名K【矛盾】第1話
名K【矛盾】第1話
(原題:雲の上を歩く 投稿者:MMさん教えて 投稿日:20050118 連載期間:20050118~20050323 BBS2)
私(渡部篤史:わたべ・あつし:41歳)、妻(渡部香澄:かすみ:37歳)、小学校三年生の娘(真凛:まりん)がいます。この話は半年前のある金曜日にさかのぼります。仕事が終わって車に乗り込むと携帯が鳴り、見覚えの無い番号だったので不審に思いながらも出てみると、聞き覚えの無い低い声でした。
〔突然申し訳ない。香澄のご主人か? わしは河北組の河北だ。いつも香澄には世話になっとります。〕
それは、妻が一年前から事務の仕事に行っている先の、建設会社の河北玄一(かわきた・げんいち:66歳)社長でした。その会社は、今では多少事業を縮小したもののバブル期に急成長した会社です。妻の父親も数年前までは会社を経営していて、以前この社長と一緒に商工会議所の役員をしていた事から懇意になり、その関係で妻の香澄は雇ってもらったと聞いていました。
それは、妻が一年前から事務の仕事に行っている先の、建設会社の河北玄一(かわきた・げんいち:66歳)社長でした。その会社は、今では多少事業を縮小したもののバブル期に急成長した会社です。妻の父親も数年前までは会社を経営していて、以前この社長と一緒に商工会議所の役員をしていた事から懇意になり、その関係で妻の香澄は雇ってもらったと聞いていました。
「お世話になっています。妻が何か?」
〔電話では話せないので、これから一緒に飯でも食いながら話そう。わしの会社を知っているか?会社から500m位北に行った所の右側に“天嵐”という寿司屋が有る。そこで待っているからすぐに来てくれ。〕
そう言い終ると、私の都合も聞かずに一方的に電話を切ってしまい、余りの強引さや、会社ではそうなのかも知れませんが、私に対しても妻を呼び捨てにする事に良い気持ちはしませんでしたが、香澄の事を考えると邪険にも出来ません。
〔電話では話せないので、これから一緒に飯でも食いながら話そう。わしの会社を知っているか?会社から500m位北に行った所の右側に“天嵐”という寿司屋が有る。そこで待っているからすぐに来てくれ。〕
そう言い終ると、私の都合も聞かずに一方的に電話を切ってしまい、余りの強引さや、会社ではそうなのかも知れませんが、私に対しても妻を呼び捨てにする事に良い気持ちはしませんでしたが、香澄の事を考えると邪険にも出来ません。
妻の携帯に電話しましたが電源が切られていたので、いつもの様に実家に行っていると思い、一応そちらにも電話しましたがやはり出ません。それと言うのも、義父は心臓の病気になり入院していたのですが、今は自宅で義母が看ており、妻はほとんど毎日仕事が終わると実家に行っていました。それに義父の心臓にはペースメーカーが入れてあるので、実家にいる時は携帯を切っています。
建設会社(河北組)の建物は、隣街に有る妻の実家に行く途中の国道沿いに有り、建物自体はそう大きくはないのですが、周りがほとんど田んぼで、わりと目立つために以前から知っていました。そこを通り過ぎて寿司屋に着いた。河北社長の名前を告げるとすぐに個室に案内されると、そこには高そうなスーツを着た小太りの男が、大皿に盛られたハマグリを手掴みでガツガツと食べています。
〔すまんな。少し待ってくれ。〕
初対面なのに、それも自分から呼び出しておいて、なんて失礼な奴だと思いながらも、少ない髪に垂れそうなほど整髪料を付けてオールバックにしている頭と、異様に大きく突き出たお腹で汗を掻きながら、必死に食べている姿が何処か滑稽で、そんな姿を私が見詰めながら待っていました。
それで、ようやく食べ終わっておしぼりで手を拭きながら河北社長が口を開く。
初対面なのに、それも自分から呼び出しておいて、なんて失礼な奴だと思いながらも、少ない髪に垂れそうなほど整髪料を付けてオールバックにしている頭と、異様に大きく突き出たお腹で汗を掻きながら、必死に食べている姿が何処か滑稽で、そんな姿を私が見詰めながら待っていました。
それで、ようやく食べ終わっておしぼりで手を拭きながら河北社長が口を開く。
〔悪かったな。わしは酒が呑めんのにハマグリの酒蒸しには目が無くて、温かい内に全部食ってしまわないと気が済まん。女のハマグリはもっと大好物だが。ワッハハハハハハ。おーい、ビールと料理を持って来てくれ。〕
テーブルの上には伊勢海老のお造りなどの豪華な料理が並びます。
社長から、ビールを勧められますが
「車なので、アルコールはご遠慮します。それよりも妻が何かご迷惑でもお掛けしましたのでしょうか?」
〔そう焦らずに料理を食べてくれ。人間、腹が減っていては短気になる。〕
「いいえ。先に要件を聞かせて頂かないと、落ち着いてご馳走にはなれません。」
私(渡部篤史)は河北社長と一緒に食事をする気に成れず、早く帰りたくて焦っていました。 第2話へ続く
テーブルの上には伊勢海老のお造りなどの豪華な料理が並びます。
社長から、ビールを勧められますが
「車なので、アルコールはご遠慮します。それよりも妻が何かご迷惑でもお掛けしましたのでしょうか?」
〔そう焦らずに料理を食べてくれ。人間、腹が減っていては短気になる。〕
「いいえ。先に要件を聞かせて頂かないと、落ち着いてご馳走にはなれません。」
私(渡部篤史)は河北社長と一緒に食事をする気に成れず、早く帰りたくて焦っていました。 第2話へ続く
20160227
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