名K【矛盾】第1章3話 03
名K【矛盾】第1章3話 03
第1章2話 02
とにかく私(渡部篤史:わたべ・あつし:41歳)は妻(渡部香澄:わたべ・かすみ:37歳)の話が聞きたくて急いで帰ると、そこにはいつもと変わらぬ笑顔の香澄がいたので少しホッとしました。
『パパ、今日はいつもより遅かったのですね。真理だけは食事を済ませたので、私達の食事をすぐに仕度しますから、先にお風呂に入って来て下さい。』
「いや、それより話がある。」
私の深刻そうな顔を見て、娘はお風呂に入るようにと言って連れて行き、戻って来ると、下を向いて小さな声で。
『何か有ったのですか?』
「ああ、ママの勤めている会社の河北社長の事だ。」
すると妻の顔が見る見る青ざめていきます。
「あいつ(河北玄一)に話が有ると言われて今まで会っていたが、あいつは気が狂っているぞ! 〔体の関係は無い清い交際だが、(ママと)半年も付き合っている〕とか、〔(ママが)自分の事を好きで結婚したがっているので、早く離婚してくれ〕と言われた。そんな事は有るはずが無いのに、あの社長は変だし気味悪いから勤めは辞めろ!」
すると妻の目に見る見る涙が溜まり、それが流れ落ちるのと同時に声を出して泣き崩れました。
「エッ。どうして泣いている? なぜ否定をしない? 悪い冗談は止めてくれ。」
泣き崩れた香澄の両肩を掴んで起こした時、妻が小さな声で一言。
『ごめんなさい。』
香澄の肯定した言葉を聞いてその瞬間、思い切り頬を叩いてしまいます。思わず叩いてしまいましたが、今の状況が自分でも理解仕切れずに動揺していると、妻の泣き声を聞いた娘が慌ててお風呂から出て来て。
〚ママをいじめないで! パパなんて嫌い!〛
そう言いながら娘も泣き出しました。
『真理、違うの。ママが悪いの、パパは悪くない。ママが悪いの。ごめんね、ごめんね。』
「ママが悪い? うそだろ? そんな馬鹿な事って。」
『ごめんなさい、この子の前では・・・。明日きちんとお話ししますから今日は許して下さい。』
妻の香澄は泣きながら逃げるように、娘を子供部屋に連れて行って出て来ません。すぐに後を追おうと思いましたが、あまりに急な展開に、これが現実に起きている事なのかどうかも判断出来ずに、私は後を追う気力も問い詰める気力も湧いて来ませんでした。
私にとっては、それほど予期しない突然の出来事だったのです。しかし次第に不安は怒りに変わり、中々寝付かれずに何度も娘の部屋の前まで行きましたが、その度に妻のすすり泣く声を聞いて、事実を受け止めるのが嫌で何も言わずに戻って来ました。それから、いつの間にか眠ってしまい、起きると会社へ行っていなければ時間だったので、一瞬慌てます。でも今日は土曜日だった事に気付き、それと同時に昨夜の事も思い出し、娘の部屋に行きましたが香澄も娘もいませんでした。 第1章4話 04に続く
2016/12/19
第1章2話 02
とにかく私(渡部篤史:わたべ・あつし:41歳)は妻(渡部香澄:わたべ・かすみ:37歳)の話が聞きたくて急いで帰ると、そこにはいつもと変わらぬ笑顔の香澄がいたので少しホッとしました。
『パパ、今日はいつもより遅かったのですね。真理だけは食事を済ませたので、私達の食事をすぐに仕度しますから、先にお風呂に入って来て下さい。』
「いや、それより話がある。」
私の深刻そうな顔を見て、娘はお風呂に入るようにと言って連れて行き、戻って来ると、下を向いて小さな声で。
『何か有ったのですか?』
「ああ、ママの勤めている会社の河北社長の事だ。」
すると妻の顔が見る見る青ざめていきます。
「あいつ(河北玄一)に話が有ると言われて今まで会っていたが、あいつは気が狂っているぞ! 〔体の関係は無い清い交際だが、(ママと)半年も付き合っている〕とか、〔(ママが)自分の事を好きで結婚したがっているので、早く離婚してくれ〕と言われた。そんな事は有るはずが無いのに、あの社長は変だし気味悪いから勤めは辞めろ!」
すると妻の目に見る見る涙が溜まり、それが流れ落ちるのと同時に声を出して泣き崩れました。
「エッ。どうして泣いている? なぜ否定をしない? 悪い冗談は止めてくれ。」
泣き崩れた香澄の両肩を掴んで起こした時、妻が小さな声で一言。
『ごめんなさい。』
香澄の肯定した言葉を聞いてその瞬間、思い切り頬を叩いてしまいます。思わず叩いてしまいましたが、今の状況が自分でも理解仕切れずに動揺していると、妻の泣き声を聞いた娘が慌ててお風呂から出て来て。
〚ママをいじめないで! パパなんて嫌い!〛
そう言いながら娘も泣き出しました。
『真理、違うの。ママが悪いの、パパは悪くない。ママが悪いの。ごめんね、ごめんね。』
「ママが悪い? うそだろ? そんな馬鹿な事って。」
『ごめんなさい、この子の前では・・・。明日きちんとお話ししますから今日は許して下さい。』
妻の香澄は泣きながら逃げるように、娘を子供部屋に連れて行って出て来ません。すぐに後を追おうと思いましたが、あまりに急な展開に、これが現実に起きている事なのかどうかも判断出来ずに、私は後を追う気力も問い詰める気力も湧いて来ませんでした。
私にとっては、それほど予期しない突然の出来事だったのです。しかし次第に不安は怒りに変わり、中々寝付かれずに何度も娘の部屋の前まで行きましたが、その度に妻のすすり泣く声を聞いて、事実を受け止めるのが嫌で何も言わずに戻って来ました。それから、いつの間にか眠ってしまい、起きると会社へ行っていなければ時間だったので、一瞬慌てます。でも今日は土曜日だった事に気付き、それと同時に昨夜の事も思い出し、娘の部屋に行きましたが香澄も娘もいませんでした。 第1章4話 04に続く
2016/12/19
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