長U〖綾乃の想い〗第1章その4 04
長U〖綾乃の想い〗第1章その4 04
食卓にカレーライスと綺麗に盛り付けされたサラダが並ぶ。そのカレーからは食欲をそそる美味しそうな香りが立ち上がっている。
「なぁ綾乃……もう食べてもいいか?」
『ダメよ、もうちょっと待って。どうせならお隣さんが来てからいっしょに食べたいじゃない?』
「はぁ~……腹減ったよぉ綾乃ちゃーん~、拷問だよこれは。」
ため息と共に、甘えた声を出す夫の藤澤良一(37歳)。しかし妻の藤澤綾乃(あやの30歳)はそんな事など意に介さない様子で時計を見つめ続けている。
『ねぇ良一、まだかなぁ?お隣さんのご挨拶……。』
「はぁ……そんなのもしかして明日かもしれないし、明後日かもしれないし、もしかしたら挨拶には来ないような人かもしれないだろ?」
『え~そんな事ないよぉ・・・、絶対来ます。』
「はぁ……もう付き合いきれん!先に食べるぞぉ!せっかくのカレーが冷めちまうよ。」
さすがに呆れた様子で痺れを切らした良一が、スプーンを手に取る。すると、その時だった。
“……ピンポーン!”インターホンの音を聴いた瞬間、綾乃の表情が満面の笑みに変わる。
『ねぇ良一。』
「あ、あぁ……よし。」
良一が玄関モニターをチェックすると1人の女性が映っていた。大変な美人だ。歳は良一達と同じくらいだろうか、それとも少し上かもしれない。大人の落ち着いた女性といった感じだ。
「は……はい、どちら様でしょうか?」
妙に緊張してしまっていた良一は、少し声を裏返しながらモニターに向かってそう言った。
《あの……今日隣に引っ越して来た篠原と申します。》
篠原と名乗る女性は容姿もそうだが、その声もどこか上品に聞こえる。
「あ、そ、そうですか。少し待ってください。」
「2人で行くか?」
『うん、もちろん行くわよ。』
良一と綾乃は細い廊下を2人で肩を並べて歩き、玄関へと向かった。“ガチャ……”
「あ、どうもぉ。」
良一がドアを開けると、そこにはモニターで見た通りの美人な女性が一人で立っていた。
《夜遅くにすみません。えっと……。》
「藤澤と言います、こっちは妻の綾乃です。」
『こんばんは、篠原さん……ですよね?』
《はい、篠原恭子と言います。あのこれ、大した物ではないんですけど。》
そう言って恭子が手に持っていた菓子折りを渡してくる。今時こういうのは珍しい。容姿も上品であるし、礼儀正しい人なのだなと良一と綾乃は思った。
《あの、藤澤さんはご夫婦お2人でお住まいなんですか?》
「えぇ、そうなんですけどね。」
『篠原さんは、ご家族で引っ越して来られたんですか?』
《いえ、あの……私はまだ結婚はしていなくて、1人で越してきたんです。》
「1人……ですか?」
恭子のその言葉を聞いて、良一と綾乃は思わず顔を見合わせた。 ここはファミリー向けマンションで、どの部屋も80㎡以上はある。女性の1人暮らしには広すぎるし、それにかなり贅沢だ。購入にしても賃貸にしても、価格はそれなりにするはずである。
《やっぱり変、ですよね?こんなマンションに女で1人で住むのは・・。》
「いえいえ、そんな事はないと思いますけど……。」
『う、羨ましいよね?』
「あぁ……だ、だよな。」
2015/09/11
食卓にカレーライスと綺麗に盛り付けされたサラダが並ぶ。そのカレーからは食欲をそそる美味しそうな香りが立ち上がっている。
「なぁ綾乃……もう食べてもいいか?」
『ダメよ、もうちょっと待って。どうせならお隣さんが来てからいっしょに食べたいじゃない?』
「はぁ~……腹減ったよぉ綾乃ちゃーん~、拷問だよこれは。」
ため息と共に、甘えた声を出す夫の藤澤良一(37歳)。しかし妻の藤澤綾乃(あやの30歳)はそんな事など意に介さない様子で時計を見つめ続けている。
『ねぇ良一、まだかなぁ?お隣さんのご挨拶……。』
「はぁ……そんなのもしかして明日かもしれないし、明後日かもしれないし、もしかしたら挨拶には来ないような人かもしれないだろ?」
『え~そんな事ないよぉ・・・、絶対来ます。』
「はぁ……もう付き合いきれん!先に食べるぞぉ!せっかくのカレーが冷めちまうよ。」
さすがに呆れた様子で痺れを切らした良一が、スプーンを手に取る。すると、その時だった。
“……ピンポーン!”インターホンの音を聴いた瞬間、綾乃の表情が満面の笑みに変わる。
『ねぇ良一。』
「あ、あぁ……よし。」
良一が玄関モニターをチェックすると1人の女性が映っていた。大変な美人だ。歳は良一達と同じくらいだろうか、それとも少し上かもしれない。大人の落ち着いた女性といった感じだ。
「は……はい、どちら様でしょうか?」
妙に緊張してしまっていた良一は、少し声を裏返しながらモニターに向かってそう言った。
《あの……今日隣に引っ越して来た篠原と申します。》
篠原と名乗る女性は容姿もそうだが、その声もどこか上品に聞こえる。
「あ、そ、そうですか。少し待ってください。」
「2人で行くか?」
『うん、もちろん行くわよ。』
良一と綾乃は細い廊下を2人で肩を並べて歩き、玄関へと向かった。“ガチャ……”
「あ、どうもぉ。」
良一がドアを開けると、そこにはモニターで見た通りの美人な女性が一人で立っていた。
《夜遅くにすみません。えっと……。》
「藤澤と言います、こっちは妻の綾乃です。」
『こんばんは、篠原さん……ですよね?』
《はい、篠原恭子と言います。あのこれ、大した物ではないんですけど。》
そう言って恭子が手に持っていた菓子折りを渡してくる。今時こういうのは珍しい。容姿も上品であるし、礼儀正しい人なのだなと良一と綾乃は思った。
《あの、藤澤さんはご夫婦お2人でお住まいなんですか?》
「えぇ、そうなんですけどね。」
『篠原さんは、ご家族で引っ越して来られたんですか?』
《いえ、あの……私はまだ結婚はしていなくて、1人で越してきたんです。》
「1人……ですか?」
恭子のその言葉を聞いて、良一と綾乃は思わず顔を見合わせた。 ここはファミリー向けマンションで、どの部屋も80㎡以上はある。女性の1人暮らしには広すぎるし、それにかなり贅沢だ。購入にしても賃貸にしても、価格はそれなりにするはずである。
《やっぱり変、ですよね?こんなマンションに女で1人で住むのは・・。》
「いえいえ、そんな事はないと思いますけど……。」
『う、羨ましいよね?』
「あぁ……だ、だよな。」
2015/09/11
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