を伸ばします。ようやくその部分に触れたとき、私は驚きました。それは美穂の股間がはっきりと分かるほどに濡れそぼっていたのです。
2015/07/26
〔・・・というわけで、愛梨は大学時代、先輩のお前に惚れていたんだって。〕
〚もうっ。そんな話、美穂さんの前でしなくてもいいじゃない。〛
〔いいじゃないか、四人こうして裸になって一緒の湯に浸かっているんだから、心の底まで裸になって語り合おうや。〕
相変わらず黙りこくったままの妻の美穂(みほ29歳)を残して、宮森精二(34歳)と東出愛梨(ひがしで・あいり26歳)は勝手な話をしています。むろん、全て作り話です。(愛梨は年齢を5歳も誤魔化しています。)
「その話は本当なのか?」
私(中津川潤一34歳)が問うと、愛梨は微笑んで、
〚そうね。好きだったかも。憧れの先輩としてね。〛
〔この前は好きだったって、はっきり言っていたじゃないか?〕
宮森が横から口をはさむと、愛梨はそのほうを軽く睨んで、
〚チャチャをいれないでよ、もう。でもあの頃、中津川さんに憧れている女の子は他にもいたのよ。だって凄く優しいし、ハンサムだし、それでいてちょっと翳りがあるところなんか魅力的だったの。とても私なんかとじゃ釣り合わないと思って告白も出来なかったのよ。〛
こちらが赤面するようなセリフを愛梨はさらっと言ってのけました。妻はいま、どんな表情をしているだろうと気になりました。
〚だからきょう美穂さんを見て、納得したわ。ほんと、お綺麗で女らしい方、中津川さんとお似合いだわ。〛
「僕らのことはともかく、愛梨だって宮森とお似合いだよ。幸せそうだ。」
〔優しくもないし、ハンサムでもないし、翳りなんかどこにもないおれとお似合いだってさ。〕
宮森はおどけたようにそう言うと、愛梨の裸の肩に手を回し、自らの元に引き寄せました。もう一方の手を愛梨の乳房に伸ばし、その先端の突起をちょっと摘まみます。
〚あん。もう、恥ずかしいことしないで。中津川さんと美穂さんの前なのよ。〛
甘えるような舌足らずの口調で抗議しながら、愛梨はちらりと美穂を見たようです。そのとき、私は湯の中で自分の手に妻の手が触れてくるのを感じました。私の手をぎゅっと握ったまま、美穂はやはりうつむいたままの格好です。その細やかなうなじと裸の背中に私は新鮮な欲望を覚えました。
夜になります。流石に山深い土地だけあって、辺りは森閑としていました。夕食は部屋で
とったのですが、その際には私たち夫婦の部屋と宮森・愛梨の部屋の間の襖を開け放って、四人でひとつのテーブルにつきました。
一緒に風呂に入った仲だというのに、美穂はまだ打ち解ける気配を見せず、会話にもあまり加わりません。もともと口数の少ない女ではありますし、夫の私とでさえ打ち解けるのにあれだけ時間がかかったのですから無理からぬことではあるかもしれません。それとも妻は妻で宮森と愛梨の偽りの夫婦を、どこか信用できない、なんとなくうさんくさいと思っていたのかもしれません。美穂は繊細な性質だけに、そういう感受性には特に敏感なところがありました。
夕食が終わり襖を閉めて私たちは自室に引き上げました。宮森との相談ではスワッピングは明日以降の晩に試みることになっています。しかし、ちっとも場に馴染んでいない美穂を見るにつけ、私にはその実現は期待できないように思われてきました。私は残念なような、それでいてどこかほっとしたような、複雑な心境です。
夜中にふと目覚めたのは午前一時を少しまわったくらいの頃でしょうか。色々と緊張した日中の疲れで、床につくとすぐに眠りに入っていったのですが、隣室から聞こえる声で目を覚ましたのです。
きれぎれに聞こえる女の喘ぎ声。高く細く、淫蕩な響きを持ったその声はたしかに愛梨のものです。私は傍らの妻を見ました。妻は目を瞑っていますがずっと起きていたようで、何かにじっと耐えているような表情です。私はそっと手を伸ばしました。妻がはっと目を開けます。私の意図を察したのか、その口が「いや」とかすかに動きました。
しかし、私は有無を言わせずに妻の布団に忍びこみました。美穂の首筋にキスをしながら、浴衣の懐に手を入れて乳房を揉みしだきます。と同時にもう一方の手を、そろそろと妻の下半身へ伸ばしました。
美穂は声をあげると隣室のふたりに気づかれると思ったのでしょうか無言のまま、いつになく激しく抵抗してきます。私は片腕で妻の両手を束ねて押さえつけ、身体を覆いかぶせるようにしてその抵抗を封じました。そうしておいて改めて、妻の下半身へ、下着の奥へ手を伸ばします。ようやくその部分に触れたとき、私は驚きました。それは美穂の股間がはっきりと分かるほどに濡れそぼっていたのです。
2015/07/26
名F【どうなるの?】その14
名F【どうなるの?】その14
驚きとともに見つめる私(中津川潤一34歳)の目に、その意を汲み取ったのか、妻の美穂(みほ29歳)はほとんど泣きそうな表情になって、私の胸に顔を押し付けてきます。それがきっかけとなり、私はほとんど我を忘れるような強い欲情の中、今までにないほど荒々しいやり方で妻を抱いたのでした。
崩された浴衣を腰の辺りに巻きつけたまま、下着だけすべて剥ぎ取られた格好の美穂は、私の腕の中でしばらくは必死になって声を殺していましたが、やがて耐えきれぬげに「あっ、あっ」と啼きはじめます。とめようとしてとめられないその声は、男の心をさらに加虐的にさせずにはおかないような哀婉な調子を含んでいました。
いつの間にか、隣室の声はやんでいました。宮森精二(34歳)と東出愛梨(ひがしで・あいり26歳)はどうしているのでしょうか?ひょっとしたら、いやおそらくは間違いなく、暗闇に紛れて少しだけ開いた襖の間から、私たち夫婦の情事を眺めているのでしょう。
私の下で悦びを喰い締めながら、愛らしい泣き声をあげている妻は。
『は、っ、ああっ、ああんっ・・・。』
そして私は果てました。それと同時に抱きしめた美穂の身体のびくびくと痙攣する感触が、いつまでも腕の中に残りました。
次の日の朝、目覚めると横に美穂の姿はありませんでした。しばらくして部屋へ戻ってきた妻に「どこへ行ってた?」と聞くと、『お風呂に・・・。』そう短く答えるその様子はいつもの妻でしたが、やはり昨夜の乱れ方を恥じているのか目を合わせようとはしませんでした。
その後、部屋の襖を開けはらって、昨日のようにまた四人で朝飯をとったのですが、昨夜の情事を二人に見られていたかと思うと私自身、多少気まずくなるくらいでしたから、妻はなおさらのことでしたでしょう。喋るのは宮森と愛梨ばかりで、私たち夫婦は黙々と食事をしていました。なに、宮森や愛梨だって事情は似たようなものだったのですが・・。
車がないので観光しようにも足がなく、またこの宿がある一帯の閑静な雰囲気が気に入ったので、午前中は特に何をするでもなく無為に過ごしました。午後になって宮森が、〔皆で辺りを散歩しないか?〕と誘ってきたので、四人そろって宿を出たのです。なぜか私と愛梨、美穂と宮森の組み合わせになる。
近くに寄ってきた愛梨が、〚ね、昨夜は凄かったですね。〛と囁くように言いました。私は後ろの妻と宮森を気にしながら、ぶっきらぼうな口調で「何が?」と答えます。〚分かっているくせに・・・。〛、「・・・・・」、〚奥さん、あんなに乱れることもあるのね。普段の楚々とした感じからは想像もできないくらい。凄くエロティックで魅力的だったわ。〛愛梨はそう言いましたが、実のところ私だってあれほど感じている美穂の姿を見たのは昨夜が初めてだったのです。
「君たちだって盛り上がっていたんじゃないのか?」
私が言い返すと、愛梨は軽く笑って手を振りました。
〚駄目駄目。あなたたちが始めだしたら、あのひとね、そっちのほうが気になっちゃって。ほら、あのひとは前から美穂さんのファンでしょ。だからね。〛
〚あのひと〛とはもちろん宮森のことで、その宮森は私たちの背後で妻にあれこれと喋りかけています。妻の美穂がそれに対して言葉少なく相槌を打っているのを横目で見て、私はふとあることに思い至りました。
あの日・・・宮森が我が家へやってきて、妻に〔セックスはお嫌いですか?〕〔ご主人では満足出来ない?〕などと問いかけたあの日のことです。私はそれ以前からうまくいっていなかった妻にはじめて離婚を切りだし、そしてその夜、美穂は私のベッドへ忍んできたのです。あのとき妻はこのままでは離婚してしまう、だからなんとか私を引きとめようとしてあのような行動に出たと説明しました。
しかし、私は昨夜のことを思い出しました。隣室で睦みあう宮森たちの声を聞きながら、密かに秘所を濡らしていた美穂。そのことを私に知られ、妻は恥じらい悶えながら私の愛撫に泣き乱れた・・・。それは私がかつて見たことのない美穂の姿でした。
2015/10/11
驚きとともに見つめる私(中津川潤一34歳)の目に、その意を汲み取ったのか、妻の美穂(みほ29歳)はほとんど泣きそうな表情になって、私の胸に顔を押し付けてきます。それがきっかけとなり、私はほとんど我を忘れるような強い欲情の中、今までにないほど荒々しいやり方で妻を抱いたのでした。
崩された浴衣を腰の辺りに巻きつけたまま、下着だけすべて剥ぎ取られた格好の美穂は、私の腕の中でしばらくは必死になって声を殺していましたが、やがて耐えきれぬげに「あっ、あっ」と啼きはじめます。とめようとしてとめられないその声は、男の心をさらに加虐的にさせずにはおかないような哀婉な調子を含んでいました。
いつの間にか、隣室の声はやんでいました。宮森精二(34歳)と東出愛梨(ひがしで・あいり26歳)はどうしているのでしょうか?ひょっとしたら、いやおそらくは間違いなく、暗闇に紛れて少しだけ開いた襖の間から、私たち夫婦の情事を眺めているのでしょう。
私の下で悦びを喰い締めながら、愛らしい泣き声をあげている妻は。
『は、っ、ああっ、ああんっ・・・。』
そして私は果てました。それと同時に抱きしめた美穂の身体のびくびくと痙攣する感触が、いつまでも腕の中に残りました。
次の日の朝、目覚めると横に美穂の姿はありませんでした。しばらくして部屋へ戻ってきた妻に「どこへ行ってた?」と聞くと、『お風呂に・・・。』そう短く答えるその様子はいつもの妻でしたが、やはり昨夜の乱れ方を恥じているのか目を合わせようとはしませんでした。
その後、部屋の襖を開けはらって、昨日のようにまた四人で朝飯をとったのですが、昨夜の情事を二人に見られていたかと思うと私自身、多少気まずくなるくらいでしたから、妻はなおさらのことでしたでしょう。喋るのは宮森と愛梨ばかりで、私たち夫婦は黙々と食事をしていました。なに、宮森や愛梨だって事情は似たようなものだったのですが・・。
車がないので観光しようにも足がなく、またこの宿がある一帯の閑静な雰囲気が気に入ったので、午前中は特に何をするでもなく無為に過ごしました。午後になって宮森が、〔皆で辺りを散歩しないか?〕と誘ってきたので、四人そろって宿を出たのです。なぜか私と愛梨、美穂と宮森の組み合わせになる。
近くに寄ってきた愛梨が、〚ね、昨夜は凄かったですね。〛と囁くように言いました。私は後ろの妻と宮森を気にしながら、ぶっきらぼうな口調で「何が?」と答えます。〚分かっているくせに・・・。〛、「・・・・・」、〚奥さん、あんなに乱れることもあるのね。普段の楚々とした感じからは想像もできないくらい。凄くエロティックで魅力的だったわ。〛愛梨はそう言いましたが、実のところ私だってあれほど感じている美穂の姿を見たのは昨夜が初めてだったのです。
「君たちだって盛り上がっていたんじゃないのか?」
私が言い返すと、愛梨は軽く笑って手を振りました。
〚駄目駄目。あなたたちが始めだしたら、あのひとね、そっちのほうが気になっちゃって。ほら、あのひとは前から美穂さんのファンでしょ。だからね。〛
〚あのひと〛とはもちろん宮森のことで、その宮森は私たちの背後で妻にあれこれと喋りかけています。妻の美穂がそれに対して言葉少なく相槌を打っているのを横目で見て、私はふとあることに思い至りました。
あの日・・・宮森が我が家へやってきて、妻に〔セックスはお嫌いですか?〕〔ご主人では満足出来ない?〕などと問いかけたあの日のことです。私はそれ以前からうまくいっていなかった妻にはじめて離婚を切りだし、そしてその夜、美穂は私のベッドへ忍んできたのです。あのとき妻はこのままでは離婚してしまう、だからなんとか私を引きとめようとしてあのような行動に出たと説明しました。
しかし、私は昨夜のことを思い出しました。隣室で睦みあう宮森たちの声を聞きながら、密かに秘所を濡らしていた美穂。そのことを私に知られ、妻は恥じらい悶えながら私の愛撫に泣き乱れた・・・。それは私がかつて見たことのない美穂の姿でした。
2015/10/11
名F【どうなるの?】その15
名F【どうなるの?】その15
その14
《もしかすると妻(中津川美穂:なかつがわ・みほ:29歳)は恥ずかしさで感じてしまう女なのではないか?》と、私(中津川潤一:なかつがわ・じゅんじ:34歳)は思いました。羞恥心が人一倍強いだけに、羞恥を強制されると性感を刺激されてしまう女。もしそうだとすると、あの日妻がベッドへ忍んできたのは、私を引き止めるだけでなく、宮森精二(みやもり・せいじ:34歳)の言葉による嬲(なぶ)りで火照った身体を鎮めて欲しかったからではないのか・・・。
〚何を考えているの?〛物思いに耽っている私をおかしそうに見て、東出愛梨(ひがしで・あいり:26歳)がまるで以前からの恋人か夫婦のように、自然な仕草で不意に腕を絡めて
きます。〚自然にして。奥さんが見ているわ。〛愛梨の狙いが分かりました。今夜実行する予定のスワッピングの布石として、私と愛梨の親密さを妻へ見せつけようというのです。私は後ろを振り返らずに、なるべく自然な様子で愛梨と腕を組み、歩きました。
そうしてまた夜がやってきました。
〚ああ、いい気持ち。ここは本当にいいところだわ。〛
畳の上に仰向けに倒れながら、愛梨はしみじみとした口調で言います。その顔は酒でほんのり赤く染まっていました。
〚静かで、ゆったりできて、何もかも忘れて開放的な気分になれちゃう。こんな気持ち、大学のとき以来よ。〛
そう言うと愛梨は潤んだ瞳で、私を見上げてきます。
《さすが女優と感心するというか・・・怖ろしくもなる。》
〔こらこら、大学時代の焼けぼっくいに火がついたんじゃないだろうな?〕
酒を飲んでいた宮森が横から茶々をいれると、愛梨は余裕の表情です。
〚いいじゃない、中津川さんとは本当に久しぶりに会ったんだから。ね。〛
そう言うと愛梨は悪戯な顔になり、〚ごろにゃーん。〛って言いながら、猫の真似をして私に抱きついてきました。
「おいおい、本気で酔っているな。」
私はなかば本当に慌てて愛梨に言いますが、
〚にゃーん。〛
彼女はなおも猫の真似をしてしがみつき、離れません。
私が妻の美穂を見ると、向こうもこちらを見つめていたようで、慌てて目を逸らすのが見えました。そのまま妻の手がグラスに伸びます。普段、酒を飲まない彼女にしては珍しく、美穂はその夜は多く飲んでいました。傍らに妻がいるのに、はしたなく夫に絡んでくる愛梨や、そんな愛梨にデレデレ? している私を苦々しく思っているのでしょうか。表情の読めない女なので、よく分かりません。 その16へ続く
2016/11/06
その14
《もしかすると妻(中津川美穂:なかつがわ・みほ:29歳)は恥ずかしさで感じてしまう女なのではないか?》と、私(中津川潤一:なかつがわ・じゅんじ:34歳)は思いました。羞恥心が人一倍強いだけに、羞恥を強制されると性感を刺激されてしまう女。もしそうだとすると、あの日妻がベッドへ忍んできたのは、私を引き止めるだけでなく、宮森精二(みやもり・せいじ:34歳)の言葉による嬲(なぶ)りで火照った身体を鎮めて欲しかったからではないのか・・・。
〚何を考えているの?〛物思いに耽っている私をおかしそうに見て、東出愛梨(ひがしで・あいり:26歳)がまるで以前からの恋人か夫婦のように、自然な仕草で不意に腕を絡めて
きます。〚自然にして。奥さんが見ているわ。〛愛梨の狙いが分かりました。今夜実行する予定のスワッピングの布石として、私と愛梨の親密さを妻へ見せつけようというのです。私は後ろを振り返らずに、なるべく自然な様子で愛梨と腕を組み、歩きました。
そうしてまた夜がやってきました。
〚ああ、いい気持ち。ここは本当にいいところだわ。〛
畳の上に仰向けに倒れながら、愛梨はしみじみとした口調で言います。その顔は酒でほんのり赤く染まっていました。
〚静かで、ゆったりできて、何もかも忘れて開放的な気分になれちゃう。こんな気持ち、大学のとき以来よ。〛
そう言うと愛梨は潤んだ瞳で、私を見上げてきます。
《さすが女優と感心するというか・・・怖ろしくもなる。》
〔こらこら、大学時代の焼けぼっくいに火がついたんじゃないだろうな?〕
酒を飲んでいた宮森が横から茶々をいれると、愛梨は余裕の表情です。
〚いいじゃない、中津川さんとは本当に久しぶりに会ったんだから。ね。〛
そう言うと愛梨は悪戯な顔になり、〚ごろにゃーん。〛って言いながら、猫の真似をして私に抱きついてきました。
「おいおい、本気で酔っているな。」
私はなかば本当に慌てて愛梨に言いますが、
〚にゃーん。〛
彼女はなおも猫の真似をしてしがみつき、離れません。
私が妻の美穂を見ると、向こうもこちらを見つめていたようで、慌てて目を逸らすのが見えました。そのまま妻の手がグラスに伸びます。普段、酒を飲まない彼女にしては珍しく、美穂はその夜は多く飲んでいました。傍らに妻がいるのに、はしたなく夫に絡んでくる愛梨や、そんな愛梨にデレデレ? している私を苦々しく思っているのでしょうか。表情の読めない女なので、よく分かりません。 その16へ続く
2016/11/06
名F【どうなるの?】その16
名F【どうなるの?】その16
その15 2016/11/06
私(中津川潤一:なかつがわ・じゅんじ:34歳)が妻の美穂を見ると、向こうもこちらを見つめていたようで、慌てて目を逸らすのが見えます。そのまま妻(中津川美穂:なかつがわ・みほ:29歳)の手がグラスに伸びました。普段、酒を飲まない彼女にしては珍しく、美穂はその夜は多く飲んでいます。
なおもしばらくの間、部屋でだらだらと酒を飲んだ後、私たちは床につきました。そして一時間後。ごそごそと起きだした私を見て、妻はいぶかしげな表情になります。
『どうなさったんですか?』
「風呂に入ってくる。」
この宿の風呂は二十四時間入れるのでした。
『そうですか・・・。』
何も知らない美穂はまた瞳を閉じます。
私が室内を出ると、玄関にはすでに東出愛梨(ひがしで・あいり:26歳)がいました。すべて打ち合わせのとおりです。私たちは目と目で合図をした後、その場にしゃがみこみました。しばらくして。
〔奥さん、起きていますか?〕
室内から宮森精二(みやもり・せいじ:34歳)の声が聞こえてきます。
『あっ・・・はい。』
小さな声で妻が答えるのが聞こえました。続いて襖の開く音がします。
〔そちらの部屋に中津川は・・・。いませんね。〕
最初に〔奥さん〕と美穂だけに呼びかけているので、よくよく考えるとおかしな宮森の言葉でした。妻は緊張を含んだ声です。
『主人はお風呂へ行っております。』
って答えました。
〔やっぱりね・・・。愛梨もいま風呂に行っているんですよ。〕
『・・・・・。』
〔我が妻ながら大胆な女ですな。主人のおれを残して、他の男と逢瀬とはね。そしてあな
たのご主人もね。〕
『・・お風呂へ行っているだけじゃないですか・・・。』
〔混浴風呂にね。そしてこの時間なら他の客はいないよ。奥さんだって昼間のあのふたりの様子を見たでしょう。〕
暗闇の中で思わず愛梨と目が合います。彼女は含み笑いをしていましたが、私は妻の美穂が気になってそれどころではありませんでした。 その17に続く
2018/08/27
その15 2016/11/06
私(中津川潤一:なかつがわ・じゅんじ:34歳)が妻の美穂を見ると、向こうもこちらを見つめていたようで、慌てて目を逸らすのが見えます。そのまま妻(中津川美穂:なかつがわ・みほ:29歳)の手がグラスに伸びました。普段、酒を飲まない彼女にしては珍しく、美穂はその夜は多く飲んでいます。
なおもしばらくの間、部屋でだらだらと酒を飲んだ後、私たちは床につきました。そして一時間後。ごそごそと起きだした私を見て、妻はいぶかしげな表情になります。
『どうなさったんですか?』
「風呂に入ってくる。」
この宿の風呂は二十四時間入れるのでした。
『そうですか・・・。』
何も知らない美穂はまた瞳を閉じます。
私が室内を出ると、玄関にはすでに東出愛梨(ひがしで・あいり:26歳)がいました。すべて打ち合わせのとおりです。私たちは目と目で合図をした後、その場にしゃがみこみました。しばらくして。
〔奥さん、起きていますか?〕
室内から宮森精二(みやもり・せいじ:34歳)の声が聞こえてきます。
『あっ・・・はい。』
小さな声で妻が答えるのが聞こえました。続いて襖の開く音がします。
〔そちらの部屋に中津川は・・・。いませんね。〕
最初に〔奥さん〕と美穂だけに呼びかけているので、よくよく考えるとおかしな宮森の言葉でした。妻は緊張を含んだ声です。
『主人はお風呂へ行っております。』
って答えました。
〔やっぱりね・・・。愛梨もいま風呂に行っているんですよ。〕
『・・・・・。』
〔我が妻ながら大胆な女ですな。主人のおれを残して、他の男と逢瀬とはね。そしてあな
たのご主人もね。〕
『・・お風呂へ行っているだけじゃないですか・・・。』
〔混浴風呂にね。そしてこの時間なら他の客はいないよ。奥さんだって昼間のあのふたりの様子を見たでしょう。〕
暗闇の中で思わず愛梨と目が合います。彼女は含み笑いをしていましたが、私は妻の美穂が気になってそれどころではありませんでした。 その17に続く
2018/08/27
名F【どうなるの?】その17
名F【どうなるの?】その17
その16 2018/08/27
〔我が妻(東出愛梨:ひがしで・あいり:26歳)ながら大胆な女です。主人(宮森精二:みやもり・せいじ:34歳)のおれを残して、他の男(中津川潤一:なかつがわ・じゅんじ:34歳)と逢瀬とはね。〕
『・・お風呂へ行っているだけじゃないですか?』
〔中津川もひどい奴ですね。こんな美しいひとを置いて・・他の女と・・。〕
『・・それ以上は寄らないでください。』
妻(中津川美穂:なかつがわ・みほ:29歳)の声は震えています。
〔聞いてください。私は何も残された者同士、傷を舐めあおうと思っているわけではあり
ません。私はあなたが好きです。〕
宮森の言葉を聞いて、それが演技だと分かっているにも関わらず、私の胸はざわめきました。
〔はじめて会ったときから、あなたに惚れていた。あなたが中津川の、私にとって唯一親友と呼べるあいつの妻だという事実が憎かった。私はわるい男です。他の男だったら、私はどんな手を使ってでもあなたを奪いとったことでしょう。でもあいつだけは裏切れない。だが中津川はあなたを裏切ったんだ。〕
『ああ・・・。』
吐息まじりの美穂の呻きが聞こえました。
〔泣いているのですか?〕
『・・・・・・。』
妻のすすり泣く声がします。私はそれ以上聞いていられませんでした。自分が望んでしたことにも関わらず、いざ美穂の泣き声を聞くと、心が痛んで仕方ありません。《もういい、何もかも嘘だ! すべて茶番だったんだ! だから泣かないで!》と、私はもう少しでそう叫びながら、部屋へ飛び込むところでした。そうしなかったのは、そのときわずかに室内の明かりが灯り、障子の曇りガラス越しに、座りこんだ妻と彼女を抱く宮森の姿が映ったからです。
〔泣かないでください。〕」
私が言うはずだったセリフを宮森が言いました。今まで彼の口から聞いたことがないような、優しい声です。
〔心配しないで・・大丈夫。〕
それで先ほどとは別の意味で、弱い私には妻の美穂と宮森の会話をそれ以上聞いていられなかったので、私は静かに外へ出ました。 その18に続く
2018/08/28
その16 2018/08/27
〔我が妻(東出愛梨:ひがしで・あいり:26歳)ながら大胆な女です。主人(宮森精二:みやもり・せいじ:34歳)のおれを残して、他の男(中津川潤一:なかつがわ・じゅんじ:34歳)と逢瀬とはね。〕
『・・お風呂へ行っているだけじゃないですか?』
〔中津川もひどい奴ですね。こんな美しいひとを置いて・・他の女と・・。〕
『・・それ以上は寄らないでください。』
妻(中津川美穂:なかつがわ・みほ:29歳)の声は震えています。
〔聞いてください。私は何も残された者同士、傷を舐めあおうと思っているわけではあり
ません。私はあなたが好きです。〕
宮森の言葉を聞いて、それが演技だと分かっているにも関わらず、私の胸はざわめきました。
〔はじめて会ったときから、あなたに惚れていた。あなたが中津川の、私にとって唯一親友と呼べるあいつの妻だという事実が憎かった。私はわるい男です。他の男だったら、私はどんな手を使ってでもあなたを奪いとったことでしょう。でもあいつだけは裏切れない。だが中津川はあなたを裏切ったんだ。〕
『ああ・・・。』
吐息まじりの美穂の呻きが聞こえました。
〔泣いているのですか?〕
『・・・・・・。』
妻のすすり泣く声がします。私はそれ以上聞いていられませんでした。自分が望んでしたことにも関わらず、いざ美穂の泣き声を聞くと、心が痛んで仕方ありません。《もういい、何もかも嘘だ! すべて茶番だったんだ! だから泣かないで!》と、私はもう少しでそう叫びながら、部屋へ飛び込むところでした。そうしなかったのは、そのときわずかに室内の明かりが灯り、障子の曇りガラス越しに、座りこんだ妻と彼女を抱く宮森の姿が映ったからです。
〔泣かないでください。〕」
私が言うはずだったセリフを宮森が言いました。今まで彼の口から聞いたことがないような、優しい声です。
〔心配しないで・・大丈夫。〕
それで先ほどとは別の意味で、弱い私には妻の美穂と宮森の会話をそれ以上聞いていられなかったので、私は静かに外へ出ました。 その18に続く
2018/08/28
名F【どうなるの?】その18
名F【どうなるの?】その18
その17 2018/08/28
妻(中津川美穂:なかつがわ・みほ:29歳)と宮森精二(みやもり・せいじ:34歳)の会話をそれ以上聞いていられなかったので、私(中津川潤一:なかつがわ・じゅんじ:34歳)は静かに外へ出ます。
〚なんで出て来っちゃったんです? いいところだったのに。〛
先ほどの宮森と美穂を思い出しながら、ぼんやり風呂に浸かっている私に、東出愛梨(ひがしで・あいり:26歳)が話しかけてきました。
「いや、分からないけど聞いてられなくて・・。」
〚美穂さんを愛しているのね。でもなおさら分からないわ。今度の事はそもそも中津川さんが計画したんでしょ? わたしはそう聞いているけど・・・。〛
「それは・・・そうだよ。」
〚それなのにいざ奥さんが他の男に口説かれるときには、聞いていられなくて逃げちゃうなんて・・・。男心は複雑なのね。〛
愛梨はふざけた口調でそう言って、ぺろっと舌を出します。私は苦笑しました。
ちゃぽん・・・。流石にこの時間の風呂は他に利用客もなく、辺りは静まりかえっていて、湯のたてる音だけが時折響いています。
〚ねえ・・・。〛
近寄ってきた愛梨が、私の腕をとりました。軽く触れた乳房の感触に、私は情欲を覚えます。
〚あれから宮森と奥さんがどうなったか気にならないの?〛
「・・・・・」
「もしかして今頃はもう」
そう囁きかける愛梨の瞳は、小悪魔のように妖しく揺らめいていました。
〚奥さん、アレのとき、とってもいい声で泣くのね。昨夜は聞いていて、こっちまでぽおっとなっちゃった。〛
「・・・・・」
〚宮森はとっても上手いのよ。わたし、いっつも泣かされるの。泣くまいと思っていても、やっぱり泣かされて、最後はいつも「挿れて、挿れて」っておねだりしちゃうの。私でさえそうなんだから、素人の奥さんじゃひとたまりもな、あっ・・。〛
気がつくと、私は手を伸ばし、愛梨の乳首を強く摘まんでいました。
〚怒った?〛
「違う。」
〚怒ったんだ・・・。〛
くすくすと笑いながら愛梨は、私の耳たぶを甘く噛みました。私も我を忘れて愛梨の見事な乳房を掌に包み、揉みたてます。 その19に続く
2018/10/28
その17 2018/08/28
妻(中津川美穂:なかつがわ・みほ:29歳)と宮森精二(みやもり・せいじ:34歳)の会話をそれ以上聞いていられなかったので、私(中津川潤一:なかつがわ・じゅんじ:34歳)は静かに外へ出ます。
〚なんで出て来っちゃったんです? いいところだったのに。〛
先ほどの宮森と美穂を思い出しながら、ぼんやり風呂に浸かっている私に、東出愛梨(ひがしで・あいり:26歳)が話しかけてきました。
「いや、分からないけど聞いてられなくて・・。」
〚美穂さんを愛しているのね。でもなおさら分からないわ。今度の事はそもそも中津川さんが計画したんでしょ? わたしはそう聞いているけど・・・。〛
「それは・・・そうだよ。」
〚それなのにいざ奥さんが他の男に口説かれるときには、聞いていられなくて逃げちゃうなんて・・・。男心は複雑なのね。〛
愛梨はふざけた口調でそう言って、ぺろっと舌を出します。私は苦笑しました。
ちゃぽん・・・。流石にこの時間の風呂は他に利用客もなく、辺りは静まりかえっていて、湯のたてる音だけが時折響いています。
〚ねえ・・・。〛
近寄ってきた愛梨が、私の腕をとりました。軽く触れた乳房の感触に、私は情欲を覚えます。
〚あれから宮森と奥さんがどうなったか気にならないの?〛
「・・・・・」
「もしかして今頃はもう」
そう囁きかける愛梨の瞳は、小悪魔のように妖しく揺らめいていました。
〚奥さん、アレのとき、とってもいい声で泣くのね。昨夜は聞いていて、こっちまでぽおっとなっちゃった。〛
「・・・・・」
〚宮森はとっても上手いのよ。わたし、いっつも泣かされるの。泣くまいと思っていても、やっぱり泣かされて、最後はいつも「挿れて、挿れて」っておねだりしちゃうの。私でさえそうなんだから、素人の奥さんじゃひとたまりもな、あっ・・。〛
気がつくと、私は手を伸ばし、愛梨の乳首を強く摘まんでいました。
〚怒った?〛
「違う。」
〚怒ったんだ・・・。〛
くすくすと笑いながら愛梨は、私の耳たぶを甘く噛みました。私も我を忘れて愛梨の見事な乳房を掌に包み、揉みたてます。 その19に続く
2018/10/28
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