長U〖綾乃の想い〗第1章その1 01
長U〖綾乃の想い〗第1章その1 01
(原題:人妻 香苗 投稿者・投稿日:不明)
食卓に美味しそうなタイ料理が香る。辛味と酸味の効いた旨みのあるスープ、トムヤムクン。魚介のすり身で作ったタイ風さつま揚げのトートマンプラー。そして丁寧に作られた生春巻きと、パラパラに仕上がったチャーハン。食卓に並んでいる料理達は実に彩り豊か。タイ料理は夫の藤澤良一(ふじさわ・りょういち:37歳)の大好物である。
今日は夫婦にとって何か特別な日という訳ではなかったが、明日は休日(土曜日)であったし、《今週もご苦労様》という気分で藤澤綾乃(ふじさわ・あやの:30歳)は良一のために頑張ってみたのだ。「ん……美味しい、綾乃はまた腕を上げたね。これからは外にタイ料理を食べに行かなくてもよさそうだな。」
『フフッそう言ってもらえると頑張って作った甲斐があるわ。ねぇ良一、生春巻きも食べてみてよ、今日初めて作ってみたんだけど、どうかな?』
「おぅ!綺麗にできているな、どれどれ……ん、美味しい、美味しいよこれ。うん、凄く美味しい、大したもんだなぁ綾乃。」
自分が作った料理を次々と口に運び美味しそうに食べる良一の姿を見て、綾乃は満面の笑みを浮かべていた。心を込めて作った料理を、一生懸命働いてきた夫が美味しそうに食べてくれる。これ程幸せな事はないのではないか。
「あ、そうだ。なぁ綾乃、明日休みだし、2人で出掛けてみないか?ほら、前に綾乃が行きたいって言っていた美術館があるだろ?あそこに行こうよ!」
『わぁホントに?嬉しいなぁ。あ、でもいいの?休みくらいゆっくりしたいんじゃない?身体も休めた方が……。』
「大丈夫だよ! 綾乃と出掛けた方が良い気分転換になるしな。それに俺もあの美術館行ってみたかったんだよ。有名な建築家が設計した美術館なんだろ?」
『うん、凄く綺麗な建物だよ。』
「そうなんだ。じゃあ明日は楽しみだな。」
『フフッ私も楽しみだわ。ありがとう、良一さん。』
私たちの夫婦生活は至って順調だった。良一は綾乃に対してとても優しかったし、妻である綾乃のため、いつか生まれてきてくれるであろう未来の家族のために毎日一生懸命に働いてくれている。
夫の良一は結婚を機に街中の高級マンションを購入し、2人はそこに住んでいる。上場企業に働く良一は仕事も人並み以上にでき、その収入は十分過ぎる程あって、綾乃はそのお陰で働きに出る必要はなく、専業主婦として仕事で頑張る良一をサポートする事だけに集中できた。
《好きな人と結婚ができて、何の問題もなく余裕のある生活を送れている。これはとても幸せな事だわ。》綾乃はそう思っていたし、この生活に十分な満足感を持っていたはずだった。そう……そのはずだったのだ……あの男と出会うまでは……。 第1章その2 02 に続く
2015/08/22
(原題:人妻 香苗 投稿者・投稿日:不明)
食卓に美味しそうなタイ料理が香る。辛味と酸味の効いた旨みのあるスープ、トムヤムクン。魚介のすり身で作ったタイ風さつま揚げのトートマンプラー。そして丁寧に作られた生春巻きと、パラパラに仕上がったチャーハン。食卓に並んでいる料理達は実に彩り豊か。タイ料理は夫の藤澤良一(ふじさわ・りょういち:37歳)の大好物である。
今日は夫婦にとって何か特別な日という訳ではなかったが、明日は休日(土曜日)であったし、《今週もご苦労様》という気分で藤澤綾乃(ふじさわ・あやの:30歳)は良一のために頑張ってみたのだ。「ん……美味しい、綾乃はまた腕を上げたね。これからは外にタイ料理を食べに行かなくてもよさそうだな。」
『フフッそう言ってもらえると頑張って作った甲斐があるわ。ねぇ良一、生春巻きも食べてみてよ、今日初めて作ってみたんだけど、どうかな?』
「おぅ!綺麗にできているな、どれどれ……ん、美味しい、美味しいよこれ。うん、凄く美味しい、大したもんだなぁ綾乃。」
自分が作った料理を次々と口に運び美味しそうに食べる良一の姿を見て、綾乃は満面の笑みを浮かべていた。心を込めて作った料理を、一生懸命働いてきた夫が美味しそうに食べてくれる。これ程幸せな事はないのではないか。
「あ、そうだ。なぁ綾乃、明日休みだし、2人で出掛けてみないか?ほら、前に綾乃が行きたいって言っていた美術館があるだろ?あそこに行こうよ!」
『わぁホントに?嬉しいなぁ。あ、でもいいの?休みくらいゆっくりしたいんじゃない?身体も休めた方が……。』
「大丈夫だよ! 綾乃と出掛けた方が良い気分転換になるしな。それに俺もあの美術館行ってみたかったんだよ。有名な建築家が設計した美術館なんだろ?」
『うん、凄く綺麗な建物だよ。』
「そうなんだ。じゃあ明日は楽しみだな。」
『フフッ私も楽しみだわ。ありがとう、良一さん。』
私たちの夫婦生活は至って順調だった。良一は綾乃に対してとても優しかったし、妻である綾乃のため、いつか生まれてきてくれるであろう未来の家族のために毎日一生懸命に働いてくれている。
夫の良一は結婚を機に街中の高級マンションを購入し、2人はそこに住んでいる。上場企業に働く良一は仕事も人並み以上にでき、その収入は十分過ぎる程あって、綾乃はそのお陰で働きに出る必要はなく、専業主婦として仕事で頑張る良一をサポートする事だけに集中できた。
《好きな人と結婚ができて、何の問題もなく余裕のある生活を送れている。これはとても幸せな事だわ。》綾乃はそう思っていたし、この生活に十分な満足感を持っていたはずだった。そう……そのはずだったのだ……あの男と出会うまでは……。 第1章その2 02 に続く
2015/08/22
長U〖綾乃の想い〗第1章その2 02
長U〖綾乃の想い〗第1章その2 02
「あ、そういえばさっき管理人さんに会ったんだけど、うちの隣、空いてるだろ?そこに新しく誰か引っ越してくるみたいだぞ。」
仕事から帰ってきた夫の藤澤良一(37歳)がスーツの上着を脱ぎながらそう言った。
『え?そうなの?へぇ……隣、山口さんが引越しをしてからずっと空いていたものねぇ。また家族連れかしら?』
良一が脱いだ上着を丁寧にハンガーに掛け、藤澤綾乃(あやの30歳)はスーツに付いたホコリなどをチェックする。このマンションの良一と綾乃が住んでいる部屋の隣には、一年前まで山口という4人家族が住んでいた。山口家は夫婦と子供が2人という家族構成。とても優しくて感じの良い夫婦で、私達とは仲が良かった。
共働きの山口夫婦が仕事で忙しい時に綾乃が2人の子供を何度か預かっていた事もあったし、お互いの部屋に作った料理を持ち寄って共に楽しい食事の時間を過ごした事も何度もあった。しかし残念な事に1年前、山口家はご主人が仕事で転勤する事になり、遠い県外へ引っ越してしまったのだ。
今でも時々綾乃は奥さんと連絡を取り合っているが、これだけ遠い事もあって引っ越してからは1度も会っていない。専業主婦の綾乃は、良一とここに引っ越してきて最初にできた友人が山口さん夫婦であったから、居なくなってしまってからは寂しい思いもしていた。
「いや、詳しくは聞いてないから分からないけど、きっと家族連れじゃないか?このマンションに住んでいる殆どがそうなんだし、夫婦2人だけの俺達は珍しいくらいだ。」
『そっかぁ、そうだよね……また良い人達が隣に来てくれたらいいなぁ。』
「山口さんみたいな社交的な家族だといいけどな。」
近所間、家族間などの関係が気薄になってきている今の時代だが、綾乃と良一は山口家との良い出会いを経験しているため、新しく隣に引っ越してくる人との出会いに、期待に胸を膨らませる。特に綾乃の中では、余程山口家と過ごした時間が良い思い出として強く残っていたのか、その引越し話を聞いてからずっと嬉しそうにしていて機嫌が良かった。
『・・・どんなご家族が来るのかしら・・・フフッ・・・楽しみだわ・・・。』
そして、それから1週間後、引越し会社のトラックが来て隣の部屋に荷物を入れ始めた。どうやら今日が入居日らしい。土曜の昼間、良一がたまたま仕事でいないため1人で部屋にいた綾乃は、窓から下に来ているトラックを何度も見て、落ち着かない様子で過ごしていた。《ん~もうお隣に来てるのかなぁ・・・ちょっとだけ顔出してみようかなぁ・・・でも急に覗きに行っても変よね・・・あ~気になるなぁ。》
普通なら今晩にでもお隣である良一と綾乃の所に引越しの挨拶に来るだろう。でも綾乃はそれが待てないくらいにお隣の事が気になって気になって仕方なかった。《ふぅ・・・なんかジッとして居られないわ・・・ちょっと早いけど、晩御飯の用意でもしておこうかな。》深呼吸をして気持ちを落ち着かせた綾乃は、冷蔵庫を開けて今晩の献立を考える。
《んー・・・よしっ!カレーライスにしよっと。》綾乃が今晩の献立をカレーライスにしたのには理由があった。カレーライスは綾乃の得意料理の一つでもあり、山口家の家族が美味しいと絶賛してくれて、綾乃がよく作っては部屋に呼んでいた、そんな思い出のある料理なのだ。綾乃は心のどこかで新しく引っ越してくる家族を山口家と重ねていた。きっと良い人達だと、そう願っての心理だったのだろう。
2015/08/27
「あ、そういえばさっき管理人さんに会ったんだけど、うちの隣、空いてるだろ?そこに新しく誰か引っ越してくるみたいだぞ。」
仕事から帰ってきた夫の藤澤良一(37歳)がスーツの上着を脱ぎながらそう言った。
『え?そうなの?へぇ……隣、山口さんが引越しをしてからずっと空いていたものねぇ。また家族連れかしら?』
良一が脱いだ上着を丁寧にハンガーに掛け、藤澤綾乃(あやの30歳)はスーツに付いたホコリなどをチェックする。このマンションの良一と綾乃が住んでいる部屋の隣には、一年前まで山口という4人家族が住んでいた。山口家は夫婦と子供が2人という家族構成。とても優しくて感じの良い夫婦で、私達とは仲が良かった。
共働きの山口夫婦が仕事で忙しい時に綾乃が2人の子供を何度か預かっていた事もあったし、お互いの部屋に作った料理を持ち寄って共に楽しい食事の時間を過ごした事も何度もあった。しかし残念な事に1年前、山口家はご主人が仕事で転勤する事になり、遠い県外へ引っ越してしまったのだ。
今でも時々綾乃は奥さんと連絡を取り合っているが、これだけ遠い事もあって引っ越してからは1度も会っていない。専業主婦の綾乃は、良一とここに引っ越してきて最初にできた友人が山口さん夫婦であったから、居なくなってしまってからは寂しい思いもしていた。
「いや、詳しくは聞いてないから分からないけど、きっと家族連れじゃないか?このマンションに住んでいる殆どがそうなんだし、夫婦2人だけの俺達は珍しいくらいだ。」
『そっかぁ、そうだよね……また良い人達が隣に来てくれたらいいなぁ。』
「山口さんみたいな社交的な家族だといいけどな。」
近所間、家族間などの関係が気薄になってきている今の時代だが、綾乃と良一は山口家との良い出会いを経験しているため、新しく隣に引っ越してくる人との出会いに、期待に胸を膨らませる。特に綾乃の中では、余程山口家と過ごした時間が良い思い出として強く残っていたのか、その引越し話を聞いてからずっと嬉しそうにしていて機嫌が良かった。
『・・・どんなご家族が来るのかしら・・・フフッ・・・楽しみだわ・・・。』
そして、それから1週間後、引越し会社のトラックが来て隣の部屋に荷物を入れ始めた。どうやら今日が入居日らしい。土曜の昼間、良一がたまたま仕事でいないため1人で部屋にいた綾乃は、窓から下に来ているトラックを何度も見て、落ち着かない様子で過ごしていた。《ん~もうお隣に来てるのかなぁ・・・ちょっとだけ顔出してみようかなぁ・・・でも急に覗きに行っても変よね・・・あ~気になるなぁ。》
普通なら今晩にでもお隣である良一と綾乃の所に引越しの挨拶に来るだろう。でも綾乃はそれが待てないくらいにお隣の事が気になって気になって仕方なかった。《ふぅ・・・なんかジッとして居られないわ・・・ちょっと早いけど、晩御飯の用意でもしておこうかな。》深呼吸をして気持ちを落ち着かせた綾乃は、冷蔵庫を開けて今晩の献立を考える。
《んー・・・よしっ!カレーライスにしよっと。》綾乃が今晩の献立をカレーライスにしたのには理由があった。カレーライスは綾乃の得意料理の一つでもあり、山口家の家族が美味しいと絶賛してくれて、綾乃がよく作っては部屋に呼んでいた、そんな思い出のある料理なのだ。綾乃は心のどこかで新しく引っ越してくる家族を山口家と重ねていた。きっと良い人達だと、そう願っての心理だったのだろう。
2015/08/27
長U〖綾乃の想い〗第1章その3 03
長U〖綾乃の想い〗第1章その3 03
《早めに作って少し寝かした方が美味しいのよねぇ。》キッチンにスパイシーな香りが漂う。妻の藤澤綾乃(あやの30歳)がコトコトと煮込まれている鍋の中を嬉しそうに笑顔で覗く。《ン~♪フフッ・・・今日のは特別美味しくできそうだわ。》鼻歌交じりで綾乃は楽しそうに料理をする。素敵な出会いの予感。それだけが綾乃の頭の中をいっぱいにしていた。
「ただいま~。」
夜、夫の藤澤良一(37歳)が仕事から帰ってくると、キッチンから綾乃が慌てた様子で玄関まで来る。
『お帰り~!ねぇねぇ今日お隣さんがね!』
「おぅ、引っ越してきたみたいだな。部屋の明かりが点いていたな。」
『え~!見た?見たの?どんな人だったか見た?』
少し興奮した様子でそう聞く綾乃に、落ち着いた様子で良一は答える。
「どうしたんだよ?そんなに興奮して。見てないよ、そのうちに挨拶に来るんじゃないか?」
『なんだぁ……見てないんだぁ……。』
残念そうに俯く綾乃に、良一は微笑みながら靴を脱ぐ。珍しく子供のようにはしゃぐ綾乃が可愛らしく見えた。
「お?今日はカレー?」
部屋に漂う、家庭的で安心できるあの香りに気付いた良一が今晩の献立を当ててみせた。
『うん、そうよ。今日のは特別美味しいよ、きっとね。』
「へぇ~気合入れたんだぁ今日のは。どれどれ……。」
良一はそう言いながらスーツのままキッチンに入って行き、コンロに置いてある少し大きめの鍋の中を覗き込む。
『フフッ……どう?美味しそうでしょ?』
そう嬉しそうに笑顔で良一に訊く綾乃。しかし妻とは逆に良一の表情は鍋の中を見た瞬間曇ってしまった。
「……おい綾乃……こんなに多く作ってどうするんだ?この量じゃあと3日はカレーを食べ続けないと無くならないぞ……。」
『ん~だって、もしかしてお隣さんが今日は引っ越して来たばかりで、晩御飯の用意してないかもしれないじゃない?』
当然のような顔をしてそう話す綾乃を見た良一は、ため息を漏らした。
「はぁ……なぁ綾乃、まだお隣さんがどんなご家族か分からないだろ?山口さんみたいにフレンドリーとは限らないかも。」
『うん……でもぉ……。』
「それに、山口さんみたいに社交的な家族は今時珍しいぞ!」
良一は説得するように淡々と話す。しかし今の綾乃の耳にはあまりその言葉は届かないらしい。
『……ん~大丈夫よ!きっと今度のご家族も良い人達だわ。私、そんな予感がするの。』
「おいおい、あんまり期待しすぎて、後で落ち込むなよぉ。」
『そんな事ないわよ!はぁ……いいわよもう。カレーは残ったら冷凍すれば良いんだし。ほらぁ早く服着替えてきて。あ!お隣さんが来ても恥ずかしくない服よ!』
「はいはい……。」
良一の冷めた態度に少し怒り気味の綾乃、どうやらお隣に対する期待が1週間待っている内に綾乃の方だけ膨らみ過ぎてしまったようだ。
2015/09/05
《早めに作って少し寝かした方が美味しいのよねぇ。》キッチンにスパイシーな香りが漂う。妻の藤澤綾乃(あやの30歳)がコトコトと煮込まれている鍋の中を嬉しそうに笑顔で覗く。《ン~♪フフッ・・・今日のは特別美味しくできそうだわ。》鼻歌交じりで綾乃は楽しそうに料理をする。素敵な出会いの予感。それだけが綾乃の頭の中をいっぱいにしていた。
「ただいま~。」
夜、夫の藤澤良一(37歳)が仕事から帰ってくると、キッチンから綾乃が慌てた様子で玄関まで来る。
『お帰り~!ねぇねぇ今日お隣さんがね!』
「おぅ、引っ越してきたみたいだな。部屋の明かりが点いていたな。」
『え~!見た?見たの?どんな人だったか見た?』
少し興奮した様子でそう聞く綾乃に、落ち着いた様子で良一は答える。
「どうしたんだよ?そんなに興奮して。見てないよ、そのうちに挨拶に来るんじゃないか?」
『なんだぁ……見てないんだぁ……。』
残念そうに俯く綾乃に、良一は微笑みながら靴を脱ぐ。珍しく子供のようにはしゃぐ綾乃が可愛らしく見えた。
「お?今日はカレー?」
部屋に漂う、家庭的で安心できるあの香りに気付いた良一が今晩の献立を当ててみせた。
『うん、そうよ。今日のは特別美味しいよ、きっとね。』
「へぇ~気合入れたんだぁ今日のは。どれどれ……。」
良一はそう言いながらスーツのままキッチンに入って行き、コンロに置いてある少し大きめの鍋の中を覗き込む。
『フフッ……どう?美味しそうでしょ?』
そう嬉しそうに笑顔で良一に訊く綾乃。しかし妻とは逆に良一の表情は鍋の中を見た瞬間曇ってしまった。
「……おい綾乃……こんなに多く作ってどうするんだ?この量じゃあと3日はカレーを食べ続けないと無くならないぞ……。」
『ん~だって、もしかしてお隣さんが今日は引っ越して来たばかりで、晩御飯の用意してないかもしれないじゃない?』
当然のような顔をしてそう話す綾乃を見た良一は、ため息を漏らした。
「はぁ……なぁ綾乃、まだお隣さんがどんなご家族か分からないだろ?山口さんみたいにフレンドリーとは限らないかも。」
『うん……でもぉ……。』
「それに、山口さんみたいに社交的な家族は今時珍しいぞ!」
良一は説得するように淡々と話す。しかし今の綾乃の耳にはあまりその言葉は届かないらしい。
『……ん~大丈夫よ!きっと今度のご家族も良い人達だわ。私、そんな予感がするの。』
「おいおい、あんまり期待しすぎて、後で落ち込むなよぉ。」
『そんな事ないわよ!はぁ……いいわよもう。カレーは残ったら冷凍すれば良いんだし。ほらぁ早く服着替えてきて。あ!お隣さんが来ても恥ずかしくない服よ!』
「はいはい……。」
良一の冷めた態度に少し怒り気味の綾乃、どうやらお隣に対する期待が1週間待っている内に綾乃の方だけ膨らみ過ぎてしまったようだ。
2015/09/05
長U〖綾乃の想い〗第1章その4 04
長U〖綾乃の想い〗第1章その4 04
食卓にカレーライスと綺麗に盛り付けされたサラダが並ぶ。そのカレーからは食欲をそそる美味しそうな香りが立ち上がっている。
「なぁ綾乃……もう食べてもいいか?」
『ダメよ、もうちょっと待って。どうせならお隣さんが来てからいっしょに食べたいじゃない?』
「はぁ~……腹減ったよぉ綾乃ちゃーん~、拷問だよこれは。」
ため息と共に、甘えた声を出す夫の藤澤良一(37歳)。しかし妻の藤澤綾乃(あやの30歳)はそんな事など意に介さない様子で時計を見つめ続けている。
『ねぇ良一、まだかなぁ?お隣さんのご挨拶……。』
「はぁ……そんなのもしかして明日かもしれないし、明後日かもしれないし、もしかしたら挨拶には来ないような人かもしれないだろ?」
『え~そんな事ないよぉ・・・、絶対来ます。』
「はぁ……もう付き合いきれん!先に食べるぞぉ!せっかくのカレーが冷めちまうよ。」
さすがに呆れた様子で痺れを切らした良一が、スプーンを手に取る。すると、その時だった。
“……ピンポーン!”インターホンの音を聴いた瞬間、綾乃の表情が満面の笑みに変わる。
『ねぇ良一。』
「あ、あぁ……よし。」
良一が玄関モニターをチェックすると1人の女性が映っていた。大変な美人だ。歳は良一達と同じくらいだろうか、それとも少し上かもしれない。大人の落ち着いた女性といった感じだ。
「は……はい、どちら様でしょうか?」
妙に緊張してしまっていた良一は、少し声を裏返しながらモニターに向かってそう言った。
《あの……今日隣に引っ越して来た篠原と申します。》
篠原と名乗る女性は容姿もそうだが、その声もどこか上品に聞こえる。
「あ、そ、そうですか。少し待ってください。」
「2人で行くか?」
『うん、もちろん行くわよ。』
良一と綾乃は細い廊下を2人で肩を並べて歩き、玄関へと向かった。“ガチャ……”
「あ、どうもぉ。」
良一がドアを開けると、そこにはモニターで見た通りの美人な女性が一人で立っていた。
《夜遅くにすみません。えっと……。》
「藤澤と言います、こっちは妻の綾乃です。」
『こんばんは、篠原さん……ですよね?』
《はい、篠原恭子と言います。あのこれ、大した物ではないんですけど。》
そう言って恭子が手に持っていた菓子折りを渡してくる。今時こういうのは珍しい。容姿も上品であるし、礼儀正しい人なのだなと良一と綾乃は思った。
《あの、藤澤さんはご夫婦お2人でお住まいなんですか?》
「えぇ、そうなんですけどね。」
『篠原さんは、ご家族で引っ越して来られたんですか?』
《いえ、あの……私はまだ結婚はしていなくて、1人で越してきたんです。》
「1人……ですか?」
恭子のその言葉を聞いて、良一と綾乃は思わず顔を見合わせた。 ここはファミリー向けマンションで、どの部屋も80㎡以上はある。女性の1人暮らしには広すぎるし、それにかなり贅沢だ。購入にしても賃貸にしても、価格はそれなりにするはずである。
《やっぱり変、ですよね?こんなマンションに女で1人で住むのは・・。》
「いえいえ、そんな事はないと思いますけど……。」
『う、羨ましいよね?』
「あぁ……だ、だよな。」
2015/09/11
食卓にカレーライスと綺麗に盛り付けされたサラダが並ぶ。そのカレーからは食欲をそそる美味しそうな香りが立ち上がっている。
「なぁ綾乃……もう食べてもいいか?」
『ダメよ、もうちょっと待って。どうせならお隣さんが来てからいっしょに食べたいじゃない?』
「はぁ~……腹減ったよぉ綾乃ちゃーん~、拷問だよこれは。」
ため息と共に、甘えた声を出す夫の藤澤良一(37歳)。しかし妻の藤澤綾乃(あやの30歳)はそんな事など意に介さない様子で時計を見つめ続けている。
『ねぇ良一、まだかなぁ?お隣さんのご挨拶……。』
「はぁ……そんなのもしかして明日かもしれないし、明後日かもしれないし、もしかしたら挨拶には来ないような人かもしれないだろ?」
『え~そんな事ないよぉ・・・、絶対来ます。』
「はぁ……もう付き合いきれん!先に食べるぞぉ!せっかくのカレーが冷めちまうよ。」
さすがに呆れた様子で痺れを切らした良一が、スプーンを手に取る。すると、その時だった。
“……ピンポーン!”インターホンの音を聴いた瞬間、綾乃の表情が満面の笑みに変わる。
『ねぇ良一。』
「あ、あぁ……よし。」
良一が玄関モニターをチェックすると1人の女性が映っていた。大変な美人だ。歳は良一達と同じくらいだろうか、それとも少し上かもしれない。大人の落ち着いた女性といった感じだ。
「は……はい、どちら様でしょうか?」
妙に緊張してしまっていた良一は、少し声を裏返しながらモニターに向かってそう言った。
《あの……今日隣に引っ越して来た篠原と申します。》
篠原と名乗る女性は容姿もそうだが、その声もどこか上品に聞こえる。
「あ、そ、そうですか。少し待ってください。」
「2人で行くか?」
『うん、もちろん行くわよ。』
良一と綾乃は細い廊下を2人で肩を並べて歩き、玄関へと向かった。“ガチャ……”
「あ、どうもぉ。」
良一がドアを開けると、そこにはモニターで見た通りの美人な女性が一人で立っていた。
《夜遅くにすみません。えっと……。》
「藤澤と言います、こっちは妻の綾乃です。」
『こんばんは、篠原さん……ですよね?』
《はい、篠原恭子と言います。あのこれ、大した物ではないんですけど。》
そう言って恭子が手に持っていた菓子折りを渡してくる。今時こういうのは珍しい。容姿も上品であるし、礼儀正しい人なのだなと良一と綾乃は思った。
《あの、藤澤さんはご夫婦お2人でお住まいなんですか?》
「えぇ、そうなんですけどね。」
『篠原さんは、ご家族で引っ越して来られたんですか?』
《いえ、あの……私はまだ結婚はしていなくて、1人で越してきたんです。》
「1人……ですか?」
恭子のその言葉を聞いて、良一と綾乃は思わず顔を見合わせた。 ここはファミリー向けマンションで、どの部屋も80㎡以上はある。女性の1人暮らしには広すぎるし、それにかなり贅沢だ。購入にしても賃貸にしても、価格はそれなりにするはずである。
《やっぱり変、ですよね?こんなマンションに女で1人で住むのは・・。》
「いえいえ、そんな事はないと思いますけど……。」
『う、羨ましいよね?』
「あぁ……だ、だよな。」
2015/09/11
長U〖綾乃の想い〗第1章その5 05
長U〖綾乃の想い〗第1章その5 05
このマンションに1人暮らしできるという事は、彼女(篠原恭子)に余程経済的な余裕があるのだろう。想像するに、元々親がお金持ちとかそういう感じかもしれない。このマンションで1人暮らしなんて、一般的にはちょっと考え辛い。
しかし夫の藤澤良一(37歳)と妻の綾乃(あやの:30歳)は、恭子に悪い印象は持たなかった。いや寧ろ、恭子の端麗な顔立ちと礼儀正しさにその印象は抜群に良かった。今は2人共、この人ならお隣同士で良い関係が作れるのではないかと感じている
『じゃあ恭子さん一人で引越しは大変なんじゃないですか?何かわたしにできる事があれば手伝いますよ?』
その言葉は綾乃の恭子と仲良くしたい、そういう気持ちの表れであった。
《え?あ、でもそんな・・・悪いです。》
「いえ遠慮せずに言ってください。せっかくお隣になれたんですから。どうせうちの妻は昼間とかずっと暇なんで、どんどん使ってやってください。」
『ちょっと良一、暇ってのは言い過ぎなんじゃないのぉ?主婦を馬鹿にしているでしょ?・・・あ、でも恭子さん、本当に遠慮しないで言ってくださいね。重い物とかあったら全部うちの旦那がやりますからね。』
《フフッ、ありがとうございます。》
良一と綾乃のやり取りが面白かったのか、恭子はクスっと笑ってそうお礼を言った。
《あの、それじゃ夜遅くにすみませんでした。》
「いえいえ、これからよろしくお願いしますね、分からない事とか困った事とか何かあったら私達にいつでも言ってください。」
《はい、本当にありがとうございます・・・それでは。》
恭子はそう言って良一達に向かって頭を下げると、隣の自分の部屋へと戻っていこうとした。
『あっ・・・恭子さん!』
と、急に何かを思い出したように綾乃が篠原さんを呼び止めます。
《は、はい?》
綾乃の声で篠原さんが振り返った。
『あの・・夜ご飯・・・もう食べました?』
綾乃が作ったカレーを食べ終えた3人は、リビングで寛ぎながら話に花を咲かせています。
『え~凄い恭子さん、GDMって有名な会社だよね?』
「おいおい、有名なんてもんじゃないだろ?GDMグループと言えば世界でも有数の大企業じゃないか。若いのにGDMでそんな役職についているって事は、恭子さんは超エリートって事だよ。」
《い、いえそんな事・・・。」
初めて顔を合わせてからまだそれ程時間は経っていないのに、私達夫婦と恭子との距離感はとても親密なものになっています。特に綾乃はとても楽しそうに話していて、余程新たな出会いと友人ができた事が嬉しかったのだろう。
『第一線で活躍する働く恭子さんって凄いわ。わたし尊敬しちゃうわ。』
《いえそんな・・・でも良一さんと綾乃さんを見ていると凄く羨ましいです。とっても幸せそうで。》
お互いを下の名前で呼び合っているのは、篠原さんと同い歳であった綾乃がそうしようと提案したからだ。(綾乃は会ったときから下の名前で呼んでいたけど・・・。)
2015/09/19
このマンションに1人暮らしできるという事は、彼女(篠原恭子)に余程経済的な余裕があるのだろう。想像するに、元々親がお金持ちとかそういう感じかもしれない。このマンションで1人暮らしなんて、一般的にはちょっと考え辛い。
しかし夫の藤澤良一(37歳)と妻の綾乃(あやの:30歳)は、恭子に悪い印象は持たなかった。いや寧ろ、恭子の端麗な顔立ちと礼儀正しさにその印象は抜群に良かった。今は2人共、この人ならお隣同士で良い関係が作れるのではないかと感じている
『じゃあ恭子さん一人で引越しは大変なんじゃないですか?何かわたしにできる事があれば手伝いますよ?』
その言葉は綾乃の恭子と仲良くしたい、そういう気持ちの表れであった。
《え?あ、でもそんな・・・悪いです。》
「いえ遠慮せずに言ってください。せっかくお隣になれたんですから。どうせうちの妻は昼間とかずっと暇なんで、どんどん使ってやってください。」
『ちょっと良一、暇ってのは言い過ぎなんじゃないのぉ?主婦を馬鹿にしているでしょ?・・・あ、でも恭子さん、本当に遠慮しないで言ってくださいね。重い物とかあったら全部うちの旦那がやりますからね。』
《フフッ、ありがとうございます。》
良一と綾乃のやり取りが面白かったのか、恭子はクスっと笑ってそうお礼を言った。
《あの、それじゃ夜遅くにすみませんでした。》
「いえいえ、これからよろしくお願いしますね、分からない事とか困った事とか何かあったら私達にいつでも言ってください。」
《はい、本当にありがとうございます・・・それでは。》
恭子はそう言って良一達に向かって頭を下げると、隣の自分の部屋へと戻っていこうとした。
『あっ・・・恭子さん!』
と、急に何かを思い出したように綾乃が篠原さんを呼び止めます。
《は、はい?》
綾乃の声で篠原さんが振り返った。
『あの・・夜ご飯・・・もう食べました?』
綾乃が作ったカレーを食べ終えた3人は、リビングで寛ぎながら話に花を咲かせています。
『え~凄い恭子さん、GDMって有名な会社だよね?』
「おいおい、有名なんてもんじゃないだろ?GDMグループと言えば世界でも有数の大企業じゃないか。若いのにGDMでそんな役職についているって事は、恭子さんは超エリートって事だよ。」
《い、いえそんな事・・・。」
初めて顔を合わせてからまだそれ程時間は経っていないのに、私達夫婦と恭子との距離感はとても親密なものになっています。特に綾乃はとても楽しそうに話していて、余程新たな出会いと友人ができた事が嬉しかったのだろう。
『第一線で活躍する働く恭子さんって凄いわ。わたし尊敬しちゃうわ。』
《いえそんな・・・でも良一さんと綾乃さんを見ていると凄く羨ましいです。とっても幸せそうで。》
お互いを下の名前で呼び合っているのは、篠原さんと同い歳であった綾乃がそうしようと提案したからだ。(綾乃は会ったときから下の名前で呼んでいたけど・・・。)
2015/09/19
長U〖綾乃の想い〗第2章その1 06
長U〖綾乃の想い〗第2章その1 06
妻(藤澤綾乃:ふじさわ・あやの:30歳)が、『恭子さんは恋人とかはいるの?』ってストレートな質問をする。《・・・はい、一応いますけど・・・。》って篠原恭子(しのはら・きょうこ:30歳)は答えた。「そうだよなぁ、これ程の美人を男が放っておくわけないよなぁ。」と、夫の藤澤良一(ふじさわ・りょういち:37歳)が言うとおり恭子は美人であるし、考え方もしっかりしている印象であるため、きっと恭子の恋人は素敵な男性なのんだろうと綾乃は思った。
『そっかぁ、じゃあもう結婚も近いんじゃない?』
《・・・どうかなぁ・・・そういう話って彼から聞いた事ないですから・・・私と結婚するつもりがあるかどうか・・・。》
綾乃の問いに、恭子は自嘲気味に薄笑いを浮かべながらそう言った。
『・・・恭子さんは、結婚願望とかはあるの?』
《私は・・・できれば今の彼と結婚して家庭を持ちたいと思っているんですけど、彼は・・・。》
そう話す恭子の表情はどこか寂しげである。
『そっかぁ・・・でも恭子さんの彼氏さんはきっと素敵な人なんでしょうね。』
《フフッ・・・どうですかね、私男運無いんです。》
『そうなの?でもなんか恭子さんの彼氏さんがどんな人かちょっと見てみたいなぁ。』
「おい綾乃、あんまり恭子さんを困らせるような事言うなよ。」
《いいんですよ良一さん。今度彼氏を紹介します、次は私の部屋にお2人を招待させてください。皆で一緒にお酒でも飲みましょ。》
『わぁいいわね。私が料理作って持ってくよ。』
綾乃は恭子と話していて、この人なら良い友達になれそうと感じていた。
その夜、最後に綾乃と携帯番号を交換してから恭子は隣の部屋へと帰っていく。
「よかったな、恭子さん良い人そうで。」
『うん。今日は本当に楽しかったわ。』
ベッドの中でそう話す良一と綾乃。
『また山口さんの時みたいに、楽しく過ごせそうね。』
「でも綾乃、嬉しいのは分かるけどあんまり誘い過ぎるなよ。恭子さんは1人で働いているんだから、きっと疲れている時も多いからな。」
『あ~・・・うん、そうだよね。それは気をつけないとね。でも凄いよね恭子さん。』
「ま、女性でも人それぞれ、色んな人生があるからな。」
恭子は本当に忙しく仕事をしているようだった。引っ越して来た次の日から朝は良一よりも早くマンションを出て、帰ってくるのはいつも深夜。それだけ働いているからこそ、このマンションに1人暮らしできるだけの収入があるのだなと、納得ができた。
しかし、睡眠時間も少ないであろうその生活の様子を傍から見ていて、綾乃は恭子の事を隣人として心配せずにはいられなかった。だから綾乃は、“恭子のために何かできないか”と考えていた。しかし、その良心が時に相手に迷惑を掛ける事にもなりかねない事を、綾乃も大人なのだから知っている。綾乃は、恭子にどのタイミングでメールを送ればいいのか、悩んでいた。
『ねぇ良一、恭子さんちゃんと夜ご飯とか食べてるのかなぁ?』
恭子が引っ越してきてから数日後のある日、綾乃は良一に聞いてみた。
「ん?どうだろうなぁ、外食でもしているんじゃないか?」
『でもそれって絶対身体に良くないよね。』
「え?あぁ・・・まぁな。でもさすがに食べるものまで他人に何か言われたくないだろ?」
『そうだけどぉ・・・。』
「恭子さんにメールでもしたのか?」
『してないよ、一回も。だって凄く忙しそうなんだもん。』
「まぁそれが恭子さんにとっては普通の生活なのかもしれないしな。向こうから困った事とか相談してきたら隣の友人として綾乃ができる事をすれば良いんじゃないか?」
『ん~・・・。』
まるで恭子の母親にでもなったかのように恭子の身体の事を心配している綾乃。
2015/09/27
妻(藤澤綾乃:ふじさわ・あやの:30歳)が、『恭子さんは恋人とかはいるの?』ってストレートな質問をする。《・・・はい、一応いますけど・・・。》って篠原恭子(しのはら・きょうこ:30歳)は答えた。「そうだよなぁ、これ程の美人を男が放っておくわけないよなぁ。」と、夫の藤澤良一(ふじさわ・りょういち:37歳)が言うとおり恭子は美人であるし、考え方もしっかりしている印象であるため、きっと恭子の恋人は素敵な男性なのんだろうと綾乃は思った。
『そっかぁ、じゃあもう結婚も近いんじゃない?』
《・・・どうかなぁ・・・そういう話って彼から聞いた事ないですから・・・私と結婚するつもりがあるかどうか・・・。》
綾乃の問いに、恭子は自嘲気味に薄笑いを浮かべながらそう言った。
『・・・恭子さんは、結婚願望とかはあるの?』
《私は・・・できれば今の彼と結婚して家庭を持ちたいと思っているんですけど、彼は・・・。》
そう話す恭子の表情はどこか寂しげである。
『そっかぁ・・・でも恭子さんの彼氏さんはきっと素敵な人なんでしょうね。』
《フフッ・・・どうですかね、私男運無いんです。》
『そうなの?でもなんか恭子さんの彼氏さんがどんな人かちょっと見てみたいなぁ。』
「おい綾乃、あんまり恭子さんを困らせるような事言うなよ。」
《いいんですよ良一さん。今度彼氏を紹介します、次は私の部屋にお2人を招待させてください。皆で一緒にお酒でも飲みましょ。》
『わぁいいわね。私が料理作って持ってくよ。』
綾乃は恭子と話していて、この人なら良い友達になれそうと感じていた。
その夜、最後に綾乃と携帯番号を交換してから恭子は隣の部屋へと帰っていく。
「よかったな、恭子さん良い人そうで。」
『うん。今日は本当に楽しかったわ。』
ベッドの中でそう話す良一と綾乃。
『また山口さんの時みたいに、楽しく過ごせそうね。』
「でも綾乃、嬉しいのは分かるけどあんまり誘い過ぎるなよ。恭子さんは1人で働いているんだから、きっと疲れている時も多いからな。」
『あ~・・・うん、そうだよね。それは気をつけないとね。でも凄いよね恭子さん。』
「ま、女性でも人それぞれ、色んな人生があるからな。」
恭子は本当に忙しく仕事をしているようだった。引っ越して来た次の日から朝は良一よりも早くマンションを出て、帰ってくるのはいつも深夜。それだけ働いているからこそ、このマンションに1人暮らしできるだけの収入があるのだなと、納得ができた。
しかし、睡眠時間も少ないであろうその生活の様子を傍から見ていて、綾乃は恭子の事を隣人として心配せずにはいられなかった。だから綾乃は、“恭子のために何かできないか”と考えていた。しかし、その良心が時に相手に迷惑を掛ける事にもなりかねない事を、綾乃も大人なのだから知っている。綾乃は、恭子にどのタイミングでメールを送ればいいのか、悩んでいた。
『ねぇ良一、恭子さんちゃんと夜ご飯とか食べてるのかなぁ?』
恭子が引っ越してきてから数日後のある日、綾乃は良一に聞いてみた。
「ん?どうだろうなぁ、外食でもしているんじゃないか?」
『でもそれって絶対身体に良くないよね。』
「え?あぁ・・・まぁな。でもさすがに食べるものまで他人に何か言われたくないだろ?」
『そうだけどぉ・・・。』
「恭子さんにメールでもしたのか?」
『してないよ、一回も。だって凄く忙しそうなんだもん。』
「まぁそれが恭子さんにとっては普通の生活なのかもしれないしな。向こうから困った事とか相談してきたら隣の友人として綾乃ができる事をすれば良いんじゃないか?」
『ん~・・・。』
まるで恭子の母親にでもなったかのように恭子の身体の事を心配している綾乃。
2015/09/27
長U〖綾乃の想い〗第2章その2 07
長U〖綾乃の想い〗第2章その2 07
〖本当は些細な事でも相談できるような、恭子にとって信頼できるそんな友人になりたい。〗と、藤澤綾乃(あやの:30歳)がそんな風に考えていた時だった。♪~♪~♪~・・・綾乃の携帯の着信音が鳴った。少し慌てたように、携帯を手に取りディスプレイを確認する。
『あっ・・・。』
恭子からだ。
《もしもし綾乃さん?この前言っていた私の部屋での食事会の事なんですけど、彼が来週の土曜にでもって言っているんですけど、どうですか?》
突然掛かってきた電話、その恭子の声を聞いた瞬間綾乃の表情はパァっと笑顔に変った。
『うんうん!・・・え?土曜日?うんオッケー大丈夫よ、大丈夫だよね良一?』
「は?何が?」
少し興奮気味の妻の綾乃、電話の内容が分からない藤澤良一(37歳)には、綾乃が何のことを言っているのかサッパリ理解できない。
『土曜日よ!大丈夫よね?』
「いやだから何の事だよ、土曜日に何があるんだよ?」
『食事会よ!恭子さんと恭子さんの彼との、ほらこの前言っていたでしょ?』
「あ~あれね。…そう言ってくれないと分からないよ。」
『で?大丈夫でしょ?土曜日は。』
「あぁ大丈夫だよ、普通に仕事休みの日だし。」
『もしもし恭子さん?良一も大丈夫だって言ってるから・・・うん・・・うん・・・じゃあ来週の土曜で決まりね。』
綾乃が電話をしながら子供のように無邪気な笑顔を見せる。
『うん・・・うん・・・恭子さん凄い忙しそうよね・・・え~そんな事あるってぇ・・・きっと良一より忙しいと思うもの・・・うん・・・それでね、もしかして余計なお世話かもしれないけど、恭子さん夜ご飯とかどうしてるの?・・・うん・・・え?ほとんど外食?・・・やっぱり忙しいとそうなっちゃうよねぇ・・・。』
綾乃は所謂“世話好き”である。誰かのために何かをしたりするのが好きなのだ。それは学生時代から変らず、綾乃の長所の1つでもある。(短所かも・・・。)友達の誰かが風邪を引けばすぐに駆け付けたし、女友達の恋の悩みなどもよく聞いてあげていた。
『いいのいいの!いつでもこっちに食べにきてよね。』
その電話をした日から、綾乃と恭子は頻繁にメール交換をするようになり、夜には仕事を終えた恭子が私達の部屋へ食事に来る事も少しずつ増えていった。そのたびに、綾乃と恭子の女友達としての仲は急激に深まっていく。
最初の頃こそ、恭子はどこか気を遣い遠慮していた部分もあったのだが、すぐにそれは無くなり、今では仕事の悩みなども綾乃に気軽に相談してくる程だ。どうやらこの2人は色々面で気が合うらしい。そして、恭子の恋人がやってくる食事会の日も刻々と近づいていた。
2015/10/03
〖本当は些細な事でも相談できるような、恭子にとって信頼できるそんな友人になりたい。〗と、藤澤綾乃(あやの:30歳)がそんな風に考えていた時だった。♪~♪~♪~・・・綾乃の携帯の着信音が鳴った。少し慌てたように、携帯を手に取りディスプレイを確認する。
『あっ・・・。』
恭子からだ。
《もしもし綾乃さん?この前言っていた私の部屋での食事会の事なんですけど、彼が来週の土曜にでもって言っているんですけど、どうですか?》
突然掛かってきた電話、その恭子の声を聞いた瞬間綾乃の表情はパァっと笑顔に変った。
『うんうん!・・・え?土曜日?うんオッケー大丈夫よ、大丈夫だよね良一?』
「は?何が?」
少し興奮気味の妻の綾乃、電話の内容が分からない藤澤良一(37歳)には、綾乃が何のことを言っているのかサッパリ理解できない。
『土曜日よ!大丈夫よね?』
「いやだから何の事だよ、土曜日に何があるんだよ?」
『食事会よ!恭子さんと恭子さんの彼との、ほらこの前言っていたでしょ?』
「あ~あれね。…そう言ってくれないと分からないよ。」
『で?大丈夫でしょ?土曜日は。』
「あぁ大丈夫だよ、普通に仕事休みの日だし。」
『もしもし恭子さん?良一も大丈夫だって言ってるから・・・うん・・・うん・・・じゃあ来週の土曜で決まりね。』
綾乃が電話をしながら子供のように無邪気な笑顔を見せる。
『うん・・・うん・・・恭子さん凄い忙しそうよね・・・え~そんな事あるってぇ・・・きっと良一より忙しいと思うもの・・・うん・・・それでね、もしかして余計なお世話かもしれないけど、恭子さん夜ご飯とかどうしてるの?・・・うん・・・え?ほとんど外食?・・・やっぱり忙しいとそうなっちゃうよねぇ・・・。』
綾乃は所謂“世話好き”である。誰かのために何かをしたりするのが好きなのだ。それは学生時代から変らず、綾乃の長所の1つでもある。(短所かも・・・。)友達の誰かが風邪を引けばすぐに駆け付けたし、女友達の恋の悩みなどもよく聞いてあげていた。
『いいのいいの!いつでもこっちに食べにきてよね。』
その電話をした日から、綾乃と恭子は頻繁にメール交換をするようになり、夜には仕事を終えた恭子が私達の部屋へ食事に来る事も少しずつ増えていった。そのたびに、綾乃と恭子の女友達としての仲は急激に深まっていく。
最初の頃こそ、恭子はどこか気を遣い遠慮していた部分もあったのだが、すぐにそれは無くなり、今では仕事の悩みなども綾乃に気軽に相談してくる程だ。どうやらこの2人は色々面で気が合うらしい。そして、恭子の恋人がやってくる食事会の日も刻々と近づいていた。
2015/10/03
長U〖綾乃の想い〗第2章その3 08
長U〖綾乃の想い〗第2章その3 08
『あ~なんか、わたし緊張してきた・・・。』
《そんな緊張するような相手じゃないですよ、智(さとし)は。」
食事会を翌日に控えた夜、藤澤綾乃(あやの:30歳)は明日来る篠原恭子(きょうこ:30歳)の恋人について話をしていた。
『ねぇ、どんな人なの?その三浦(智)さんって方。』
《ん~・・・きっと綾乃さんが思っているような人ではないですよ(笑)。》
『そうかな?私の想像だとやっぱり恭子さんの恋人なんだから、頭が良くて仕事ができて、紳士で・・・。』
《フフッ、全然そんなんじゃ無いですよ。本当の智を見たら綾乃さんビックリするかも。》
『え~そうなんだぁ・・・ねぇねぇ、じゃあ一言で言えばどんな人なの?』
《ん~・・・そうね元気な人・・・かな。》
『え~それじゃちょっと抽象的すぎるよぉ。』
《フフッ、まぁ明日会ってみれば分かりますよ。それまでのお楽しみね。》
少しの緊張を感じながらも、綾乃は明日の新たな出会いへの期待に胸を高鳴らせる。また1人仲の良い友人ができるかもしれないと思うと、嬉しくて仕方なかった。仲良しになっても未だに言葉の中に敬語を交えて話すような真面目な恭子。その恭子の恋人なのだからきっと真面目な男性なのだろうと、綾乃はそう思った。恭子がいくら《そんなんじゃないですよ。》と否定しても、きっと結局は『真面目な人なんだろうなぁ。』と綾乃は予想をしていた。しかし、その綾乃の予想が良い意味でも悪い意味でも裏切られる事になる。
食事会当日、予定外の出来事が1つ起こる。夫の藤澤良一(りょういち:37歳)が突然の仕事がはいり食事会に参加できなくなったのだ。
「仕方ないだろ?なんか現場でトラブルがあったらしいからさ、とりあえず行って来るよ。」
『ん~・・・残念ね。ねぇ良一、何時頃に帰って来れそうなの?』
「どうかな?今は何とも言えないよ。現場に行って直接状況を確認しないとな。」
『そっかぁ・・・気をつけて行ってきてね。』
「あぁ、恭子さんとその彼氏さんにも宜しく言っておいてくれ。」
玄関で仕事に出る夫の良一を見送り、綾乃はキッチンに戻る。食事会で持っていく料理を綾乃は作っていた。今日のは特別に力を入れていたのだ。『良一ったら、よりによってこんな日に仕事が入るなんて…。』料理の中には良一の大好物である唐揚げの南蛮風もある。
『良一が来られないなら絶対作り過ぎだよね。これ…。』そうため息混じりに呟いた綾乃だが、料理の出来栄えには満足していた。夫の良一が参加出来ないのは残念だが、夜の食事会が楽しみである事には変りはなかった。
《あっ綾乃さん、こんばんは。どうぞ上がってください。》
夕方、料理の準備を終えた綾乃が、服を着替え、身形(みなり)を整えてから隣の恭子の部屋を訪れた。隣人の部屋とはいえ、あまりラフ過ぎる格好では行けない。特に今日は恭子の彼氏とも初めて顔を会わせる訳なのだから少し気合をいれた。
『うん、料理を作ったからテーブルに運んでいいかな?』
《わぁありがとうございます。私も運ぶの手伝います。》
三往復した綾乃の手料理が次々に恭子の部屋のテーブルに並べられていく。
《やっぱり綾乃さんの料理ってプロ級ですね。どれも本当に美味しそう。それに色彩が方ね感心しちゃいます。》
『フフッそんな事はないけど、今日はいつもより張り切っちゃった。』
《智がさっきメールで≪もうすぐ着く》って送ってきましたから、きっとこんな豪華な料理を見たら絶対に驚きます。》
恭子のその言葉を聞いて、綾乃は良一の事を思い出した。
『あ、そうだ!実はね恭子さん。うちの良一が急な仕事で来られなくなっちゃったのよぉ。』
《え?そうなんですか?それは残念ですね・・・。》
そう言って本当に残念そうな顔をする恭子。そんな恭子の表情を見て、綾乃はそれをフォローするように口を開く。
『でもまぁお隣だしね。またいつでも出来るわ。それより、恭子さんも何か作っていたの?美味しそうな匂いがするわね。』
《えっとぉ・・・簡単なおつまみを。わたし料理はあまり得意ではないので、そのかわりに美味しいお酒用意しました。綾乃さんも今日は大いに飲みましょうね。》
『え~そうなんだぁありがとう。じゃあ今日は良一もいないし、久しぶりにしっかり飲んじゃおうかなぁ、フフッ。』
2015/10/20
『あ~なんか、わたし緊張してきた・・・。』
《そんな緊張するような相手じゃないですよ、智(さとし)は。」
食事会を翌日に控えた夜、藤澤綾乃(あやの:30歳)は明日来る篠原恭子(きょうこ:30歳)の恋人について話をしていた。
『ねぇ、どんな人なの?その三浦(智)さんって方。』
《ん~・・・きっと綾乃さんが思っているような人ではないですよ(笑)。》
『そうかな?私の想像だとやっぱり恭子さんの恋人なんだから、頭が良くて仕事ができて、紳士で・・・。』
《フフッ、全然そんなんじゃ無いですよ。本当の智を見たら綾乃さんビックリするかも。》
『え~そうなんだぁ・・・ねぇねぇ、じゃあ一言で言えばどんな人なの?』
《ん~・・・そうね元気な人・・・かな。》
『え~それじゃちょっと抽象的すぎるよぉ。』
《フフッ、まぁ明日会ってみれば分かりますよ。それまでのお楽しみね。》
少しの緊張を感じながらも、綾乃は明日の新たな出会いへの期待に胸を高鳴らせる。また1人仲の良い友人ができるかもしれないと思うと、嬉しくて仕方なかった。仲良しになっても未だに言葉の中に敬語を交えて話すような真面目な恭子。その恭子の恋人なのだからきっと真面目な男性なのだろうと、綾乃はそう思った。恭子がいくら《そんなんじゃないですよ。》と否定しても、きっと結局は『真面目な人なんだろうなぁ。』と綾乃は予想をしていた。しかし、その綾乃の予想が良い意味でも悪い意味でも裏切られる事になる。
食事会当日、予定外の出来事が1つ起こる。夫の藤澤良一(りょういち:37歳)が突然の仕事がはいり食事会に参加できなくなったのだ。
「仕方ないだろ?なんか現場でトラブルがあったらしいからさ、とりあえず行って来るよ。」
『ん~・・・残念ね。ねぇ良一、何時頃に帰って来れそうなの?』
「どうかな?今は何とも言えないよ。現場に行って直接状況を確認しないとな。」
『そっかぁ・・・気をつけて行ってきてね。』
「あぁ、恭子さんとその彼氏さんにも宜しく言っておいてくれ。」
玄関で仕事に出る夫の良一を見送り、綾乃はキッチンに戻る。食事会で持っていく料理を綾乃は作っていた。今日のは特別に力を入れていたのだ。『良一ったら、よりによってこんな日に仕事が入るなんて…。』料理の中には良一の大好物である唐揚げの南蛮風もある。
『良一が来られないなら絶対作り過ぎだよね。これ…。』そうため息混じりに呟いた綾乃だが、料理の出来栄えには満足していた。夫の良一が参加出来ないのは残念だが、夜の食事会が楽しみである事には変りはなかった。
《あっ綾乃さん、こんばんは。どうぞ上がってください。》
夕方、料理の準備を終えた綾乃が、服を着替え、身形(みなり)を整えてから隣の恭子の部屋を訪れた。隣人の部屋とはいえ、あまりラフ過ぎる格好では行けない。特に今日は恭子の彼氏とも初めて顔を会わせる訳なのだから少し気合をいれた。
『うん、料理を作ったからテーブルに運んでいいかな?』
《わぁありがとうございます。私も運ぶの手伝います。》
三往復した綾乃の手料理が次々に恭子の部屋のテーブルに並べられていく。
《やっぱり綾乃さんの料理ってプロ級ですね。どれも本当に美味しそう。それに色彩が方ね感心しちゃいます。》
『フフッそんな事はないけど、今日はいつもより張り切っちゃった。』
《智がさっきメールで≪もうすぐ着く》って送ってきましたから、きっとこんな豪華な料理を見たら絶対に驚きます。》
恭子のその言葉を聞いて、綾乃は良一の事を思い出した。
『あ、そうだ!実はね恭子さん。うちの良一が急な仕事で来られなくなっちゃったのよぉ。』
《え?そうなんですか?それは残念ですね・・・。》
そう言って本当に残念そうな顔をする恭子。そんな恭子の表情を見て、綾乃はそれをフォローするように口を開く。
『でもまぁお隣だしね。またいつでも出来るわ。それより、恭子さんも何か作っていたの?美味しそうな匂いがするわね。』
《えっとぉ・・・簡単なおつまみを。わたし料理はあまり得意ではないので、そのかわりに美味しいお酒用意しました。綾乃さんも今日は大いに飲みましょうね。》
『え~そうなんだぁありがとう。じゃあ今日は良一もいないし、久しぶりにしっかり飲んじゃおうかなぁ、フフッ。』
2015/10/20
長U〖綾乃の想い〗第2章その4 09
長U〖綾乃の想い〗第2章その4 09
篠原恭子(きょうこ:30歳)と藤澤綾乃(あやの:30歳)がそんな会話をしていると、インターホンの音が鳴る。それを聞いた瞬間、2人の表情は笑顔になった。
《あっ、きっと(三浦)智です。》
恭子はそう言って玄関へ向かう。
『う、うん・・・。』
綾乃は嬉しそうでもあったが、やはり少し緊張気味でもあった。
別に初対面とはいえそれ程は緊張するような事ではないと綾乃自身思っているのだが、それでも何故か心臓の鼓動は速くなっていたのだった。その理由は自分自身でも分からない。でも、もしかしてそれは結婚してからは新しい出会い、それも男性との新しい出会いというのを綾乃が経験していなかったからかもしれない。
綾乃には特に親しい男友達はいない。夫以外の男性との新たな出会いに対して、無意識の内に過剰に気を使ってしまっているのかもしれない。もちろんそれは、独身の時のような異姓に対する感情とは違う。綾乃はもう結婚しており、良一の妻であるのだから・・・。
『・・・ふぅ・・・。』
一度深呼吸をする・・・緊張なんてする事ないわよ・・・そう綾乃は無意味な程に緊張をしている自分自身に言い聞かせて、恭子の彼氏に笑顔で挨拶をできるように集中した。
〔おいおい恭子お前、こんな良いマンションに住んでいるのか!〕
リビングで1人立ち竦んでいる綾乃に、玄関の方から恭子の彼氏と思われる男性の大きな声が聞こえてくる。
〔さすがGDM(世界でも有数の大企業)で働いているだけあるなぁ!・・・で?もう来てるのかな?お前の友だちの隣の人妻は。〕
『・・・。』
玄関の方から聞こえてきた・・・〖人妻〗・・・その言葉は・・・きっと私の事を言っているのだろうと綾乃は思ったが、同時に自分が〖人妻〗と呼ばれている事に違和感を覚えた。いや、結婚していて人妻である事には違いはないのだが、何となく他人から自分がそんな代名詞で呼ばれた事なんて今までないから、それで違和感を覚えたのだ。
〔ハハッ!お?なんかすごく美味そうな匂いがするな。〕
そんな男性の声と、廊下を歩く足音が徐々に近づいてくる。それに比例するように、綾乃の鼓動も速くなって行く。・・・ドキドキドキドキ・・・そして・・・ガチャッ!リビングのドアが開き、そしてその男(三浦智)が入ってきた。
〔あ!どうも。三浦です。〕
『え?あ・・・こ、こんばんは・・・藤澤です。』
綾乃は目の前の男の容姿を見て意外に思った。礼儀正しく優しい恭子の彼氏という事で、真面目で爽やかな男性の姿を勝手に想像していたのだが・・・。今目の前にいる男性は、程よく焼けた小麦肌で体格も大きく、良く言えば男らしい感じもするが、綾乃が想像していた真面目な会社員風の男性とは全く違う。どちらかといえば活発な印象というか、悪く言うと若干チャラチャラしてそうな感じがする。
顔も整っているし、こういうタイプが好きな人には人気があるだろうなぁと綾乃は思ったが、あの恭子がこういったタイプを好んでいたとは少々驚きである。話し方も良く言えば社交的、悪く言えば軽そうな印象である。しかし決して綾乃の中で三浦の第一印象が凄く悪い訳ではない。人を見た目で判断してはいけないという事を、綾乃は心得ているつもりだった。
2015/10/24
篠原恭子(きょうこ:30歳)と藤澤綾乃(あやの:30歳)がそんな会話をしていると、インターホンの音が鳴る。それを聞いた瞬間、2人の表情は笑顔になった。
《あっ、きっと(三浦)智です。》
恭子はそう言って玄関へ向かう。
『う、うん・・・。』
綾乃は嬉しそうでもあったが、やはり少し緊張気味でもあった。
別に初対面とはいえそれ程は緊張するような事ではないと綾乃自身思っているのだが、それでも何故か心臓の鼓動は速くなっていたのだった。その理由は自分自身でも分からない。でも、もしかしてそれは結婚してからは新しい出会い、それも男性との新しい出会いというのを綾乃が経験していなかったからかもしれない。
綾乃には特に親しい男友達はいない。夫以外の男性との新たな出会いに対して、無意識の内に過剰に気を使ってしまっているのかもしれない。もちろんそれは、独身の時のような異姓に対する感情とは違う。綾乃はもう結婚しており、良一の妻であるのだから・・・。
『・・・ふぅ・・・。』
一度深呼吸をする・・・緊張なんてする事ないわよ・・・そう綾乃は無意味な程に緊張をしている自分自身に言い聞かせて、恭子の彼氏に笑顔で挨拶をできるように集中した。
〔おいおい恭子お前、こんな良いマンションに住んでいるのか!〕
リビングで1人立ち竦んでいる綾乃に、玄関の方から恭子の彼氏と思われる男性の大きな声が聞こえてくる。
〔さすがGDM(世界でも有数の大企業)で働いているだけあるなぁ!・・・で?もう来てるのかな?お前の友だちの隣の人妻は。〕
『・・・。』
玄関の方から聞こえてきた・・・〖人妻〗・・・その言葉は・・・きっと私の事を言っているのだろうと綾乃は思ったが、同時に自分が〖人妻〗と呼ばれている事に違和感を覚えた。いや、結婚していて人妻である事には違いはないのだが、何となく他人から自分がそんな代名詞で呼ばれた事なんて今までないから、それで違和感を覚えたのだ。
〔ハハッ!お?なんかすごく美味そうな匂いがするな。〕
そんな男性の声と、廊下を歩く足音が徐々に近づいてくる。それに比例するように、綾乃の鼓動も速くなって行く。・・・ドキドキドキドキ・・・そして・・・ガチャッ!リビングのドアが開き、そしてその男(三浦智)が入ってきた。
〔あ!どうも。三浦です。〕
『え?あ・・・こ、こんばんは・・・藤澤です。』
綾乃は目の前の男の容姿を見て意外に思った。礼儀正しく優しい恭子の彼氏という事で、真面目で爽やかな男性の姿を勝手に想像していたのだが・・・。今目の前にいる男性は、程よく焼けた小麦肌で体格も大きく、良く言えば男らしい感じもするが、綾乃が想像していた真面目な会社員風の男性とは全く違う。どちらかといえば活発な印象というか、悪く言うと若干チャラチャラしてそうな感じがする。
顔も整っているし、こういうタイプが好きな人には人気があるだろうなぁと綾乃は思ったが、あの恭子がこういったタイプを好んでいたとは少々驚きである。話し方も良く言えば社交的、悪く言えば軽そうな印象である。しかし決して綾乃の中で三浦の第一印象が凄く悪い訳ではない。人を見た目で判断してはいけないという事を、綾乃は心得ているつもりだった。
2015/10/24
長U〖綾乃の想い〗第2章その5 10
長U〖綾乃の想い〗第2章その5 10
《フフッ綾乃さん、なんか意外ってお顔されていますね。》
三浦の後から部屋に入ってきた恭子は笑顔でそう言った。
『え?別にそんな事ないけど・・・あ~でもちょっと正直に言うと予想外ではあるかもね。』
綾乃が片手を頬に当てながらそう言う。女性2人が顔を見合わせながら笑っているのを、三浦は何の事だか分からないといった様子で見ている。
〔え~なになに?俺の事?〕
《うん。綾乃さんはきっともっと違う感じの男性を予想していたんですよね?》
『う、うん…そうかな?』
〔へぇ~そっかぁ、どんな男だと想像していたんですか?〕
『え~っと・・・ん~もっとこう、真面目でお堅い感じかなぁって。』
〔え!?いやいやいや!俺超真面目ですって!え?真面目に見えないですか?〕
三浦が綾乃の言葉にオーバーとも言えるような大声で反応する。そんな三浦の反応を見て恭子はクスクス笑っていた。
《見えない見えない、智は絶対そんな風には見えなわよ。ですよねぇ?綾乃さん。》
『フフッ、ちょっとね。』
三浦が来てからの恭子の表情はとても明るかった。それはきっとこの三浦という男を本当に好いているのだろう。それを見ていて綾乃はなんだか微笑ましかった。
〔うわぁマジかよぉ、俺そんな印象かよぉ・・・でもまぁ、俺も意外だったけどな、恭子がこんな綺麗な奥さんと友達になっているなんてさ。〕
三浦はそう言って笑みを浮かべながら綾乃の顔を見た。
『ぇ・・・そ、そんな事・・・。』
急に綺麗な奥さんなどと言われて、綾乃は恥ずかしくなる。
《ダメよ智、綾乃さんには良一さんっていう素敵な旦那様がいるんだからね。》
〔わかっているって、別にそんな意味で言ってないよ。まぁでも、奥さん普通にモテるでしょ?だってマジで美人だもんね。〕
『え~全然そんな事ないですよぉ、ホントに。』
綾乃はそう謙遜しながら、頭の中で(きっと三浦さんは色んな女性に同じような事を言っているだろうなぁ)と思っていた。それは三浦の話し方や態度が、女性の扱いに慣れているような感じがしたからだ。まだ会って数分だが、綾乃にはそれがなんとなく分かる。
そして綾乃はこうも思っていた。(・・・良一とは全く逆のタイプだなぁ・・・)と。綾乃が初め
て出会った頃の良一は、女性の前では眼を見てまともに話もできないような、そんなちょっと頼りない男だった。
そして友達から始まって1年くらいで、ようやく何の気なしに話せるようになり、その頃から2人の関係は徐々に近づいていきます。それで結局出会ってから1年半後に綾乃と良
一は付き合い始めたのだ。綾乃にとっては人生で2人目の恋人だったが、良一にとっては綾乃が初めてできた恋人だったらしい。
そんな初々しい良一が少し綾乃の母性本能をくすぐられるようでもあったし、同時に綾乃よりも勉強も仕事もできる良一が凄く頼もしくもあった。それから大した問題もなく数年
の付き合いの後、2人はごく自然な流れで結婚に至ったのだ。
〔こんな綺麗な奥さんで旦那さんがマジ羨ましいですよ。〕
『そんな・・・三浦さん、お世辞を言い過ぎですよ。それに恭子さんなんてもっとスッゴイ美人じゃないですか?』
良一は初めて会った女性にこんな事は絶対に言えない。その三浦の言葉を聞きながら、やっぱり全然違うタイプだと綾乃は思っていた。それがこの日、綾乃が初めて出会った三浦に対する第一印象だった。
2015/10/31
《フフッ綾乃さん、なんか意外ってお顔されていますね。》
三浦の後から部屋に入ってきた恭子は笑顔でそう言った。
『え?別にそんな事ないけど・・・あ~でもちょっと正直に言うと予想外ではあるかもね。』
綾乃が片手を頬に当てながらそう言う。女性2人が顔を見合わせながら笑っているのを、三浦は何の事だか分からないといった様子で見ている。
〔え~なになに?俺の事?〕
《うん。綾乃さんはきっともっと違う感じの男性を予想していたんですよね?》
『う、うん…そうかな?』
〔へぇ~そっかぁ、どんな男だと想像していたんですか?〕
『え~っと・・・ん~もっとこう、真面目でお堅い感じかなぁって。』
〔え!?いやいやいや!俺超真面目ですって!え?真面目に見えないですか?〕
三浦が綾乃の言葉にオーバーとも言えるような大声で反応する。そんな三浦の反応を見て恭子はクスクス笑っていた。
《見えない見えない、智は絶対そんな風には見えなわよ。ですよねぇ?綾乃さん。》
『フフッ、ちょっとね。』
三浦が来てからの恭子の表情はとても明るかった。それはきっとこの三浦という男を本当に好いているのだろう。それを見ていて綾乃はなんだか微笑ましかった。
〔うわぁマジかよぉ、俺そんな印象かよぉ・・・でもまぁ、俺も意外だったけどな、恭子がこんな綺麗な奥さんと友達になっているなんてさ。〕
三浦はそう言って笑みを浮かべながら綾乃の顔を見た。
『ぇ・・・そ、そんな事・・・。』
急に綺麗な奥さんなどと言われて、綾乃は恥ずかしくなる。
《ダメよ智、綾乃さんには良一さんっていう素敵な旦那様がいるんだからね。》
〔わかっているって、別にそんな意味で言ってないよ。まぁでも、奥さん普通にモテるでしょ?だってマジで美人だもんね。〕
『え~全然そんな事ないですよぉ、ホントに。』
綾乃はそう謙遜しながら、頭の中で(きっと三浦さんは色んな女性に同じような事を言っているだろうなぁ)と思っていた。それは三浦の話し方や態度が、女性の扱いに慣れているような感じがしたからだ。まだ会って数分だが、綾乃にはそれがなんとなく分かる。
そして綾乃はこうも思っていた。(・・・良一とは全く逆のタイプだなぁ・・・)と。綾乃が初め
て出会った頃の良一は、女性の前では眼を見てまともに話もできないような、そんなちょっと頼りない男だった。
そして友達から始まって1年くらいで、ようやく何の気なしに話せるようになり、その頃から2人の関係は徐々に近づいていきます。それで結局出会ってから1年半後に綾乃と良
一は付き合い始めたのだ。綾乃にとっては人生で2人目の恋人だったが、良一にとっては綾乃が初めてできた恋人だったらしい。
そんな初々しい良一が少し綾乃の母性本能をくすぐられるようでもあったし、同時に綾乃よりも勉強も仕事もできる良一が凄く頼もしくもあった。それから大した問題もなく数年
の付き合いの後、2人はごく自然な流れで結婚に至ったのだ。
〔こんな綺麗な奥さんで旦那さんがマジ羨ましいですよ。〕
『そんな・・・三浦さん、お世辞を言い過ぎですよ。それに恭子さんなんてもっとスッゴイ美人じゃないですか?』
良一は初めて会った女性にこんな事は絶対に言えない。その三浦の言葉を聞きながら、やっぱり全然違うタイプだと綾乃は思っていた。それがこの日、綾乃が初めて出会った三浦に対する第一印象だった。
2015/10/31
長U〖綾乃の想い〗第2章その6 11
長U〖綾乃の想い〗第2章その6 11
皿に盛られた藤澤綾乃(あやの:30歳)の手料理が、三浦智(さとし:33歳)の口の中に勢い良く豪快に運ばれていく。見ていて気持ち良いくらいの食べっぷりだ。
〔ん~美味い美味い、いやぁ美人で料理もできる奥さんって最高ですね、完璧じゃないですか。〕
『フフッそんな事ないですけど、でもこれだけ美味しそうに食べてもらえると作った甲斐があります。』
〔恭子には絶対こんなの作れないよなぁ。〕
《もぅ・・・どうせ私は料理が下手ですよ。》
普段は真面目でスキの無さそうな篠原恭子(きょうこ:30歳)が三浦にからかわれ嬉しそうにしている。恭子は恋人の前では意外と甘えたがり屋さんなのかもしれないと綾乃は思った。
その日、三浦が話し上手だった事もあり、3人の食事会は大いに盛り上がった。恭子が用意した美味しいお酒もよく進んだ。夫の藤澤良一(りょういち:37歳)がアルコールは苦手だった事もあって、普段はあまり飲むことのなかった綾乃も、今日は頬をピンク色の染めながらお酒を楽しんでいる。
食事を終えた後も話題は途切れる事がなく、3人はダイニングからリビングへと移動をし、ソファでお酒を口にしながら色々な話をしていた。
〔あの時は若かったからなぁ、今はあんな事はできねぇわ。〕
『へぇ~随分と無茶していたんですねぇ。』
《フフッ・・どこまで本当の事やら、私はこの話もう何回も智から聞かされているんですよ。》
三浦の学生時代の武勇伝的な話や、趣味の話。それを調子よく三浦が話して女性2人はそれを聞く。おしゃべりな三浦相手にしばらくそんな一方的な状態が続いていたが、綾乃がふと思った事を何気なしに三浦に質問した。
『フフフッ、三浦さんって面白いですね。・・・あ、そういえば三浦さんってお仕事は何されているんですか?』
こんな質問、大人同士が知り合ったなら当然のように聞かれる事だ。だから綾乃は何に気を使う事もなく、ごく当たり前のように、自然にそれを三浦に聞いた。しかし綾乃のその言葉を聞いた瞬間、今まで快調に動いていた三浦の口は急にその動きを鈍くさせる。
〔え・・・?あぁ仕事?仕事ねぇ・・・。〕
『・・・?』
三浦の何か言い渋っているような様子に、綾乃はもしかして聞いてはいけない事を聞いてしまったのかと思った。もしかして世間では言いにくいような仕事をしているのか?と。
〔仕事はねぇ・・・一応トレーダーをやっているんですよ。〕
『・・・トレーダー?』
〔えぇ、株の・・。〕
『あ、え~っと・・・どこかの企業の資金運用とか・・・。』
〔いえ違います、個人でやっているんですよ。〕
『個人・・・へぇ、そうなんですか・・・。』
2015/11/06
皿に盛られた藤澤綾乃(あやの:30歳)の手料理が、三浦智(さとし:33歳)の口の中に勢い良く豪快に運ばれていく。見ていて気持ち良いくらいの食べっぷりだ。
〔ん~美味い美味い、いやぁ美人で料理もできる奥さんって最高ですね、完璧じゃないですか。〕
『フフッそんな事ないですけど、でもこれだけ美味しそうに食べてもらえると作った甲斐があります。』
〔恭子には絶対こんなの作れないよなぁ。〕
《もぅ・・・どうせ私は料理が下手ですよ。》
普段は真面目でスキの無さそうな篠原恭子(きょうこ:30歳)が三浦にからかわれ嬉しそうにしている。恭子は恋人の前では意外と甘えたがり屋さんなのかもしれないと綾乃は思った。
その日、三浦が話し上手だった事もあり、3人の食事会は大いに盛り上がった。恭子が用意した美味しいお酒もよく進んだ。夫の藤澤良一(りょういち:37歳)がアルコールは苦手だった事もあって、普段はあまり飲むことのなかった綾乃も、今日は頬をピンク色の染めながらお酒を楽しんでいる。
食事を終えた後も話題は途切れる事がなく、3人はダイニングからリビングへと移動をし、ソファでお酒を口にしながら色々な話をしていた。
〔あの時は若かったからなぁ、今はあんな事はできねぇわ。〕
『へぇ~随分と無茶していたんですねぇ。』
《フフッ・・どこまで本当の事やら、私はこの話もう何回も智から聞かされているんですよ。》
三浦の学生時代の武勇伝的な話や、趣味の話。それを調子よく三浦が話して女性2人はそれを聞く。おしゃべりな三浦相手にしばらくそんな一方的な状態が続いていたが、綾乃がふと思った事を何気なしに三浦に質問した。
『フフフッ、三浦さんって面白いですね。・・・あ、そういえば三浦さんってお仕事は何されているんですか?』
こんな質問、大人同士が知り合ったなら当然のように聞かれる事だ。だから綾乃は何に気を使う事もなく、ごく当たり前のように、自然にそれを三浦に聞いた。しかし綾乃のその言葉を聞いた瞬間、今まで快調に動いていた三浦の口は急にその動きを鈍くさせる。
〔え・・・?あぁ仕事?仕事ねぇ・・・。〕
『・・・?』
三浦の何か言い渋っているような様子に、綾乃はもしかして聞いてはいけない事を聞いてしまったのかと思った。もしかして世間では言いにくいような仕事をしているのか?と。
〔仕事はねぇ・・・一応トレーダーをやっているんですよ。〕
『・・・トレーダー?』
〔えぇ、株の・・。〕
『あ、え~っと・・・どこかの企業の資金運用とか・・・。』
〔いえ違います、個人でやっているんですよ。〕
『個人・・・へぇ、そうなんですか・・・。』
2015/11/06
長U〖綾乃の想い〗第2章その7 12
長U〖綾乃の想い〗第2章その7 12
それ以上、藤澤綾乃(あやの:30歳)が質問を繰り返す事はなかった。何かこれ以上三浦智(さとし:33歳)に聞いてはいけないように綾乃には感じたからだ。(・・・個人で株のトレーダー・・・株で生活しているって事なのかしら・・・?)
《フフッあんまりいないですよね、こんな人。・・・私、ちょっとお手洗い行ってきますね。》
『え?あ、うん。』
恭子が席を外し、今日初対面の2人だけになったリビングに、ほんの数秒間沈黙の時間が流れる。少し空気が重い。先程まで楽しく話していたのに、仕事の事を聞いたために若干気まずくなってしまったかと思った綾乃は何を話したら良いのか分からなく、頭の中で懸命に別の話題を考えていた。
しかし先に沈黙を破ったのはやはり三浦だった。
〔そういえば旦那さん、今日は土曜日なのに仕事って、いつもそんなに忙しいですか?〕
『えぇ、最近は忙しくしていますねぇ、でも恭子さん程じゃないと思うけど。」
〔帰りも遅い?〕
『ぇ・・・?えぇ、割かしそういう日が多いですね。』
何かを探るような三浦の訊き方に少し違和感を覚えながらも、綾乃はお酒の入ったグラスを片手に質問に答える。
〔じゃあ寂しいんじゃないですか?いつも1人で旦那さんを待っているのは。〕
『ん~そういう時もあるけど、もう馴れましたね。』
〔へぇ~そうですかぁ・・・でも、旦那さんが忙しいとまだまだお若い奥さんは色々と大変でしょう?〕
『・・・え?大変?それってどういう・・・』
笑みを浮かべながらそう訊いてきた三浦だったが、綾乃はその質問の意味も意図よく分からないでいた。ただ、急に変った顔、三浦のその笑みが、今日これまで三浦が綾乃に見せていなかった表情である事だけは分かった。恭子が居た時とはまるで別人のような表情だ。
〔ほら、色々と溜まるものもあるでしょう?奥さんくらいの若い女性なら特に。〕
『え?』
〔忙しくても、そっちの方はちゃんと旦那さんに解消してもらっているんですか?〕
『ぇ・・・え?・・・あの・・・。』
そう言われて綾乃はやっと三浦が聞いてきている事の意味を理解した。いや、しかしそんな事は常識的にとても今日初対面の相手に、それも異性に訊くことではない。なんにしろ、そんな事を他人から言われた事のなかった綾乃は、三浦からの急な質問に動揺していた。
『や・・・やだぁ、三浦さん酔っているんでしょ?』
一瞬言葉を失っていた綾乃だったが、そう言って三浦からの問いをはぐらかした。わざとクスっと笑い、お酒の入ったグラスに口を付ける。
しかし、大人の女性として三浦からの少しセクハラじみた言葉を軽くかわしたつもりだった綾乃だが、顔は先程までより赤くなっていて、内心の動揺を隠せていなかった。耳の先が熱い。なんとなく、こんな事で動揺している自分を三浦に気付かれたくなかった。
〔・・・冗談ですよ。でも奥さんは可愛らしい方だなぁ、これくらいの事で赤くなっちゃってさ。〕
『も、もう!からかわないで下さい三浦さん。恭子さんに聞かれたら怒られますよ。』
(三浦の言うとおり、綾乃はこの程度の事で顔を赤くしている自分がどこか恥ずかしかった。)
あっけなく動揺を見事に見抜かれた綾乃は、さらに顔を赤くして三浦にそう言った。
〔別に構いませんよ、恭子は俺がこういう男だって知っていますから。〕
結婚する前までは綾乃は、普通に何気なく男性とも話していたし、飲み会などの席では男性陣から下品な言葉も飛んでいたけど、その時は別にそれに反応する事なんてなかった。でも結婚してからは、めっきり夫(藤澤良一)以外の男性との関わりは無くなっていたため、やはりそういったモノへの免疫力が下がっていたのかもしれない。(・・・もういい大人なのに・・・。)
2015/11/15
それ以上、藤澤綾乃(あやの:30歳)が質問を繰り返す事はなかった。何かこれ以上三浦智(さとし:33歳)に聞いてはいけないように綾乃には感じたからだ。(・・・個人で株のトレーダー・・・株で生活しているって事なのかしら・・・?)
《フフッあんまりいないですよね、こんな人。・・・私、ちょっとお手洗い行ってきますね。》
『え?あ、うん。』
恭子が席を外し、今日初対面の2人だけになったリビングに、ほんの数秒間沈黙の時間が流れる。少し空気が重い。先程まで楽しく話していたのに、仕事の事を聞いたために若干気まずくなってしまったかと思った綾乃は何を話したら良いのか分からなく、頭の中で懸命に別の話題を考えていた。
しかし先に沈黙を破ったのはやはり三浦だった。
〔そういえば旦那さん、今日は土曜日なのに仕事って、いつもそんなに忙しいですか?〕
『えぇ、最近は忙しくしていますねぇ、でも恭子さん程じゃないと思うけど。」
〔帰りも遅い?〕
『ぇ・・・?えぇ、割かしそういう日が多いですね。』
何かを探るような三浦の訊き方に少し違和感を覚えながらも、綾乃はお酒の入ったグラスを片手に質問に答える。
〔じゃあ寂しいんじゃないですか?いつも1人で旦那さんを待っているのは。〕
『ん~そういう時もあるけど、もう馴れましたね。』
〔へぇ~そうですかぁ・・・でも、旦那さんが忙しいとまだまだお若い奥さんは色々と大変でしょう?〕
『・・・え?大変?それってどういう・・・』
笑みを浮かべながらそう訊いてきた三浦だったが、綾乃はその質問の意味も意図よく分からないでいた。ただ、急に変った顔、三浦のその笑みが、今日これまで三浦が綾乃に見せていなかった表情である事だけは分かった。恭子が居た時とはまるで別人のような表情だ。
〔ほら、色々と溜まるものもあるでしょう?奥さんくらいの若い女性なら特に。〕
『え?』
〔忙しくても、そっちの方はちゃんと旦那さんに解消してもらっているんですか?〕
『ぇ・・・え?・・・あの・・・。』
そう言われて綾乃はやっと三浦が聞いてきている事の意味を理解した。いや、しかしそんな事は常識的にとても今日初対面の相手に、それも異性に訊くことではない。なんにしろ、そんな事を他人から言われた事のなかった綾乃は、三浦からの急な質問に動揺していた。
『や・・・やだぁ、三浦さん酔っているんでしょ?』
一瞬言葉を失っていた綾乃だったが、そう言って三浦からの問いをはぐらかした。わざとクスっと笑い、お酒の入ったグラスに口を付ける。
しかし、大人の女性として三浦からの少しセクハラじみた言葉を軽くかわしたつもりだった綾乃だが、顔は先程までより赤くなっていて、内心の動揺を隠せていなかった。耳の先が熱い。なんとなく、こんな事で動揺している自分を三浦に気付かれたくなかった。
〔・・・冗談ですよ。でも奥さんは可愛らしい方だなぁ、これくらいの事で赤くなっちゃってさ。〕
『も、もう!からかわないで下さい三浦さん。恭子さんに聞かれたら怒られますよ。』
(三浦の言うとおり、綾乃はこの程度の事で顔を赤くしている自分がどこか恥ずかしかった。)
あっけなく動揺を見事に見抜かれた綾乃は、さらに顔を赤くして三浦にそう言った。
〔別に構いませんよ、恭子は俺がこういう男だって知っていますから。〕
結婚する前までは綾乃は、普通に何気なく男性とも話していたし、飲み会などの席では男性陣から下品な言葉も飛んでいたけど、その時は別にそれに反応する事なんてなかった。でも結婚してからは、めっきり夫(藤澤良一)以外の男性との関わりは無くなっていたため、やはりそういったモノへの免疫力が下がっていたのかもしれない。(・・・もういい大人なのに・・・。)
2015/11/15
長U〖綾乃の想い〗第2章その8 13
長U〖綾乃の想い〗第2章その8 13
〔ところで奥さんは、スポーツジムとかに通っているんですか?〕
『・・・え?いえ、特にそういうのは。』
〔へぇ~そうなんですかぁ・・・でも凄くスタイル良いですよねぇ、よく言われるでしょ?〕
そう言った三浦智(さとし:33歳)の目が、藤澤綾乃(あやの:30歳)の身体を下から舐める視線を送ってくる。
『ぇ・・・?』
女性なら多くの者が感じたことのある、男性からの胸や腰への視線を・・・。学生時代も社会人時代も、多くの女性がそうであるように、綾乃もよくそれを経験している。もちろん、時にそういった男性からの視線に嫌悪感を抱く時もあった。しかし三浦のそれからは不思議と全くそういったものを感じない。
それがなぜなのか、今の綾乃にはよく分からなかったが、とにかくその視線に反応しているのか、胸の鼓動が異常に速くなっている事だけは確かだった。『ま、またそんな事言って・・・いつも会う女性にそんな事言ってるんですか?』と綾乃は顔を赤くしたまま再び三浦の言葉をはぐらかすように、そう言い返す。
〔奥さんを見て素直にそう思ったから訊いたんですよ、ホントに旦那さんが羨ましい。でも興味あるなぁ・・・旦那さんはどんな方なんです?〕
2人きりになってからの三浦との会話に、驚くぐらいに緊張している自分がいる。それに
対して三浦は凄く冷静に見え、やはり女性との会話に慣れているのか。三浦の態度からは凄く余裕を感じられた。
『夫・・・ですか、うちの夫は・・・。』
綾乃がそう言いかけたところで、ガチャッ・・・、リビングのドアが開く。恭子が戻ってきたのだ。
《フフッ綾乃さん、智が変な事を話しをしていませんでした?》
篠原恭子(きょうこ:30歳)がソファに腰を下ろしながらそう言うと、素早く三浦がそれに反応する。
〔変な事なんて。ねぇ奥さん?旦那さんの話をしていたんだよね。〕
『え?えぇ・・・。』
三浦のちょっとした嘘に、綾乃はなぜか反射的に歩調を合わせてしまう。
《へぇ・・・あ、そういえば綾乃さん、良一さん遅いですね、もうこんな時間なのに。》
恭子にそう言われて時計を見ると、もう時計の針は午後10時を回っていた。
『あらホント、途中からでも参加できそうだったら連絡してって言っておいたんだけど・・・忙しいのかな。』
〔残念、旦那さんがどんな人なのか一目いいから見たかったなぁ。また今度紹介してくださいよ。〕
『・・・えぇ、またぜひ。』
綾乃が気付いた時には、三浦の表情は元に戻っていた。
恭子が帰ってくるまではまるで品定めでもされているかのような視線を送ってきていたのに。
《でも休日出勤というのに随分遅いですね、何かあったんですかね?》
『う~ん・・・電話してみようかな。ちょっと・・・うん。』
夫の良一は今日突然の出勤であったし、確かに休日の出勤でこんなに遅いのは珍しい。(どうしたんだろう?)と、少し気になった綾乃は、携帯片手に席を外し、リビングを出た。
2015/11/23
〔ところで奥さんは、スポーツジムとかに通っているんですか?〕
『・・・え?いえ、特にそういうのは。』
〔へぇ~そうなんですかぁ・・・でも凄くスタイル良いですよねぇ、よく言われるでしょ?〕
そう言った三浦智(さとし:33歳)の目が、藤澤綾乃(あやの:30歳)の身体を下から舐める視線を送ってくる。
『ぇ・・・?』
女性なら多くの者が感じたことのある、男性からの胸や腰への視線を・・・。学生時代も社会人時代も、多くの女性がそうであるように、綾乃もよくそれを経験している。もちろん、時にそういった男性からの視線に嫌悪感を抱く時もあった。しかし三浦のそれからは不思議と全くそういったものを感じない。
それがなぜなのか、今の綾乃にはよく分からなかったが、とにかくその視線に反応しているのか、胸の鼓動が異常に速くなっている事だけは確かだった。『ま、またそんな事言って・・・いつも会う女性にそんな事言ってるんですか?』と綾乃は顔を赤くしたまま再び三浦の言葉をはぐらかすように、そう言い返す。
〔奥さんを見て素直にそう思ったから訊いたんですよ、ホントに旦那さんが羨ましい。でも興味あるなぁ・・・旦那さんはどんな方なんです?〕
2人きりになってからの三浦との会話に、驚くぐらいに緊張している自分がいる。それに
対して三浦は凄く冷静に見え、やはり女性との会話に慣れているのか。三浦の態度からは凄く余裕を感じられた。
『夫・・・ですか、うちの夫は・・・。』
綾乃がそう言いかけたところで、ガチャッ・・・、リビングのドアが開く。恭子が戻ってきたのだ。
《フフッ綾乃さん、智が変な事を話しをしていませんでした?》
篠原恭子(きょうこ:30歳)がソファに腰を下ろしながらそう言うと、素早く三浦がそれに反応する。
〔変な事なんて。ねぇ奥さん?旦那さんの話をしていたんだよね。〕
『え?えぇ・・・。』
三浦のちょっとした嘘に、綾乃はなぜか反射的に歩調を合わせてしまう。
《へぇ・・・あ、そういえば綾乃さん、良一さん遅いですね、もうこんな時間なのに。》
恭子にそう言われて時計を見ると、もう時計の針は午後10時を回っていた。
『あらホント、途中からでも参加できそうだったら連絡してって言っておいたんだけど・・・忙しいのかな。』
〔残念、旦那さんがどんな人なのか一目いいから見たかったなぁ。また今度紹介してくださいよ。〕
『・・・えぇ、またぜひ。』
綾乃が気付いた時には、三浦の表情は元に戻っていた。
恭子が帰ってくるまではまるで品定めでもされているかのような視線を送ってきていたのに。
《でも休日出勤というのに随分遅いですね、何かあったんですかね?》
『う~ん・・・電話してみようかな。ちょっと・・・うん。』
夫の良一は今日突然の出勤であったし、確かに休日の出勤でこんなに遅いのは珍しい。(どうしたんだろう?)と、少し気になった綾乃は、携帯片手に席を外し、リビングを出た。
2015/11/23
長U〖綾乃の想い〗第2章その9 14
長U〖綾乃の想い〗第2章その9 14
リビングから廊下へ出た藤澤綾乃(あやの:30歳)はさっそく携帯を開き、夫の藤澤良一(りょういち:37歳)に電話を掛けた。
『もしもし?良一さん?』
「あ~ごめん綾乃、色々と面倒な事が起きてさ、今日はまだ帰れそうにないんだよ。』
『え?大変なのね。大丈夫?』
「あ~いや、大丈夫だけど・・・少し時間が掛かりそうなだけだよ。たぶん明日の午前には帰れる思うけど。」
『そっかぁ・・・。』
「そっちは?食事会、楽しくやっているのかい?恭子さんの彼氏も来ているんだろ?」
『う、うん・・・。』
「じゃあまた明日にでも話聞かせてくれよ。あっ、そろそろ休憩も終わりなんだ。」
『うん、頑張ってね。』
「はいよ。」
良一との電話を終えた綾乃は、ゆっくりと携帯を閉じて、そのまま廊下で少し考えていた。夫が仕事で忙しい時に、自分だけ友人とお酒を楽しんでいるのがなんとなく申し訳ないような気がしていたのです。もう夜の11時を過ぎていた。
明日、良一が帰ってきたら、温かい食事と温かいお風呂を用意しておかないと・・これ以上飲み続けて二日酔いなんかになっていられない。綾乃は良一と結婚してからは外に働きには出ていない。
一生懸命働いてくれている良一のために、せめてそのサポートと家事だけはできるだけ完璧にやりたい。ストレスの多い社会で働く夫の良一が帰ってきた時に、安心できるような場所を用意してあげたい。それは綾乃が専業主婦として心に決めている事だった。(・・・そろそろ帰ろうかな・・・)そんな事を考えながら、綾乃はリビングのドアノブに手を掛ける。・・・と、ドアを開けようとした綾乃だったが、中から聞こえてきた声を聞きその動きを止める。
《ちょっとぉ・・・駄目よ・・・ァ・・・綾乃さん戻ってくるから・・・。》
篠原恭子(きょうこ:30歳)と三浦智(さとし:33歳)の会話が聴こえます。
〔いいじゃないか・・・もう何日もお預けくらっているんだぜ?〕
《ァン・・・だってそれは仕事で・・・。》
〔前までは毎日していたのによ・・・俺が一日3発は出さないと気が済まない事は知っているだろ?〕
《・・・ン・・・ァ・・・。》
〔そんな俺を1週間以上放置するとはな・・・今夜は覚悟しておけよ・・・。〕
《ハァ・・・ごめんなさい・・・でも・・・もうホントに綾乃さんが・・・。》
〔ぁあ?・・・あ~あの女か、なかなか美味そうな身体しているよな・・・。〕
『・・・!?』
綾乃は三浦のその言葉を聞いた瞬間からドアノブを握ったまま、固まってしまっていた。〔あの女・・・〕そういえば三浦がここに来た時も、自分(綾乃)の事を〔隣の人妻〕と呼んでいたのを思い出す。
それに先程までのセクハラすれすれの会話。あの視線、言葉使い。・・・三浦さんって・・・。食事をしていた時は話しをしていて楽しかったし、気さくで面白い人だと思っていた。しかし今の三浦の言動に、どうしても綾乃は三浦という男の人間性に疑念を抱かざるを得なかった。何か自分の女としての本能が、三浦に対して危険信号を出しているような気がする。
2015/11/28
リビングから廊下へ出た藤澤綾乃(あやの:30歳)はさっそく携帯を開き、夫の藤澤良一(りょういち:37歳)に電話を掛けた。
『もしもし?良一さん?』
「あ~ごめん綾乃、色々と面倒な事が起きてさ、今日はまだ帰れそうにないんだよ。』
『え?大変なのね。大丈夫?』
「あ~いや、大丈夫だけど・・・少し時間が掛かりそうなだけだよ。たぶん明日の午前には帰れる思うけど。」
『そっかぁ・・・。』
「そっちは?食事会、楽しくやっているのかい?恭子さんの彼氏も来ているんだろ?」
『う、うん・・・。』
「じゃあまた明日にでも話聞かせてくれよ。あっ、そろそろ休憩も終わりなんだ。」
『うん、頑張ってね。』
「はいよ。」
良一との電話を終えた綾乃は、ゆっくりと携帯を閉じて、そのまま廊下で少し考えていた。夫が仕事で忙しい時に、自分だけ友人とお酒を楽しんでいるのがなんとなく申し訳ないような気がしていたのです。もう夜の11時を過ぎていた。
明日、良一が帰ってきたら、温かい食事と温かいお風呂を用意しておかないと・・これ以上飲み続けて二日酔いなんかになっていられない。綾乃は良一と結婚してからは外に働きには出ていない。
一生懸命働いてくれている良一のために、せめてそのサポートと家事だけはできるだけ完璧にやりたい。ストレスの多い社会で働く夫の良一が帰ってきた時に、安心できるような場所を用意してあげたい。それは綾乃が専業主婦として心に決めている事だった。(・・・そろそろ帰ろうかな・・・)そんな事を考えながら、綾乃はリビングのドアノブに手を掛ける。・・・と、ドアを開けようとした綾乃だったが、中から聞こえてきた声を聞きその動きを止める。
《ちょっとぉ・・・駄目よ・・・ァ・・・綾乃さん戻ってくるから・・・。》
篠原恭子(きょうこ:30歳)と三浦智(さとし:33歳)の会話が聴こえます。
〔いいじゃないか・・・もう何日もお預けくらっているんだぜ?〕
《ァン・・・だってそれは仕事で・・・。》
〔前までは毎日していたのによ・・・俺が一日3発は出さないと気が済まない事は知っているだろ?〕
《・・・ン・・・ァ・・・。》
〔そんな俺を1週間以上放置するとはな・・・今夜は覚悟しておけよ・・・。〕
《ハァ・・・ごめんなさい・・・でも・・・もうホントに綾乃さんが・・・。》
〔ぁあ?・・・あ~あの女か、なかなか美味そうな身体しているよな・・・。〕
『・・・!?』
綾乃は三浦のその言葉を聞いた瞬間からドアノブを握ったまま、固まってしまっていた。〔あの女・・・〕そういえば三浦がここに来た時も、自分(綾乃)の事を〔隣の人妻〕と呼んでいたのを思い出す。
それに先程までのセクハラすれすれの会話。あの視線、言葉使い。・・・三浦さんって・・・。食事をしていた時は話しをしていて楽しかったし、気さくで面白い人だと思っていた。しかし今の三浦の言動に、どうしても綾乃は三浦という男の人間性に疑念を抱かざるを得なかった。何か自分の女としての本能が、三浦に対して危険信号を出しているような気がする。
2015/11/28
長U〖綾乃の想い〗第3章その1 15
長U〖綾乃の想い〗第3章その1 15
《もう・・・何言ってるのよ・・・綾乃さんは結婚してるのよ・・・だいたい智ったら私がいるのに・・・。》
〔冗談だよ、でもちゃんと俺の欲望をお前が解消してくれないと、どうなるか分からないぜ?俺の身体は欲求に素直に動いちまうからな・・・」
《わかった・・・分かったから・・・後で、ね?ほらもう綾乃さんが来ちゃうから・・・。》
〔フッ・・・分かったよ・・・。〕
『・・・。』
どうやら中の様子は落ち着いたらしい。ドアノブを握っていた藤澤綾乃(あやの:30歳)の手はジットリと汗を掻いている。他人の性生活を覗いてしまったような気持ちと、三浦智(さとし:33歳)が自分の事を言っていたあの言葉。
〔・・・あの女、なかなか美味そうな身体してるよな・・・〕
男性に自分(綾乃)の事をそんな風に言われた事への精神的ショックと、同時に何か自分の身体の奥から沸いてくる熱いモノを感じて、綾乃の心は再び大きく動揺していた。胸のドキドキとする鼓動がなかなか治まらない。
綾乃がそんな動揺からなんとか落ち着きを取り戻すには少しの時間が掛かった。
『・・・ふぅ・・・。』
(・・・今日はもう帰ろう・・・)
ガチャ・・・綾乃は自分自身を落ち着かせるための深呼吸を1つすると、ゆっくりとドアを開けた。
《あ、綾乃さんどうでした?》
部屋に入ると、ダイニングの方から両手に食べ終わった皿を持つ篠原恭子(きょうこ:30歳)が笑顔で綾乃にそう聞いてきた。三浦は、ソファに座ってタバコを吸っている。
『う、うん・・・なんかまだ遅くまで掛かりそうだって。』
〔へぇ、大変ですねぇサラリーマンは。〕
三浦はフゥーっと口から煙を吐きながらそう言った。
『恭子さん、私も手伝うわ。』
食器などの後片付けを女性2人が始める。三浦も〔手伝おうか?〕と聞いてきたが、恭子が《邪魔になるだけよ。》と言って笑いながら断っていた。
〔じゃああれですか?旦那さんは今日は会社に泊まりですか?〕
『え、えぇ・・・たぶんそうだと思います。』
〔そうかぁ・・・じゃあ折角だし今日は朝まで3人で楽しんじゃいますか?〕
『え!?』
三浦の思いがけない提案に綾乃は少し驚いてしまった。さっきは恭子にあんな事を言っていたのに。
《フフッ、まだお酒もあるしね。どうします?綾乃さん?》
2015/12/02
《もう・・・何言ってるのよ・・・綾乃さんは結婚してるのよ・・・だいたい智ったら私がいるのに・・・。》
〔冗談だよ、でもちゃんと俺の欲望をお前が解消してくれないと、どうなるか分からないぜ?俺の身体は欲求に素直に動いちまうからな・・・」
《わかった・・・分かったから・・・後で、ね?ほらもう綾乃さんが来ちゃうから・・・。》
〔フッ・・・分かったよ・・・。〕
『・・・。』
どうやら中の様子は落ち着いたらしい。ドアノブを握っていた藤澤綾乃(あやの:30歳)の手はジットリと汗を掻いている。他人の性生活を覗いてしまったような気持ちと、三浦智(さとし:33歳)が自分の事を言っていたあの言葉。
〔・・・あの女、なかなか美味そうな身体してるよな・・・〕
男性に自分(綾乃)の事をそんな風に言われた事への精神的ショックと、同時に何か自分の身体の奥から沸いてくる熱いモノを感じて、綾乃の心は再び大きく動揺していた。胸のドキドキとする鼓動がなかなか治まらない。
綾乃がそんな動揺からなんとか落ち着きを取り戻すには少しの時間が掛かった。
『・・・ふぅ・・・。』
(・・・今日はもう帰ろう・・・)
ガチャ・・・綾乃は自分自身を落ち着かせるための深呼吸を1つすると、ゆっくりとドアを開けた。
《あ、綾乃さんどうでした?》
部屋に入ると、ダイニングの方から両手に食べ終わった皿を持つ篠原恭子(きょうこ:30歳)が笑顔で綾乃にそう聞いてきた。三浦は、ソファに座ってタバコを吸っている。
『う、うん・・・なんかまだ遅くまで掛かりそうだって。』
〔へぇ、大変ですねぇサラリーマンは。〕
三浦はフゥーっと口から煙を吐きながらそう言った。
『恭子さん、私も手伝うわ。』
食器などの後片付けを女性2人が始める。三浦も〔手伝おうか?〕と聞いてきたが、恭子が《邪魔になるだけよ。》と言って笑いながら断っていた。
〔じゃああれですか?旦那さんは今日は会社に泊まりですか?〕
『え、えぇ・・・たぶんそうだと思います。』
〔そうかぁ・・・じゃあ折角だし今日は朝まで3人で楽しんじゃいますか?〕
『え!?』
三浦の思いがけない提案に綾乃は少し驚いてしまった。さっきは恭子にあんな事を言っていたのに。
《フフッ、まだお酒もあるしね。どうします?綾乃さん?》
2015/12/02
長U〖綾乃の想い〗第3章その2 16
長U〖綾乃の想い〗第3章その2 16
しかし2人からのその提案に、藤澤綾乃(あやの:30歳)はどうしても乗り気にはなれなかった。
『ご、ごめん私、明日は朝から色々とやらないといけない事あるから・・・。』
《朝からって、良一さんが帰って来るの?》
篠原恭子(きょうこ:30歳)がたずねる。
『う、うん、そうね・・・。』
〔旦那さん想いなんですねぇ、ますます旦那さんが羨ましいな。〕
本音か冗談なのか三浦智(さとし:33歳)がそう言った。
『そんなに大した事ではないんですよ。』
本当の理由はそれだけではない、三浦に対して生まれている警戒心が、早く自分の部屋に戻りたいという気持ちにさせていたは確かです。
《そうですかぁ。でもお隣同士なんだし、また何時でもできますよね・・。》
『そうね、またいつでもできるわ。』
〔次はぜひ旦那さんも。〕
片付けを終えた頃には時計は午前0時を回っていた。帰る綾乃を玄関まで見送りに来た三浦と恭子は仲良さげに肩を寄せ合っていて、まるで新婚の夫婦のようです。
《今日は美味しい料理ありがとうございました。》
『いえいえ、こちらこそ美味しいお酒ありがとうございます。』
〔奥さん、旦那さんに宜しく言っておいてくださいよ。〕
『はい。今日はホントに楽しかったです。それじゃおやすみなさい。』
《おやすみなさ~い。》
『おやすみ。』
軽く挨拶をして恭子の部屋を出た綾乃はすぐ隣、自分達の部屋のドアを開けて中に入っていった。『・・・ふぅ・・・。』と、自宅の玄関で綾乃が思わず深く息をつく。なんだか妙に綾乃
は疲れを感じていた。久しぶりにお酒に酔っているからだろうか?それとも三浦にあんな事を言われたからだろうか?
キッチンへ行き、冷蔵庫を開け、ボトルに入った冷えたミネラルウォーターを口に含む。
『・・・はぁ・・・。』と再びため息が出る。綾乃はアルコールで少し火照った身体がなんだかだるく感じる。
鏡に映っている火照った自分の顔を確認して、熱くなっている頬っぺたを手で触りながら、綾乃は三浦の言葉を思い出していた。・・・〔奥さんも色々と溜まるものもあるでしょう〕・・・
・・・〔美味そうな身体しているよなぁ〕・・・。
『・・・何言ってるのかしら・・・あの人・・・。』今1人になって冷静に考えてみればみる程、三浦という男が下品に思えてきた。三浦に言われた言葉を思い出すだけで、なんだか今まで感じた事のないような変な気分になる。不快感?嫌悪感?違う、そんなのじゃない。・・・
なんなのよ・・・。
まだ今日会っただけなのだが、綾乃にはどうしてあのような男性が恭子のような真面目な女性と恋仲になれたのか疑問に思えてきていた。もちろん、ああいった男性が恭子のタイプだというだけの話なのかもしれないが・・。
綾乃に対するセクハラ的な言葉も、もしかして三浦にとっては日常茶飯事でごく普通の挨拶のようなものなのかもしれない。それでもあんな事をストレートに男性に言われた事など綾乃は今までなかったのだから、驚いてしまっても仕方ないだろう。
綾乃はそんな事を考えると、何かちょっと、恭子と三浦が別の世界の人間であるかのように感じてしまう。同じ男性でも夫の藤澤良一(りょういち:37歳)とは全く違う人間性を感じる三浦、そしてその男を恋人として選んでいる恭子に距離を感じたのだ。
2015/12/14
しかし2人からのその提案に、藤澤綾乃(あやの:30歳)はどうしても乗り気にはなれなかった。
『ご、ごめん私、明日は朝から色々とやらないといけない事あるから・・・。』
《朝からって、良一さんが帰って来るの?》
篠原恭子(きょうこ:30歳)がたずねる。
『う、うん、そうね・・・。』
〔旦那さん想いなんですねぇ、ますます旦那さんが羨ましいな。〕
本音か冗談なのか三浦智(さとし:33歳)がそう言った。
『そんなに大した事ではないんですよ。』
本当の理由はそれだけではない、三浦に対して生まれている警戒心が、早く自分の部屋に戻りたいという気持ちにさせていたは確かです。
《そうですかぁ。でもお隣同士なんだし、また何時でもできますよね・・。》
『そうね、またいつでもできるわ。』
〔次はぜひ旦那さんも。〕
片付けを終えた頃には時計は午前0時を回っていた。帰る綾乃を玄関まで見送りに来た三浦と恭子は仲良さげに肩を寄せ合っていて、まるで新婚の夫婦のようです。
《今日は美味しい料理ありがとうございました。》
『いえいえ、こちらこそ美味しいお酒ありがとうございます。』
〔奥さん、旦那さんに宜しく言っておいてくださいよ。〕
『はい。今日はホントに楽しかったです。それじゃおやすみなさい。』
《おやすみなさ~い。》
『おやすみ。』
軽く挨拶をして恭子の部屋を出た綾乃はすぐ隣、自分達の部屋のドアを開けて中に入っていった。『・・・ふぅ・・・。』と、自宅の玄関で綾乃が思わず深く息をつく。なんだか妙に綾乃
は疲れを感じていた。久しぶりにお酒に酔っているからだろうか?それとも三浦にあんな事を言われたからだろうか?
キッチンへ行き、冷蔵庫を開け、ボトルに入った冷えたミネラルウォーターを口に含む。
『・・・はぁ・・・。』と再びため息が出る。綾乃はアルコールで少し火照った身体がなんだかだるく感じる。
鏡に映っている火照った自分の顔を確認して、熱くなっている頬っぺたを手で触りながら、綾乃は三浦の言葉を思い出していた。・・・〔奥さんも色々と溜まるものもあるでしょう〕・・・
・・・〔美味そうな身体しているよなぁ〕・・・。
『・・・何言ってるのかしら・・・あの人・・・。』今1人になって冷静に考えてみればみる程、三浦という男が下品に思えてきた。三浦に言われた言葉を思い出すだけで、なんだか今まで感じた事のないような変な気分になる。不快感?嫌悪感?違う、そんなのじゃない。・・・
なんなのよ・・・。
まだ今日会っただけなのだが、綾乃にはどうしてあのような男性が恭子のような真面目な女性と恋仲になれたのか疑問に思えてきていた。もちろん、ああいった男性が恭子のタイプだというだけの話なのかもしれないが・・。
綾乃に対するセクハラ的な言葉も、もしかして三浦にとっては日常茶飯事でごく普通の挨拶のようなものなのかもしれない。それでもあんな事をストレートに男性に言われた事など綾乃は今までなかったのだから、驚いてしまっても仕方ないだろう。
綾乃はそんな事を考えると、何かちょっと、恭子と三浦が別の世界の人間であるかのように感じてしまう。同じ男性でも夫の藤澤良一(りょういち:37歳)とは全く違う人間性を感じる三浦、そしてその男を恋人として選んでいる恭子に距離を感じたのだ。
2015/12/14
長U〖綾乃の想い〗第3章その3 17
長U〖綾乃の想い〗第3章その3 17
『恭子さんも、変っているわね・・・。』そんな事を呟きながら、綾乃はミネラルウォーターのボトルを片手に何気なくリビングから窓の外を見た。『あらやだ!洗濯物がっ!』ベランダに良一のシャツを干したままにしていた事に気付いた藤澤綾乃(あやの:30歳)は、思わずそう声を上げ、慌てて窓を開けてベランダに出た。
『あ~ん、ちょっと湿気吸っちゃったかなぁ・・・明日もう一度陽に干さないと・・・。』干されていたシャツの生地を触り、残念そうにそう呟いた綾乃は、洗濯物を一度部屋に取りこむために物干し竿から外そうとした。・・と、その時だった。
《アッアッ・・・ンァ・・・ハァ・・・ダメ・・・ハァ・・・アッアッ・・・!》
『・・・!?』
何処からともなく聞こえてきた、誰かの声。
(・・・ぇ?・・・)
綾乃は洗濯物を手で掴んだまま動きを止める。そして、そのままその場で耳をすましてしまう。
《ァハァ・・・アンッ…アッアッスゴイ・・・ああ・・・。》
(これって・・・。)
その声が女性の喘ぎ声だという事にすぐ気付いた綾乃は思わず口に手を当てた。この喘ぎ声が恐らくあの行為の最中のものである事は、大人の女性である綾乃には当然簡単に予想の付く事である。
しかし綾乃が驚いている原因はそれだけではない。それはその女性の声に聞き覚えがあるという事と、その声は明らかに隣の部屋から聞こえてきていたからだった。(恭子さん・・・よね。)この声質、それに明らかに隣の部屋から聞えてきているという事実に、この声の主が篠原恭子(きょうこ:30歳)のものである事は明確だった。
隣のベランダとの間にはしっかりとした壁があるので向こうの部屋からこちらの姿が見えることはないだろう。しかし綾乃はその声が隣の恭子のものだと分かると、反射的にその場に隠れるようにしゃがみ込む。腕に洗濯物を抱えたまま、綾乃は先程恭子の部屋で聞いた2人の会話を思い出していた。
〔・・前までは毎日ヤリまくっていたのによ、俺が一日3発は出さないと気が済まない事は知っているだろ?・・・〕、《・・・わかった、分かったから、後で、ね?・・・》
三浦智(さとし:33歳)と恭子は恋人同士だ。もちろん、大人の2人がこういった行為をする事は当たり前である。それを盗み聞きするなんて常識的にやってはいけない事である事は綾乃はよく分かっていた。それに恭子は綾乃の大事な友達なのだから。
(・・・ダメよ・・・こんなの聞いていちゃ・・・。)そんな風に考えながらも、綾乃はまるで固まってしまったかのようにベランダにしゃがみ込んだまま動けずにいた。
《ァ・・・ハァ・・・アンッ…それダメだって…イヤ…ァ…アッアッ・・・。》
〔何がダメなんだよ・・・好きだろこれ?お前すっげぇ感じてんじゃん。〕
いつもの落ち着いている恭子とはまるで違う切羽詰まった甘い喘ぎ声です。三浦の恭子を責める言葉が、なんだかそれを聞いている綾乃に妙に臨場感を伝えてくるようだった。それにしても隣とはいえ、これ程までに声がハッキリ聞こえてきてしまうなんて。聞えているのは窓越しや壁越しに聞こえるような篭(こも)った声じゃない。まるで2人がすぐ隣にいるかのように声がクリアに聞こえる。
(・・・もしかして、窓開けてしていたり…するのかな?・・・)
《ハァ・・・ァ・・・。》
“チュパ…チュパ・・・”
粘着質な音と、微かに聞こえるギシギシというベッドの軋む生々しい音が聞こえてくる。綾乃は無意識の内にその音を聞く事だけに集中し始めてしまっている。集中をすればする程、声や音は鮮明に聞えてくる。
“グチャ…クチャ…ヌチャ…”
《ハァ・・・ハァ・・・ァ・・・。》
〔はっ・・・はあっ・・・うっ・・はっ・・。〕
2人の息遣いまで聞えてきそう。綾乃の頭の中にはすでに裸で抱き合う三浦と恭子の姿が鮮明に思い浮かんでいた。
“ドキドキドキドキドキ・・・”
速まる鼓動。思わず飲み込んだ生唾。初めて耳にした他人のSEX。(こんな事をしていたらダメ・・・)そんな風に思いながらも綾乃がそれを止める事ができないのには、明確な理由があった。ただ今はまだ、綾乃自身は自分のその気持ちに気付いていないだけ・・・。無意識の内に綾乃(あやの)の心の奥に芽生えていた気持ち。それは他人のSEXに対する強い好奇心だった。
2015/12/21
『恭子さんも、変っているわね・・・。』そんな事を呟きながら、綾乃はミネラルウォーターのボトルを片手に何気なくリビングから窓の外を見た。『あらやだ!洗濯物がっ!』ベランダに良一のシャツを干したままにしていた事に気付いた藤澤綾乃(あやの:30歳)は、思わずそう声を上げ、慌てて窓を開けてベランダに出た。
『あ~ん、ちょっと湿気吸っちゃったかなぁ・・・明日もう一度陽に干さないと・・・。』干されていたシャツの生地を触り、残念そうにそう呟いた綾乃は、洗濯物を一度部屋に取りこむために物干し竿から外そうとした。・・と、その時だった。
《アッアッ・・・ンァ・・・ハァ・・・ダメ・・・ハァ・・・アッアッ・・・!》
『・・・!?』
何処からともなく聞こえてきた、誰かの声。
(・・・ぇ?・・・)
綾乃は洗濯物を手で掴んだまま動きを止める。そして、そのままその場で耳をすましてしまう。
《ァハァ・・・アンッ…アッアッスゴイ・・・ああ・・・。》
(これって・・・。)
その声が女性の喘ぎ声だという事にすぐ気付いた綾乃は思わず口に手を当てた。この喘ぎ声が恐らくあの行為の最中のものである事は、大人の女性である綾乃には当然簡単に予想の付く事である。
しかし綾乃が驚いている原因はそれだけではない。それはその女性の声に聞き覚えがあるという事と、その声は明らかに隣の部屋から聞こえてきていたからだった。(恭子さん・・・よね。)この声質、それに明らかに隣の部屋から聞えてきているという事実に、この声の主が篠原恭子(きょうこ:30歳)のものである事は明確だった。
隣のベランダとの間にはしっかりとした壁があるので向こうの部屋からこちらの姿が見えることはないだろう。しかし綾乃はその声が隣の恭子のものだと分かると、反射的にその場に隠れるようにしゃがみ込む。腕に洗濯物を抱えたまま、綾乃は先程恭子の部屋で聞いた2人の会話を思い出していた。
〔・・前までは毎日ヤリまくっていたのによ、俺が一日3発は出さないと気が済まない事は知っているだろ?・・・〕、《・・・わかった、分かったから、後で、ね?・・・》
三浦智(さとし:33歳)と恭子は恋人同士だ。もちろん、大人の2人がこういった行為をする事は当たり前である。それを盗み聞きするなんて常識的にやってはいけない事である事は綾乃はよく分かっていた。それに恭子は綾乃の大事な友達なのだから。
(・・・ダメよ・・・こんなの聞いていちゃ・・・。)そんな風に考えながらも、綾乃はまるで固まってしまったかのようにベランダにしゃがみ込んだまま動けずにいた。
《ァ・・・ハァ・・・アンッ…それダメだって…イヤ…ァ…アッアッ・・・。》
〔何がダメなんだよ・・・好きだろこれ?お前すっげぇ感じてんじゃん。〕
いつもの落ち着いている恭子とはまるで違う切羽詰まった甘い喘ぎ声です。三浦の恭子を責める言葉が、なんだかそれを聞いている綾乃に妙に臨場感を伝えてくるようだった。それにしても隣とはいえ、これ程までに声がハッキリ聞こえてきてしまうなんて。聞えているのは窓越しや壁越しに聞こえるような篭(こも)った声じゃない。まるで2人がすぐ隣にいるかのように声がクリアに聞こえる。
(・・・もしかして、窓開けてしていたり…するのかな?・・・)
《ハァ・・・ァ・・・。》
“チュパ…チュパ・・・”
粘着質な音と、微かに聞こえるギシギシというベッドの軋む生々しい音が聞こえてくる。綾乃は無意識の内にその音を聞く事だけに集中し始めてしまっている。集中をすればする程、声や音は鮮明に聞えてくる。
“グチャ…クチャ…ヌチャ…”
《ハァ・・・ハァ・・・ァ・・・。》
〔はっ・・・はあっ・・・うっ・・はっ・・。〕
2人の息遣いまで聞えてきそう。綾乃の頭の中にはすでに裸で抱き合う三浦と恭子の姿が鮮明に思い浮かんでいた。
“ドキドキドキドキドキ・・・”
速まる鼓動。思わず飲み込んだ生唾。初めて耳にした他人のSEX。(こんな事をしていたらダメ・・・)そんな風に思いながらも綾乃がそれを止める事ができないのには、明確な理由があった。ただ今はまだ、綾乃自身は自分のその気持ちに気付いていないだけ・・・。無意識の内に綾乃(あやの)の心の奥に芽生えていた気持ち。それは他人のSEXに対する強い好奇心だった。
2015/12/21
長U〖綾乃の想い〗第3章その4 18
長U〖綾乃の想い〗第3章その4 18
藤澤綾乃(あやの:30歳)はベランダでしゃがみ込み、壁の一点に視線を向け、黙って盗み聞きを続けている。頭の中は軽いパニックを起こしていて何も考えられない。ただジッと身動きをしないで聞いている。
〔おい・・・早くケツこっちに向けろって。〕
《ン~・・・。》
〔恭子、早くしろよっ!〕
“バチーンッ!!!!!”
《アアッ!!》
『えっ!?』
突然鳴り響いた何かが叩かれたような大きな音。それにビックリした綾乃は思わず小さく声を上げてしまい、慌てて両手で口を塞いだ。
〔おれを待たせるなっていつも言っているだろ?おい、もっとこっちに突き出せって。〕
《ハァハァ・・・はい・・・。》
三浦智(さとし:33歳)の乱暴な物言いと、篠原恭子(きょうこ:30歳)の弱々しい返事。
(・・・暴力・・・?・・・もしかして恭子さんが、三浦さんに暴力を振るわれているの?・・・)なん
となく隣から伝わってくる様子で、綾乃はそんな事を想像してしまう。そう考えた瞬間
から、綾乃は好奇心よりもむしろ恭子の事を心配し始めていた。(・・・恭子さん、大丈夫かしら・・・?)しかしそんな綾乃の恭子を心配する気持ちはすぐに打ち消される事になる。
《アッ・・・ハァアアア・・・。》
〔恭子は好きなんだろ?これが。〕
《アアア・・・ハァァ・・・ンァ…スゴイ!・・・智もっと奥まで…アア・・・。》
(・・・恭子…さん・・・?)そして綾乃は気付く。恭子が上げていた声は、痛さや辛さから出ている声などではなく、悦びから出ている声だという事に・・・。
“ギシッギシッギシッギシッ・・・!!!”
〔お前も溜まってたんだろ!?オラァ!好きなだけイケよ!〕
《ハァアアア!!!アッアッアッアッンァ・・・!!!》
2人の行為が盛り上がり始めると、綾乃は再び胸の鼓動が速くなるのを感じ、さらに自身の身体の中心がカァっと熱くなっていくのを感じる。頭の中をグラグラと揺らされているような気分だった。
“パンッパンッパンッ・・・!”と柔らかな肌がぶつかる音と、激しくベッドが軋む音・・。
《アアアハァァン!アッアッアッンーーー・・・ァアッアッアッ!・・・》
恭子の切羽詰りながらも、どこか悦楽に浸っているかのような喘ぎ声。激しい性交音を聞く事だけに集中してしまっている綾乃は、まるで自分が身体を激しく揺らされているような感覚を覚える程に、三浦に責められる恭子にシンクロしている。
『ハア・・・・・・ゴク・・・・・・。』
半開きになった口、呼吸はいつの間にか乱れている。そんな事にも自分で気付かない程に、綾乃は他人のSEXを盗み聞きする事にのめり込んでいった。
2016/01/01
藤澤綾乃(あやの:30歳)はベランダでしゃがみ込み、壁の一点に視線を向け、黙って盗み聞きを続けている。頭の中は軽いパニックを起こしていて何も考えられない。ただジッと身動きをしないで聞いている。
〔おい・・・早くケツこっちに向けろって。〕
《ン~・・・。》
〔恭子、早くしろよっ!〕
“バチーンッ!!!!!”
《アアッ!!》
『えっ!?』
突然鳴り響いた何かが叩かれたような大きな音。それにビックリした綾乃は思わず小さく声を上げてしまい、慌てて両手で口を塞いだ。
〔おれを待たせるなっていつも言っているだろ?おい、もっとこっちに突き出せって。〕
《ハァハァ・・・はい・・・。》
三浦智(さとし:33歳)の乱暴な物言いと、篠原恭子(きょうこ:30歳)の弱々しい返事。
(・・・暴力・・・?・・・もしかして恭子さんが、三浦さんに暴力を振るわれているの?・・・)なん
となく隣から伝わってくる様子で、綾乃はそんな事を想像してしまう。そう考えた瞬間
から、綾乃は好奇心よりもむしろ恭子の事を心配し始めていた。(・・・恭子さん、大丈夫かしら・・・?)しかしそんな綾乃の恭子を心配する気持ちはすぐに打ち消される事になる。
《アッ・・・ハァアアア・・・。》
〔恭子は好きなんだろ?これが。〕
《アアア・・・ハァァ・・・ンァ…スゴイ!・・・智もっと奥まで…アア・・・。》
(・・・恭子…さん・・・?)そして綾乃は気付く。恭子が上げていた声は、痛さや辛さから出ている声などではなく、悦びから出ている声だという事に・・・。
“ギシッギシッギシッギシッ・・・!!!”
〔お前も溜まってたんだろ!?オラァ!好きなだけイケよ!〕
《ハァアアア!!!アッアッアッアッンァ・・・!!!》
2人の行為が盛り上がり始めると、綾乃は再び胸の鼓動が速くなるのを感じ、さらに自身の身体の中心がカァっと熱くなっていくのを感じる。頭の中をグラグラと揺らされているような気分だった。
“パンッパンッパンッ・・・!”と柔らかな肌がぶつかる音と、激しくベッドが軋む音・・。
《アアアハァァン!アッアッアッンーーー・・・ァアッアッアッ!・・・》
恭子の切羽詰りながらも、どこか悦楽に浸っているかのような喘ぎ声。激しい性交音を聞く事だけに集中してしまっている綾乃は、まるで自分が身体を激しく揺らされているような感覚を覚える程に、三浦に責められる恭子にシンクロしている。
『ハア・・・・・・ゴク・・・・・・。』
半開きになった口、呼吸はいつの間にか乱れている。そんな事にも自分で気付かない程に、綾乃は他人のSEXを盗み聞きする事にのめり込んでいった。
2016/01/01
長U〖綾乃の想い〗第3章その5 19
長U〖綾乃の想い〗第3章その5 19
《ハァァ・・・アッアッアッ…ダメ…もうダメェ…ンッンッンッ!》
篠原恭子(きょうこ:30歳)が徐々に興奮を高めていっているのが分かる。(・・・こんなに
も声をあげて・・・)綾乃は結婚はしている訳だし、当然SEXは経験している。だから他の多くの人々が知っているSEXを、自身も知っていると思っていた。
新婚ではないが、まだ結婚して数年、夫婦の性生活も決してセックスレスなどではないし、夫の藤澤良一に抱き締められながらの愛情あるSEXに、藤澤綾乃(あやの:30歳)は満足感を得ていたし、不満などはない。しかし、今耳に届いている恭子のあられもない喘ぎ声は、そんな綾乃にカルチャーショックを与えていた。
なぜなら、綾乃はSEXの時にそんな風に声を上げた事がなかったからだ。我を忘れているかのような喘ぎ声です。理性も何もかもを無くしているかのような喘ぎ声。それに、このベッドの軋む音、息遣い、パンッパンッパンッ!と肌がぶつかる音。その全てが激しいもので、今隣の部屋で行われている男女の性行為が、綾乃が今まで経験してきたSEXと同じものだとはとても思えなかった。
・・・SEXってこんなに激しいものだったの・・・?まるで未知の世界を覗き見、いや、盗み聞きしているかのようだった。
《ハァァアッアッンッンッ・・・!》
ギシギシギシギシッ・・・!!!
《アッアッ…ンーー・・・アッアッ・・イクッ!・・・イクッ!・・・ンァアアッ!!》
『・・・。』
しばらくすると、ベッドの軋む音が止み、恭子の荒い息遣いだけが聞こえる。
《ハァ・・・ハァ・・・ン・・・ハァ・・・。》
恭子の口から漏れた“イク!”という声。綾乃にはその“イク!”という意味に心当たりがあった。(絶頂・・・女性の身体が性的快感の頂に達した時にそれを経験するという事は、綾乃も知識としてはもちろん知っていた。そう、知識としてだけは・・・。)
絶頂という感覚がどういったものなのか、まだハッキリとは知らない綾乃は、自分がその絶頂を経験した事があるのかないのか、それさえもよく分からなかったのだ。しかし恭子の反応を聞いていると、恐らく自分はそれを経験した事がないのだろうと、綾乃は思った。
《ハァ・・・もう・・・やっぱり智凄いよぉ…ハァ…。》
〔へへッ、また派手にイッたなぁ恭子ぉ、隣まで聞えていたんじゃないか?お前声出し過ぎなんだよ。〕三浦智(さとし:33歳)の楽しそうな声。
《ハァ・・・だって・・・我慢できないんだもん・・・あっ!やだぁ窓開いてるじゃない!》
そんな恭子の慌てたような声の後に窓が閉まる音がして、恭子達の声は聞こえなくなって
しまった。
『・・・。』
綾乃は集中して耳をすましてみたが、2人の声はやはり聞こえない。
代わりに静まり返った夜の街から救急車の走る音が聞こえる。(・・・や、やだ…私、何やっているのかしら・・・)2人の声が聞こえなくなった事でやっと我に返った綾乃は、1つ深呼吸をしてから、しゃがんでいた体勢からゆっくりと立ち上がった。ずっとベランダでしゃがんでいたから、脚が少し痺れている。
まだドキドキと胸の鼓動が高鳴り続けていて、身体もまだ熱を帯びたままだ。もちろんそれは今日飲んだお酒の影響だけではない。綾乃は洗濯物を抱えて、そっと足音を立てないように意識してゆっくりと自室へと入っていき、そして窓も同様に音をたてないようにそっと閉めた。
2016/01/07
《ハァァ・・・アッアッアッ…ダメ…もうダメェ…ンッンッンッ!》
篠原恭子(きょうこ:30歳)が徐々に興奮を高めていっているのが分かる。(・・・こんなに
も声をあげて・・・)綾乃は結婚はしている訳だし、当然SEXは経験している。だから他の多くの人々が知っているSEXを、自身も知っていると思っていた。
新婚ではないが、まだ結婚して数年、夫婦の性生活も決してセックスレスなどではないし、夫の藤澤良一に抱き締められながらの愛情あるSEXに、藤澤綾乃(あやの:30歳)は満足感を得ていたし、不満などはない。しかし、今耳に届いている恭子のあられもない喘ぎ声は、そんな綾乃にカルチャーショックを与えていた。
なぜなら、綾乃はSEXの時にそんな風に声を上げた事がなかったからだ。我を忘れているかのような喘ぎ声です。理性も何もかもを無くしているかのような喘ぎ声。それに、このベッドの軋む音、息遣い、パンッパンッパンッ!と肌がぶつかる音。その全てが激しいもので、今隣の部屋で行われている男女の性行為が、綾乃が今まで経験してきたSEXと同じものだとはとても思えなかった。
・・・SEXってこんなに激しいものだったの・・・?まるで未知の世界を覗き見、いや、盗み聞きしているかのようだった。
《ハァァアッアッンッンッ・・・!》
ギシギシギシギシッ・・・!!!
《アッアッ…ンーー・・・アッアッ・・イクッ!・・・イクッ!・・・ンァアアッ!!》
『・・・。』
しばらくすると、ベッドの軋む音が止み、恭子の荒い息遣いだけが聞こえる。
《ハァ・・・ハァ・・・ン・・・ハァ・・・。》
恭子の口から漏れた“イク!”という声。綾乃にはその“イク!”という意味に心当たりがあった。(絶頂・・・女性の身体が性的快感の頂に達した時にそれを経験するという事は、綾乃も知識としてはもちろん知っていた。そう、知識としてだけは・・・。)
絶頂という感覚がどういったものなのか、まだハッキリとは知らない綾乃は、自分がその絶頂を経験した事があるのかないのか、それさえもよく分からなかったのだ。しかし恭子の反応を聞いていると、恐らく自分はそれを経験した事がないのだろうと、綾乃は思った。
《ハァ・・・もう・・・やっぱり智凄いよぉ…ハァ…。》
〔へへッ、また派手にイッたなぁ恭子ぉ、隣まで聞えていたんじゃないか?お前声出し過ぎなんだよ。〕三浦智(さとし:33歳)の楽しそうな声。
《ハァ・・・だって・・・我慢できないんだもん・・・あっ!やだぁ窓開いてるじゃない!》
そんな恭子の慌てたような声の後に窓が閉まる音がして、恭子達の声は聞こえなくなって
しまった。
『・・・。』
綾乃は集中して耳をすましてみたが、2人の声はやはり聞こえない。
代わりに静まり返った夜の街から救急車の走る音が聞こえる。(・・・や、やだ…私、何やっているのかしら・・・)2人の声が聞こえなくなった事でやっと我に返った綾乃は、1つ深呼吸をしてから、しゃがんでいた体勢からゆっくりと立ち上がった。ずっとベランダでしゃがんでいたから、脚が少し痺れている。
まだドキドキと胸の鼓動が高鳴り続けていて、身体もまだ熱を帯びたままだ。もちろんそれは今日飲んだお酒の影響だけではない。綾乃は洗濯物を抱えて、そっと足音を立てないように意識してゆっくりと自室へと入っていき、そして窓も同様に音をたてないようにそっと閉めた。
2016/01/07
長U〖綾乃の想い〗第4章その1 20
長U〖綾乃の想い〗第4章その1 20
『はぁ~・・・。』
リビングのソファの上に洗濯物を置くと、綾乃はため息と共にソファの空いている場所に腰を下ろした。
『はぁ~・・・なんか疲れたぁ・・・。』
久しぶりのお酒、そして先程の非日常的な体験。気疲れなのか、藤澤綾乃(あやの:30歳)はグッタリとソファの背にもたれた。(・・・すごいの…聞いちゃったなぁ・・・)篠原恭子(きょうこ:30歳)の喘ぎ声〚ンーー・・・アッアッイクッ・・・イクッ・・・ンァアアッ!!〛はまだ鮮明に綾乃の頭の中に残っている。
綾乃は頭を横に振りながら『あ~ダメダメ、忘れよっ。』そう呟くと、ソファから立ち上がり、汗を流すためにお風呂場へと向かった。(・・・他人の生活を盗み聞きするなんて…何やってるのよ私ったら…忘れないと・・・忘れないとダメだわ・・・)もう一度自分にそう言い聞かせる綾乃。しかし、人間は一度頭の中に入ってしまった刺激的な体験を、そう簡単には忘れる事はできない。そして今日のこの体験が、綾乃の中の何かを狂わせ始める事になるのであった・・・。
翌朝、徹夜の仕事から帰ってきた夫の藤澤良一(りょういち:37歳)は、綾乃が用意しておいた朝食を取りながら、
「それで?昨日はどうだったんだ?」
『・・・え?』
「昨日の食事会の事だよ、来たんだろ?恭子さんの彼氏も。」
そう聞いてきた。
『うん・・・まぁ、楽しかったわよ。』
「ん?なんだよ、楽しかったって言う割には浮かない顔しているなぁ。恭子さんの彼氏はどんな人だったんだ?」
『う~ん…それがねぇ、ちょっと想像と違ったんだよねぇ・・・。』
「へぇ、どう違ったわけ?」
『なんて言うかなぁ、こう真面目で堅そうな感じじゃなくて、どちらかと言うと活発でスポーツマンタイプ?みたいな感じだったのよ。。』
「ふーん・・・いいじゃないか、真面目な恭子さんの相手ならそういう人の方が結構お似合いなんじゃないか?」
『ん~でもなんかねぇ・・・。』
“活発でスポーツマンタイプ”というだけならそのイメージは良いはずなのだが、あのセクハラ紛いの言葉やイヤらしい視線を向けてくる男性としてのマイナスイメージがあるので綾乃は、三浦に対する印象は決して良くない。しかし、綾乃は自分が三浦にセクハラ紛いの言葉を掛けられた事を、なぜか良一には言えないでいた。
「仕事は?仕事は何してるって?」
『え?えーっと・・・確か株のトレーダーをしているって。』
「トレーダー?企業の資産運用とかの?」
『ううん、個人でやっているんですって。』
「はぁ?個人で株のトレーダーって、株で生活してるって事か?」
『う~ん、たぶんそういう事じゃないかなぁ。』
「それは珍しいなぁ・・・珍しいっていうか普通じゃないよな。そんなのギャンブルみたいなモノだろ?」
『私もそう思ったわ。だけど、それで暮らしていけるのかしらねぇ?』
「なんか意外だなぁ、恭子さんがそういう生活してる人と付き合ってるなんて。」
『うん、ほんと意外だよね・・・。』
仕事は何かと訊かれて〔株で生活している〕なんて、一般的にあまり良い印象はない。昨日は仕事の話をそれ程深くまで訊かなかったが、その事も藤澤綾乃(あやの:30歳)が三浦智(さとし:33歳)に対して疑念を抱く要因になっている事は確かだった。
『旦那さんに宜しくって言ってたわ。今度は4人で飲みましょうって。』
「あぁ、まぁ俺としては会って見ないとどんな人か分からないし。あ~でも俺仕事忙しくなりそうだからしばらくは無理かもなぁ。」
夫の藤澤良一(りょういち)の話では、職場で少し厄介な事が起きて、しばらく残業や出張が多くなりそうだという事だった。近頃責任ある役職についたばかりの良一はやっと仕事にも脂がのってきて、男としては忙しいけれども働き甲斐のある時期でもあった。
2016/01/16
『はぁ~・・・。』
リビングのソファの上に洗濯物を置くと、綾乃はため息と共にソファの空いている場所に腰を下ろした。
『はぁ~・・・なんか疲れたぁ・・・。』
久しぶりのお酒、そして先程の非日常的な体験。気疲れなのか、藤澤綾乃(あやの:30歳)はグッタリとソファの背にもたれた。(・・・すごいの…聞いちゃったなぁ・・・)篠原恭子(きょうこ:30歳)の喘ぎ声〚ンーー・・・アッアッイクッ・・・イクッ・・・ンァアアッ!!〛はまだ鮮明に綾乃の頭の中に残っている。
綾乃は頭を横に振りながら『あ~ダメダメ、忘れよっ。』そう呟くと、ソファから立ち上がり、汗を流すためにお風呂場へと向かった。(・・・他人の生活を盗み聞きするなんて…何やってるのよ私ったら…忘れないと・・・忘れないとダメだわ・・・)もう一度自分にそう言い聞かせる綾乃。しかし、人間は一度頭の中に入ってしまった刺激的な体験を、そう簡単には忘れる事はできない。そして今日のこの体験が、綾乃の中の何かを狂わせ始める事になるのであった・・・。
翌朝、徹夜の仕事から帰ってきた夫の藤澤良一(りょういち:37歳)は、綾乃が用意しておいた朝食を取りながら、
「それで?昨日はどうだったんだ?」
『・・・え?』
「昨日の食事会の事だよ、来たんだろ?恭子さんの彼氏も。」
そう聞いてきた。
『うん・・・まぁ、楽しかったわよ。』
「ん?なんだよ、楽しかったって言う割には浮かない顔しているなぁ。恭子さんの彼氏はどんな人だったんだ?」
『う~ん…それがねぇ、ちょっと想像と違ったんだよねぇ・・・。』
「へぇ、どう違ったわけ?」
『なんて言うかなぁ、こう真面目で堅そうな感じじゃなくて、どちらかと言うと活発でスポーツマンタイプ?みたいな感じだったのよ。。』
「ふーん・・・いいじゃないか、真面目な恭子さんの相手ならそういう人の方が結構お似合いなんじゃないか?」
『ん~でもなんかねぇ・・・。』
“活発でスポーツマンタイプ”というだけならそのイメージは良いはずなのだが、あのセクハラ紛いの言葉やイヤらしい視線を向けてくる男性としてのマイナスイメージがあるので綾乃は、三浦に対する印象は決して良くない。しかし、綾乃は自分が三浦にセクハラ紛いの言葉を掛けられた事を、なぜか良一には言えないでいた。
「仕事は?仕事は何してるって?」
『え?えーっと・・・確か株のトレーダーをしているって。』
「トレーダー?企業の資産運用とかの?」
『ううん、個人でやっているんですって。』
「はぁ?個人で株のトレーダーって、株で生活してるって事か?」
『う~ん、たぶんそういう事じゃないかなぁ。』
「それは珍しいなぁ・・・珍しいっていうか普通じゃないよな。そんなのギャンブルみたいなモノだろ?」
『私もそう思ったわ。だけど、それで暮らしていけるのかしらねぇ?』
「なんか意外だなぁ、恭子さんがそういう生活してる人と付き合ってるなんて。」
『うん、ほんと意外だよね・・・。』
仕事は何かと訊かれて〔株で生活している〕なんて、一般的にあまり良い印象はない。昨日は仕事の話をそれ程深くまで訊かなかったが、その事も藤澤綾乃(あやの:30歳)が三浦智(さとし:33歳)に対して疑念を抱く要因になっている事は確かだった。
『旦那さんに宜しくって言ってたわ。今度は4人で飲みましょうって。』
「あぁ、まぁ俺としては会って見ないとどんな人か分からないし。あ~でも俺仕事忙しくなりそうだからしばらくは無理かもなぁ。」
夫の藤澤良一(りょういち)の話では、職場で少し厄介な事が起きて、しばらく残業や出張が多くなりそうだという事だった。近頃責任ある役職についたばかりの良一はやっと仕事にも脂がのってきて、男としては忙しいけれども働き甲斐のある時期でもあった。
2016/01/16
長U〖綾乃の想い〗第4章その2 21
長U〖綾乃の想い〗第4章その2 21
『そっかぁ…でも無理しないでね良一。』
「ハハッ大丈夫だって、まだまだこのマンションのローンもあるしな、頑張り時さ。」
『昨日の夜ご飯はコンビニでしょ?これから残業長引きそうな時はお弁当作るから言ってね、栄養ある物食べないと。』
「あぁ、ありがとう・・・なんだか妙に優しいなぁ綾乃、何かあった?」
『べ、別に私は主婦の仕事をちゃんとしたいだけよ、良一にはいつも働いてもらっているんだし。』
実は妻の藤澤綾乃(あやの:30歳)は普段あまり表には出さないが、仕事で頑張っている夫の藤澤良一(りょういち:37歳)に対して、自分の事で心配を掛けないように心掛けている。それが夫を支える妻としての正しい姿勢だと思っていたからだ。
だから綾乃は結婚してからは、少々の悩みなどは自分の中に閉じ込めて1人で消化していた。また、少しばかり体調が悪くても良一には気付かれないように笑顔を作っていたりしていた。そのため一度だけ、綾乃が風邪を患っていた時に、良一にそれを隠して無理に家事をしていたためにダウンしてしまった事がある。その時は良一に「夫婦なんだから変な気は使わなくていい。」と凄く怒られた。
そういうところは綾乃の長所でもあり短所でもあるのだが、ある意味それが根は優しくて真面目な綾乃らしい所でもあった。
『良一、少し睡眠摂った方がいいんじゃない?寝てないんでしょ?』
「あぁ、そうだな、すごく眠いわ。綾乃はいいのか?昨日は遅かったんだろ?」
『え?わ、私は大丈夫よ!昨日は結局良一と電話した後すぐにお開きになったから・・。』
しかし、正直に言えば綾乃も眠かった。
実はベッドに入ってからも殆ど眠れなかった綾乃。その理由を、とても綾乃の口から夫の良一に言えるようなものではない。そう・・・昨日ベランダで、隣のあの音を盗み聞きをした後、綾乃は、どうしようもなく熱くなってしまい。その火照った身体をベッドの中で自分で慰めていたのだ。綾乃にとっては久しぶりの自慰行為(オナニー)であった。それは思い出すだけで、綾乃の頬はポッとピンク色に染まる。
「ん?どうしたんだ綾乃?顔が赤いけど・・。」
『・・・え!ううん!なんでもないよっ。』
恥ずかしい・・・余計な心配を掛けたくない・・・いや、それ以前の問題として綾乃がそれを夫の良一に言える訳がないのだ。なぜなら綾乃は昨日の夜、良一以外の男性の事を考えながら自分を慰めてしまったのだから・・・。
『・・・はぁ・・・。』綾乃(あやの:30歳)はため息混じりに頭を抱えていた。昨日の出来事がどうしても頭から離れない。それに昨夜ベッドの中で1人でした事もである。愛する夫以外の男性を想像しながらしてしまった事への罪悪感も綾乃を悩ませていた。
非日常的な体験・記憶から早く脱したいと思っていても、ふと気付いた時には昨日三浦智(さとし:33歳)に言われた事やベランダで盗み聞きした時の事を考えてしまっている。それ程に昨日の体験は綾乃にとって衝撃的で刺激的な出来事として記憶に刻み込まれてしまっていたのだ。
《そう・・・時間が経てばきっと忘れる事ができる・・・でも、なるべく早く忘れたい…いいえ、早くこんな事忘れないといけないわ・・・》そんな事を考えながら綾乃は日常通りの家事を続けていた。しかし家事をする事で気を紛らわそうとしても、やはりあの記憶は・・頭から簡単には離れてくれない。
2016/01/22
『そっかぁ…でも無理しないでね良一。』
「ハハッ大丈夫だって、まだまだこのマンションのローンもあるしな、頑張り時さ。」
『昨日の夜ご飯はコンビニでしょ?これから残業長引きそうな時はお弁当作るから言ってね、栄養ある物食べないと。』
「あぁ、ありがとう・・・なんだか妙に優しいなぁ綾乃、何かあった?」
『べ、別に私は主婦の仕事をちゃんとしたいだけよ、良一にはいつも働いてもらっているんだし。』
実は妻の藤澤綾乃(あやの:30歳)は普段あまり表には出さないが、仕事で頑張っている夫の藤澤良一(りょういち:37歳)に対して、自分の事で心配を掛けないように心掛けている。それが夫を支える妻としての正しい姿勢だと思っていたからだ。
だから綾乃は結婚してからは、少々の悩みなどは自分の中に閉じ込めて1人で消化していた。また、少しばかり体調が悪くても良一には気付かれないように笑顔を作っていたりしていた。そのため一度だけ、綾乃が風邪を患っていた時に、良一にそれを隠して無理に家事をしていたためにダウンしてしまった事がある。その時は良一に「夫婦なんだから変な気は使わなくていい。」と凄く怒られた。
そういうところは綾乃の長所でもあり短所でもあるのだが、ある意味それが根は優しくて真面目な綾乃らしい所でもあった。
『良一、少し睡眠摂った方がいいんじゃない?寝てないんでしょ?』
「あぁ、そうだな、すごく眠いわ。綾乃はいいのか?昨日は遅かったんだろ?」
『え?わ、私は大丈夫よ!昨日は結局良一と電話した後すぐにお開きになったから・・。』
しかし、正直に言えば綾乃も眠かった。
実はベッドに入ってからも殆ど眠れなかった綾乃。その理由を、とても綾乃の口から夫の良一に言えるようなものではない。そう・・・昨日ベランダで、隣のあの音を盗み聞きをした後、綾乃は、どうしようもなく熱くなってしまい。その火照った身体をベッドの中で自分で慰めていたのだ。綾乃にとっては久しぶりの自慰行為(オナニー)であった。それは思い出すだけで、綾乃の頬はポッとピンク色に染まる。
「ん?どうしたんだ綾乃?顔が赤いけど・・。」
『・・・え!ううん!なんでもないよっ。』
恥ずかしい・・・余計な心配を掛けたくない・・・いや、それ以前の問題として綾乃がそれを夫の良一に言える訳がないのだ。なぜなら綾乃は昨日の夜、良一以外の男性の事を考えながら自分を慰めてしまったのだから・・・。
『・・・はぁ・・・。』綾乃(あやの:30歳)はため息混じりに頭を抱えていた。昨日の出来事がどうしても頭から離れない。それに昨夜ベッドの中で1人でした事もである。愛する夫以外の男性を想像しながらしてしまった事への罪悪感も綾乃を悩ませていた。
非日常的な体験・記憶から早く脱したいと思っていても、ふと気付いた時には昨日三浦智(さとし:33歳)に言われた事やベランダで盗み聞きした時の事を考えてしまっている。それ程に昨日の体験は綾乃にとって衝撃的で刺激的な出来事として記憶に刻み込まれてしまっていたのだ。
《そう・・・時間が経てばきっと忘れる事ができる・・・でも、なるべく早く忘れたい…いいえ、早くこんな事忘れないといけないわ・・・》そんな事を考えながら綾乃は日常通りの家事を続けていた。しかし家事をする事で気を紛らわそうとしても、やはりあの記憶は・・頭から簡単には離れてくれない。
2016/01/22
長U〖綾乃の想い〗第4章その3 22
長U〖綾乃の想い〗第4章その3 22
夜、夫の藤澤良一(りょういち:37歳)と2人で使っているベッドに入った妻の藤澤綾乃(あやの:30歳)は、何かを求めるようにして横にいる良一に身体を寄り添わせる。夫の仕事が特に忙しくなってからはめっきり少なくなっていた夫婦の夜の営み。良一が疲れているのは分かっていたが、今の綾乃にはどうしても肌で感じる良一の愛情が必要だったのだ。
『ねぇ良一・・・。』
綾乃が横で寝ている良一の肩を指先でツンツンと突く。
「・・・ん?何?」
良一がそれに反応して綾乃の方に顔を向けると、綾乃は少し甘えるようにして布団の中で夫に抱きついた。
「珍しいな、綾乃の方からなんて。」
『もぅ・・・恥ずかしいから・・そんな事言わないでよ。』
「そういえば最近してなかったもんな。」
『・・・ウン・・・。』
綾乃のささやかな求めに応じるようにして良一は綾乃にキスをした。
『ン・・・ハァ・・・。』
久しぶりに感じる夫・良一の味。キスをされた瞬間から、綾乃は身体の奥から熱い興奮が込み上げてくるのを感じる。
『ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・』
自然と荒くなる呼吸。
『ン・・・ァ・・・良一・・・ハァ・・・。』
良一の手が身体に優しく触れてくる。そして綾乃の方からも手を良一の肌着の中に入れて
みる。素肌から感じる良一の温かい体温。心臓の鼓動。良一の身体を弄るように手を動かす彩乃。
「ハァ・・・今日はいつになく積極的だな?何かあったのか?」
『ン・・・ハァ・・・ううん・・・別に・・・ン・・・。』
良一の愛撫で忘れさせて欲しかった。綾乃の中にある、良一以外の男(三浦)を想像してしまったという記憶を・・・・心の中に入り込んできたあの男・・好きでも何でも無いはずの、いや、寧ろ警戒感さえ抱いている男に抱かれるところを想像してしまった事。そう・・・まだ一度しか会っていないあの三浦智(さとし:33歳)に抱かれるところを想像してしまった記憶を、綾乃は良一の愛で打ち消してもらいたかったのである。
『ァァ・・・良一・・・ハァ・・・好き・・・愛している・・・ハァ・・・。』
布団の中で生まれたままの姿になった2人は、お互いの愛を確かめるように肌と肌を合わせる。そして良一の手はゆっくりと綾乃の大事な部分へと流れていく。
『・・・ァン・・・。』
「ハァ・・・綾乃・・・凄い濡れている・・・。」
『イヤ・・・言わないで・・・。』
良一の言うとおり、今日の綾乃の興奮はいつもより数倍大きなものであった。《こんなにも男の人を、良一を欲しい》と思ったのは初めてかもしれない。恋人、夫婦として今まで何度も身体を重ねてきた事のある良一、そして綾乃自身でさえも、綾乃はこういった性的な事には淡白な方だと思っていた。
もちろん男女の関係において大事な事だという認識はあったが、正直自分から求める程好きではなかったというか、生活の中で優先順位がそれ程高いものではなかったというのが、綾乃の本心だった。しかし今の綾乃は違う。こんなにも身体が疼くのはどうしてだろう・・・。
2016/01/29
夜、夫の藤澤良一(りょういち:37歳)と2人で使っているベッドに入った妻の藤澤綾乃(あやの:30歳)は、何かを求めるようにして横にいる良一に身体を寄り添わせる。夫の仕事が特に忙しくなってからはめっきり少なくなっていた夫婦の夜の営み。良一が疲れているのは分かっていたが、今の綾乃にはどうしても肌で感じる良一の愛情が必要だったのだ。
『ねぇ良一・・・。』
綾乃が横で寝ている良一の肩を指先でツンツンと突く。
「・・・ん?何?」
良一がそれに反応して綾乃の方に顔を向けると、綾乃は少し甘えるようにして布団の中で夫に抱きついた。
「珍しいな、綾乃の方からなんて。」
『もぅ・・・恥ずかしいから・・そんな事言わないでよ。』
「そういえば最近してなかったもんな。」
『・・・ウン・・・。』
綾乃のささやかな求めに応じるようにして良一は綾乃にキスをした。
『ン・・・ハァ・・・。』
久しぶりに感じる夫・良一の味。キスをされた瞬間から、綾乃は身体の奥から熱い興奮が込み上げてくるのを感じる。
『ハァ・・・ハァ・・・ハァ・・・』
自然と荒くなる呼吸。
『ン・・・ァ・・・良一・・・ハァ・・・。』
良一の手が身体に優しく触れてくる。そして綾乃の方からも手を良一の肌着の中に入れて
みる。素肌から感じる良一の温かい体温。心臓の鼓動。良一の身体を弄るように手を動かす彩乃。
「ハァ・・・今日はいつになく積極的だな?何かあったのか?」
『ン・・・ハァ・・・ううん・・・別に・・・ン・・・。』
良一の愛撫で忘れさせて欲しかった。綾乃の中にある、良一以外の男(三浦)を想像してしまったという記憶を・・・・心の中に入り込んできたあの男・・好きでも何でも無いはずの、いや、寧ろ警戒感さえ抱いている男に抱かれるところを想像してしまった事。そう・・・まだ一度しか会っていないあの三浦智(さとし:33歳)に抱かれるところを想像してしまった記憶を、綾乃は良一の愛で打ち消してもらいたかったのである。
『ァァ・・・良一・・・ハァ・・・好き・・・愛している・・・ハァ・・・。』
布団の中で生まれたままの姿になった2人は、お互いの愛を確かめるように肌と肌を合わせる。そして良一の手はゆっくりと綾乃の大事な部分へと流れていく。
『・・・ァン・・・。』
「ハァ・・・綾乃・・・凄い濡れている・・・。」
『イヤ・・・言わないで・・・。』
良一の言うとおり、今日の綾乃の興奮はいつもより数倍大きなものであった。《こんなにも男の人を、良一を欲しい》と思ったのは初めてかもしれない。恋人、夫婦として今まで何度も身体を重ねてきた事のある良一、そして綾乃自身でさえも、綾乃はこういった性的な事には淡白な方だと思っていた。
もちろん男女の関係において大事な事だという認識はあったが、正直自分から求める程好きではなかったというか、生活の中で優先順位がそれ程高いものではなかったというのが、綾乃の本心だった。しかし今の綾乃は違う。こんなにも身体が疼くのはどうしてだろう・・・。
2016/01/29
長U〖綾乃の想い〗第4章その4 23
長U〖綾乃の想い〗第4章その4 23
『ハァ・・・良一・・・早く・・・ハァ・・・。』殆(ほとん)ど愛撫の必要がない程に濡れていた妻(藤澤綾乃:あやの:30歳)の秘部は、すでに夫の藤澤良一(りょういち:37歳)のペニスを欲していた。良一もいつもとは違う、綾乃の火照った表情になぜかしら興奮を掻き立てられる。《綾乃の潤んだ目が自分を欲してくれている・・・こんなに欲情している綾乃を見るのは初めてかもしれない。》
「綾乃・・・ハァ・・・入れるぞ?」
『・・・ウン・・・。』
ストレスの多い最近の生活の中ではなかったくらいに固く勃起した良一のペニス、その先端が綾乃の濡れた秘裂に当てられる。そして良一はゆっくりと腰を前に進めた。
『・・・ン・・・ァァ・・・。』
自分の身体の中に良一が入ってくるのを感じると同時に、綾乃は良一の愛に身体が満たされていくような幸せを感じたのであった。
夫の良一は隣でグッスリと眠りについている。やはり仕事で疲れが溜まっているのか少し
イビキも掻いているようだ。
『・・・。』
もう時計が0時を回ってから大分経っていて、すっかり真夜中だ。綾乃もいつもなら疾(と)うに寝ている時間帯である。
《・・・どうしよう・・・寝れないわ・・・》
綾乃は子供の頃から大人になるまで、両親の教育のお陰か至って健康的な生活を送ってきていた。夜更かしなどはなるべくしないようにしていたし、規則正しい生活で夜眠れなくなる事なんて殆ど無かった。
それが昨日に引き続き今日もこんなに眠れなくなってしまうなんて、綾乃にとっては珍しい事である。そうだ・・・綾乃は昨日も同じように寝られなかったのだ。身体の中に溜まっていたモヤモヤとしたモノがどうしても解消できなくて・・・。そして今綾乃が眠れない原因も、実は昨日と同じであった。
『・・・はァ・・・。』
ため息をつき、隣で良一が眠るベッドを抜け出した綾乃は、リビングで温かいお茶を入れて口に含んだ。
《・・・どうしてなの?・・・》
綾乃は寝間着の上から自分の下腹部にそっと手を当てる。自分自身の身体に戸惑いを感じていた。
《・・・さっき良一としたばかりなのに・・・?》
そう、先程夫の良一と性的交わりを終えたばかりだというのに、未だに綾乃の身体にはモヤモヤとしたモノが残っている。
いや、今やモヤモヤなんて生易しいモノではない。それは昨日よりも、そして今日良一と交わる前よりも酷くなっていたのだ。どうしようもなく身体が疼(うず)いて疼いてたまらない。綾乃は思わずテーブルの下で腿と腿をすり合わせてしまう。
《・・・イヤ・・・どうして?・・・》
良一とのSEXに幸せを感じていたのに、満足感を感じていたはずなのに、綾乃の身体はまだまだ足りないと言わんばかりに疼いている。
『・・・ハァ・・・。』
又、ため息を吐き、《どうして?》と、心の中で自問する綾乃であったが、それは決して綾乃の本心ではなかった。本当は心の奥にある気持ち、綾乃の本心はその答えを何の疑いもなく知っている。
そう綾乃は・・・もっと多くの性的快感を欲していたのだ。そして綾乃は今、逃れようのない
現実にぶつかっている。《自分は、いや、自分の身体は良一とのSEXに満足していない》
綾乃は今、女性の身体に生まれて初めて感じているのであった。性的な欲求不満というものを・・・。
『・・・ダメ・・・』
綾乃は思わず首を横に振る。認めたくなかったのだ、そんな風に夫のSEXに不満を抱き、
身体を発情させている自分を。そして今心の中で闘っていた。どうしようもない程に自身の股間に手を伸ばしたくなっている自分と。
『・・・ァァ・・・』
自分の意思とは関係なく、頭の中に淫らな妄想が勝手に拡がっていく。
《・・・イヤ・・・ダメよ・・・ダメ・・・》
でも拒否すればする程、駄目だ駄目だと自分に言い聞かせる程、なぜかそれはエスカレートしていってしまう。
藤澤綾乃(あやの:30歳)の脳内に拡がっていく妄想は徐々に鮮明な映像に変わっていく。
そしてその映像の中に今ハッキリと1人の男の姿が現れたのであった。
2016/02/12
第1章その1 01 から読みたい方は ⇒ こちら
『ハァ・・・良一・・・早く・・・ハァ・・・。』殆(ほとん)ど愛撫の必要がない程に濡れていた妻(藤澤綾乃:あやの:30歳)の秘部は、すでに夫の藤澤良一(りょういち:37歳)のペニスを欲していた。良一もいつもとは違う、綾乃の火照った表情になぜかしら興奮を掻き立てられる。《綾乃の潤んだ目が自分を欲してくれている・・・こんなに欲情している綾乃を見るのは初めてかもしれない。》
「綾乃・・・ハァ・・・入れるぞ?」
『・・・ウン・・・。』
ストレスの多い最近の生活の中ではなかったくらいに固く勃起した良一のペニス、その先端が綾乃の濡れた秘裂に当てられる。そして良一はゆっくりと腰を前に進めた。
『・・・ン・・・ァァ・・・。』
自分の身体の中に良一が入ってくるのを感じると同時に、綾乃は良一の愛に身体が満たされていくような幸せを感じたのであった。
夫の良一は隣でグッスリと眠りについている。やはり仕事で疲れが溜まっているのか少し
イビキも掻いているようだ。
『・・・。』
もう時計が0時を回ってから大分経っていて、すっかり真夜中だ。綾乃もいつもなら疾(と)うに寝ている時間帯である。
《・・・どうしよう・・・寝れないわ・・・》
綾乃は子供の頃から大人になるまで、両親の教育のお陰か至って健康的な生活を送ってきていた。夜更かしなどはなるべくしないようにしていたし、規則正しい生活で夜眠れなくなる事なんて殆ど無かった。
それが昨日に引き続き今日もこんなに眠れなくなってしまうなんて、綾乃にとっては珍しい事である。そうだ・・・綾乃は昨日も同じように寝られなかったのだ。身体の中に溜まっていたモヤモヤとしたモノがどうしても解消できなくて・・・。そして今綾乃が眠れない原因も、実は昨日と同じであった。
『・・・はァ・・・。』
ため息をつき、隣で良一が眠るベッドを抜け出した綾乃は、リビングで温かいお茶を入れて口に含んだ。
《・・・どうしてなの?・・・》
綾乃は寝間着の上から自分の下腹部にそっと手を当てる。自分自身の身体に戸惑いを感じていた。
《・・・さっき良一としたばかりなのに・・・?》
そう、先程夫の良一と性的交わりを終えたばかりだというのに、未だに綾乃の身体にはモヤモヤとしたモノが残っている。
いや、今やモヤモヤなんて生易しいモノではない。それは昨日よりも、そして今日良一と交わる前よりも酷くなっていたのだ。どうしようもなく身体が疼(うず)いて疼いてたまらない。綾乃は思わずテーブルの下で腿と腿をすり合わせてしまう。
《・・・イヤ・・・どうして?・・・》
良一とのSEXに幸せを感じていたのに、満足感を感じていたはずなのに、綾乃の身体はまだまだ足りないと言わんばかりに疼いている。
『・・・ハァ・・・。』
又、ため息を吐き、《どうして?》と、心の中で自問する綾乃であったが、それは決して綾乃の本心ではなかった。本当は心の奥にある気持ち、綾乃の本心はその答えを何の疑いもなく知っている。
そう綾乃は・・・もっと多くの性的快感を欲していたのだ。そして綾乃は今、逃れようのない
現実にぶつかっている。《自分は、いや、自分の身体は良一とのSEXに満足していない》
綾乃は今、女性の身体に生まれて初めて感じているのであった。性的な欲求不満というものを・・・。
『・・・ダメ・・・』
綾乃は思わず首を横に振る。認めたくなかったのだ、そんな風に夫のSEXに不満を抱き、
身体を発情させている自分を。そして今心の中で闘っていた。どうしようもない程に自身の股間に手を伸ばしたくなっている自分と。
『・・・ァァ・・・』
自分の意思とは関係なく、頭の中に淫らな妄想が勝手に拡がっていく。
《・・・イヤ・・・ダメよ・・・ダメ・・・》
でも拒否すればする程、駄目だ駄目だと自分に言い聞かせる程、なぜかそれはエスカレートしていってしまう。
藤澤綾乃(あやの:30歳)の脳内に拡がっていく妄想は徐々に鮮明な映像に変わっていく。
そしてその映像の中に今ハッキリと1人の男の姿が現れたのであった。
2016/02/12
第1章その1 01 から読みたい方は ⇒ こちら
長U〖綾乃の想い〗第4章その5 24
長U〖綾乃の想い〗第4章その5 24
[第1章その1 01]
『・・・ゴクッ・・・』
藤澤綾乃(あやの:30歳)は、その瞬間思わず生唾を飲み込んだ。頭の中に現れた男、それはもちろん夫の良一ではない。良一よりも大きく逞しい肉体、あのイヤらしい目付き、言葉・・・何かは分からないが、明らかに同じ男性でも良一からは感じない何かを持っているあの男。そう・・・それは三浦智(さとし:33歳)だ。
頭の中で三浦が綾乃に声を掛けてくる。
〔どうしたんですか奥さん、そんな顔をして・・・。〕
『ぇ・・・?』
〔へへっ・・・惚けたってオレにはすぐに分かるんですよ、奥さんが今何を考えているのか。〕
『な・・・何を言っているんですか・・・。』
〔奥さん・・・ホントは凄くエッチなんだろ?オレ奥さんの顔を一目見た瞬間に分かったよ。あ~この女エロいだろうなぁ・・・飢えているんだろうなぁ・・・てさ。〕
『・・・うそ・よ・・。』
〔奥さん正直に言ってくださいよ。いつも我慢をしていたんでしょ?旦那との退屈なSEXに。〕
『・・・そんな事・・・ない・・。』
〔ほら、今だって顔に分かりやすく書いてあるじゃないですか!わたしは“欲求不満な女”です。ってさ。〕
『・・・・・・』
〔いいんですよ奥さん。オレの前では本性を剥き出しにして淫らになっても。〕
『・・・三浦さん・・・もう・・。』
〔ほら・・・我慢しなくていいんです。〕
『・・・ン・・・。』
〔そう、手を奥さんの一番エッチな所へ・・・思う存分に気持ち良くなればいいんだよ。〕
『ハァ・・・ァァ・・・。』
綾乃は妄想の中にいる三浦智の指示通りに自ら手を寝間着の中、疼いて疼いて仕方ない秘部へと持っていってしまう。
《・・・もう・・・ダメ・・・我慢できない・・・》
“クチュッ・・・”指先に感じた湿った感覚、綾乃のアソコは自分でも信じられない程濡れていた。
その原因が今綾乃の頭の中にいる男(三浦)の存在にあるという事は、綾乃自身も疑いようの無い事実である。綾乃の身体は三浦に濡らされていたのだ。
《・・・ハァ・・・こんなに・・・》
綾乃は自分の愛液に濡れた指先を火照った表情で見つめる。そしてゆっくりと目を閉じ、
再びその手を下へと移動させる。明かりを消し薄暗くなったリビングのソファで、綾乃は本格的な自慰行為(オナニー)を始めたのだ。
『・・・ン・・・ァ・・・ハァ・・・。』
夜中のリビングに小さく響く、綾乃の湿った声と息遣い。
〔そうです奥さん・・・ほら、空いてる方の手で胸も揉んでみたらどうです?俺に激しく揉まれるところを想像してみろよ。〕
妄想の中で耳元に囁いてくる三浦智(さとし:33歳)の言うとおりに、藤澤綾乃(あやの:30歳)は片方の手を自身の胸の膨らみへと移動させる。寝間着のボタンを外し、乳房を露出させると、先程夫の藤澤良一(りょういち:37歳)の前で裸になった時とは違う興奮を感じた。
2016/02/18
[第1章その1 01]
『・・・ゴクッ・・・』
藤澤綾乃(あやの:30歳)は、その瞬間思わず生唾を飲み込んだ。頭の中に現れた男、それはもちろん夫の良一ではない。良一よりも大きく逞しい肉体、あのイヤらしい目付き、言葉・・・何かは分からないが、明らかに同じ男性でも良一からは感じない何かを持っているあの男。そう・・・それは三浦智(さとし:33歳)だ。
頭の中で三浦が綾乃に声を掛けてくる。
〔どうしたんですか奥さん、そんな顔をして・・・。〕
『ぇ・・・?』
〔へへっ・・・惚けたってオレにはすぐに分かるんですよ、奥さんが今何を考えているのか。〕
『な・・・何を言っているんですか・・・。』
〔奥さん・・・ホントは凄くエッチなんだろ?オレ奥さんの顔を一目見た瞬間に分かったよ。あ~この女エロいだろうなぁ・・・飢えているんだろうなぁ・・・てさ。〕
『・・・うそ・よ・・。』
〔奥さん正直に言ってくださいよ。いつも我慢をしていたんでしょ?旦那との退屈なSEXに。〕
『・・・そんな事・・・ない・・。』
〔ほら、今だって顔に分かりやすく書いてあるじゃないですか!わたしは“欲求不満な女”です。ってさ。〕
『・・・・・・』
〔いいんですよ奥さん。オレの前では本性を剥き出しにして淫らになっても。〕
『・・・三浦さん・・・もう・・。』
〔ほら・・・我慢しなくていいんです。〕
『・・・ン・・・。』
〔そう、手を奥さんの一番エッチな所へ・・・思う存分に気持ち良くなればいいんだよ。〕
『ハァ・・・ァァ・・・。』
綾乃は妄想の中にいる三浦智の指示通りに自ら手を寝間着の中、疼いて疼いて仕方ない秘部へと持っていってしまう。
《・・・もう・・・ダメ・・・我慢できない・・・》
“クチュッ・・・”指先に感じた湿った感覚、綾乃のアソコは自分でも信じられない程濡れていた。
その原因が今綾乃の頭の中にいる男(三浦)の存在にあるという事は、綾乃自身も疑いようの無い事実である。綾乃の身体は三浦に濡らされていたのだ。
《・・・ハァ・・・こんなに・・・》
綾乃は自分の愛液に濡れた指先を火照った表情で見つめる。そしてゆっくりと目を閉じ、
再びその手を下へと移動させる。明かりを消し薄暗くなったリビングのソファで、綾乃は本格的な自慰行為(オナニー)を始めたのだ。
『・・・ン・・・ァ・・・ハァ・・・。』
夜中のリビングに小さく響く、綾乃の湿った声と息遣い。
〔そうです奥さん・・・ほら、空いてる方の手で胸も揉んでみたらどうです?俺に激しく揉まれるところを想像してみろよ。〕
妄想の中で耳元に囁いてくる三浦智(さとし:33歳)の言うとおりに、藤澤綾乃(あやの:30歳)は片方の手を自身の胸の膨らみへと移動させる。寝間着のボタンを外し、乳房を露出させると、先程夫の藤澤良一(りょういち:37歳)の前で裸になった時とは違う興奮を感じた。
2016/02/18
長U〖綾乃の想い〗第4章その6 25
長U〖綾乃の想い〗第4章その6 25
それはここがリビングだからなのか、それとも妄想の中に三浦智(さとし:33歳)が居るからなのかは分からない。
『・・・ンッ・・・。』
藤澤綾乃(あやの:30歳)は白く柔らかな乳房をゆっくりと揉み始める。
〔乳首も・・・勃起させるともっと気持ちよくなりますよ。〕
『ン・・・ハァ・・・。』
乳首を人差し指と親指で摘まんだり転がしてみたり、すると綾乃の乳首はあっという間に固くなり勃起する。胸と股間にそれぞれ手を伸ばし、淫らに性感帯を刺激する。夜中の薄暗いリビングで発情したメスの姿を露わにした。
『ァ・・・ン・・・ハァ・・・。』
愛液が付着しヌルヌルと滑りのよくなった指で特に敏感な陰核(クリトリス)を刺激してみる。
『・・・アッ・・・。』
触った瞬間、綾乃の口から思わず声が漏れる。綾乃の自慰行為(オナニー)は主にその陰核への刺激によるものだった。自分の身体の中で一番はっきりとした快感を感じられる場所であるクリトリス。綾乃はそこを集中的に刺激し続ける。
『ン・・・ァ・・・ン・・・ン・・・。』
〔へぇ~奥さん、クリが好きなんですかぁ、ヒクヒクしますよ?イキそうなんですか?〕
“イキそう”・・・?綾乃は昨日聞いてしまった恭子の喘ぎ声を思い出した。
〚・・・アッアッ・・・ンーー・・・アッアッイクッ・・・イクッ・・・ンァアアッ!!・・・〛
あんなに切羽詰った声。いや、あんなに気持ち良さそうな声を上げていた恭子。綾乃は今
までの人生で性的な快感絶頂を経験した事がない。それは高校時代に初めて覚えた自慰行為でも、そして今まで付き合った恋人や今の夫・良一とのSEXでも・・・。
《・・・イクのってどんな感じなんだろう・・・そんなに気持ちイイの・・・?》
今までの自慰行為でも身体が熱くなって、何かが近づいてくる感覚はあったが、でもなんだかそれを迎えてしまう事が、頂に達してしまう事が怖くていつもできなかった。
〔イッた事がないんですか奥さん、では今日はイクところまで刺激してみましょう。〕
『ハァ・・・ァァ・・・。』
〔怖くないから大丈夫ですよ。凄く気持ちいいですから。〕
『・・・ん・・・。』
〔ほら、手をもっと激しく動かして、乳首も少し痛いくらいに摘んで・・・そうです・・・イクまで止めちゃいけませんよ。〕
綾乃は妄想の中の三浦に煽られながら、自分の身体を刺激する手をより激しく、より淫らにしていく。身体がどんどん熱くなっていくのが、そしてあの頂が近づいてくるのが、今まで経験した事がないにもかかわらず本能的に分かる気がする。
『ン・・・ァ・・・ハァ・・・アッ・・・ン・・・。』
寝室に夫の良一がいる事も忘れて、綾乃は快感に浸る。夢中になっているのだろう。ソファの上で乳房を曝け出し、股も普段の綾乃では考えられない程だらしなく開いている。今自分がどれだけ淫らな格好をしているのか、本人は気付いていない。
〔・・・イヤらしいですねぇ奥さん・・・。〕
“ピチャピチャピチャ・・・”
『ハァ・・・ンン・・・ン・・・ンー・・・。』
ついには大量に溢れ出した愛液が指の動きに合わせて音を立て始めた。そんなイヤらしい粘着質な音も、今の綾乃にとっては興奮の材料にしかならない。無意識の内にわざと音が鳴るように指を動かしている自分がいる。
“ピチャピチャピチャ・・・”
『ああ・・・ハァッ・・・ハァ・・・ンン・・・。』
気持ちが高ぶり、声も自然と大きくなっていく。
〔もうイキそうなんですね?指は止めないで、そのままイってしまいましょう。ほら、さらに激しくして・・・もっとです、もっと激しく。〕
『ああ・・・ハァン・・・アッアッ・・・ンーー・・・。』
2016/02/25
長U〖綾乃の想い〗第2章その5 10 から読みたい方は ⇒ こちら
長U〖綾乃の想い〗第1章その1 01 から読みたい方は ⇒ こちら
それはここがリビングだからなのか、それとも妄想の中に三浦智(さとし:33歳)が居るからなのかは分からない。
『・・・ンッ・・・。』
藤澤綾乃(あやの:30歳)は白く柔らかな乳房をゆっくりと揉み始める。
〔乳首も・・・勃起させるともっと気持ちよくなりますよ。〕
『ン・・・ハァ・・・。』
乳首を人差し指と親指で摘まんだり転がしてみたり、すると綾乃の乳首はあっという間に固くなり勃起する。胸と股間にそれぞれ手を伸ばし、淫らに性感帯を刺激する。夜中の薄暗いリビングで発情したメスの姿を露わにした。
『ァ・・・ン・・・ハァ・・・。』
愛液が付着しヌルヌルと滑りのよくなった指で特に敏感な陰核(クリトリス)を刺激してみる。
『・・・アッ・・・。』
触った瞬間、綾乃の口から思わず声が漏れる。綾乃の自慰行為(オナニー)は主にその陰核への刺激によるものだった。自分の身体の中で一番はっきりとした快感を感じられる場所であるクリトリス。綾乃はそこを集中的に刺激し続ける。
『ン・・・ァ・・・ン・・・ン・・・。』
〔へぇ~奥さん、クリが好きなんですかぁ、ヒクヒクしますよ?イキそうなんですか?〕
“イキそう”・・・?綾乃は昨日聞いてしまった恭子の喘ぎ声を思い出した。
〚・・・アッアッ・・・ンーー・・・アッアッイクッ・・・イクッ・・・ンァアアッ!!・・・〛
あんなに切羽詰った声。いや、あんなに気持ち良さそうな声を上げていた恭子。綾乃は今
までの人生で性的な快感絶頂を経験した事がない。それは高校時代に初めて覚えた自慰行為でも、そして今まで付き合った恋人や今の夫・良一とのSEXでも・・・。
《・・・イクのってどんな感じなんだろう・・・そんなに気持ちイイの・・・?》
今までの自慰行為でも身体が熱くなって、何かが近づいてくる感覚はあったが、でもなんだかそれを迎えてしまう事が、頂に達してしまう事が怖くていつもできなかった。
〔イッた事がないんですか奥さん、では今日はイクところまで刺激してみましょう。〕
『ハァ・・・ァァ・・・。』
〔怖くないから大丈夫ですよ。凄く気持ちいいですから。〕
『・・・ん・・・。』
〔ほら、手をもっと激しく動かして、乳首も少し痛いくらいに摘んで・・・そうです・・・イクまで止めちゃいけませんよ。〕
綾乃は妄想の中の三浦に煽られながら、自分の身体を刺激する手をより激しく、より淫らにしていく。身体がどんどん熱くなっていくのが、そしてあの頂が近づいてくるのが、今まで経験した事がないにもかかわらず本能的に分かる気がする。
『ン・・・ァ・・・ハァ・・・アッ・・・ン・・・。』
寝室に夫の良一がいる事も忘れて、綾乃は快感に浸る。夢中になっているのだろう。ソファの上で乳房を曝け出し、股も普段の綾乃では考えられない程だらしなく開いている。今自分がどれだけ淫らな格好をしているのか、本人は気付いていない。
〔・・・イヤらしいですねぇ奥さん・・・。〕
“ピチャピチャピチャ・・・”
『ハァ・・・ンン・・・ン・・・ンー・・・。』
ついには大量に溢れ出した愛液が指の動きに合わせて音を立て始めた。そんなイヤらしい粘着質な音も、今の綾乃にとっては興奮の材料にしかならない。無意識の内にわざと音が鳴るように指を動かしている自分がいる。
“ピチャピチャピチャ・・・”
『ああ・・・ハァッ・・・ハァ・・・ンン・・・。』
気持ちが高ぶり、声も自然と大きくなっていく。
〔もうイキそうなんですね?指は止めないで、そのままイってしまいましょう。ほら、さらに激しくして・・・もっとです、もっと激しく。〕
『ああ・・・ハァン・・・アッアッ・・・ンーー・・・。』
2016/02/25
長U〖綾乃の想い〗第2章その5 10 から読みたい方は ⇒ こちら
長U〖綾乃の想い〗第1章その1 01 から読みたい方は ⇒ こちら
長U〖綾乃の想い〗第4章その7 26
長U〖綾乃の想い〗第4章その7 26
絶頂はもう目の前まで来ている。初めての経験という恐怖から、一瞬指を止めてしまいそうになった藤澤綾乃(あやの:30歳)だったが、なぜか頭の中の三浦智(さとし:33歳)の声に従ってしまう綾乃は指を止める事ができない。
《・・・ああ・・・もうダメ・・・もうダメッ・・・》
綾乃はソファの上で目を閉じたまま身体を仰け反らせるようにして顔を天井に向ける。気持ちよすぎる快感がもうその限界を迎えそうだ。
〔イキそうだろう?イキそうなんだろう奥さん?イク時はイクって言うんだよ。昨日の恭子のように・・・イクって言えばさらに気持ちよくなる・・・さぁ、思う存分イキなよ!〕
“クチュクチュクチュチュクチュ・・・”
『アア・・・ンッンッンッ・・・ハァァァ!』
身体の奥から吐き出すような綾乃の喘ぎ声がリビングに響く。ジェットコースターで一番高い所へ到達し、そこからグワンッと身体が一気に真下へ向かっていくような感覚だった。綾乃は身体をさらに仰け反らせ、ソファから腰を大きく浮かせる。
そしてついに、綾乃は、妄想の中の三浦に誘導されるようにして、人生初の快感絶頂を迎えたのであった。
『ハァァンッンッンッ・・・ああ!・・・イッ・・・イクッ・・・アンッ!・・・』
無意識に綾乃の身体が震える・・ビクビクビクビクビクン・・・真っ白になる脳内・・痺れる感覚・・そして・・・信じられない程甘い快感が広がる。
しばらく動けずにソファに横たわっていた。火照る躰を静めるように寝室のベッドに入ったが、夫への罪悪を感じつつ、絶頂の快感を知った興奮で眠ることが出来ない。無理に目を閉じても・・あの男の・・不敵な笑いが・・ちらついて・・結局、朝まで・・・。
「じゃあ、行って来るわ。」
『うん、いってらっしゃい。』
朝、仕事に向かう夫の藤澤良一(りょういち:37歳)を綾乃はいつも通りに送り出す。笑顔で見送ったものの、良一が出て行くと綾乃はすぐさまその場で欠伸(あくび)をしてしまった。完全に睡眠不足だ。2日続けての夜更かしが原因である。
『・・・はぁ・・・。』
そして綾乃は欠伸をしたかと思えば、今度は深いため息が口から漏れる。キッチンに戻って朝食で使った食器を洗いながら、綾乃は同じようなため息を何度も出していた。
昨日夜中に自分がしてしまった事・・夜中に1人でリビングでした自慰行為・・しかも夫・良一とのSEXの後に・・を反省する。でも昨日は、女性として初めての快感絶頂も体験してしまった。それも身体の中心を突き抜けるような刺激的な快感。これが“イク”という事なのだと、その女性だけが経験できる快楽に悦びを感じている自分がいて、そして素直にイク事は気持ちイイのだと全身をもって感じた。
この時に、綾乃は絶頂の余韻に身体を震わせながらそんな事を本能的に感じていた。しかし、その後に綾乃を襲ってきたのは強烈な後悔(罪悪感)である。綾乃は真面目な女性なのだ。妄想の中とはいえ、良一を裏切ってしまった自分が許せない。
綾乃は妄想の中であの男、三浦の声によって人生初の快感絶頂へと導かれたのだから・・・《夫以外の男性に性的な感情を抱いてしまった自分が情けない》・・・《自分はそんなにだらしない女だったのか》と、心の中で強く自分を責めた。
《・・・良一は一生懸命私のため、家族のために頑張ってくれているのに・・・》
そんな強い後悔(罪悪感)を感じる中で、綾乃は強く心に決めるのであった。
《もうあんな裏切り行為はしたくない、いや、絶対にしない。》
心の中だけでも他の男性の事を考えるなんて、そんな事はもう二度とあってはいけない。
《・・・私は良一の妻で、良一は私を愛してくれている、私も良一を愛している・・・》
夫の藤澤良一(りょういち:37歳)を愛している・・・それは藤澤綾乃(あやの:30歳)の心に確かにある揺ぎ無い気持ち・・・それを再確認した上で、後悔(罪悪感)が大きかった分、綾乃のその決意は固いものであった。そう・・・少なくともこの時は綾乃の決意は相当に固いものであったのだ・・・この時までは・・・。
2016/03/03
長U〖綾乃の想い〗第1章その1 01 から読みたい方は ⇒ こちら
絶頂はもう目の前まで来ている。初めての経験という恐怖から、一瞬指を止めてしまいそうになった藤澤綾乃(あやの:30歳)だったが、なぜか頭の中の三浦智(さとし:33歳)の声に従ってしまう綾乃は指を止める事ができない。
《・・・ああ・・・もうダメ・・・もうダメッ・・・》
綾乃はソファの上で目を閉じたまま身体を仰け反らせるようにして顔を天井に向ける。気持ちよすぎる快感がもうその限界を迎えそうだ。
〔イキそうだろう?イキそうなんだろう奥さん?イク時はイクって言うんだよ。昨日の恭子のように・・・イクって言えばさらに気持ちよくなる・・・さぁ、思う存分イキなよ!〕
“クチュクチュクチュチュクチュ・・・”
『アア・・・ンッンッンッ・・・ハァァァ!』
身体の奥から吐き出すような綾乃の喘ぎ声がリビングに響く。ジェットコースターで一番高い所へ到達し、そこからグワンッと身体が一気に真下へ向かっていくような感覚だった。綾乃は身体をさらに仰け反らせ、ソファから腰を大きく浮かせる。
そしてついに、綾乃は、妄想の中の三浦に誘導されるようにして、人生初の快感絶頂を迎えたのであった。
『ハァァンッンッンッ・・・ああ!・・・イッ・・・イクッ・・・アンッ!・・・』
無意識に綾乃の身体が震える・・ビクビクビクビクビクン・・・真っ白になる脳内・・痺れる感覚・・そして・・・信じられない程甘い快感が広がる。
しばらく動けずにソファに横たわっていた。火照る躰を静めるように寝室のベッドに入ったが、夫への罪悪を感じつつ、絶頂の快感を知った興奮で眠ることが出来ない。無理に目を閉じても・・あの男の・・不敵な笑いが・・ちらついて・・結局、朝まで・・・。
「じゃあ、行って来るわ。」
『うん、いってらっしゃい。』
朝、仕事に向かう夫の藤澤良一(りょういち:37歳)を綾乃はいつも通りに送り出す。笑顔で見送ったものの、良一が出て行くと綾乃はすぐさまその場で欠伸(あくび)をしてしまった。完全に睡眠不足だ。2日続けての夜更かしが原因である。
『・・・はぁ・・・。』
そして綾乃は欠伸をしたかと思えば、今度は深いため息が口から漏れる。キッチンに戻って朝食で使った食器を洗いながら、綾乃は同じようなため息を何度も出していた。
昨日夜中に自分がしてしまった事・・夜中に1人でリビングでした自慰行為・・しかも夫・良一とのSEXの後に・・を反省する。でも昨日は、女性として初めての快感絶頂も体験してしまった。それも身体の中心を突き抜けるような刺激的な快感。これが“イク”という事なのだと、その女性だけが経験できる快楽に悦びを感じている自分がいて、そして素直にイク事は気持ちイイのだと全身をもって感じた。
この時に、綾乃は絶頂の余韻に身体を震わせながらそんな事を本能的に感じていた。しかし、その後に綾乃を襲ってきたのは強烈な後悔(罪悪感)である。綾乃は真面目な女性なのだ。妄想の中とはいえ、良一を裏切ってしまった自分が許せない。
綾乃は妄想の中であの男、三浦の声によって人生初の快感絶頂へと導かれたのだから・・・《夫以外の男性に性的な感情を抱いてしまった自分が情けない》・・・《自分はそんなにだらしない女だったのか》と、心の中で強く自分を責めた。
《・・・良一は一生懸命私のため、家族のために頑張ってくれているのに・・・》
そんな強い後悔(罪悪感)を感じる中で、綾乃は強く心に決めるのであった。
《もうあんな裏切り行為はしたくない、いや、絶対にしない。》
心の中だけでも他の男性の事を考えるなんて、そんな事はもう二度とあってはいけない。
《・・・私は良一の妻で、良一は私を愛してくれている、私も良一を愛している・・・》
夫の藤澤良一(りょういち:37歳)を愛している・・・それは藤澤綾乃(あやの:30歳)の心に確かにある揺ぎ無い気持ち・・・それを再確認した上で、後悔(罪悪感)が大きかった分、綾乃のその決意は固いものであった。そう・・・少なくともこの時は綾乃の決意は相当に固いものであったのだ・・・この時までは・・・。
2016/03/03
長U〖綾乃の想い〗第1章その1 01 から読みたい方は ⇒ こちら
長U〖綾乃の想い〗第5章その1 27
長U〖綾乃の想い〗第5章その1 27
朝の洗濯という仕事を終えた藤澤綾乃(あやの:30歳)は少し仮眠を取る事にする。昼間から寝てしまうような主婦にはなりたくないと思っていた綾乃だったが、今日は別だ。少しでも睡眠をとらないと晩御飯の仕度にも支障がでそうだし、今日は食材の買出しや夫の藤澤良一(りょういち:37歳)に頼まれている銀行の手続きにも行かないといけない。
こうやってまた家事に集中できる生活が戻ればあんな事はきっとすぐに忘れられる。綾乃はそう考えて気持ちを切り替える事にした。お隣でせっかく友達になれた恭子だったが、もし次に三浦智(さとし:33歳)が来るような機会にはしばらく参加しないでおこうと思った。
三浦という男をそんな風に変に意識する事自体間違っているような気もしたが、よくよく考えてみればみる程、やはり綾乃は元々あんな風にセクハラ紛いの言葉を女性に対して平気で掛けてくる男性が好きではなかった。
良一もしばらく仕事で忙しいと言っていたし、恭子だって同じように忙しいだろう。どうせそんな機会しばらく無いとは思うが、もし誘われてもやんわり断ればいい。そんな風に自分の中で考えをまとめ、ある程度気持ちを落ち着かせる事に成功した綾乃は、目覚まし時計をセットして仮眠のためベッドに入った。
《・・・大丈夫、すぐに忘れられるわ・・・ううん、もう気にしてないんだから・・・元に戻ろう・・・》
ベッドの中で目を閉じ、そう何度も自分に言い聞かせる事で安心できたのか、綾乃はすぐに眠りの世界へと落ちていった。安心という感情は良質な睡眠のために絶対に必要なもの。大きな後悔から、なんとかある種の安心を生み出す事ができた綾乃は、気持ちよく眠りの世界に浸っていた。しかしこの後、綾乃は思わぬ形で眼を覚ます事になる。
[え~スゴ~イ!ホントにいい部屋じゃん!]
〔だろ?ここ昼間は俺の自由に使えるからよ。〕
微かに聞こえる、男女の声。せっかくよく眠っていたのに、どうしてこんなに小さな声が耳に入ってきてしまうのだろう。
[いいなぁ私もこんな部屋に住んでみた~い。]
〔ハハッだったら金持っている男でも捕まえるんだな。〕
どこかで聞いた事のある声。まだ半分眠りの中、ボンヤリとした頭で綾乃はその声が誰のものかを思い出そうとしていた。
《・・・良一・・・じゃない・・・良一の声はもっと安心できる声だもの・・・・・・じゃあ誰なの?・・・
何・・・この感じ・・・》
綾乃はなぜかこの微かに聞こえる声に集中してしまう。
『・・・ん・・・。』
そして綾乃はその気に掛かる声のせいでついに目を覚ましてしまう。そっと目を開け、ベッドから顔を上げる。時計を見るとまだ昼前、あと1時間くらいは眠っている予定だったのに・・・。
[へぇ~ここの人GDMで働いてるんだぁ、じゃあエリート? よくそんな人をゲットできたね。]
〔そういう女程普段から色々と我慢して溜め込んでいるからな。金持っているだけじゃなくてそいつ結構いい身体しているしよ、最近の女の中じゃ1番だな。〕
[え~じゃあ私はぁ? ていうか智って最低な男ね、フフッ・・・。]
声は微かに窓の外の方から聞こえる。
『・・・三浦さんの・・・声・・・?』
隣のベランダで話をしているのか、それとも窓を開けたまま大声で話しているのか。このマンションはそんなに壁が薄くはないのだから・・・声は三浦ともう1人、女性の声が聞こえるが、それは声質からして明らかに恭子のものではないように思えた。
《・・・恭子さんは仕事のはずなのに・・・どうして三浦さんがいるの?・・・》
綾乃はそんな事を考えながらゆっくりとベッドから起きて寝室からリビングの窓の近くまで歩いていく。無意識の内にもっとその声がハッキリと聞こえる場所へと向かってしまう。
《・・・この女性の声・・・誰なの?》
初めて聞く声だし、それにその言葉使いなどから考えると随分と若い女性なのではないかと綾乃は思った。
2016/03/09
朝の洗濯という仕事を終えた藤澤綾乃(あやの:30歳)は少し仮眠を取る事にする。昼間から寝てしまうような主婦にはなりたくないと思っていた綾乃だったが、今日は別だ。少しでも睡眠をとらないと晩御飯の仕度にも支障がでそうだし、今日は食材の買出しや夫の藤澤良一(りょういち:37歳)に頼まれている銀行の手続きにも行かないといけない。
こうやってまた家事に集中できる生活が戻ればあんな事はきっとすぐに忘れられる。綾乃はそう考えて気持ちを切り替える事にした。お隣でせっかく友達になれた恭子だったが、もし次に三浦智(さとし:33歳)が来るような機会にはしばらく参加しないでおこうと思った。
三浦という男をそんな風に変に意識する事自体間違っているような気もしたが、よくよく考えてみればみる程、やはり綾乃は元々あんな風にセクハラ紛いの言葉を女性に対して平気で掛けてくる男性が好きではなかった。
良一もしばらく仕事で忙しいと言っていたし、恭子だって同じように忙しいだろう。どうせそんな機会しばらく無いとは思うが、もし誘われてもやんわり断ればいい。そんな風に自分の中で考えをまとめ、ある程度気持ちを落ち着かせる事に成功した綾乃は、目覚まし時計をセットして仮眠のためベッドに入った。
《・・・大丈夫、すぐに忘れられるわ・・・ううん、もう気にしてないんだから・・・元に戻ろう・・・》
ベッドの中で目を閉じ、そう何度も自分に言い聞かせる事で安心できたのか、綾乃はすぐに眠りの世界へと落ちていった。安心という感情は良質な睡眠のために絶対に必要なもの。大きな後悔から、なんとかある種の安心を生み出す事ができた綾乃は、気持ちよく眠りの世界に浸っていた。しかしこの後、綾乃は思わぬ形で眼を覚ます事になる。
[え~スゴ~イ!ホントにいい部屋じゃん!]
〔だろ?ここ昼間は俺の自由に使えるからよ。〕
微かに聞こえる、男女の声。せっかくよく眠っていたのに、どうしてこんなに小さな声が耳に入ってきてしまうのだろう。
[いいなぁ私もこんな部屋に住んでみた~い。]
〔ハハッだったら金持っている男でも捕まえるんだな。〕
どこかで聞いた事のある声。まだ半分眠りの中、ボンヤリとした頭で綾乃はその声が誰のものかを思い出そうとしていた。
《・・・良一・・・じゃない・・・良一の声はもっと安心できる声だもの・・・・・・じゃあ誰なの?・・・
何・・・この感じ・・・》
綾乃はなぜかこの微かに聞こえる声に集中してしまう。
『・・・ん・・・。』
そして綾乃はその気に掛かる声のせいでついに目を覚ましてしまう。そっと目を開け、ベッドから顔を上げる。時計を見るとまだ昼前、あと1時間くらいは眠っている予定だったのに・・・。
[へぇ~ここの人GDMで働いてるんだぁ、じゃあエリート? よくそんな人をゲットできたね。]
〔そういう女程普段から色々と我慢して溜め込んでいるからな。金持っているだけじゃなくてそいつ結構いい身体しているしよ、最近の女の中じゃ1番だな。〕
[え~じゃあ私はぁ? ていうか智って最低な男ね、フフッ・・・。]
声は微かに窓の外の方から聞こえる。
『・・・三浦さんの・・・声・・・?』
隣のベランダで話をしているのか、それとも窓を開けたまま大声で話しているのか。このマンションはそんなに壁が薄くはないのだから・・・声は三浦ともう1人、女性の声が聞こえるが、それは声質からして明らかに恭子のものではないように思えた。
《・・・恭子さんは仕事のはずなのに・・・どうして三浦さんがいるの?・・・》
綾乃はそんな事を考えながらゆっくりとベッドから起きて寝室からリビングの窓の近くまで歩いていく。無意識の内にもっとその声がハッキリと聞こえる場所へと向かってしまう。
《・・・この女性の声・・・誰なの?》
初めて聞く声だし、それにその言葉使いなどから考えると随分と若い女性なのではないかと綾乃は思った。
2016/03/09
長U〖綾乃の想い〗第5章その2 28
長U〖綾乃の想い〗第5章その2 28
前話27
《・・・この女性の声・・・誰なの?》
初めて聞く声だし、それにその言葉使いなどから考えると随分と若い女性なのではないかと綾乃は思った。
『・・・。』
藤澤綾乃(あやの:30歳)は窓の鍵をゆっくりと下ろして、窓を音がしないようにそっと数cmほど開ける。
寝る前にもう三浦智(さとし:33歳)の事は気にしないようにと心に決めていたはずだったのに、まだ眠りから覚めたばかりの綾乃は、ボンヤリとしたままそんな事は考えいなかったのかもしれない。ただ、なんとなくこの女性の声が気になっていたのだ。
窓を開けた事で声はよりハッキリと聞こえるようになる。
〔まぁ正直恭子にも最近飽きてきたけどなぁ、でもアイツ金を持っているからなかなか捨てられねないんだわ。〕
[フフッ・・・ホント悪い人。]
〔・・・でもそんなお前も俺に夢中なんだろ?〕
[自惚れないでよ、智(さとし)とはこっちだけ・・・。]
〔そんなに俺のコレが好きか?〕
[・・・うん・・・。]
〔彼氏のよりもか?〕
[・・・うん・・・だって、智って凄過ぎるんだもん。]
〔今までの男達と比べてもか?〕
[うん・・・ダントツで・・・だから・・・ねぇ・・・。]
〔おいおい、もう我慢できねないのかよ、仕方ないなぁ。〕
いつの間にか綾乃(あやの)は先日と同じように隣から聞えてくる声を盗み聞きしてしまっている。窓の近くにしゃがみ込んで耳を少し開けた窓の外へと向けていた。それで胸がドキドキと高鳴って、先日の記憶が蘇ってくる。《いったい・・・・何を・・・しているの?・・・二人は・・恭子さんの部屋で・・・》
[うん・・・我慢できないよ・・・だって智とは久しぶりだし・・・。]
〔ずっと彼氏ので我慢していたのか?〕
[もぅ・・・彼氏の事は言わないで・・・。]
〔俺の代わりをできる奴はそうはいないからなぁ。〕
[・・・なんかもう別れようかぁって最近思っているの・・・。]
〔SEXに満足できないから別れますってか? エロい女だなぁお前も。〕
[・・・だってぇ・・・。]
〔フッ・・・でもアユミ・・別れるなよ、これは俺の命令だ。人の女じゃないと興奮しないんだわ。〕
[もぅ・・・ホント変態だよね、智って・・・。]
綾乃は三浦のその “人の女”という言葉を聞いて胸をつかれたような思いになる。・・・自分の事を言われた訳でもないのに、綾乃がその言葉に反応してしまうのは、“人の女”という条件に既婚者である自分は該当してしまっているからかもしれなかった。
2016/04/24
前話27
《・・・この女性の声・・・誰なの?》
初めて聞く声だし、それにその言葉使いなどから考えると随分と若い女性なのではないかと綾乃は思った。
『・・・。』
藤澤綾乃(あやの:30歳)は窓の鍵をゆっくりと下ろして、窓を音がしないようにそっと数cmほど開ける。
寝る前にもう三浦智(さとし:33歳)の事は気にしないようにと心に決めていたはずだったのに、まだ眠りから覚めたばかりの綾乃は、ボンヤリとしたままそんな事は考えいなかったのかもしれない。ただ、なんとなくこの女性の声が気になっていたのだ。
窓を開けた事で声はよりハッキリと聞こえるようになる。
〔まぁ正直恭子にも最近飽きてきたけどなぁ、でもアイツ金を持っているからなかなか捨てられねないんだわ。〕
[フフッ・・・ホント悪い人。]
〔・・・でもそんなお前も俺に夢中なんだろ?〕
[自惚れないでよ、智(さとし)とはこっちだけ・・・。]
〔そんなに俺のコレが好きか?〕
[・・・うん・・・。]
〔彼氏のよりもか?〕
[・・・うん・・・だって、智って凄過ぎるんだもん。]
〔今までの男達と比べてもか?〕
[うん・・・ダントツで・・・だから・・・ねぇ・・・。]
〔おいおい、もう我慢できねないのかよ、仕方ないなぁ。〕
いつの間にか綾乃(あやの)は先日と同じように隣から聞えてくる声を盗み聞きしてしまっている。窓の近くにしゃがみ込んで耳を少し開けた窓の外へと向けていた。それで胸がドキドキと高鳴って、先日の記憶が蘇ってくる。《いったい・・・・何を・・・しているの?・・・二人は・・恭子さんの部屋で・・・》
[うん・・・我慢できないよ・・・だって智とは久しぶりだし・・・。]
〔ずっと彼氏ので我慢していたのか?〕
[もぅ・・・彼氏の事は言わないで・・・。]
〔俺の代わりをできる奴はそうはいないからなぁ。〕
[・・・なんかもう別れようかぁって最近思っているの・・・。]
〔SEXに満足できないから別れますってか? エロい女だなぁお前も。〕
[・・・だってぇ・・・。]
〔フッ・・・でもアユミ・・別れるなよ、これは俺の命令だ。人の女じゃないと興奮しないんだわ。〕
[もぅ・・・ホント変態だよね、智って・・・。]
綾乃は三浦のその “人の女”という言葉を聞いて胸をつかれたような思いになる。・・・自分の事を言われた訳でもないのに、綾乃がその言葉に反応してしまうのは、“人の女”という条件に既婚者である自分は該当してしまっているからかもしれなかった。
2016/04/24
長U〖綾乃の想い〗第5章その3 29
長U〖綾乃の想い〗第5章その3 29
前話28
少し静かになって隣の雰囲気が一気に変わった事が分かった。
[ン・・・ァ・・・ン・・・。]
微かに聞こえる女性の吐息。男女2人が何かを始めた事は確かであったし、何を始めたのかは容易に想像できる。
『・・・ゴクッ・・・』
藤澤綾乃(あやの:30歳)は思わず生唾を飲み込む。
先日と同じように、またも隣の部屋の世界へとのめり込みそうになる。しかし、ふとした瞬間、綾乃は一瞬我に返った。《・・・はっ・・・わ、私・・・何やってるのよ・・・またこんな盗み聞きみたいな事・・・》自分がしている他人の生活を盗み聞くという普段では考えられない異常な行動に、綾乃は今再び気付いたのだ。
《・・・ダメ・・・ダメよ・・・》綾乃は何度も頭を横に振り、心の中で自分にそう言い聞かせると、そっと立ち上がり開けていた窓をゆっくりと閉めた。窓を閉めたら殆ど声は聞こえなくなったが、よーく耳をすますと微かに聞こえるような気もする。
《・・・もう気にしないって決めたんだから・・・騒音って程うるさい訳でもないし・・・気にしなければ聞えないはずよ・・・》部屋の時計を見ると、もう買い物に出掛ける予定の時間だ。綾乃はお茶を一杯飲み落ち着きを取り戻すと、出掛ける準備を始める。そして、家を出て車に乗り込んだ。
『三浦さんってやっぱりああいう人だったのね、他の女の人を恭子さんの部屋に連れ込むなんて最低だわ。』
車を運転しながら運転席で綾乃はブツブツと独り言を呟いている。
『本当に恭子さんが可哀相だわ・・・あんな・・・。』
その様子はどこか怒っているようにも見えた。
三浦智(さとし:33歳)の言葉を頭の中で反芻する。
〔でもアイツ金持っているから捨てれねぇんだよなぁ〕
『・・・さいっ低!! 最低っ! 女の敵よ! あんな男。』
冷静さを取り戻してからは、三浦に対して怒りが収まらない。
そして同時に綾乃は自分自身にも腹が立っていた。あんな男の事を考えて恥ずかしい事をしてしまった自分に・・・考えれば考える程腹が立った。
『恭子さんに・・・教えてあげた方がいいのかしら?・・・』
《恭子さん、あなたの彼氏・・・三浦さんは浮気しているわよ。しかもあなたの部屋に他の女の人を連れ込んでるわよ・・・》
『・・・はぁ・・・でもそんな事を簡単には言えないわ、きっと恭子さんその事知ったら深く傷つくもの。』
先日の食事会で篠原恭子(きょうこ:30歳)が楽しそうに、幸せそうに三浦と話していたのを思い出すと、心が痛む。そしてそんな恭子を裏切っている三浦への嫌悪感がどんどん増してくる。
『どうしたらいいのかしら・・・友達としてほっとけないわ。』
しかし、彩乃には解決への道が・・・見通せなかった。
2016/05/04
前話28
少し静かになって隣の雰囲気が一気に変わった事が分かった。
[ン・・・ァ・・・ン・・・。]
微かに聞こえる女性の吐息。男女2人が何かを始めた事は確かであったし、何を始めたのかは容易に想像できる。
『・・・ゴクッ・・・』
藤澤綾乃(あやの:30歳)は思わず生唾を飲み込む。
先日と同じように、またも隣の部屋の世界へとのめり込みそうになる。しかし、ふとした瞬間、綾乃は一瞬我に返った。《・・・はっ・・・わ、私・・・何やってるのよ・・・またこんな盗み聞きみたいな事・・・》自分がしている他人の生活を盗み聞くという普段では考えられない異常な行動に、綾乃は今再び気付いたのだ。
《・・・ダメ・・・ダメよ・・・》綾乃は何度も頭を横に振り、心の中で自分にそう言い聞かせると、そっと立ち上がり開けていた窓をゆっくりと閉めた。窓を閉めたら殆ど声は聞こえなくなったが、よーく耳をすますと微かに聞こえるような気もする。
《・・・もう気にしないって決めたんだから・・・騒音って程うるさい訳でもないし・・・気にしなければ聞えないはずよ・・・》部屋の時計を見ると、もう買い物に出掛ける予定の時間だ。綾乃はお茶を一杯飲み落ち着きを取り戻すと、出掛ける準備を始める。そして、家を出て車に乗り込んだ。
『三浦さんってやっぱりああいう人だったのね、他の女の人を恭子さんの部屋に連れ込むなんて最低だわ。』
車を運転しながら運転席で綾乃はブツブツと独り言を呟いている。
『本当に恭子さんが可哀相だわ・・・あんな・・・。』
その様子はどこか怒っているようにも見えた。
三浦智(さとし:33歳)の言葉を頭の中で反芻する。
〔でもアイツ金持っているから捨てれねぇんだよなぁ〕
『・・・さいっ低!! 最低っ! 女の敵よ! あんな男。』
冷静さを取り戻してからは、三浦に対して怒りが収まらない。
そして同時に綾乃は自分自身にも腹が立っていた。あんな男の事を考えて恥ずかしい事をしてしまった自分に・・・考えれば考える程腹が立った。
『恭子さんに・・・教えてあげた方がいいのかしら?・・・』
《恭子さん、あなたの彼氏・・・三浦さんは浮気しているわよ。しかもあなたの部屋に他の女の人を連れ込んでるわよ・・・》
『・・・はぁ・・・でもそんな事を簡単には言えないわ、きっと恭子さんその事知ったら深く傷つくもの。』
先日の食事会で篠原恭子(きょうこ:30歳)が楽しそうに、幸せそうに三浦と話していたのを思い出すと、心が痛む。そしてそんな恭子を裏切っている三浦への嫌悪感がどんどん増してくる。
『どうしたらいいのかしら・・・友達としてほっとけないわ。』
しかし、彩乃には解決への道が・・・見通せなかった。
2016/05/04
長U〖綾乃の想い〗第5章その4 30
長U〖綾乃の想い〗第5章その4 30
藤澤綾乃(あやの:30歳)は、《友達としてほっとけないわ。》と思いながら、《でも、どうしたらいいのかしら・・・》そんな風に悩みながら買い物をしていた。せっかくできた大切な友人。篠原恭子(しのはら・きょうこ:30歳)が隣に引っ越してきてくれてどんなに嬉しかった。あんなに礼儀正しくて優しい恭子・・・しかし、そんな恭子の相手が三浦智(みうら・さとし:33歳)のような男とは、やはりどうしても納得できない。
《・・・同じ女性として尊敬さえしていた恭子さんがあんな男に騙されているなんて・・・》人は誰にでも欠点はある。一見完璧に見える恭子も、男性を見る目はあまり無かったという事だろうか? なんにしても、やはりこのまま三浦がしていた事を友人として見過ごしたくはなかった。
なんとなく今日は早く夫(藤澤良一:ふじさわ・りょういち:37歳)の声が聞きたい気分だった。それは午前中にあんな事があったからだろうか。自慰行為の罪悪感を覚えていたから、綾乃の心の中では逆に夫・良一との愛を確かめたいという気持ちが沸きやすくなっていたのかもしれない。
《今夜、良一に相談してみようかな・・・?》
買い物を終えた綾乃はマンションの地下駐車場に車を止めて、両手に買い物用バッグを抱えながらエレベーターへと向かう。
《・・・そういえば良一、今日も遅くなるかもしれないって言ってっけ・・・早く帰ってきてくれるといいなぁ・・・》
そんな事を考えながら綾乃はエレベーターを待っている。
しかしその時だった。
『・・・・・・?』
ふと、綾乃は背後から人の気配を感じた。
〔あれぇ? 奥さん! ハハッ偶然だなぁ! 買い物の帰りですかぁ?〕
その声に驚くようにして綾乃が振り返る。
『・・・み、三浦さん!?』
綾乃の表情は明らかに動揺しているようだった。しかしそれは仕方のない事なのかもしれない。振り返った綾乃の目の前には、あの三浦がニヤニヤとイヤらしい笑みを浮かべながら立っていたのだから。
『・・・ぁ・・・あの・・・?』
〔ハハッどうしたんです? そんなに驚いた顔して。僕の顔に何か付いています?〕
『い、いえ別に・・・あの・・・三浦さんはどうして・・・?』
綾乃は午前中、隣からの三浦の声を聞いた時から疑問に思っていた事を彼に聞いてみた。
〔『どうして?』、あぁ・・・俺の仕事は基本パソコンがあればどこでもできるんでね。今日は恭子の部屋を借りているんですよ。〕
『どこでも・・・?あっ、そっか・・・。』
三浦がデイトレード(個人投資家による株式・債券などの日計り取引株取引)で生活をしていると言っていたのを綾乃は思い出した。確かに株取引だけならネットに繋がっていればどこでも可能だろう。 31に続く
2016/10/19
藤澤綾乃(あやの:30歳)は、《友達としてほっとけないわ。》と思いながら、《でも、どうしたらいいのかしら・・・》そんな風に悩みながら買い物をしていた。せっかくできた大切な友人。篠原恭子(しのはら・きょうこ:30歳)が隣に引っ越してきてくれてどんなに嬉しかった。あんなに礼儀正しくて優しい恭子・・・しかし、そんな恭子の相手が三浦智(みうら・さとし:33歳)のような男とは、やはりどうしても納得できない。
《・・・同じ女性として尊敬さえしていた恭子さんがあんな男に騙されているなんて・・・》人は誰にでも欠点はある。一見完璧に見える恭子も、男性を見る目はあまり無かったという事だろうか? なんにしても、やはりこのまま三浦がしていた事を友人として見過ごしたくはなかった。
なんとなく今日は早く夫(藤澤良一:ふじさわ・りょういち:37歳)の声が聞きたい気分だった。それは午前中にあんな事があったからだろうか。自慰行為の罪悪感を覚えていたから、綾乃の心の中では逆に夫・良一との愛を確かめたいという気持ちが沸きやすくなっていたのかもしれない。
《今夜、良一に相談してみようかな・・・?》
買い物を終えた綾乃はマンションの地下駐車場に車を止めて、両手に買い物用バッグを抱えながらエレベーターへと向かう。
《・・・そういえば良一、今日も遅くなるかもしれないって言ってっけ・・・早く帰ってきてくれるといいなぁ・・・》
そんな事を考えながら綾乃はエレベーターを待っている。
しかしその時だった。
『・・・・・・?』
ふと、綾乃は背後から人の気配を感じた。
〔あれぇ? 奥さん! ハハッ偶然だなぁ! 買い物の帰りですかぁ?〕
その声に驚くようにして綾乃が振り返る。
『・・・み、三浦さん!?』
綾乃の表情は明らかに動揺しているようだった。しかしそれは仕方のない事なのかもしれない。振り返った綾乃の目の前には、あの三浦がニヤニヤとイヤらしい笑みを浮かべながら立っていたのだから。
『・・・ぁ・・・あの・・・?』
〔ハハッどうしたんです? そんなに驚いた顔して。僕の顔に何か付いています?〕
『い、いえ別に・・・あの・・・三浦さんはどうして・・・?』
綾乃は午前中、隣からの三浦の声を聞いた時から疑問に思っていた事を彼に聞いてみた。
〔『どうして?』、あぁ・・・俺の仕事は基本パソコンがあればどこでもできるんでね。今日は恭子の部屋を借りているんですよ。〕
『どこでも・・・?あっ、そっか・・・。』
三浦がデイトレード(個人投資家による株式・債券などの日計り取引株取引)で生活をしていると言っていたのを綾乃は思い出した。確かに株取引だけならネットに繋がっていればどこでも可能だろう。 31に続く
2016/10/19
長U〖綾乃の想い〗第5章その5 31
長U〖綾乃の想い〗第5章その5 31
〔このマンションいい部屋だし、もったいないでしょ?恭子は平日、殆ど寝に帰ってきているようなものだから。〕
恐らく篠原恭子(しのはら・きょうこ:30歳)は三浦智(みうら・さとし:33歳)の事を信頼して合鍵を渡しているのだろう。しかし、そんな恭子を三浦は最低の形で裏切っている事を藤澤綾乃(ふじさわ・あやの:30歳)は知っている。
『そ、そうですね・・・恭子さん忙しいですものね。』
2人がそんな会話をしていると、エレベーターが下りてきてドアが開く。当然2人はそれに乗って上の階へと行くのだが、綾乃はそれを一瞬躊躇(ちゅうちょ)した。こんな狭い密室で三浦と2人きりになる事に対し抵抗を感じる。三浦に対する女としての本能的な警戒心がそうさせていると言ってもよいかもしれない。
先に乗り込んだ三浦は、エレベーターに乗ってこないで立ち止まっている綾乃を不思議そうな顔で見た。
〔・・・ん?どうしたんです? 乗らないんですか?〕
『ぇ・・・あ、いえ・・・。』
綾乃はそう言って若干重い足どりでエレベーター内へと乗り込んだ。エレベーターの前で待っておきながら乗らないなんて、さすがにそんな不自然な事はできない。
そしてゆっくりとドアが閉まり、狭い密室に三浦と2人きりになる。綾乃はなるべく三浦を変に意識しないようにと斜め下を向き、床の一点を見つめた。しかしなぜだろう、鼓動がどんどん速くなっていくような気がする。《これは緊張? それとも恐怖?》とにかくどう呼吸をしたらよいのか分からない、息が詰まるような重い空気だった。
〔荷物重そうですね、持ちましょうか?〕
『・・・えっ?』
〔荷物ですよ、手が痛そうだ。〕
『あ、いえ・・・もうすぐなので、大丈夫です。」
どうやら今このエレベーター内の空気を重いと感じているのは綾乃の方だけらしい。前と同じようにどこか軽い印象の話し方、その口調から三浦はそんな事何も気にしていないようだ。
〔今日も旦那さんのために手料理ですか? いいですねぇ、ホントに旦那さんが羨ましい。〕
『・・・。』
〔家に帰れば綺麗な奥さんと美味しい料理が待っている。これこそ働く男にとっては最高の環境でしょうね。〕
『そ、そうだといいんですけどね・・・。』
一方的で何の盛り上がりもない会話です。さすがにその事に三浦が何も感じていない訳がなかった。 第5章その6 32へ続く
2016/11/14
〔このマンションいい部屋だし、もったいないでしょ?恭子は平日、殆ど寝に帰ってきているようなものだから。〕
恐らく篠原恭子(しのはら・きょうこ:30歳)は三浦智(みうら・さとし:33歳)の事を信頼して合鍵を渡しているのだろう。しかし、そんな恭子を三浦は最低の形で裏切っている事を藤澤綾乃(ふじさわ・あやの:30歳)は知っている。
『そ、そうですね・・・恭子さん忙しいですものね。』
2人がそんな会話をしていると、エレベーターが下りてきてドアが開く。当然2人はそれに乗って上の階へと行くのだが、綾乃はそれを一瞬躊躇(ちゅうちょ)した。こんな狭い密室で三浦と2人きりになる事に対し抵抗を感じる。三浦に対する女としての本能的な警戒心がそうさせていると言ってもよいかもしれない。
先に乗り込んだ三浦は、エレベーターに乗ってこないで立ち止まっている綾乃を不思議そうな顔で見た。
〔・・・ん?どうしたんです? 乗らないんですか?〕
『ぇ・・・あ、いえ・・・。』
綾乃はそう言って若干重い足どりでエレベーター内へと乗り込んだ。エレベーターの前で待っておきながら乗らないなんて、さすがにそんな不自然な事はできない。
そしてゆっくりとドアが閉まり、狭い密室に三浦と2人きりになる。綾乃はなるべく三浦を変に意識しないようにと斜め下を向き、床の一点を見つめた。しかしなぜだろう、鼓動がどんどん速くなっていくような気がする。《これは緊張? それとも恐怖?》とにかくどう呼吸をしたらよいのか分からない、息が詰まるような重い空気だった。
〔荷物重そうですね、持ちましょうか?〕
『・・・えっ?』
〔荷物ですよ、手が痛そうだ。〕
『あ、いえ・・・もうすぐなので、大丈夫です。」
どうやら今このエレベーター内の空気を重いと感じているのは綾乃の方だけらしい。前と同じようにどこか軽い印象の話し方、その口調から三浦はそんな事何も気にしていないようだ。
〔今日も旦那さんのために手料理ですか? いいですねぇ、ホントに旦那さんが羨ましい。〕
『・・・。』
〔家に帰れば綺麗な奥さんと美味しい料理が待っている。これこそ働く男にとっては最高の環境でしょうね。〕
『そ、そうだといいんですけどね・・・。』
一方的で何の盛り上がりもない会話です。さすがにその事に三浦が何も感じていない訳がなかった。 第5章その6 32へ続く
2016/11/14
長U〖綾乃の想い〗第5章その6 32
長U〖綾乃の想い〗第5章その6 32
〔奥さん、今日は元気無いですね? どうかしました?〕
『・・・え?』
〔さっきから、俺の方を向いてくれないし、凄く他人行儀だ。この前はあんなに仲良くなれたのに。〕
『え? い、いえそんな事・・・。』
そんな事を言われては三浦智(みうら・さとし:33歳)の顔を見ない訳にはいかない。そう思って藤澤綾乃(ふじさわ・あやの:30歳)は仕方なく顔を上げて三浦の方を向いた。するとそこには相変わらずニヤニヤと笑みを浮かべる三浦がいる。その表情は決して爽やかな笑顔とは言えず、どこか不気味という感じがした。もちろんそう感じてしまうのは、綾乃が三浦の本性を知っているからだろう。
〔俺、何か奥さんが不快に思うような失礼な事しました?〕
《・・・した、したわよ・・・》
『い、いえ別にそんな事は、ちょっと考え事があって・・・。』
〔そうですか・・・よかったぁ、奥さんに嫌われてしまったかと思いましたよ。〕
綾乃は本心とは違う事を口走った。
《まさか恭子との行為や、浮気相手との行為を盗み聞きしていたとは口が裂けても言えないわ。》
〔何か悩み事でもあるんですか? 俺でよかったらいつでも相談に乗りますよ。〕
『大した事じゃありませんから、大丈夫です。ありがとうございます。』
綾乃がそう言った所で、エレベーターが階に到着し扉が開いた。綾乃達の部屋と恭子の部屋は隣であるから、2人共同じ階で降りる。
エレベーターを降りれば部屋のドアはすぐそこ。《もう早く部屋に入りたかった。これ以上、三浦と共に話したりするのは不快だ。》綾乃はそんな事を思いながら、三浦の存在を置き去るようにして少し早歩きで部屋へと向かった。しかしそんな綾乃を三浦は声を掛けて止める。
〔奥さんっ! 今日も旦那(藤澤良一:ふじさわ・りょういち:37歳)さんは遅いんですか?〕
『えっ?』
〔旦那さん、仕事今日も忙しいんですか?〕
『ぇ・・・えぇ、たぶん・・・。』
《・・・どうして・・・そんな事聞いてくるのかしら?》
〔恭子も今日は遅いらしいんですよ。〕
『・・・そうですか・・・。』
〔お互い、寂しいですね?〕
『ぇ・・・?』
《三浦は何を言いたいのだろうか?》
綾乃には三浦の言葉が何を意味しているのか、まったく理解できなかった。
『・・・。』
〔・・・フッ・・・じゃあまた。〕
言葉を失っていた綾乃の顔をじっと見つめた後、三浦はそう言って恭子の部屋のドアを開けて入っていった。 第6章その1 33 へ続く
2016/12/10
〔奥さん、今日は元気無いですね? どうかしました?〕
『・・・え?』
〔さっきから、俺の方を向いてくれないし、凄く他人行儀だ。この前はあんなに仲良くなれたのに。〕
『え? い、いえそんな事・・・。』
そんな事を言われては三浦智(みうら・さとし:33歳)の顔を見ない訳にはいかない。そう思って藤澤綾乃(ふじさわ・あやの:30歳)は仕方なく顔を上げて三浦の方を向いた。するとそこには相変わらずニヤニヤと笑みを浮かべる三浦がいる。その表情は決して爽やかな笑顔とは言えず、どこか不気味という感じがした。もちろんそう感じてしまうのは、綾乃が三浦の本性を知っているからだろう。
〔俺、何か奥さんが不快に思うような失礼な事しました?〕
《・・・した、したわよ・・・》
『い、いえ別にそんな事は、ちょっと考え事があって・・・。』
〔そうですか・・・よかったぁ、奥さんに嫌われてしまったかと思いましたよ。〕
綾乃は本心とは違う事を口走った。
《まさか恭子との行為や、浮気相手との行為を盗み聞きしていたとは口が裂けても言えないわ。》
〔何か悩み事でもあるんですか? 俺でよかったらいつでも相談に乗りますよ。〕
『大した事じゃありませんから、大丈夫です。ありがとうございます。』
綾乃がそう言った所で、エレベーターが階に到着し扉が開いた。綾乃達の部屋と恭子の部屋は隣であるから、2人共同じ階で降りる。
エレベーターを降りれば部屋のドアはすぐそこ。《もう早く部屋に入りたかった。これ以上、三浦と共に話したりするのは不快だ。》綾乃はそんな事を思いながら、三浦の存在を置き去るようにして少し早歩きで部屋へと向かった。しかしそんな綾乃を三浦は声を掛けて止める。
〔奥さんっ! 今日も旦那(藤澤良一:ふじさわ・りょういち:37歳)さんは遅いんですか?〕
『えっ?』
〔旦那さん、仕事今日も忙しいんですか?〕
『ぇ・・・えぇ、たぶん・・・。』
《・・・どうして・・・そんな事聞いてくるのかしら?》
〔恭子も今日は遅いらしいんですよ。〕
『・・・そうですか・・・。』
〔お互い、寂しいですね?〕
『ぇ・・・?』
《三浦は何を言いたいのだろうか?》
綾乃には三浦の言葉が何を意味しているのか、まったく理解できなかった。
『・・・。』
〔・・・フッ・・・じゃあまた。〕
言葉を失っていた綾乃の顔をじっと見つめた後、三浦はそう言って恭子の部屋のドアを開けて入っていった。 第6章その1 33 へ続く
2016/12/10
長U〖綾乃の想い〗第6章その1 33
長U〖綾乃の想い〗第6章その1 33
「・・・綾乃? お~い綾乃!」
『・・・えっ!?』
「え?じゃないだろ。さっきからどうしたんだよ、ボーっとしちゃってよ。」
『べ、別に、何でもないけど・・・。』
夜遅くに帰ってきた夫(藤澤良一:ふじさわ・りょういち:37歳)の遅い晩御飯になる。こういう時は先に食べた妻の藤澤綾乃(ふじさわ・あやの:30歳)もテーブルに付いて、良一と会話をしながら食事に付き合う。
しかし、いつもなら楽しく色々な話を綾乃からしてくるのだが、今日の綾乃は何やら様子が違っていって、どことなく上の空といった感じだ。
「何か悩み事でもあるのか?」
『ううん、そんなの無いけど・・・。』
本当は三浦の事について良一に相談したかった。『篠原恭子(しのはら・きょうこ:30歳)の彼氏である三浦智(みうら・さとし:33歳)が怖い。』って、でも綾乃にはなぜかそれを良一に話す事ができない。きっと言っても気のせいだとか言われるかもしれないし、良
一に話した事で何かトラブルになって恭子との友人関係が崩れてしまうかもしれない。だから、綾乃はまだ言えなかった。もう少し様子を見てみようと・・・。
「さて・・・風呂入って寝るかぁ、明日も忙しくてね。」
『あなた明日も遅いの?』
「あぁたぶんな。この忙しさはしばらく続きそうだよ。」
『そっかぁ・・・。』
今は良一に余計な気を使わせたくない。こんなに仕事を頑張ってくているのだから。
次の日、いつも通り仕事へ行く夫の良一を見送った綾乃は、洗濯や掃除などの家事を始める。しかし家事といっても今はまだ良一と2人暮らしなので、それほど量が多い訳ではない。もちろん忙しい日もあるのだが、今日に限っては昼前にやるべき事はやり終えてしまった。
主婦のやるべき仕事を終え、紅茶を飲みながら一息ついた綾乃は、パソコンへと向かう。
実は綾乃はネット上に個人ブログを開設していて、そこで毎日自分が作った手料理の写真と日記を掲載している。なんとなく自分が作った料理を誰かに見てほしいなぁと思い気軽に始めたブログだったのだが、今では1日のアクセス数が百単位であり、結構な人気になってしまった。そのためある種のやり甲斐も感じ始めていた綾乃は、いつの間にかブログを更新する事が日課になっている。
『さてと・・・。』
綾乃はいつも通りパソコンを立ち上げ、ブログの記事を書き始める。と、その時だった。
〔・・・だろ・・・・・・いいじゃないか・・・。〕
[・・・え~・・・でもさぁ・・・。]
微かに聞こえる男女の話声。
『・・・えっ?・・・これって・・・!』
思わず驚いたようにそう呟いた。またも綾乃の耳に届いてしまった隣の部屋からの声である。男の声は明らかにあの三浦のものだった。
《・・・今日も・・・なの・・・?》 第6章その2 34に続く
2017/01/04
「・・・綾乃? お~い綾乃!」
『・・・えっ!?』
「え?じゃないだろ。さっきからどうしたんだよ、ボーっとしちゃってよ。」
『べ、別に、何でもないけど・・・。』
夜遅くに帰ってきた夫(藤澤良一:ふじさわ・りょういち:37歳)の遅い晩御飯になる。こういう時は先に食べた妻の藤澤綾乃(ふじさわ・あやの:30歳)もテーブルに付いて、良一と会話をしながら食事に付き合う。
しかし、いつもなら楽しく色々な話を綾乃からしてくるのだが、今日の綾乃は何やら様子が違っていって、どことなく上の空といった感じだ。
「何か悩み事でもあるのか?」
『ううん、そんなの無いけど・・・。』
本当は三浦の事について良一に相談したかった。『篠原恭子(しのはら・きょうこ:30歳)の彼氏である三浦智(みうら・さとし:33歳)が怖い。』って、でも綾乃にはなぜかそれを良一に話す事ができない。きっと言っても気のせいだとか言われるかもしれないし、良
一に話した事で何かトラブルになって恭子との友人関係が崩れてしまうかもしれない。だから、綾乃はまだ言えなかった。もう少し様子を見てみようと・・・。
「さて・・・風呂入って寝るかぁ、明日も忙しくてね。」
『あなた明日も遅いの?』
「あぁたぶんな。この忙しさはしばらく続きそうだよ。」
『そっかぁ・・・。』
今は良一に余計な気を使わせたくない。こんなに仕事を頑張ってくているのだから。
次の日、いつも通り仕事へ行く夫の良一を見送った綾乃は、洗濯や掃除などの家事を始める。しかし家事といっても今はまだ良一と2人暮らしなので、それほど量が多い訳ではない。もちろん忙しい日もあるのだが、今日に限っては昼前にやるべき事はやり終えてしまった。
主婦のやるべき仕事を終え、紅茶を飲みながら一息ついた綾乃は、パソコンへと向かう。
実は綾乃はネット上に個人ブログを開設していて、そこで毎日自分が作った手料理の写真と日記を掲載している。なんとなく自分が作った料理を誰かに見てほしいなぁと思い気軽に始めたブログだったのだが、今では1日のアクセス数が百単位であり、結構な人気になってしまった。そのためある種のやり甲斐も感じ始めていた綾乃は、いつの間にかブログを更新する事が日課になっている。
『さてと・・・。』
綾乃はいつも通りパソコンを立ち上げ、ブログの記事を書き始める。と、その時だった。
〔・・・だろ・・・・・・いいじゃないか・・・。〕
[・・・え~・・・でもさぁ・・・。]
微かに聞こえる男女の話声。
『・・・えっ?・・・これって・・・!』
思わず驚いたようにそう呟いた。またも綾乃の耳に届いてしまった隣の部屋からの声である。男の声は明らかにあの三浦のものだった。
《・・・今日も・・・なの・・・?》 第6章その2 34に続く
2017/01/04
長U〖綾乃の想い〗第6章その2 34
長U〖綾乃の想い〗第6章その2 34
第6章その1 33
どうやら今日も三浦智(みうら・さとし:33歳)は隣の篠原恭子(しのはら・きょうこ:30歳)の部屋に居座っているようだ。
《でも・・・もう1人・・・この声って・・・?》
藤澤綾乃(ふじさわ・あやの:30歳)は女性の方の声を聞いてさらに驚く。今日の女性の声は、昨日の女性の声とは全く違ったのだ。
《・・・どういう事なの・・・?》
しかし、その答えは当然少し考えれば分かる。三浦は恭子でもない、昨日の女性でもない、3人目の女性を隣の部屋に今連れ込んでいるのだ。
《・・・何なのあの人は・・・?》
昨日は恭子という恋人をもちながら浮気をしている三浦に腹が立ったが、まさかまだ別に違う浮気相手がいたとは・・・もはや綾乃の常識では考えられない事である。三浦という男の感覚が全く理解できない。
[ァ・・・ン・・・ァ・・・アン・・・。]
程なくして隣から女性の喘ぎ声が聞こえてきた。
『・・・やだ・・・。』
恭子の喘ぎ声を聞いてから同じような事がこれで3度目である。まるでデジャヴを体験しているかのようだった。そしてその声を聞いた綾乃は、昨日と同じように胸の鼓動が速く、そして身体熱くなっていくを感じる。
『・・・はァ・・・。』
綾乃はまたも思わずその声に聞き入ってしまう。しかし、少ししてから直ぐに我に返った。
《・・・だめっ! もう聞きいちゃいけないんだから!・・・》
ハッとして目を覚ましたように椅子から立ち上がると、綾乃は換気のため開けていた窓を閉めに向かう。
開いている窓に近づくと、やはり女性の喘ぎ声はよりハッキリと聞こえてくる。女性のリアルな喘ぎ声を聞いてたり、隣で行われている事を想像すると身体が熱くなった。しかし三浦という男の事を考えると嫌悪感が沸いてくる。そんな2つの気持ちが入り交ざった複雑な感情を抱きながら、綾乃はゆっくりと窓を閉めた。
それでもやはり耳をすますと微かに喘ぎ声が聞こえてくる。綾乃はその微かな声も聞こえないようにと、部屋に音楽をかけた。これで声は聞こえない。しかし、それでも動揺による胸の高鳴りはしばらく治まらない。そんな自分自身の動揺を紛らわすかのように綾乃は再びパソコンに向かい、ブログの記事を書き始めるのであった。 第6章その3 35に
続く 2017/01/17
第6章その1 33
どうやら今日も三浦智(みうら・さとし:33歳)は隣の篠原恭子(しのはら・きょうこ:30歳)の部屋に居座っているようだ。
《でも・・・もう1人・・・この声って・・・?》
藤澤綾乃(ふじさわ・あやの:30歳)は女性の方の声を聞いてさらに驚く。今日の女性の声は、昨日の女性の声とは全く違ったのだ。
《・・・どういう事なの・・・?》
しかし、その答えは当然少し考えれば分かる。三浦は恭子でもない、昨日の女性でもない、3人目の女性を隣の部屋に今連れ込んでいるのだ。
《・・・何なのあの人は・・・?》
昨日は恭子という恋人をもちながら浮気をしている三浦に腹が立ったが、まさかまだ別に違う浮気相手がいたとは・・・もはや綾乃の常識では考えられない事である。三浦という男の感覚が全く理解できない。
[ァ・・・ン・・・ァ・・・アン・・・。]
程なくして隣から女性の喘ぎ声が聞こえてきた。
『・・・やだ・・・。』
恭子の喘ぎ声を聞いてから同じような事がこれで3度目である。まるでデジャヴを体験しているかのようだった。そしてその声を聞いた綾乃は、昨日と同じように胸の鼓動が速く、そして身体熱くなっていくを感じる。
『・・・はァ・・・。』
綾乃はまたも思わずその声に聞き入ってしまう。しかし、少ししてから直ぐに我に返った。
《・・・だめっ! もう聞きいちゃいけないんだから!・・・》
ハッとして目を覚ましたように椅子から立ち上がると、綾乃は換気のため開けていた窓を閉めに向かう。
開いている窓に近づくと、やはり女性の喘ぎ声はよりハッキリと聞こえてくる。女性のリアルな喘ぎ声を聞いてたり、隣で行われている事を想像すると身体が熱くなった。しかし三浦という男の事を考えると嫌悪感が沸いてくる。そんな2つの気持ちが入り交ざった複雑な感情を抱きながら、綾乃はゆっくりと窓を閉めた。
それでもやはり耳をすますと微かに喘ぎ声が聞こえてくる。綾乃はその微かな声も聞こえないようにと、部屋に音楽をかけた。これで声は聞こえない。しかし、それでも動揺による胸の高鳴りはしばらく治まらない。そんな自分自身の動揺を紛らわすかのように綾乃は再びパソコンに向かい、ブログの記事を書き始めるのであった。 第6章その3 35に
続く 2017/01/17
長U〖綾乃の想い〗第6章その3 35
長U〖綾乃の想い〗第6章その3 35
第6章その2 34
『・・・はぁ・・・。』もう何度目のため息だろうか。どこか落ち着かない様子で藤澤綾乃(ふじさわ・あやの:30歳)は午後の時間を過ごしていた。くだらないテレビのワイドショーやドラマには興味はないし、外に出掛ける用事もない。久しぶりに裁縫などをやろうかと思ったが、なんとなく気分が乗らない。普段ならこういった時間も有効に使える綾乃なのだが、今日はなんだか何もする気になれなかったのだ。
それはあの事がずっと頭から離れずに気が散ってしまっていたからかもしれない。隣の部屋で今現在行われているであろう男女のSEXの事が・・・。隣の声を聞かないようにとかけた音楽も、聴きたくもないのに掛けているから段々と苦痛になってきて消してしまった。
しかし音楽を消すと、微かに聞えてくる女性の喘ぎ声が耳に届いてしまう。それを意識しなければいい程度の声音なのに、気付いた時にはまた耳をすましてしまっている。
[ン・・・ァ・・・ァ・・・。]
『もう・・・イヤ・・・。』
嫌なのはいつまでも聞こえる女性の喘ぎ声と、それをついつい聞き入ってしまう自分自身。パソコンで料理やインテリア、洋服などに関するサイトを流すように見て気を紛らわすも、やはり綾乃の意識は常に隣の部屋にあった。1人静かな部屋で故意ではないにしろ、結局盗み聞きを続けてしまう。
やっと隣からの声が聞こえなくなった頃には数時間も経っていた。そのあいだ、何もしていなかったはずなのに疲れを感じる。
『・・・はぁ・・・やだ、もうこんな時間・・・。』
綾乃はその時間の経ち方に驚いた。集中してしまっていたからあっという間に時間が経ったという事もあるが、綾乃が驚いたのはその事ではなく、三浦智(みうら・さとし:33歳)達の行為の長さである。
少なくとも、綾乃はそんなに長い時間夫(藤澤良一:ふじさわ・りょういち:37歳)と行為(セックス)を続けた事はない。長くてもせいぜい30分くらいだ。《・・・いったいどんな事をしているのかしら?・・・こんなにも長い間・・・》綾乃は、好奇心にも似た疑問を感じながらも、声が聞こえなくなって冷静になると《そんな事を考えてちゃダメ!》と再び自分に言い聞かせる。
今日もまた同じ過ちを犯してしまったという罪悪感を覚えつつ、綾乃は夫のための晩御飯を作り始めるのであった。しかし、そんな好奇心と嫌悪感、そして罪悪感に綾乃が苦しめられるのはその日だけではなかっのである。 第6章その4 36 へ続く
2017/03/21
第6章その2 34
『・・・はぁ・・・。』もう何度目のため息だろうか。どこか落ち着かない様子で藤澤綾乃(ふじさわ・あやの:30歳)は午後の時間を過ごしていた。くだらないテレビのワイドショーやドラマには興味はないし、外に出掛ける用事もない。久しぶりに裁縫などをやろうかと思ったが、なんとなく気分が乗らない。普段ならこういった時間も有効に使える綾乃なのだが、今日はなんだか何もする気になれなかったのだ。
それはあの事がずっと頭から離れずに気が散ってしまっていたからかもしれない。隣の部屋で今現在行われているであろう男女のSEXの事が・・・。隣の声を聞かないようにとかけた音楽も、聴きたくもないのに掛けているから段々と苦痛になってきて消してしまった。
しかし音楽を消すと、微かに聞えてくる女性の喘ぎ声が耳に届いてしまう。それを意識しなければいい程度の声音なのに、気付いた時にはまた耳をすましてしまっている。
[ン・・・ァ・・・ァ・・・。]
『もう・・・イヤ・・・。』
嫌なのはいつまでも聞こえる女性の喘ぎ声と、それをついつい聞き入ってしまう自分自身。パソコンで料理やインテリア、洋服などに関するサイトを流すように見て気を紛らわすも、やはり綾乃の意識は常に隣の部屋にあった。1人静かな部屋で故意ではないにしろ、結局盗み聞きを続けてしまう。
やっと隣からの声が聞こえなくなった頃には数時間も経っていた。そのあいだ、何もしていなかったはずなのに疲れを感じる。
『・・・はぁ・・・やだ、もうこんな時間・・・。』
綾乃はその時間の経ち方に驚いた。集中してしまっていたからあっという間に時間が経ったという事もあるが、綾乃が驚いたのはその事ではなく、三浦智(みうら・さとし:33歳)達の行為の長さである。
少なくとも、綾乃はそんなに長い時間夫(藤澤良一:ふじさわ・りょういち:37歳)と行為(セックス)を続けた事はない。長くてもせいぜい30分くらいだ。《・・・いったいどんな事をしているのかしら?・・・こんなにも長い間・・・》綾乃は、好奇心にも似た疑問を感じながらも、声が聞こえなくなって冷静になると《そんな事を考えてちゃダメ!》と再び自分に言い聞かせる。
今日もまた同じ過ちを犯してしまったという罪悪感を覚えつつ、綾乃は夫のための晩御飯を作り始めるのであった。しかし、そんな好奇心と嫌悪感、そして罪悪感に綾乃が苦しめられるのはその日だけではなかっのである。 第6章その4 36 へ続く
2017/03/21
長U〖綾乃の想い〗第6章その4 36
長U〖綾乃の想い〗第6章その4 36
第6章その3 35
[ァ・・・ン・・・アアア・・・智(さとし)ぃ・・・ダメ・・・スゴイ・・・。]
《・・・うそ・・・今日もなの・・・?》
翌日、また同じ時間帯に聞え始めた女性の喘ぎ声。しかもまた違う女性のようだ。
『なんなのよぉ・・・もぅ・・・。』
しかしそんな事を言いながらも、藤澤綾乃(ふじさわ・あやの:30歳)は結局この日も昨日と同じように隣の盗み聞きを続けてしまう。次の日も、そしてその次の日も・・・。
綾乃は隣から聞えてくる声への嫌悪感とそれを聞いてしまう自分自身への憤りを感じる毎日。ノイローゼになりそうだった。聞くたびに身体が熱くなって、胸がドキドキと高鳴る。自分は盗み聞きをしながら性的興奮を覚えている、それを綾乃は認めざるを得なかった。つまり当然綾乃もムラムラとしたものを感じていたという訳である。
しかし、綾乃はそれを自ら慰める事で解消するというのは、どうしてもしたくはなかった。自分を慰める・・・つまり三浦智(みうら・さとし:33歳)とどこかの知らない女性がしているSEXの音、それを聞きながらオナニーをする事に、綾乃は抵抗を感じている。それは、もしこの前のように三浦の事を考えて自慰行為をしてしまえば、夫(藤澤良一:ふじさわ・りょういち:37歳)を再び裏切る事になると思ったからだ。
一般的にこの程度の事では“浮気”にはならないかもしれない。でも、心の中だけでもそんな浮ついた事はしたくはない。《良一を裏切りたくない。》その1人の女性としての信念から、綾乃はそれを我慢し続ける。しかし、フラストレーションというのは溜まってしまうものだ。いくら真面目な綾乃でもそれを永遠に我慢し続ける事はできない。そう、できないのだ。
『・・・はァ・・・もうイヤ・・・こんな毎日・・・。』
溜まれば溜まる程、それを一気に解放する時の衝撃は大きくなる。そして我慢した分だけ、その引き金は重くなった。しかし綾乃はまだ気付いていない。このままいけばその引き金が、自分だけでは引けなくなる程重くなってしまう事を。そうなってしまえば、綾乃の中に溜まったものは、もう誰かの手を借りなければどうしようもなくなってしまうのだ。
「やっぱり、何か悩みでもあるのか?」
『・・・え?』
夫の良一がそう心配そうな顔で言ってきたのはある日の夜の事です。その日も良一は夜遅くに帰ってきて、遅い食事をとっていた。
「さっきからため息ついたり、ボーっとしていたり。最近そういうのが多いぞ?」
『え・・・? そ、そうかな・・・別に悩みとか無いし、大丈夫だよ。』
そう良一に応えた綾乃だったが、もちろんそれは本心ではなかった。 第6章その5 37に続く
2017/05/07
第6章その3 35
[ァ・・・ン・・・アアア・・・智(さとし)ぃ・・・ダメ・・・スゴイ・・・。]
《・・・うそ・・・今日もなの・・・?》
翌日、また同じ時間帯に聞え始めた女性の喘ぎ声。しかもまた違う女性のようだ。
『なんなのよぉ・・・もぅ・・・。』
しかしそんな事を言いながらも、藤澤綾乃(ふじさわ・あやの:30歳)は結局この日も昨日と同じように隣の盗み聞きを続けてしまう。次の日も、そしてその次の日も・・・。
綾乃は隣から聞えてくる声への嫌悪感とそれを聞いてしまう自分自身への憤りを感じる毎日。ノイローゼになりそうだった。聞くたびに身体が熱くなって、胸がドキドキと高鳴る。自分は盗み聞きをしながら性的興奮を覚えている、それを綾乃は認めざるを得なかった。つまり当然綾乃もムラムラとしたものを感じていたという訳である。
しかし、綾乃はそれを自ら慰める事で解消するというのは、どうしてもしたくはなかった。自分を慰める・・・つまり三浦智(みうら・さとし:33歳)とどこかの知らない女性がしているSEXの音、それを聞きながらオナニーをする事に、綾乃は抵抗を感じている。それは、もしこの前のように三浦の事を考えて自慰行為をしてしまえば、夫(藤澤良一:ふじさわ・りょういち:37歳)を再び裏切る事になると思ったからだ。
一般的にこの程度の事では“浮気”にはならないかもしれない。でも、心の中だけでもそんな浮ついた事はしたくはない。《良一を裏切りたくない。》その1人の女性としての信念から、綾乃はそれを我慢し続ける。しかし、フラストレーションというのは溜まってしまうものだ。いくら真面目な綾乃でもそれを永遠に我慢し続ける事はできない。そう、できないのだ。
『・・・はァ・・・もうイヤ・・・こんな毎日・・・。』
溜まれば溜まる程、それを一気に解放する時の衝撃は大きくなる。そして我慢した分だけ、その引き金は重くなった。しかし綾乃はまだ気付いていない。このままいけばその引き金が、自分だけでは引けなくなる程重くなってしまう事を。そうなってしまえば、綾乃の中に溜まったものは、もう誰かの手を借りなければどうしようもなくなってしまうのだ。
「やっぱり、何か悩みでもあるのか?」
『・・・え?』
夫の良一がそう心配そうな顔で言ってきたのはある日の夜の事です。その日も良一は夜遅くに帰ってきて、遅い食事をとっていた。
「さっきからため息ついたり、ボーっとしていたり。最近そういうのが多いぞ?」
『え・・・? そ、そうかな・・・別に悩みとか無いし、大丈夫だよ。』
そう良一に応えた綾乃だったが、もちろんそれは本心ではなかった。 第6章その5 37に続く
2017/05/07
長U〖綾乃の想い〗第6章その5 37
長U〖綾乃の想い〗第6章その5 37
第6章その4 36
藤澤綾乃(ふじさわ・あやの:30歳)は、あれから数日間、昼間は毎日隣からの音や声に悩まされ続けている。自分の身体に溜まっていくフラストレーション、やり場のないモヤモヤとした気持ち。日々変わる女性の喘ぎ声に、三浦智(みうら・さとし:33歳)はいったい何人の女性と関係を持っているのだろうと呆れていた綾乃だったが、だからと言ってそれを聞くのを止める事はできなかった。
なぜ止める事ができないのかは、自分でもよく分かりません。最初は罪悪感を覚えていたものの、段々と日常的になってきてしまった盗み聞きという行為。小さな罪を繰り返す内に自然とその罪悪感は少しずつ薄れていった。それどころか最近の綾乃は、むしろその声や音を積極的に聞こうとするような行動を取り始めている。
そして綾乃の行動は徐々にエスカレートしていった。今日は篠原恭子(しのはら・きょうこ:30歳)の部屋側の壁に凭れ(もたれ)ながら窓際に座り、窓を少し開けて盗み聞き始めてしまう。やはり今回も三浦達は窓を開けながら行為に及んでいたようで、窓を開けた事によってその声や音は格段に聞き取りやすくなった。
“ヌチャヌチャ”という粘着質でリアルな音。サディスティックに女性を責め立てる三浦の声。そしてあられもない喘ぎ声を発する女性。
〔ここか? お前ここが好きなんだろ?〕
〚ァァハァ! ハイ・・・ああ・・・スゴイィ! ァ・・・アッアッアッ!!〛
三浦のSEXは相変わらず激しいものだった。“パンパンッ!”と、肉と肉がぶつかりあう音。ベッドが壊れるのではないかというくらいに軋む音。
その激しい音にこちらまで震動が伝わってくるような錯覚さえ覚える。そして、今日の女性も三浦のその激しい責めによって絶頂へと導かれるのだった。〚ァアッアッアッンッンッ!! はあああッ! イクッ! イクイクイク!! ンあああ!!〛その声を盗み聞きながら、綾乃も身体を熱くする。
壁一枚挟んで、きっと数メートルも離れていないであろう場所で行われている未知のSEXに、綾乃は引き込まれていき、そして興奮を感じていた。今となっては盗み聞きという行為に対する少しの罪悪感も、もはやその興奮をより増大させるスパイスになるだけだった。
いけない事をしている。こっそりといけない事をしている。その意識自体が、綾乃の盗み聞きのという行為の依存性を高める原因になっていたのだ。いつもの事だが、隣の行為が終わった頃には夕方近くになっている。あっという間だ。いつも集中してしまっているからか、綾乃にはその時間が凄く短く感じられた。 第6章その6 38に続く
2017/05/30
第6章その4 36
藤澤綾乃(ふじさわ・あやの:30歳)は、あれから数日間、昼間は毎日隣からの音や声に悩まされ続けている。自分の身体に溜まっていくフラストレーション、やり場のないモヤモヤとした気持ち。日々変わる女性の喘ぎ声に、三浦智(みうら・さとし:33歳)はいったい何人の女性と関係を持っているのだろうと呆れていた綾乃だったが、だからと言ってそれを聞くのを止める事はできなかった。
なぜ止める事ができないのかは、自分でもよく分かりません。最初は罪悪感を覚えていたものの、段々と日常的になってきてしまった盗み聞きという行為。小さな罪を繰り返す内に自然とその罪悪感は少しずつ薄れていった。それどころか最近の綾乃は、むしろその声や音を積極的に聞こうとするような行動を取り始めている。
そして綾乃の行動は徐々にエスカレートしていった。今日は篠原恭子(しのはら・きょうこ:30歳)の部屋側の壁に凭れ(もたれ)ながら窓際に座り、窓を少し開けて盗み聞き始めてしまう。やはり今回も三浦達は窓を開けながら行為に及んでいたようで、窓を開けた事によってその声や音は格段に聞き取りやすくなった。
“ヌチャヌチャ”という粘着質でリアルな音。サディスティックに女性を責め立てる三浦の声。そしてあられもない喘ぎ声を発する女性。
〔ここか? お前ここが好きなんだろ?〕
〚ァァハァ! ハイ・・・ああ・・・スゴイィ! ァ・・・アッアッアッ!!〛
三浦のSEXは相変わらず激しいものだった。“パンパンッ!”と、肉と肉がぶつかりあう音。ベッドが壊れるのではないかというくらいに軋む音。
その激しい音にこちらまで震動が伝わってくるような錯覚さえ覚える。そして、今日の女性も三浦のその激しい責めによって絶頂へと導かれるのだった。〚ァアッアッアッンッンッ!! はあああッ! イクッ! イクイクイク!! ンあああ!!〛その声を盗み聞きながら、綾乃も身体を熱くする。
壁一枚挟んで、きっと数メートルも離れていないであろう場所で行われている未知のSEXに、綾乃は引き込まれていき、そして興奮を感じていた。今となっては盗み聞きという行為に対する少しの罪悪感も、もはやその興奮をより増大させるスパイスになるだけだった。
いけない事をしている。こっそりといけない事をしている。その意識自体が、綾乃の盗み聞きのという行為の依存性を高める原因になっていたのだ。いつもの事だが、隣の行為が終わった頃には夕方近くになっている。あっという間だ。いつも集中してしまっているからか、綾乃にはその時間が凄く短く感じられた。 第6章その6 38に続く
2017/05/30
長U〖綾乃の想い〗第6章その6 38
長U〖綾乃の想い〗第6章その6 38
第6章その5 37
『・・・ハァ・・・・・・。』
終わった後洗面所へ行き鏡で顔をみると、そこには頬をピンク色に染めて目を潤ませている自分がいた。
《・・・これが・・・私・・・? イヤらしい顔をしている。》
藤澤綾乃(ふじさわ・あやの:30歳)は自分でそう思う。
鏡に映っているのは、普段の自分とは明らかに違う、発情した女だった。・・・夫(藤澤良一:ふじさわ・りょういち:37歳)とする時、私こんな顔しているのかな?・・・してない気がする・・・だって・・・今まで良一とする時にこれ程までに興奮した事はない。
そんな事を考えながら、綾乃は服の上から自分の下腹部をそっと触った。
『・・・』
今までになかった程、下腹部が疼(うず)いている。その疼きは日に日に増している気がするし、今日は身体が熱くなったままなかなか治まってくれなかった。
『・・・はァ・・・。』
綾乃は我慢をしている。隣室で三浦智(みうら・さとし:33歳)が繰り広げている淫らな世界に引き込まれながらも、それでも綾乃はあの壁を越えるような事はしなかった。その壁とは、自慰行為の事である。今綾乃がそれをするとしたら、三浦の事を想像しながらする事になってしまう。そう、良一を裏切る事に・・・ここまできても綾乃自身がそれを許させなかったのは、やはり良一に対する愛があったからだ。
しかし、なんとか気丈にその一線を越えないようにしてきた綾乃の我慢も、そろそろ限界を迎えようとしていたのである。それはある意味当たり前だ。日々解消されず溜まっていくものは、いつか決壊を迎える。そう、真面目な綾乃も、1人の人間であり、性欲も持つ女性なのだから。
その日の夕方、なかなか冷めてくれない火照った身体をなんとか治めようと、綾乃はシャワーを浴びる事にした。《・・・早く正気に戻らないと・・・晩御飯の準備もしないといけないし・・・》服を一枚一枚脱ぎ、最後の下半身に付けたショーツだけの姿になった綾乃は、その最後の一枚にも手を掛け、ゆっくりとそれを下げていく。しかしその途中で綾乃は思わずショーツを下げる手を止めた。
『・・・ハァ・・・やだ・・・こんなに・・・。』
一番大事な部分に触れていたショツの布が離れる時、アソコと布の間に綾乃の愛液がトロ~っと糸を引いたである。綾乃は性的快感を欲して涎を垂らしている自分の性器を見た瞬間、頭の中で何かが切れるのを感じた。
『ハァ・・・ハァ・・・。』
綾乃の我慢はその時、決壊を迎える。 第7章その1 39に続く
2017/06/06
第6章その5 37
『・・・ハァ・・・・・・。』
終わった後洗面所へ行き鏡で顔をみると、そこには頬をピンク色に染めて目を潤ませている自分がいた。
《・・・これが・・・私・・・? イヤらしい顔をしている。》
藤澤綾乃(ふじさわ・あやの:30歳)は自分でそう思う。
鏡に映っているのは、普段の自分とは明らかに違う、発情した女だった。・・・夫(藤澤良一:ふじさわ・りょういち:37歳)とする時、私こんな顔しているのかな?・・・してない気がする・・・だって・・・今まで良一とする時にこれ程までに興奮した事はない。
そんな事を考えながら、綾乃は服の上から自分の下腹部をそっと触った。
『・・・』
今までになかった程、下腹部が疼(うず)いている。その疼きは日に日に増している気がするし、今日は身体が熱くなったままなかなか治まってくれなかった。
『・・・はァ・・・。』
綾乃は我慢をしている。隣室で三浦智(みうら・さとし:33歳)が繰り広げている淫らな世界に引き込まれながらも、それでも綾乃はあの壁を越えるような事はしなかった。その壁とは、自慰行為の事である。今綾乃がそれをするとしたら、三浦の事を想像しながらする事になってしまう。そう、良一を裏切る事に・・・ここまできても綾乃自身がそれを許させなかったのは、やはり良一に対する愛があったからだ。
しかし、なんとか気丈にその一線を越えないようにしてきた綾乃の我慢も、そろそろ限界を迎えようとしていたのである。それはある意味当たり前だ。日々解消されず溜まっていくものは、いつか決壊を迎える。そう、真面目な綾乃も、1人の人間であり、性欲も持つ女性なのだから。
その日の夕方、なかなか冷めてくれない火照った身体をなんとか治めようと、綾乃はシャワーを浴びる事にした。《・・・早く正気に戻らないと・・・晩御飯の準備もしないといけないし・・・》服を一枚一枚脱ぎ、最後の下半身に付けたショーツだけの姿になった綾乃は、その最後の一枚にも手を掛け、ゆっくりとそれを下げていく。しかしその途中で綾乃は思わずショーツを下げる手を止めた。
『・・・ハァ・・・やだ・・・こんなに・・・。』
一番大事な部分に触れていたショツの布が離れる時、アソコと布の間に綾乃の愛液がトロ~っと糸を引いたである。綾乃は性的快感を欲して涎を垂らしている自分の性器を見た瞬間、頭の中で何かが切れるのを感じた。
『ハァ・・・ハァ・・・。』
綾乃の我慢はその時、決壊を迎える。 第7章その1 39に続く
2017/06/06
長U〖綾乃の想い〗第7章その1 39
長U〖綾乃の想い〗第7章その1 39
第6章その6 38
・・・来た・・・今日も隣の篠原恭子(しのはら・きょうこ:30歳)の部屋に、三浦智(みうら・さとし:33歳)が女性を連れ込んできた。藤澤綾乃(ふじさわ・あやの:30歳)は自室の窓を少し開けた所で、息を潜めながら隣から聞えてくる声に耳を傾けている。
『・・・はァ・・・。』
ドキドキと胸が高鳴っているのが自分でも分かった。昨日の夕方からずっと心待ちにしていた事が、今から起きる。そう、綾乃はずっとこの事を考えていた。晩御飯の仕度をしている時も、夫(藤澤良一:ふじさわ・りょういち:37歳)と食事をしている時も。ベッドの中、良一が寝ている横でなかなか眠れなかったのも、ずっとこの事を考えていたから。
〔いいからシャワー浴びてこいって、早くしろよ。〕
三浦の低い声が聞こえた瞬間、綾乃は自分の身体がカァっと熱くなっていくのを感じた。
今、リアルタイムで三浦の声を聞いている。それだけで今自分が感じている興奮が、昨日感じた興奮とは全く違うものだと分かる。
想像の中での声と、現実に聞えてくる声はやはり違う。まるで三浦の声が身体の中に入ってきて、身体の中心から興奮を掻き立てられているような、そんな感覚。
『・・・ぁぁ・・・。』
昨日の夕方、綾乃はシャワーを浴びる前に自慰行為をした。いや、気付いてたらしていたと言った方が正しいかもしれない。
気付いたら夢中になって、自分のアソコを刺激している。男の人の手に身体を触られるのを想像しながら。その男は三浦になっていった。三浦の手に身体を触られるのを想像しながら。三浦の男らしい大きな手に。三浦の低い声に、イヤらしい言葉を浴びせられるのを想像して。
その時にはあの罪悪感はすっかり消えていた。頭の中は快楽を求める事だけで埋まり、他の事は一切考えられない。指で陰核(クリトリス)を刺激すると、身体全体が甘い快感にじんわりと包み込まれていくのを感じる。素直に綾乃は《気持ちイイ!》って思った。
しかし・・・それだけだったのである。自分で慰める事によって、ゆっくりと優しく身体に広がっていく快感。それは綾乃にとって気持ちの良いものであったが、同時にどこか物足りないものでもあった。
快感はずっと一定で、波も小さく、穏やか。自慰行為を続けていればいつか解消されるだろうと思っていた身体に溜まったモヤモヤ感は、結局1時間以上をそれを続けても無くならなかった。 第7章その2 40へ
2017/08/20
第6章その6 38
・・・来た・・・今日も隣の篠原恭子(しのはら・きょうこ:30歳)の部屋に、三浦智(みうら・さとし:33歳)が女性を連れ込んできた。藤澤綾乃(ふじさわ・あやの:30歳)は自室の窓を少し開けた所で、息を潜めながら隣から聞えてくる声に耳を傾けている。
『・・・はァ・・・。』
ドキドキと胸が高鳴っているのが自分でも分かった。昨日の夕方からずっと心待ちにしていた事が、今から起きる。そう、綾乃はずっとこの事を考えていた。晩御飯の仕度をしている時も、夫(藤澤良一:ふじさわ・りょういち:37歳)と食事をしている時も。ベッドの中、良一が寝ている横でなかなか眠れなかったのも、ずっとこの事を考えていたから。
〔いいからシャワー浴びてこいって、早くしろよ。〕
三浦の低い声が聞こえた瞬間、綾乃は自分の身体がカァっと熱くなっていくのを感じた。
今、リアルタイムで三浦の声を聞いている。それだけで今自分が感じている興奮が、昨日感じた興奮とは全く違うものだと分かる。
想像の中での声と、現実に聞えてくる声はやはり違う。まるで三浦の声が身体の中に入ってきて、身体の中心から興奮を掻き立てられているような、そんな感覚。
『・・・ぁぁ・・・。』
昨日の夕方、綾乃はシャワーを浴びる前に自慰行為をした。いや、気付いてたらしていたと言った方が正しいかもしれない。
気付いたら夢中になって、自分のアソコを刺激している。男の人の手に身体を触られるのを想像しながら。その男は三浦になっていった。三浦の手に身体を触られるのを想像しながら。三浦の男らしい大きな手に。三浦の低い声に、イヤらしい言葉を浴びせられるのを想像して。
その時にはあの罪悪感はすっかり消えていた。頭の中は快楽を求める事だけで埋まり、他の事は一切考えられない。指で陰核(クリトリス)を刺激すると、身体全体が甘い快感にじんわりと包み込まれていくのを感じる。素直に綾乃は《気持ちイイ!》って思った。
しかし・・・それだけだったのである。自分で慰める事によって、ゆっくりと優しく身体に広がっていく快感。それは綾乃にとって気持ちの良いものであったが、同時にどこか物足りないものでもあった。
快感はずっと一定で、波も小さく、穏やか。自慰行為を続けていればいつか解消されるだろうと思っていた身体に溜まったモヤモヤ感は、結局1時間以上をそれを続けても無くならなかった。 第7章その2 40へ
2017/08/20
長U〖綾乃の想い〗第7章その2 40
長U〖綾乃の想い〗第7章その2 40
第7章その1 39
藤澤綾乃(ふじさわ・あやの:30歳)は自ら刺激を与え、快感を覚えているのに、なんだかずっと焦らされているような感覚。外が暗くなり、やっと自分を慰める手の動きを止めた頃には、解消しようとしていたはずのモヤモヤ感、ムラムラ感が、自慰行為をする前よりも逆に増大してしまっている事に気付いた。
《・・・全然・・・満足できない・・・物足りない・・・》綾乃はその場で焦れったそうに下唇を噛み、両太腿を擦り合わせる。こんな事は生まれて初めてであった。こんなにも・・・性欲というものが、まるで箍(たが)が外れたように一気に大きくなってくるなんて。溢れるようにして湧き出てくる自分自身の性欲に戸惑いながら綾乃はこう思った。《・・・どうしたらいいの・・・?》そう自分に問いかける綾乃。
しかしそれは偽りの自分であり、本当の綾乃はそんな事を思っていない。綾乃自身は知っていたのだ。自分が今、何を求めているのか。自分の身体が、心が、何を欲しているのか。それは・・・三浦智(みうら・さとし:33歳)だ。
三浦の声が微かに聞こえる。あの低くて男らしい、そしてネットリとしてイヤらしい声。あの声を、もう一度近くで聞いてみたい。近くで感じてみたい。想像ではなく、現実の世界で。それは欲望の中で芽生えた、確かな願望。《・・・早く・・・早く聞きたい・・・》ずっと三浦の声を想像しながら、それが現実の音となって伝わってくるのを綾乃は心待ちにしてしまっていた。
夫(藤澤良一:ふじさわ・りょういち:37歳)の顔を見ると、少し後ろめたい気分にもなったが、それが自分の欲望を上回る事はない。そして今、部屋の壁一枚を挟んだ向こう側に三浦がいる。嫌悪感さえあるはずなのに、なぜか濃厚なオーラで自分の女としての本能を刺激してくる三浦が、壁のすぐ向こうに。昨日の夕方から今日の昼まで、こんなにも時間を長く感じた事はこれまでなかった。
これ以上焦れったいのは、もう我慢できない。今日は、綾乃は決めているのだ。今日は、淫らな自分になると。他には誰もいないこの部屋で、淫らな自分を曝け出したい。『・・・はァ・・・。』綾乃の口から興奮を帯びた吐息が漏れる。あらかじめ、ブラウスの中のブラジャーはしていない。そして三浦が隣の部屋に着た事を確認した綾乃は、ゆっくりと両手をスカートの中に入れた。
綾乃は、スカートの中からスルスルと下着を下ろす。それから壁に凭(もた)れるようにしてその場に座り込んだ。誰もいないとはいえ、昼間の明るい部屋で下着だけを脱ぐというのは、やはりどこか恥ずかしい。
ブラウスの中でブラジャーの締め付けから解放された乳房。スカートの中でスースーと空気を直に感じる下半身。その開放感が、恥ずかしくもあり、少し気持良かった。綾乃が視線を下へ向けると、上から数個のボタンを外したブラウスの中に見える、自分の胸の膨らみ。そしてその先端にあって、すでに勃起している乳首。服の布が乳首に当たって擦れた事で、刺激を与えてしまった。 第7章その3 41へ
2017/08/24
第7章その1 39
藤澤綾乃(ふじさわ・あやの:30歳)は自ら刺激を与え、快感を覚えているのに、なんだかずっと焦らされているような感覚。外が暗くなり、やっと自分を慰める手の動きを止めた頃には、解消しようとしていたはずのモヤモヤ感、ムラムラ感が、自慰行為をする前よりも逆に増大してしまっている事に気付いた。
《・・・全然・・・満足できない・・・物足りない・・・》綾乃はその場で焦れったそうに下唇を噛み、両太腿を擦り合わせる。こんな事は生まれて初めてであった。こんなにも・・・性欲というものが、まるで箍(たが)が外れたように一気に大きくなってくるなんて。溢れるようにして湧き出てくる自分自身の性欲に戸惑いながら綾乃はこう思った。《・・・どうしたらいいの・・・?》そう自分に問いかける綾乃。
しかしそれは偽りの自分であり、本当の綾乃はそんな事を思っていない。綾乃自身は知っていたのだ。自分が今、何を求めているのか。自分の身体が、心が、何を欲しているのか。それは・・・三浦智(みうら・さとし:33歳)だ。
三浦の声が微かに聞こえる。あの低くて男らしい、そしてネットリとしてイヤらしい声。あの声を、もう一度近くで聞いてみたい。近くで感じてみたい。想像ではなく、現実の世界で。それは欲望の中で芽生えた、確かな願望。《・・・早く・・・早く聞きたい・・・》ずっと三浦の声を想像しながら、それが現実の音となって伝わってくるのを綾乃は心待ちにしてしまっていた。
夫(藤澤良一:ふじさわ・りょういち:37歳)の顔を見ると、少し後ろめたい気分にもなったが、それが自分の欲望を上回る事はない。そして今、部屋の壁一枚を挟んだ向こう側に三浦がいる。嫌悪感さえあるはずなのに、なぜか濃厚なオーラで自分の女としての本能を刺激してくる三浦が、壁のすぐ向こうに。昨日の夕方から今日の昼まで、こんなにも時間を長く感じた事はこれまでなかった。
これ以上焦れったいのは、もう我慢できない。今日は、綾乃は決めているのだ。今日は、淫らな自分になると。他には誰もいないこの部屋で、淫らな自分を曝け出したい。『・・・はァ・・・。』綾乃の口から興奮を帯びた吐息が漏れる。あらかじめ、ブラウスの中のブラジャーはしていない。そして三浦が隣の部屋に着た事を確認した綾乃は、ゆっくりと両手をスカートの中に入れた。
綾乃は、スカートの中からスルスルと下着を下ろす。それから壁に凭(もた)れるようにしてその場に座り込んだ。誰もいないとはいえ、昼間の明るい部屋で下着だけを脱ぐというのは、やはりどこか恥ずかしい。
ブラウスの中でブラジャーの締め付けから解放された乳房。スカートの中でスースーと空気を直に感じる下半身。その開放感が、恥ずかしくもあり、少し気持良かった。綾乃が視線を下へ向けると、上から数個のボタンを外したブラウスの中に見える、自分の胸の膨らみ。そしてその先端にあって、すでに勃起している乳首。服の布が乳首に当たって擦れた事で、刺激を与えてしまった。 第7章その3 41へ
2017/08/24