長U〖綾乃の想い〗第2章その7 12
長U〖綾乃の想い〗第2章その7 12
それ以上、藤澤綾乃(あやの:30歳)が質問を繰り返す事はなかった。何かこれ以上三浦智(さとし:33歳)に聞いてはいけないように綾乃には感じたからだ。(・・・個人で株のトレーダー・・・株で生活しているって事なのかしら・・・?)
《フフッあんまりいないですよね、こんな人。・・・私、ちょっとお手洗い行ってきますね。》
『え?あ、うん。』
恭子が席を外し、今日初対面の2人だけになったリビングに、ほんの数秒間沈黙の時間が流れる。少し空気が重い。先程まで楽しく話していたのに、仕事の事を聞いたために若干気まずくなってしまったかと思った綾乃は何を話したら良いのか分からなく、頭の中で懸命に別の話題を考えていた。
しかし先に沈黙を破ったのはやはり三浦だった。
〔そういえば旦那さん、今日は土曜日なのに仕事って、いつもそんなに忙しいですか?〕
『えぇ、最近は忙しくしていますねぇ、でも恭子さん程じゃないと思うけど。」
〔帰りも遅い?〕
『ぇ・・・?えぇ、割かしそういう日が多いですね。』
何かを探るような三浦の訊き方に少し違和感を覚えながらも、綾乃はお酒の入ったグラスを片手に質問に答える。
〔じゃあ寂しいんじゃないですか?いつも1人で旦那さんを待っているのは。〕
『ん~そういう時もあるけど、もう馴れましたね。』
〔へぇ~そうですかぁ・・・でも、旦那さんが忙しいとまだまだお若い奥さんは色々と大変でしょう?〕
『・・・え?大変?それってどういう・・・』
笑みを浮かべながらそう訊いてきた三浦だったが、綾乃はその質問の意味も意図よく分からないでいた。ただ、急に変った顔、三浦のその笑みが、今日これまで三浦が綾乃に見せていなかった表情である事だけは分かった。恭子が居た時とはまるで別人のような表情だ。
〔ほら、色々と溜まるものもあるでしょう?奥さんくらいの若い女性なら特に。〕
『え?』
〔忙しくても、そっちの方はちゃんと旦那さんに解消してもらっているんですか?〕
『ぇ・・・え?・・・あの・・・。』
そう言われて綾乃はやっと三浦が聞いてきている事の意味を理解した。いや、しかしそんな事は常識的にとても今日初対面の相手に、それも異性に訊くことではない。なんにしろ、そんな事を他人から言われた事のなかった綾乃は、三浦からの急な質問に動揺していた。
『や・・・やだぁ、三浦さん酔っているんでしょ?』
一瞬言葉を失っていた綾乃だったが、そう言って三浦からの問いをはぐらかした。わざとクスっと笑い、お酒の入ったグラスに口を付ける。
しかし、大人の女性として三浦からの少しセクハラじみた言葉を軽くかわしたつもりだった綾乃だが、顔は先程までより赤くなっていて、内心の動揺を隠せていなかった。耳の先が熱い。なんとなく、こんな事で動揺している自分を三浦に気付かれたくなかった。
〔・・・冗談ですよ。でも奥さんは可愛らしい方だなぁ、これくらいの事で赤くなっちゃってさ。〕
『も、もう!からかわないで下さい三浦さん。恭子さんに聞かれたら怒られますよ。』
(三浦の言うとおり、綾乃はこの程度の事で顔を赤くしている自分がどこか恥ずかしかった。)
あっけなく動揺を見事に見抜かれた綾乃は、さらに顔を赤くして三浦にそう言った。
〔別に構いませんよ、恭子は俺がこういう男だって知っていますから。〕
結婚する前までは綾乃は、普通に何気なく男性とも話していたし、飲み会などの席では男性陣から下品な言葉も飛んでいたけど、その時は別にそれに反応する事なんてなかった。でも結婚してからは、めっきり夫(藤澤良一)以外の男性との関わりは無くなっていたため、やはりそういったモノへの免疫力が下がっていたのかもしれない。(・・・もういい大人なのに・・・。)
2015/11/15
それ以上、藤澤綾乃(あやの:30歳)が質問を繰り返す事はなかった。何かこれ以上三浦智(さとし:33歳)に聞いてはいけないように綾乃には感じたからだ。(・・・個人で株のトレーダー・・・株で生活しているって事なのかしら・・・?)
《フフッあんまりいないですよね、こんな人。・・・私、ちょっとお手洗い行ってきますね。》
『え?あ、うん。』
恭子が席を外し、今日初対面の2人だけになったリビングに、ほんの数秒間沈黙の時間が流れる。少し空気が重い。先程まで楽しく話していたのに、仕事の事を聞いたために若干気まずくなってしまったかと思った綾乃は何を話したら良いのか分からなく、頭の中で懸命に別の話題を考えていた。
しかし先に沈黙を破ったのはやはり三浦だった。
〔そういえば旦那さん、今日は土曜日なのに仕事って、いつもそんなに忙しいですか?〕
『えぇ、最近は忙しくしていますねぇ、でも恭子さん程じゃないと思うけど。」
〔帰りも遅い?〕
『ぇ・・・?えぇ、割かしそういう日が多いですね。』
何かを探るような三浦の訊き方に少し違和感を覚えながらも、綾乃はお酒の入ったグラスを片手に質問に答える。
〔じゃあ寂しいんじゃないですか?いつも1人で旦那さんを待っているのは。〕
『ん~そういう時もあるけど、もう馴れましたね。』
〔へぇ~そうですかぁ・・・でも、旦那さんが忙しいとまだまだお若い奥さんは色々と大変でしょう?〕
『・・・え?大変?それってどういう・・・』
笑みを浮かべながらそう訊いてきた三浦だったが、綾乃はその質問の意味も意図よく分からないでいた。ただ、急に変った顔、三浦のその笑みが、今日これまで三浦が綾乃に見せていなかった表情である事だけは分かった。恭子が居た時とはまるで別人のような表情だ。
〔ほら、色々と溜まるものもあるでしょう?奥さんくらいの若い女性なら特に。〕
『え?』
〔忙しくても、そっちの方はちゃんと旦那さんに解消してもらっているんですか?〕
『ぇ・・・え?・・・あの・・・。』
そう言われて綾乃はやっと三浦が聞いてきている事の意味を理解した。いや、しかしそんな事は常識的にとても今日初対面の相手に、それも異性に訊くことではない。なんにしろ、そんな事を他人から言われた事のなかった綾乃は、三浦からの急な質問に動揺していた。
『や・・・やだぁ、三浦さん酔っているんでしょ?』
一瞬言葉を失っていた綾乃だったが、そう言って三浦からの問いをはぐらかした。わざとクスっと笑い、お酒の入ったグラスに口を付ける。
しかし、大人の女性として三浦からの少しセクハラじみた言葉を軽くかわしたつもりだった綾乃だが、顔は先程までより赤くなっていて、内心の動揺を隠せていなかった。耳の先が熱い。なんとなく、こんな事で動揺している自分を三浦に気付かれたくなかった。
〔・・・冗談ですよ。でも奥さんは可愛らしい方だなぁ、これくらいの事で赤くなっちゃってさ。〕
『も、もう!からかわないで下さい三浦さん。恭子さんに聞かれたら怒られますよ。』
(三浦の言うとおり、綾乃はこの程度の事で顔を赤くしている自分がどこか恥ずかしかった。)
あっけなく動揺を見事に見抜かれた綾乃は、さらに顔を赤くして三浦にそう言った。
〔別に構いませんよ、恭子は俺がこういう男だって知っていますから。〕
結婚する前までは綾乃は、普通に何気なく男性とも話していたし、飲み会などの席では男性陣から下品な言葉も飛んでいたけど、その時は別にそれに反応する事なんてなかった。でも結婚してからは、めっきり夫(藤澤良一)以外の男性との関わりは無くなっていたため、やはりそういったモノへの免疫力が下がっていたのかもしれない。(・・・もういい大人なのに・・・。)
2015/11/15
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