【どうなるの?】その3
名F【どうなるの?】その3
夜遅くになって3軒目の酒場を出、さてこれからどうしようかというときでした。不意に宮森が言います。
〔お前の家、ここから近かったよな。次はお前の家で飲もうぜ。〕
「バカを言うな。いま何時だと思っているんだ?」
しかし、妻の美穂はまだ起きているだろう。私はそう確信していました。今までどんなに遅く帰っても、美穂は先に寝ているなどということはありませんでした。
〔いいじゃないか。たかが悪友ひとり、夜遅くに連れ込んだところで、そんなことに文句を言う女房でもないんだろ?〕
宮森は不敵な笑みを浮かべて言いました。美穂もたいがい何を考えているのか分からない人間ですが、この男も相当なものです。私はついに根負けして、宮森を自宅に連れて行くことにしました。
マンションに帰り着いたころには、もう深夜3時を回っています。鍵を回してドアを開けると、予想通り美穂はまだ起きていて、玄関へやってきましたが、宮森の姿を目にして、はっと立ち止まりました。
「友達の宮森だ。」
〔どうも奥さん、お久しぶりです。結婚式以来ですな。〕
「きょうは久々に会ったから、これから家で飲み直す。酒とツマミの用意を頼む。」
こんな夜更けに非常識な私の言葉に、しかし美穂はいやな顔をするでもなく、『分かりました。』と一言だけ言うと、宮森に会釈をしてから家の奥へ消えていきました。〔たしかに相当なもんだな。〕と宮森がそっと私に耳打ちしてきます。私は喉の奥で苦い気持ちを飲み下しました。
〔奥さんも我々に加わってくださいよ。男だけじゃ殺風景だ。〕とツマミを運んでからまた台所に消えていきかけた美穂に、宮森が声をかけました。『あの~わたし、お酒は・・。』って言いながら、美穂はそっと私を見つめてきます。「・・・お客さんがそう言っているんだ。座れよ。」私が低くそう言うと、美穂は伏目がちにそっと私の横に座りました。宮森はニヤニヤと笑いながら、そんな妻に粘っこい視線を向けていました。
私と美穂がぎこちない様子でいるのに比べて、宮森は普段とまったく変わらず(話の内容はずっと紳士的でしたが)、気軽な口調であれこれと妻に話しかけます。美穂は相変わらず伏目がちで、宮森の言葉に口数少なく答えていました。やけ気味な私はぐいぐい酒を飲みんでいましたが、やがて気分がわるくなり、付き添おうとする美穂をふりはらって浴室へ行きました。シャワーを浴びて戻ってくると、わずかに開いたドアから宮森の声が聞こえました。
〔ご主人とは上手くいっていないんですか?〕私は廊下に立ち止まり、美穂の声に耳を澄ませました。『・・・分かりません。』聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で、美穂が答えました。
〔妙な答えですな。私は昔から彼を知っているが、どこか抜けているものの、わるくない男ですよ。いったい何が不満なのかな?〕
『不満なんて・・・。』
〔あなたにはなくても、彼にはあるようですよ。あなたが冷たいと言っています。日常生活でも、ベッドの中でもね。〕
宮森の露骨な言葉に、私はかっとと頬を染めます。見えない妻の表情が気になりました。
〔セックスはお嫌いですか?〕
『・・・・・』
〔ご主人では満足できない?〕と宮森は追及する。
『・・・・・』
妻の美穂は答えません。その時、もはや耐え難くなった私は、居間のドアをさっと開けました。驚く妻の顔。一方の宮森は平然とした表情です。
2014/.12/13
夜遅くになって3軒目の酒場を出、さてこれからどうしようかというときでした。不意に宮森が言います。
〔お前の家、ここから近かったよな。次はお前の家で飲もうぜ。〕
「バカを言うな。いま何時だと思っているんだ?」
しかし、妻の美穂はまだ起きているだろう。私はそう確信していました。今までどんなに遅く帰っても、美穂は先に寝ているなどということはありませんでした。
〔いいじゃないか。たかが悪友ひとり、夜遅くに連れ込んだところで、そんなことに文句を言う女房でもないんだろ?〕
宮森は不敵な笑みを浮かべて言いました。美穂もたいがい何を考えているのか分からない人間ですが、この男も相当なものです。私はついに根負けして、宮森を自宅に連れて行くことにしました。
マンションに帰り着いたころには、もう深夜3時を回っています。鍵を回してドアを開けると、予想通り美穂はまだ起きていて、玄関へやってきましたが、宮森の姿を目にして、はっと立ち止まりました。
「友達の宮森だ。」
〔どうも奥さん、お久しぶりです。結婚式以来ですな。〕
「きょうは久々に会ったから、これから家で飲み直す。酒とツマミの用意を頼む。」
こんな夜更けに非常識な私の言葉に、しかし美穂はいやな顔をするでもなく、『分かりました。』と一言だけ言うと、宮森に会釈をしてから家の奥へ消えていきました。〔たしかに相当なもんだな。〕と宮森がそっと私に耳打ちしてきます。私は喉の奥で苦い気持ちを飲み下しました。
〔奥さんも我々に加わってくださいよ。男だけじゃ殺風景だ。〕とツマミを運んでからまた台所に消えていきかけた美穂に、宮森が声をかけました。『あの~わたし、お酒は・・。』って言いながら、美穂はそっと私を見つめてきます。「・・・お客さんがそう言っているんだ。座れよ。」私が低くそう言うと、美穂は伏目がちにそっと私の横に座りました。宮森はニヤニヤと笑いながら、そんな妻に粘っこい視線を向けていました。
私と美穂がぎこちない様子でいるのに比べて、宮森は普段とまったく変わらず(話の内容はずっと紳士的でしたが)、気軽な口調であれこれと妻に話しかけます。美穂は相変わらず伏目がちで、宮森の言葉に口数少なく答えていました。やけ気味な私はぐいぐい酒を飲みんでいましたが、やがて気分がわるくなり、付き添おうとする美穂をふりはらって浴室へ行きました。シャワーを浴びて戻ってくると、わずかに開いたドアから宮森の声が聞こえました。
〔ご主人とは上手くいっていないんですか?〕私は廊下に立ち止まり、美穂の声に耳を澄ませました。『・・・分かりません。』聞こえるか聞こえないかくらいの小さな声で、美穂が答えました。
〔妙な答えですな。私は昔から彼を知っているが、どこか抜けているものの、わるくない男ですよ。いったい何が不満なのかな?〕
『不満なんて・・・。』
〔あなたにはなくても、彼にはあるようですよ。あなたが冷たいと言っています。日常生活でも、ベッドの中でもね。〕
宮森の露骨な言葉に、私はかっとと頬を染めます。見えない妻の表情が気になりました。
〔セックスはお嫌いですか?〕
『・・・・・』
〔ご主人では満足できない?〕と宮森は追及する。
『・・・・・』
妻の美穂は答えません。その時、もはや耐え難くなった私は、居間のドアをさっと開けました。驚く妻の顔。一方の宮森は平然とした表情です。
2014/.12/13
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