長U〖綾乃の想い〗第5章その6 32
長U〖綾乃の想い〗第5章その6 32
〔奥さん、今日は元気無いですね? どうかしました?〕
『・・・え?』
〔さっきから、俺の方を向いてくれないし、凄く他人行儀だ。この前はあんなに仲良くなれたのに。〕
『え? い、いえそんな事・・・。』
そんな事を言われては三浦智(みうら・さとし:33歳)の顔を見ない訳にはいかない。そう思って藤澤綾乃(ふじさわ・あやの:30歳)は仕方なく顔を上げて三浦の方を向いた。するとそこには相変わらずニヤニヤと笑みを浮かべる三浦がいる。その表情は決して爽やかな笑顔とは言えず、どこか不気味という感じがした。もちろんそう感じてしまうのは、綾乃が三浦の本性を知っているからだろう。
〔俺、何か奥さんが不快に思うような失礼な事しました?〕
《・・・した、したわよ・・・》
『い、いえ別にそんな事は、ちょっと考え事があって・・・。』
〔そうですか・・・よかったぁ、奥さんに嫌われてしまったかと思いましたよ。〕
綾乃は本心とは違う事を口走った。
《まさか恭子との行為や、浮気相手との行為を盗み聞きしていたとは口が裂けても言えないわ。》
〔何か悩み事でもあるんですか? 俺でよかったらいつでも相談に乗りますよ。〕
『大した事じゃありませんから、大丈夫です。ありがとうございます。』
綾乃がそう言った所で、エレベーターが階に到着し扉が開いた。綾乃達の部屋と恭子の部屋は隣であるから、2人共同じ階で降りる。
エレベーターを降りれば部屋のドアはすぐそこ。《もう早く部屋に入りたかった。これ以上、三浦と共に話したりするのは不快だ。》綾乃はそんな事を思いながら、三浦の存在を置き去るようにして少し早歩きで部屋へと向かった。しかしそんな綾乃を三浦は声を掛けて止める。
〔奥さんっ! 今日も旦那(藤澤良一:ふじさわ・りょういち:37歳)さんは遅いんですか?〕
『えっ?』
〔旦那さん、仕事今日も忙しいんですか?〕
『ぇ・・・えぇ、たぶん・・・。』
《・・・どうして・・・そんな事聞いてくるのかしら?》
〔恭子も今日は遅いらしいんですよ。〕
『・・・そうですか・・・。』
〔お互い、寂しいですね?〕
『ぇ・・・?』
《三浦は何を言いたいのだろうか?》
綾乃には三浦の言葉が何を意味しているのか、まったく理解できなかった。
『・・・。』
〔・・・フッ・・・じゃあまた。〕
言葉を失っていた綾乃の顔をじっと見つめた後、三浦はそう言って恭子の部屋のドアを開けて入っていった。 第6章その1 33 へ続く
2016/12/10
〔奥さん、今日は元気無いですね? どうかしました?〕
『・・・え?』
〔さっきから、俺の方を向いてくれないし、凄く他人行儀だ。この前はあんなに仲良くなれたのに。〕
『え? い、いえそんな事・・・。』
そんな事を言われては三浦智(みうら・さとし:33歳)の顔を見ない訳にはいかない。そう思って藤澤綾乃(ふじさわ・あやの:30歳)は仕方なく顔を上げて三浦の方を向いた。するとそこには相変わらずニヤニヤと笑みを浮かべる三浦がいる。その表情は決して爽やかな笑顔とは言えず、どこか不気味という感じがした。もちろんそう感じてしまうのは、綾乃が三浦の本性を知っているからだろう。
〔俺、何か奥さんが不快に思うような失礼な事しました?〕
《・・・した、したわよ・・・》
『い、いえ別にそんな事は、ちょっと考え事があって・・・。』
〔そうですか・・・よかったぁ、奥さんに嫌われてしまったかと思いましたよ。〕
綾乃は本心とは違う事を口走った。
《まさか恭子との行為や、浮気相手との行為を盗み聞きしていたとは口が裂けても言えないわ。》
〔何か悩み事でもあるんですか? 俺でよかったらいつでも相談に乗りますよ。〕
『大した事じゃありませんから、大丈夫です。ありがとうございます。』
綾乃がそう言った所で、エレベーターが階に到着し扉が開いた。綾乃達の部屋と恭子の部屋は隣であるから、2人共同じ階で降りる。
エレベーターを降りれば部屋のドアはすぐそこ。《もう早く部屋に入りたかった。これ以上、三浦と共に話したりするのは不快だ。》綾乃はそんな事を思いながら、三浦の存在を置き去るようにして少し早歩きで部屋へと向かった。しかしそんな綾乃を三浦は声を掛けて止める。
〔奥さんっ! 今日も旦那(藤澤良一:ふじさわ・りょういち:37歳)さんは遅いんですか?〕
『えっ?』
〔旦那さん、仕事今日も忙しいんですか?〕
『ぇ・・・えぇ、たぶん・・・。』
《・・・どうして・・・そんな事聞いてくるのかしら?》
〔恭子も今日は遅いらしいんですよ。〕
『・・・そうですか・・・。』
〔お互い、寂しいですね?〕
『ぇ・・・?』
《三浦は何を言いたいのだろうか?》
綾乃には三浦の言葉が何を意味しているのか、まったく理解できなかった。
『・・・。』
〔・・・フッ・・・じゃあまた。〕
言葉を失っていた綾乃の顔をじっと見つめた後、三浦はそう言って恭子の部屋のドアを開けて入っていった。 第6章その1 33 へ続く
2016/12/10
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