名F【どうなるの?】その12
名F【どうなるの?】その12
〔おーい、これからおれたち、宿の温泉へ行くんだが、そっちはどうする?〕
「俺たちも行くよ。」
襖越しに聞こえてきた宮森の声に私は答えました。宿の背後に鬱蒼と茂る木立に臨んで、露天風呂が湯気をたてていました。近くに渓流があるのか、川のせせらぎの音も聞こえています。
私と宮森が先に風呂につかっていると、やがて愛梨が女用の更衣室から出てきました。タオルで腰を、腕で乳房を隠しているだけの姿です。私は眩しげに瞳を逸らしながら、「美穂(みほ)は?」と尋ねました。
〚奥さま、混浴だってことご存知なかったのね。恥ずかしがってしまったみたいで、いくら説得しても出てこないのよ。〛
妻ならいかにもありそうなことです。私は立ち上がって、女用の更衣室に近づきました。人影がひとつ、曇りガラス越しに見えています。
「美穂?」
『・・・・』
私はわざと冷たい口調で「早く出てくるんだ。子供じゃあるまいし、何を恥ずかしがっている。早く来い!」と言いました。これからのことを考えると、心を鬼にすることはどうしても必要です。普段とは違う私の冷酷な声音に、妻の美穂は一瞬びくりとしたようです。数分後、衣服を脱いだ妻が出てきました。
左手で乳房を隠し、右手に持ったタオルで股間を隠しながら、妻がゆっくりと歩いてきます。途中、ちらっと私と目が合いましたが、すぐに羞じたように目を逸らせます。時刻はもう夕暮れでしたが、夏のことでまだ日は高く、うっすらとした西日が妻の白い裸身をかすかに染めていました。
宮森を見ると、彼はいつものように鷹揚にかまえ、愛梨とふざけあっていましたが、その実、視線はちらちらと妻を見ています。愛梨はそんな宮森を見て、耳元で何か囁きました。
かけ湯を浴びた後、美穂はやっと湯船のところまでやってきました。私の浸かっている湯のすぐ近くに立って私を見ます。
私がうなずくと、美穂は諦めたようにタオルを置いて、皆の前で裸を晒しつつ、湯船に足を沈めました。〚美穂さんたら、いまどき混浴くらいでそんな悲壮な顔することないじゃない。私だって裸なんだから。〛愛梨が明るく声をかけて、美穂はかすかな微笑でそれに応えましたが、決して宮森や愛梨と視線を合わせようとはしませんでした。
「わるいな。うちのはこういうのになれてなくてね。」
〚あら、私だって別になれているわけじゃないですよ。〛
唇を尖らせた愛梨が、くねくねと肢体をゆすって抗議します。その仕草は美穂の抑制された色気とは別種の、挑発するような艶っぽさを放っていました。
〚それにしても美穂さん、白いし細いし、本当に綺麗な身体をしているのねえ、うらやましいわ。ね、そう思わない?〛
愛梨がはしゃいだ口調で宮森に問います。宮森は先ほどからはもはや遠慮のない視線を美穂に向けていましたが、
〔たしかに綺麗だけど、俺がうらやましいのは美穂さんじゃなくて中津川だよ。こんなひとを奥さんにしているんだからな。〕
そう言って、にかっと笑いました。その言葉に妻の美穂はますます身を縮こませ、その身体は湯の熱さのためばかりでなく、仄赤く染まっています。
2015/03/29
〔おーい、これからおれたち、宿の温泉へ行くんだが、そっちはどうする?〕
「俺たちも行くよ。」
襖越しに聞こえてきた宮森の声に私は答えました。宿の背後に鬱蒼と茂る木立に臨んで、露天風呂が湯気をたてていました。近くに渓流があるのか、川のせせらぎの音も聞こえています。
私と宮森が先に風呂につかっていると、やがて愛梨が女用の更衣室から出てきました。タオルで腰を、腕で乳房を隠しているだけの姿です。私は眩しげに瞳を逸らしながら、「美穂(みほ)は?」と尋ねました。
〚奥さま、混浴だってことご存知なかったのね。恥ずかしがってしまったみたいで、いくら説得しても出てこないのよ。〛
妻ならいかにもありそうなことです。私は立ち上がって、女用の更衣室に近づきました。人影がひとつ、曇りガラス越しに見えています。
「美穂?」
『・・・・』
私はわざと冷たい口調で「早く出てくるんだ。子供じゃあるまいし、何を恥ずかしがっている。早く来い!」と言いました。これからのことを考えると、心を鬼にすることはどうしても必要です。普段とは違う私の冷酷な声音に、妻の美穂は一瞬びくりとしたようです。数分後、衣服を脱いだ妻が出てきました。
左手で乳房を隠し、右手に持ったタオルで股間を隠しながら、妻がゆっくりと歩いてきます。途中、ちらっと私と目が合いましたが、すぐに羞じたように目を逸らせます。時刻はもう夕暮れでしたが、夏のことでまだ日は高く、うっすらとした西日が妻の白い裸身をかすかに染めていました。
宮森を見ると、彼はいつものように鷹揚にかまえ、愛梨とふざけあっていましたが、その実、視線はちらちらと妻を見ています。愛梨はそんな宮森を見て、耳元で何か囁きました。
かけ湯を浴びた後、美穂はやっと湯船のところまでやってきました。私の浸かっている湯のすぐ近くに立って私を見ます。
私がうなずくと、美穂は諦めたようにタオルを置いて、皆の前で裸を晒しつつ、湯船に足を沈めました。〚美穂さんたら、いまどき混浴くらいでそんな悲壮な顔することないじゃない。私だって裸なんだから。〛愛梨が明るく声をかけて、美穂はかすかな微笑でそれに応えましたが、決して宮森や愛梨と視線を合わせようとはしませんでした。
「わるいな。うちのはこういうのになれてなくてね。」
〚あら、私だって別になれているわけじゃないですよ。〛
唇を尖らせた愛梨が、くねくねと肢体をゆすって抗議します。その仕草は美穂の抑制された色気とは別種の、挑発するような艶っぽさを放っていました。
〚それにしても美穂さん、白いし細いし、本当に綺麗な身体をしているのねえ、うらやましいわ。ね、そう思わない?〛
愛梨がはしゃいだ口調で宮森に問います。宮森は先ほどからはもはや遠慮のない視線を美穂に向けていましたが、
〔たしかに綺麗だけど、俺がうらやましいのは美穂さんじゃなくて中津川だよ。こんなひとを奥さんにしているんだからな。〕
そう言って、にかっと笑いました。その言葉に妻の美穂はますます身を縮こませ、その身体は湯の熱さのためばかりでなく、仄赤く染まっています。
2015/03/29
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