名F【どうなるの?】その8
名F【どうなるの?】その8
『・・・どうかしました?』美穂の声で私はふと我に返りました。ベッドの傍らを見ると、妻が物問いたげな目で私を見つめています。シーツに半分だけ隠された裸の乳房が、艶めかしく映りました。「いや、なんでもない。」その日は帰ってから、妻と睦みあう最中でさえ、私は宮森の言ったことを思い返しています。あの夜の出来事をきっかけに、日常生活でもベッドの中でもより近づくことの出来た妻。私の腕の中ですこし遠慮がちに、しかし蟲惑的に乱れる美穂の姿を眺めながら、私はいまだ彼女の中に秘匿されているであろう〖女〗を幻視していたのでした。
たしかに宮森の言うとおり、彼なら私以上に妻の〖女〗としての性をより深く開花させられたかもしれない、と思いました。宮森は男の私の目から見ても魅力的な男でしたし(外見が、というよりも、その内面から仄(ほの)見えるぎらぎらした雰囲気がです)、私は妻を単純に〖女〗としてだけ見るには彼女を愛しすぎていました。宮森が愛梨を愛するようには、私は美穂を愛せないと思いました。しかし、愛しているからこそ、もっともっと妻を知りたい、もっともっと剥きだしの姿を見てみたい。そんな激しい欲望も私の中にはたしかにあったのです。
そんなことがあってから、しばらく時間が過ぎました。若い頃は孤独を好むところもあった私ですが、本当の意味で妻と生きるようになってからは、彼女のために働き、彼女とともに過ごす時間が何よりも大事に思えるようになっていました。
不思議なことに妻の美穂を愛している自分を自覚するたびに、より深く妻を知りたいという衝動が大きくなっていきました。以前は側にいるのに孤独を感じていて、それでも触れられない妻がもどかしくて堪らなかったのですが、そのときとはまた別の気持ち、しかも以前よりずっと強い灼けつくような衝動です。私のまだ見ぬ美穂の姿を思い描くたびに、ふっと宮森の顔が浮かんできて、私を動揺させることもありました。
その頃には美穂との営みもだいぶ馴れたものになってきていて、ときには妻の両腕を紐で軽く縛るなど、SMめいたプレイも楽しんだりはしていました。『痛い・・・。』って微(かす)かに呟いて、妻は顔をうつむけます。両手を背中で縛られた彼女の乳房を隠しているのは、折り曲げた白い膝です。首筋から肩にかけての細く、淡い線が美穂そのもののように繊細な美を描いています。
「強く縛りすぎたかな?」
私が言うと、妻は首を横に振りました。
『大丈夫です。』
そう言って見上げた妻の瞳は頼りなく潤んでいて、私の胸を妖しくざわめかせました。この従順な、柔らかい生き物。彼女はいまこの瞬間、何を考えているのだろうとふと思います。たとえ問うたとしても、真実のところはやはり謎のままでしょう。人と人との間には埋まらない隙間があるものですが、その壁となるものは互いのエゴや醜い部分ばかりでなく、互いへの愛や優しさであったりもするのだと思います。だからこそ、幸福と淋しさはいつも背中合わせなのです。
這うように近づいていった私がゆっくりと両膝を押し開いていくと、美穂は『く・・・・っ。』
と小さく呻いて、いやいやするように首を振りました。
『駄目です。』
「何が駄目なんだ。このままじゃできないだろ。」
『せめて電気を消してください。』
「いやだ、このまま美穂を見ながらしたい。」
『優しく・・・。』
「してるじゃないか。」
私たちはまるで愛を囁きあうようにそんな会話をかわしながら、一つに繋がりました。
2015/02/23
『・・・どうかしました?』美穂の声で私はふと我に返りました。ベッドの傍らを見ると、妻が物問いたげな目で私を見つめています。シーツに半分だけ隠された裸の乳房が、艶めかしく映りました。「いや、なんでもない。」その日は帰ってから、妻と睦みあう最中でさえ、私は宮森の言ったことを思い返しています。あの夜の出来事をきっかけに、日常生活でもベッドの中でもより近づくことの出来た妻。私の腕の中ですこし遠慮がちに、しかし蟲惑的に乱れる美穂の姿を眺めながら、私はいまだ彼女の中に秘匿されているであろう〖女〗を幻視していたのでした。
たしかに宮森の言うとおり、彼なら私以上に妻の〖女〗としての性をより深く開花させられたかもしれない、と思いました。宮森は男の私の目から見ても魅力的な男でしたし(外見が、というよりも、その内面から仄(ほの)見えるぎらぎらした雰囲気がです)、私は妻を単純に〖女〗としてだけ見るには彼女を愛しすぎていました。宮森が愛梨を愛するようには、私は美穂を愛せないと思いました。しかし、愛しているからこそ、もっともっと妻を知りたい、もっともっと剥きだしの姿を見てみたい。そんな激しい欲望も私の中にはたしかにあったのです。
そんなことがあってから、しばらく時間が過ぎました。若い頃は孤独を好むところもあった私ですが、本当の意味で妻と生きるようになってからは、彼女のために働き、彼女とともに過ごす時間が何よりも大事に思えるようになっていました。
不思議なことに妻の美穂を愛している自分を自覚するたびに、より深く妻を知りたいという衝動が大きくなっていきました。以前は側にいるのに孤独を感じていて、それでも触れられない妻がもどかしくて堪らなかったのですが、そのときとはまた別の気持ち、しかも以前よりずっと強い灼けつくような衝動です。私のまだ見ぬ美穂の姿を思い描くたびに、ふっと宮森の顔が浮かんできて、私を動揺させることもありました。
その頃には美穂との営みもだいぶ馴れたものになってきていて、ときには妻の両腕を紐で軽く縛るなど、SMめいたプレイも楽しんだりはしていました。『痛い・・・。』って微(かす)かに呟いて、妻は顔をうつむけます。両手を背中で縛られた彼女の乳房を隠しているのは、折り曲げた白い膝です。首筋から肩にかけての細く、淡い線が美穂そのもののように繊細な美を描いています。
「強く縛りすぎたかな?」
私が言うと、妻は首を横に振りました。
『大丈夫です。』
そう言って見上げた妻の瞳は頼りなく潤んでいて、私の胸を妖しくざわめかせました。この従順な、柔らかい生き物。彼女はいまこの瞬間、何を考えているのだろうとふと思います。たとえ問うたとしても、真実のところはやはり謎のままでしょう。人と人との間には埋まらない隙間があるものですが、その壁となるものは互いのエゴや醜い部分ばかりでなく、互いへの愛や優しさであったりもするのだと思います。だからこそ、幸福と淋しさはいつも背中合わせなのです。
這うように近づいていった私がゆっくりと両膝を押し開いていくと、美穂は『く・・・・っ。』
と小さく呻いて、いやいやするように首を振りました。
『駄目です。』
「何が駄目なんだ。このままじゃできないだろ。」
『せめて電気を消してください。』
「いやだ、このまま美穂を見ながらしたい。」
『優しく・・・。』
「してるじゃないか。」
私たちはまるで愛を囁きあうようにそんな会話をかわしながら、一つに繋がりました。
2015/02/23
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