名F【どうなるの?】その11
名F【どうなるの?】その11
奥飛騨の宿には夕方の5時過ぎに着きました。
「僕たちの部屋は隣同士らしいぞ!」
チェックインに行っていた私と宮森は戻ってきて、互いの相方へ言います。
「さっき部屋の空き状況を確認したときに僕が電話をかけたものだから、宿のほうが気を遣って、僕と美穂があらかじめ予約していた部屋を二間の部屋へ変えていたんだ。四人連れと思ったみたいだな。」
もちろんこの説明は嘘です。事実は最初に宿をとったときから、そう指定しておいたのでした。「二つの部屋の間は襖で仕切ってあるらしいが、どうだ?」愛梨が〚私はかまわないわ。〛って即座に答えました。妻の美穂はちらりと私を見ました。その瞳が何か言いたげであるように見えましたが、彼女の唇から出てきたのは『私もかまわないです。』という一言でした。
私たちの泊まる部屋は決して豪奢な造りではありませんが、小奇麗でさっぱりした感じのいい和室でした。窓の外には山深い奥飛騨の緑が、都会の騒がしさに馴れた者をやさしく
包むように広がっています。
「いい部屋じゃないか。」
『そうですね。』
妻の美穂は微笑みながら短く答えましたが、その微笑みはどこか弱々しく、無理をしているような印象でした。当然でしょう。夫婦水いらずで静かな温泉郷でゆっくりと休日をとるはずが、得体の知れない夫の友人とその妻が突然現れ、襖一枚ごしの隣室に宿をとり、以後の休日をずっと一緒に過ごす気配を見せているのですから。もともと人付き合いの苦手な妻には、なおさら負担になっているはずです。しかし、それでも彼女の物腰には、無
神経な夫への怒りや不満のようなものは見えず、なおさら私に罪の意識を覚えさせます。
“美穂を抱いてみたくはないか?”そんな私の非常識な提案にのった宮森が立てたのが今回の旅行計画でした。目的は〖スワッピング〗です。つまり私たち夫婦と宮森・愛梨のカップル(妻には夫婦と言っていますが)が、互いに相手を代えてセックスをするのです。いかにも身持ちの堅そうな妻を堕とすために、まず夫たる私が率先して他の女性(しかも人妻)と関係する場面を見せつけ、それから宮森が美穂を口説き落とすという計画でした。
「しかし愛梨さんはそんな役割を承知してくれるかな?」
〔あいつがこんな面白い話を蹴るはずがない。心配はいらないよ。それより問題はお前の
ほうだ。覚悟はちゃんと出来ているんだろうな。〕
電話越しに宮森が低い声で確認してきました。宮森の言う覚悟とはもちろん、妻の美穂を宮森の自由にさせる覚悟のことです。
正直、計画を立てた段階では、美穂が実際に宮森に抱かれることになるかは分かりませんし、もしそうならなかった場合、後の夫婦関係がどうなっていくのかも分かりません。また、もし美穂が宮森に抱かれたとしても、それから先がどうなるのか、まったく予想できません。まさに一寸先は闇、下手すると今まで築いてきた幸福すべてを失う可能性だってあるのです。それでも私は宮森に答えました。「覚悟は出来ている。何が起こっても後悔はしない。」その時、私はたしかに何かに憑かれていました。
2015/03/22
奥飛騨の宿には夕方の5時過ぎに着きました。
「僕たちの部屋は隣同士らしいぞ!」
チェックインに行っていた私と宮森は戻ってきて、互いの相方へ言います。
「さっき部屋の空き状況を確認したときに僕が電話をかけたものだから、宿のほうが気を遣って、僕と美穂があらかじめ予約していた部屋を二間の部屋へ変えていたんだ。四人連れと思ったみたいだな。」
もちろんこの説明は嘘です。事実は最初に宿をとったときから、そう指定しておいたのでした。「二つの部屋の間は襖で仕切ってあるらしいが、どうだ?」愛梨が〚私はかまわないわ。〛って即座に答えました。妻の美穂はちらりと私を見ました。その瞳が何か言いたげであるように見えましたが、彼女の唇から出てきたのは『私もかまわないです。』という一言でした。
私たちの泊まる部屋は決して豪奢な造りではありませんが、小奇麗でさっぱりした感じのいい和室でした。窓の外には山深い奥飛騨の緑が、都会の騒がしさに馴れた者をやさしく
包むように広がっています。
「いい部屋じゃないか。」
『そうですね。』
妻の美穂は微笑みながら短く答えましたが、その微笑みはどこか弱々しく、無理をしているような印象でした。当然でしょう。夫婦水いらずで静かな温泉郷でゆっくりと休日をとるはずが、得体の知れない夫の友人とその妻が突然現れ、襖一枚ごしの隣室に宿をとり、以後の休日をずっと一緒に過ごす気配を見せているのですから。もともと人付き合いの苦手な妻には、なおさら負担になっているはずです。しかし、それでも彼女の物腰には、無
神経な夫への怒りや不満のようなものは見えず、なおさら私に罪の意識を覚えさせます。
“美穂を抱いてみたくはないか?”そんな私の非常識な提案にのった宮森が立てたのが今回の旅行計画でした。目的は〖スワッピング〗です。つまり私たち夫婦と宮森・愛梨のカップル(妻には夫婦と言っていますが)が、互いに相手を代えてセックスをするのです。いかにも身持ちの堅そうな妻を堕とすために、まず夫たる私が率先して他の女性(しかも人妻)と関係する場面を見せつけ、それから宮森が美穂を口説き落とすという計画でした。
「しかし愛梨さんはそんな役割を承知してくれるかな?」
〔あいつがこんな面白い話を蹴るはずがない。心配はいらないよ。それより問題はお前の
ほうだ。覚悟はちゃんと出来ているんだろうな。〕
電話越しに宮森が低い声で確認してきました。宮森の言う覚悟とはもちろん、妻の美穂を宮森の自由にさせる覚悟のことです。
正直、計画を立てた段階では、美穂が実際に宮森に抱かれることになるかは分かりませんし、もしそうならなかった場合、後の夫婦関係がどうなっていくのかも分かりません。また、もし美穂が宮森に抱かれたとしても、それから先がどうなるのか、まったく予想できません。まさに一寸先は闇、下手すると今まで築いてきた幸福すべてを失う可能性だってあるのです。それでも私は宮森に答えました。「覚悟は出来ている。何が起こっても後悔はしない。」その時、私はたしかに何かに憑かれていました。
2015/03/22
- 関連記事
-
- 【どうなるの?】その4 (2014/12/22)
- 名F【どうなるの?】その5 (2015/01/20)
- 名F【どうなるの?】その6 (2015/01/24)
- 名F【どうなるの?】その7 (2015/01/31)
- 名F【どうなるの?】その8 (2015/02/23)
- 名F【どうなるの?】その9 (2015/03/13)
- 名F【どうなるの?】その10 (2015/03/16)
- 名F【どうなるの?】その11 (2015/03/22)
- 名F【どうなるの?】その12 (2015/03/29)
- 名F【どうなるの?】その13 (2015/07/26)
- 名F【どうなるの?】その14 (2015/10/11)
- 名F【どうなるの?】その15 (2016/11/06)
- 名F【どうなるの?】その16 (2018/08/27)
- 名F【どうなるの?】その17 (2018/08/28)
- 名F【どうなるの?】その18 (2018/10/28)
コメント
コメントの投稿