名F【どうなるの?】その6
名F【どうなるの?】その6
その日は土曜日で会社は休みでした。私たち夫婦は週末をほとんど家から出ず、ただただベッドの中で絡まりあって過ごしました。それは今までのぎこちない時間を解きほぐすかのような、濃密なセックスの時間です。美穂の悩ましい表情、伸びやかな肢体、うねる腰、そして悦びを喰い締める仕草が、私を熱い欲望に駆り立てます。ふたりで繋がったまま、どろどろと溶けあっていく感覚は、他のすべてを忘れさせてくれました。
こうして私たち夫婦は以前よりも互いに近づきあうことが出来ました。一見、隙のない完璧さを持っていて、しかしその一方ではとても不器用で恥ずかしがりの妻を、私は深く愛しました。そんなある日、友人の宮森からの電話がかかってきたのです。
妻の美穂との仲が改善されてからは、会社から寄り道することもなく帰ることが多くなっていたのですが、その日は宮森の誘いにのり、待ち合わせて一緒に行きつけの酒場へ行きました。
〔ふうん、それで今のところは、奥さんと上手くやれているわけか。〕
グラスの氷をちりんと揺らしつつ、宮森は呟くように言いました。
〔よかったじゃないか。〕
「まあ一応、お前のおかげかな。礼を言っとく。ありがとう。」
〔よせよ。〕
宮森は特有の不敵な笑みを浮かべました。
〔別に俺はお前のことを考えて、あんなことを言ったわけじゃない。〕
「じゃあ何故だ?」
〔俺は職業柄、いろいろな女に接する機会が多いのは知っているだろ。最近じゃ見ただけで、その女がどんな種類の人間か、だいたい分かるようになってきた。〕
「・・・それで?」
私は宮森に話の続きを促しました。
〔お前の奥さんに会って感じたんだけどさ、あんなふうに始終張りつめているというか、心に鎧をつけているような女は、結局は愛情に飢えているのが多いんだよ。頭が良すぎるせいか、自意識が強すぎるせいか、馬鹿になれなくて、男にすがったり頼ったりすることができない。それでいて強い孤独を感じている。だからいったん歯止めが外れると、どこまでも抑制がきかなくて、ずるずる男に引きずられて身を持ち崩すタイプも多い。〕
「たいした心理学者だな?」
私が不快を滲ませて揶揄すると、宮森はにっと歯を見せて笑いました。
〔怒るなよ。正直言えばさ、奥さんみたいなタイプの女が、俺は一番好みなんだよ。だからあのときも、お前のことをどうこうというより、ちょっと奥さんを虐めてやりたくなったのさ。どうだ? 俺の言うとおりだっただろ。〕
「何が?」
〔前に話しただろ、お前の奥さんには色気があるって話。泣いている奥さんは、すごくセクシーだと思わなかったか?〕
「・・・・・。」
たしかにあのときの美穂の様子は、普段の毅然とした佇まいを知っているだけに、私には余計心を揺さぶられるものがありました。その後の妻との濃密な情事も、それまで私が知ることのなかった刺激がありました。
「そうだな。」
私は宮森の言葉を認めました。
「そういえばお前はこうも言ったな、〔俺だったら奥さんの女としての性能を、最大限まで引き出してやれる。〕と。」
〔それも当たってるぜ。〕
宮森がぬけぬけと言います。それで私は苦笑しました。
「ちくしょう。でも、そうかもしれない。」
私が結婚後3年も分からなかった美穂という女を、宮森は一瞬で彼女の中に隠されていたものを見抜いたのです。
2015/01/24
その日は土曜日で会社は休みでした。私たち夫婦は週末をほとんど家から出ず、ただただベッドの中で絡まりあって過ごしました。それは今までのぎこちない時間を解きほぐすかのような、濃密なセックスの時間です。美穂の悩ましい表情、伸びやかな肢体、うねる腰、そして悦びを喰い締める仕草が、私を熱い欲望に駆り立てます。ふたりで繋がったまま、どろどろと溶けあっていく感覚は、他のすべてを忘れさせてくれました。
こうして私たち夫婦は以前よりも互いに近づきあうことが出来ました。一見、隙のない完璧さを持っていて、しかしその一方ではとても不器用で恥ずかしがりの妻を、私は深く愛しました。そんなある日、友人の宮森からの電話がかかってきたのです。
妻の美穂との仲が改善されてからは、会社から寄り道することもなく帰ることが多くなっていたのですが、その日は宮森の誘いにのり、待ち合わせて一緒に行きつけの酒場へ行きました。
〔ふうん、それで今のところは、奥さんと上手くやれているわけか。〕
グラスの氷をちりんと揺らしつつ、宮森は呟くように言いました。
〔よかったじゃないか。〕
「まあ一応、お前のおかげかな。礼を言っとく。ありがとう。」
〔よせよ。〕
宮森は特有の不敵な笑みを浮かべました。
〔別に俺はお前のことを考えて、あんなことを言ったわけじゃない。〕
「じゃあ何故だ?」
〔俺は職業柄、いろいろな女に接する機会が多いのは知っているだろ。最近じゃ見ただけで、その女がどんな種類の人間か、だいたい分かるようになってきた。〕
「・・・それで?」
私は宮森に話の続きを促しました。
〔お前の奥さんに会って感じたんだけどさ、あんなふうに始終張りつめているというか、心に鎧をつけているような女は、結局は愛情に飢えているのが多いんだよ。頭が良すぎるせいか、自意識が強すぎるせいか、馬鹿になれなくて、男にすがったり頼ったりすることができない。それでいて強い孤独を感じている。だからいったん歯止めが外れると、どこまでも抑制がきかなくて、ずるずる男に引きずられて身を持ち崩すタイプも多い。〕
「たいした心理学者だな?」
私が不快を滲ませて揶揄すると、宮森はにっと歯を見せて笑いました。
〔怒るなよ。正直言えばさ、奥さんみたいなタイプの女が、俺は一番好みなんだよ。だからあのときも、お前のことをどうこうというより、ちょっと奥さんを虐めてやりたくなったのさ。どうだ? 俺の言うとおりだっただろ。〕
「何が?」
〔前に話しただろ、お前の奥さんには色気があるって話。泣いている奥さんは、すごくセクシーだと思わなかったか?〕
「・・・・・。」
たしかにあのときの美穂の様子は、普段の毅然とした佇まいを知っているだけに、私には余計心を揺さぶられるものがありました。その後の妻との濃密な情事も、それまで私が知ることのなかった刺激がありました。
「そうだな。」
私は宮森の言葉を認めました。
「そういえばお前はこうも言ったな、〔俺だったら奥さんの女としての性能を、最大限まで引き出してやれる。〕と。」
〔それも当たってるぜ。〕
宮森がぬけぬけと言います。それで私は苦笑しました。
「ちくしょう。でも、そうかもしれない。」
私が結婚後3年も分からなかった美穂という女を、宮森は一瞬で彼女の中に隠されていたものを見抜いたのです。
2015/01/24
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