長4〔公認デート〕その14
長4〔公認デート〕その14
その13
更に30分後くらいに玄関が開く音がして、妻(斎藤詩穂:さいとう・しほ:29歳)が帰って来た。遅い時間だったので、詩穂は俺(斎藤裕樹:さいとう・ひろき:29歳)が起きていることにビックリして、『まだ起きていたの? ただいま。』って呆れたように笑っている。
詩穂は高階健吾(たかしな・けんご:24歳)から、〔俺が返してくれと電話してきた〕と言われていなかったのだろう。それから訊いてもいないのに、『友達は別に大丈夫だったよ。そうなの昔から大袈裟なんだよね。』って言うと、俺に抱きついてきてキスをせがんだり、酔っているのかと思えるくらい甘えてきた。しきりと俺のことを『好きだよ。』と甘い声で囁いてきた。
俺は正直、今回の件について言及すべきか迷っている。《このまま詩穂には何も言わずに、健吾にだけ「もう詩穂には会うな!」と言えば良いんじゃないか?》と思ったからだ。ただ俺が変な顔をしていたのか(多分ちょっと泣きそうだったのだと思う。)詩穂が『どうしたの?』って怪訝な表情で聞いてきたので、もう覚悟を決める。
一方、妻もその時点で、俺が色々と知っていることを察したのかも・・・・詩穂は神妙な顔で俯(うつむ)いて、そのまま黙っていた。しかし俺も何を言えばいいのかわからなく。しばらく変な静寂が流れる。《ただ、俺は詩穂も健吾も責めるつもりは無い。完全に俺の自業自得だったから。しかしながら今後はもう健吾に会うのは止めて欲しい。俺とはこれからも円満に夫婦を続けていってほしい。》というのが俺の望みだった。
それでも、『健吾の方が好き』って言われるんじゃないか? という不安で泣きそうだったし手足も震えていた。もう本当に俺はヘタレなのです。それで、最初に出た言葉が「ごめん。」だった。
確かに今回の件は俺が悪いのだけど、《嘘をついてまで他の男の家に泊りに行っていた妻に謝る旦那ってどうよ。》とは思う。というか何で謝ったのかよくわからない。とにかく俺は、次に何を言えばいいのかわからくなっていた。仕方なく、無言で先程の健吾とのラインを詩穂に見せる。それを見た詩穂は、声も無く『あぁ・・・・』って感じで、それ程大きなリアクションは無い。
それでも詩穂は、こんな悲痛な表情は見たこと無いってくらい辛そうに顔を歪めていた。また少しの静寂の後、詩穂が自分からぽつぽつと話してくれる。ただ言い訳はしなかった。俺もそこでようやく率直に「別れたい?」と訊きました。
詩穂は驚いた表情で俺を見上げて、ぽろぽろと泣き出す。よくよく考えると、詩穂の泣いたところを見たのは、長い付き合いだけどプロポーズをした時だけだと思う。詩穂は俺の胸に顔を強く押し付けて、『そんなわけない、そんなわけないよ。』って何度も何度も首を振りながら小さな声で繰り返す。それから『違うの、違うの。』って繰り返していた。
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2017/11/13
その13
更に30分後くらいに玄関が開く音がして、妻(斎藤詩穂:さいとう・しほ:29歳)が帰って来た。遅い時間だったので、詩穂は俺(斎藤裕樹:さいとう・ひろき:29歳)が起きていることにビックリして、『まだ起きていたの? ただいま。』って呆れたように笑っている。
詩穂は高階健吾(たかしな・けんご:24歳)から、〔俺が返してくれと電話してきた〕と言われていなかったのだろう。それから訊いてもいないのに、『友達は別に大丈夫だったよ。そうなの昔から大袈裟なんだよね。』って言うと、俺に抱きついてきてキスをせがんだり、酔っているのかと思えるくらい甘えてきた。しきりと俺のことを『好きだよ。』と甘い声で囁いてきた。
俺は正直、今回の件について言及すべきか迷っている。《このまま詩穂には何も言わずに、健吾にだけ「もう詩穂には会うな!」と言えば良いんじゃないか?》と思ったからだ。ただ俺が変な顔をしていたのか(多分ちょっと泣きそうだったのだと思う。)詩穂が『どうしたの?』って怪訝な表情で聞いてきたので、もう覚悟を決める。
一方、妻もその時点で、俺が色々と知っていることを察したのかも・・・・詩穂は神妙な顔で俯(うつむ)いて、そのまま黙っていた。しかし俺も何を言えばいいのかわからなく。しばらく変な静寂が流れる。《ただ、俺は詩穂も健吾も責めるつもりは無い。完全に俺の自業自得だったから。しかしながら今後はもう健吾に会うのは止めて欲しい。俺とはこれからも円満に夫婦を続けていってほしい。》というのが俺の望みだった。
それでも、『健吾の方が好き』って言われるんじゃないか? という不安で泣きそうだったし手足も震えていた。もう本当に俺はヘタレなのです。それで、最初に出た言葉が「ごめん。」だった。
確かに今回の件は俺が悪いのだけど、《嘘をついてまで他の男の家に泊りに行っていた妻に謝る旦那ってどうよ。》とは思う。というか何で謝ったのかよくわからない。とにかく俺は、次に何を言えばいいのかわからくなっていた。仕方なく、無言で先程の健吾とのラインを詩穂に見せる。それを見た詩穂は、声も無く『あぁ・・・・』って感じで、それ程大きなリアクションは無い。
それでも詩穂は、こんな悲痛な表情は見たこと無いってくらい辛そうに顔を歪めていた。また少しの静寂の後、詩穂が自分からぽつぽつと話してくれる。ただ言い訳はしなかった。俺もそこでようやく率直に「別れたい?」と訊きました。
詩穂は驚いた表情で俺を見上げて、ぽろぽろと泣き出す。よくよく考えると、詩穂の泣いたところを見たのは、長い付き合いだけどプロポーズをした時だけだと思う。詩穂は俺の胸に顔を強く押し付けて、『そんなわけない、そんなわけないよ。』って何度も何度も首を振りながら小さな声で繰り返す。それから『違うの、違うの。』って繰り返していた。
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2017/11/13
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