名F【どうなるの?】その7
名F【どうなるの?】その7
〔お、来たな。こっちだ。〕宮森が不意に振り返って手を上げました。その視線の先には二十四、五歳くらいの若い女性がいます。背が高く、目鼻立ちのはっきりした美しい女でした。〔彼女はうちの会社でモデルをやってくれている東出愛梨(あいり)だ。個人的にぼくの秘書のようなこともやってくれている。愛梨、こちらは俺の旧友の中津川だ。前に話したことがあるだろう。〕
マクレガー企画でモデルと言えばAV女優を指すとは、以前に宮森から聞いていました。そう思って改めて愛梨を見ると、たしかに彼女にはこの年頃のかたぎのOLにはない、水商売的な艶っぽさがありました。愛梨はぱっちりとした瞳に色気を滲ませて、私に笑顔を向けました。《はじめまして。東出愛梨です。うちの宮森がいつもお世話になっています。》
それからしばらく、私たちは3人で飲みながら話をしました。
「ということは愛梨さんは宮森にスカウトされて、今の仕事につくようになったわけですか。それまでは普通のOLをされていたんですね。」
《そうなんです。このひと、わるいひとでしょう。》
愛梨は口元に笑みを浮かべながら、悪戯っぽい目で宮森を見ました。その目は明らかに自分の愛人を見る目です。
〔じゃあ愛梨は今の仕事が気に入ってないのかね。撮影のたびにたくさんのテクニック豊かな男に抱かれて嬉しいと言っていたのは嘘なのか?〕
宮森がからかうように言うと、愛梨は流石に顔を少し赤くしました。
《いやん、中津川さんの前で恥ずかしいことを言うのはよして。》
〔愛梨は露出症の気味もあってな、カメラの前でセックスすると余計感じるらしくて撮影のときはいつも大変なんだよ。〕
《いや、いや。》
愛梨は悶えるように全身を震わせて抗議しますが、その肌は宮森の言葉に興奮させられていたのか、ぽうっと赤く上気したようで、それがいかにも淫蕩な空気を漂わせていました。
「たしかに宮森はわるい男ですが、愛梨さんもよい職業につかれたようですね。」
私が言うと、愛梨は軽く睨んできました。
《まあ、中津川さんまで。でも本当にそうね。口惜しいけど、このひと、女を見抜く力はあるのよ。》
「・・・そのようですね。」
私の脳裏に美穂の顔が浮かびました。
《中津川さんの奥さんはどんな方ですの?》
すっかり酔いがまわったふうの愛梨が舌足らずな口調で聞いてきたのに、私が答えるより早く、
〔美人で、凄く色っぽいひとだよ。〕
宮森が言いました。
《あなたがそんなに誉めるなんて珍しいわね。ひょっとしてお気に入り?》
〔ああ。中津川が羨ましいよ。〕
「何言ってんだ。」
私は照れてそっぽを向きました。
「お前だってこんないいひとがいるじゃないか。」
私の言葉に宮森と愛梨は一瞬顔を見合わせ、そして笑い出します。
〔ははは、いやわるい。でも俺たちの関係はそんなんじゃないよ。そりゃときどきはプライベートで会ってデートもするがね。俺も愛梨も企業の一員で、商品としてのAVを撮る側だし、愛梨はそれに出演する側だ。割り切った関係だよ。〕
「独占欲とかはないんだな?」
〔ないね。だいたい男にしろ女にしろ、それぞれ特定の相手だけに縛られているのはもう
古いと俺は思う。夫婦やカップル同士でスワッピングってのも、今じゃありきたりな話だ
ろ。〕
「さあね?俺はお前とは違って、その辺りには詳しくないからな。簡単に割り切れるタイプでもないから。」
〔まあ、お前はそうだろうな。〕
宮森は真面目な顔で言ってから、ふと気がついたように愛梨を見ました。
〔そういえば新作のサンプルはもう出来たのか?〕
《きょう出来ました。ここに持ってきています。》
愛梨はカバンからDVDのディスクをいくつか取り出しました。
〔これは愛梨が出ているDVDで、監督は珍しくおれが務めているんだ。何枚かあるようだから、一枚お前にやるよ。〕
「いいのか、そんなことして?」
〔いいんだよ。お前、俺の関わった作品を一度も見たことないだろ。本当に友達がいのない奴だよな。〕
私と宮森のやりとりを、愛梨はクスクスと笑いながら聞いていました。
2015/01/31
〔お、来たな。こっちだ。〕宮森が不意に振り返って手を上げました。その視線の先には二十四、五歳くらいの若い女性がいます。背が高く、目鼻立ちのはっきりした美しい女でした。〔彼女はうちの会社でモデルをやってくれている東出愛梨(あいり)だ。個人的にぼくの秘書のようなこともやってくれている。愛梨、こちらは俺の旧友の中津川だ。前に話したことがあるだろう。〕
マクレガー企画でモデルと言えばAV女優を指すとは、以前に宮森から聞いていました。そう思って改めて愛梨を見ると、たしかに彼女にはこの年頃のかたぎのOLにはない、水商売的な艶っぽさがありました。愛梨はぱっちりとした瞳に色気を滲ませて、私に笑顔を向けました。《はじめまして。東出愛梨です。うちの宮森がいつもお世話になっています。》
それからしばらく、私たちは3人で飲みながら話をしました。
「ということは愛梨さんは宮森にスカウトされて、今の仕事につくようになったわけですか。それまでは普通のOLをされていたんですね。」
《そうなんです。このひと、わるいひとでしょう。》
愛梨は口元に笑みを浮かべながら、悪戯っぽい目で宮森を見ました。その目は明らかに自分の愛人を見る目です。
〔じゃあ愛梨は今の仕事が気に入ってないのかね。撮影のたびにたくさんのテクニック豊かな男に抱かれて嬉しいと言っていたのは嘘なのか?〕
宮森がからかうように言うと、愛梨は流石に顔を少し赤くしました。
《いやん、中津川さんの前で恥ずかしいことを言うのはよして。》
〔愛梨は露出症の気味もあってな、カメラの前でセックスすると余計感じるらしくて撮影のときはいつも大変なんだよ。〕
《いや、いや。》
愛梨は悶えるように全身を震わせて抗議しますが、その肌は宮森の言葉に興奮させられていたのか、ぽうっと赤く上気したようで、それがいかにも淫蕩な空気を漂わせていました。
「たしかに宮森はわるい男ですが、愛梨さんもよい職業につかれたようですね。」
私が言うと、愛梨は軽く睨んできました。
《まあ、中津川さんまで。でも本当にそうね。口惜しいけど、このひと、女を見抜く力はあるのよ。》
「・・・そのようですね。」
私の脳裏に美穂の顔が浮かびました。
《中津川さんの奥さんはどんな方ですの?》
すっかり酔いがまわったふうの愛梨が舌足らずな口調で聞いてきたのに、私が答えるより早く、
〔美人で、凄く色っぽいひとだよ。〕
宮森が言いました。
《あなたがそんなに誉めるなんて珍しいわね。ひょっとしてお気に入り?》
〔ああ。中津川が羨ましいよ。〕
「何言ってんだ。」
私は照れてそっぽを向きました。
「お前だってこんないいひとがいるじゃないか。」
私の言葉に宮森と愛梨は一瞬顔を見合わせ、そして笑い出します。
〔ははは、いやわるい。でも俺たちの関係はそんなんじゃないよ。そりゃときどきはプライベートで会ってデートもするがね。俺も愛梨も企業の一員で、商品としてのAVを撮る側だし、愛梨はそれに出演する側だ。割り切った関係だよ。〕
「独占欲とかはないんだな?」
〔ないね。だいたい男にしろ女にしろ、それぞれ特定の相手だけに縛られているのはもう
古いと俺は思う。夫婦やカップル同士でスワッピングってのも、今じゃありきたりな話だ
ろ。〕
「さあね?俺はお前とは違って、その辺りには詳しくないからな。簡単に割り切れるタイプでもないから。」
〔まあ、お前はそうだろうな。〕
宮森は真面目な顔で言ってから、ふと気がついたように愛梨を見ました。
〔そういえば新作のサンプルはもう出来たのか?〕
《きょう出来ました。ここに持ってきています。》
愛梨はカバンからDVDのディスクをいくつか取り出しました。
〔これは愛梨が出ているDVDで、監督は珍しくおれが務めているんだ。何枚かあるようだから、一枚お前にやるよ。〕
「いいのか、そんなことして?」
〔いいんだよ。お前、俺の関わった作品を一度も見たことないだろ。本当に友達がいのない奴だよな。〕
私と宮森のやりとりを、愛梨はクスクスと笑いながら聞いていました。
2015/01/31
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