名K【矛盾】第1章2話 02
名K【矛盾】第1章2話 02
第1章1話 01
河北玄一社長は返事もしないでガツガツと料理を食べていましたが、突然こちらも見ずに。
〔渡部(わたべ)くん、香澄をわしにくれ。〕
「は? 意味が分かりませんが。」
〔意味?聞いたとおりだ。香澄とわしが結婚するから離婚してくれ。〕
こんな理不尽な事はもっと怒って、きつく断れば良かったのですが・・・・。
「そんなこと勝手に決められても・・香澄の気持ちも有るし、離婚など出来ません。」
あまりにも突然の事で頭がついて行かず、断る言い訳をしていました。
〔香澄はもう承諾しているから後は君だけだ。香澄もわしと一緒になりたいと言っている。付き合い出して半年経つから、君も薄々は知っていたのだろ?〕
自分でも仲の良い夫婦だと思っていましたので私(渡部篤史:わたべ・あつし:41歳)に思い当たる事は全く無く、それどころか、先週の金曜日の夜も普通にセックスをしたばかりです。
この男は妄想癖が有るのか、もしくは狂っていると思って席を立つと、ようやく箸を置いて私を睨む。
〔付き合っていると言っても誤解するな。法に触れるような事はしていない。中学生のような清い交際だ。いや、今時の中学生なら半年も付き合えばやっているか。ワッハハハハ。〕
「香澄に限ってそんな筈は無い。訳の分からない事を言うな。」
〔そうカッカするな。だから先に飯を食えと言っただろ。〕
「こんな馬鹿な話は、腹が減っていようが満腹だろうが関係ない。」
〔そう喧嘩腰にならないで男らしく諦めろ。香澄はわしの事を好きだと言っている。結婚していても気持ちまでは縛れんぞ。君よりわしの方を好きになったのだから仕方が無いだろ?君にはまた君に合った女が現れる。気持ちが他の男に移ってしまったら一緒に居る意味が無いだろ?毎日香澄を見ていて、早くわしのマラでヒーヒー言わせたくて仕方が無いから、出来るだけ早く離婚してくれ。ワッハハハハハハ。〕
「あんた頭がおかしいのか?はっきりと断る。」
店を出て、車に乗っても、まだ心臓がドキドキしていて訳が分かりません。
私は大学生の時に相次いで両親を亡くし、親の借金が残りましたが、今の家を手放すのが嫌で相続を放棄せずに大学を中退して働き、少しずつですが毎月返済していました。借金を返し終わるまで恋愛など出来ないと思っていましたが、あるサークルでの隣町との交流会で橋爪香澄と知り合う。純粋で世間に擦れていないところが可愛く好きになりました。
何故か香澄は両親に対して、恋愛をしている事に罪悪感を持っていて、彼女の希望で秘密
の交際を続けましたが、私の借金が完済出来た時に、香澄との結婚をお願いしに行きます。しかし彼女の両親は激怒し、借金は返し終わっていてもお金が無い事、大学を出ていない事、何より家柄がつり合わない事を理由に、何回行っても門前払いだったので、最後には、親兄弟のいない身軽な私は、香澄も1人っ子なので養子に入る覚悟もしたのですが、異常にプライドの高い彼女の父親(橋爪寛治)は、私の事を「野良犬」とまで言って受け付けません。
結局何にでも一途な香澄が、初めて親に逆らって家を飛び出し、私(渡部篤史:わたべ・あつし)の家に来て一緒に暮らし出しました。何年かは子供に恵まれませんでしたが、その後娘(真凛:まりん)が生まれると、やはり孫は可愛いのか、妻と娘は何かに付け家に行けるように成りましたが、大事な一人娘を奪った憎い私(渡部篤史:わたべ・あつし)の事は受け付けません。
義父(橋爪寛治)が入院した時も見舞いに行くと妻(渡部香澄:かすみ:37歳)に言ったところ、その日に義母(橋爪千恵子)から電話で、「あなたに会うと興奮して良くないから、出来れば遠慮して下さい。」と、歳を取ってから出来た一人娘が可愛いのは分かっても、この執念深さには怒りを覚えましたが、正座して私に謝る妻を見て、その時はぐっと怒りを飲み込みました。
そのような思いまでして結婚し、その様な思いまでして私に付いて来てくれた妻に限って、河北玄一(66歳)が言ったような事は決して無いと信じています。これまで、ほとんど大きな喧嘩もしないで仲良くやって来たし、そして今でも毎週金曜日の夜は愛を確かめ合っていました。 第1章3話 03に続く
2016/03/07
第1章1話 01
河北玄一社長は返事もしないでガツガツと料理を食べていましたが、突然こちらも見ずに。
〔渡部(わたべ)くん、香澄をわしにくれ。〕
「は? 意味が分かりませんが。」
〔意味?聞いたとおりだ。香澄とわしが結婚するから離婚してくれ。〕
こんな理不尽な事はもっと怒って、きつく断れば良かったのですが・・・・。
「そんなこと勝手に決められても・・香澄の気持ちも有るし、離婚など出来ません。」
あまりにも突然の事で頭がついて行かず、断る言い訳をしていました。
〔香澄はもう承諾しているから後は君だけだ。香澄もわしと一緒になりたいと言っている。付き合い出して半年経つから、君も薄々は知っていたのだろ?〕
自分でも仲の良い夫婦だと思っていましたので私(渡部篤史:わたべ・あつし:41歳)に思い当たる事は全く無く、それどころか、先週の金曜日の夜も普通にセックスをしたばかりです。
この男は妄想癖が有るのか、もしくは狂っていると思って席を立つと、ようやく箸を置いて私を睨む。
〔付き合っていると言っても誤解するな。法に触れるような事はしていない。中学生のような清い交際だ。いや、今時の中学生なら半年も付き合えばやっているか。ワッハハハハ。〕
「香澄に限ってそんな筈は無い。訳の分からない事を言うな。」
〔そうカッカするな。だから先に飯を食えと言っただろ。〕
「こんな馬鹿な話は、腹が減っていようが満腹だろうが関係ない。」
〔そう喧嘩腰にならないで男らしく諦めろ。香澄はわしの事を好きだと言っている。結婚していても気持ちまでは縛れんぞ。君よりわしの方を好きになったのだから仕方が無いだろ?君にはまた君に合った女が現れる。気持ちが他の男に移ってしまったら一緒に居る意味が無いだろ?毎日香澄を見ていて、早くわしのマラでヒーヒー言わせたくて仕方が無いから、出来るだけ早く離婚してくれ。ワッハハハハハハ。〕
「あんた頭がおかしいのか?はっきりと断る。」
店を出て、車に乗っても、まだ心臓がドキドキしていて訳が分かりません。
私は大学生の時に相次いで両親を亡くし、親の借金が残りましたが、今の家を手放すのが嫌で相続を放棄せずに大学を中退して働き、少しずつですが毎月返済していました。借金を返し終わるまで恋愛など出来ないと思っていましたが、あるサークルでの隣町との交流会で橋爪香澄と知り合う。純粋で世間に擦れていないところが可愛く好きになりました。
何故か香澄は両親に対して、恋愛をしている事に罪悪感を持っていて、彼女の希望で秘密
の交際を続けましたが、私の借金が完済出来た時に、香澄との結婚をお願いしに行きます。しかし彼女の両親は激怒し、借金は返し終わっていてもお金が無い事、大学を出ていない事、何より家柄がつり合わない事を理由に、何回行っても門前払いだったので、最後には、親兄弟のいない身軽な私は、香澄も1人っ子なので養子に入る覚悟もしたのですが、異常にプライドの高い彼女の父親(橋爪寛治)は、私の事を「野良犬」とまで言って受け付けません。
結局何にでも一途な香澄が、初めて親に逆らって家を飛び出し、私(渡部篤史:わたべ・あつし)の家に来て一緒に暮らし出しました。何年かは子供に恵まれませんでしたが、その後娘(真凛:まりん)が生まれると、やはり孫は可愛いのか、妻と娘は何かに付け家に行けるように成りましたが、大事な一人娘を奪った憎い私(渡部篤史:わたべ・あつし)の事は受け付けません。
義父(橋爪寛治)が入院した時も見舞いに行くと妻(渡部香澄:かすみ:37歳)に言ったところ、その日に義母(橋爪千恵子)から電話で、「あなたに会うと興奮して良くないから、出来れば遠慮して下さい。」と、歳を取ってから出来た一人娘が可愛いのは分かっても、この執念深さには怒りを覚えましたが、正座して私に謝る妻を見て、その時はぐっと怒りを飲み込みました。
そのような思いまでして結婚し、その様な思いまでして私に付いて来てくれた妻に限って、河北玄一(66歳)が言ったような事は決して無いと信じています。これまで、ほとんど大きな喧嘩もしないで仲良くやって来たし、そして今でも毎週金曜日の夜は愛を確かめ合っていました。 第1章3話 03に続く
2016/03/07
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