長7「吸い取られていく」第3回
長7「吸い取られていく」第3回
第2回
「どんなすごい家なんだろうなぁ~。」
『そりゃもう溜息が出るわよ。なにせ部屋が8つもあるんだから。』
和久井家とはそれまで親しい付き合いをしていたのに、転居後は、あれやこれやで何かと都合がつかず、妻(永田奈緒:ながた・なお:31歳)は何度かお邪魔していたものの、僕(永田茂樹:ながた・しげき:34歳)と子供たちの勇樹(ゆうき:7歳)と直樹(なおき:4歳)は、初めての訪問になる。
“ピンポーン” インターフォンを押すや否や、玄関の扉が開いて和久井瑞希(わくい・みずき:7歳)ちゃんが飛び出してきた。[いらっしゃい! 勇樹くーん!、直樹くーん!]両手を振りながら、広い庭を駆けてくる。
「こんにちは。ひさしぶりだね、瑞希ちゃん。」
[あ、直樹くんのパパこんにちは!]
《また一段と可愛くなったなあ》
女の子は父親に似るというが、幸いなことに瑞希ちゃんは美咲さんに瓜二つだ。小学校2年にして、早くもほんのりと女の色気を感じさせるほどになっている。
《こりゃまた将来すごい美人になるな!》
〖あっ! おばちゃんだ!〗
そして和久井美咲(わくい・みさき:32歳)さんの登場。玄関前の階段を軽やかに駆け下りてきた。今年流行のターコイズブルーのワンピースに、純白のエプロン姿。駆けるたび、栗色のセミロングの髪がふわりと風に舞い、五月の陽光と戯れるようにキラキラと輝いている。ドラマならさしずめここで、麗しいピアノの調べなどが奏でられるのだろうか。そびえ立つ白亜の屋敷を背景にして、それはひとつの絵画のように見えた。《綺麗だ・・・》
深い憂いを放つ神秘的な瞳、整った鼻梁、男好きのする少し厚めの唇。まるで絹織りのような細やかな素肌と艶のある美しい髪。久方ぶりに見る美咲さんの美貌はさらに深みを増し、それはもうある種の凄みさえ感じさせるほどになっている。僕は一瞬挨拶の言葉も忘れ、まるで美術品のようなその姿に呆然と見とれてしまっていた。
〚いらっしゃい、永田さんお久しぶりですぅ。うわぁ~勇樹くん大きくなったね。直樹くんももうすっかりお兄ちゃんだ。〛
「あ、こんにちは、おやすみのところお邪魔します。」
〚どうぞ、さぁ入って入ってぇ~。〛
『ねぇ、あなたどう? すごいお宅でしょう。ここに親子三人で暮らしているんだからほんと贅沢よねえ。』
美咲さんばかりを褒め称えているが、うちの奈緒もなかなかどうして結構美人の部類に入ると思う。夫のひいき目かもしれないが、少なくとも“素材”の良さという点なら美咲さんにもそれほど引けをとらないはずだ。ただ、圧倒的な経済力の違いがものをいうのか、女としての”仕上がり”という点になると、かなりの差があると言わざるをえない。一部上場企業の重役である和久井有一(わくい・ゆういち:44歳)氏と、中小企業の係長の僕とでは、3倍以上の年収の違いがあるはずで、そこに親の遺産が転がり込んだとなれば、生活レベルの差はそれこそ月とスッポンである。 第4回に続く
2017/12/08
第2回
「どんなすごい家なんだろうなぁ~。」
『そりゃもう溜息が出るわよ。なにせ部屋が8つもあるんだから。』
和久井家とはそれまで親しい付き合いをしていたのに、転居後は、あれやこれやで何かと都合がつかず、妻(永田奈緒:ながた・なお:31歳)は何度かお邪魔していたものの、僕(永田茂樹:ながた・しげき:34歳)と子供たちの勇樹(ゆうき:7歳)と直樹(なおき:4歳)は、初めての訪問になる。
“ピンポーン” インターフォンを押すや否や、玄関の扉が開いて和久井瑞希(わくい・みずき:7歳)ちゃんが飛び出してきた。[いらっしゃい! 勇樹くーん!、直樹くーん!]両手を振りながら、広い庭を駆けてくる。
「こんにちは。ひさしぶりだね、瑞希ちゃん。」
[あ、直樹くんのパパこんにちは!]
《また一段と可愛くなったなあ》
女の子は父親に似るというが、幸いなことに瑞希ちゃんは美咲さんに瓜二つだ。小学校2年にして、早くもほんのりと女の色気を感じさせるほどになっている。
《こりゃまた将来すごい美人になるな!》
〖あっ! おばちゃんだ!〗
そして和久井美咲(わくい・みさき:32歳)さんの登場。玄関前の階段を軽やかに駆け下りてきた。今年流行のターコイズブルーのワンピースに、純白のエプロン姿。駆けるたび、栗色のセミロングの髪がふわりと風に舞い、五月の陽光と戯れるようにキラキラと輝いている。ドラマならさしずめここで、麗しいピアノの調べなどが奏でられるのだろうか。そびえ立つ白亜の屋敷を背景にして、それはひとつの絵画のように見えた。《綺麗だ・・・》
深い憂いを放つ神秘的な瞳、整った鼻梁、男好きのする少し厚めの唇。まるで絹織りのような細やかな素肌と艶のある美しい髪。久方ぶりに見る美咲さんの美貌はさらに深みを増し、それはもうある種の凄みさえ感じさせるほどになっている。僕は一瞬挨拶の言葉も忘れ、まるで美術品のようなその姿に呆然と見とれてしまっていた。
〚いらっしゃい、永田さんお久しぶりですぅ。うわぁ~勇樹くん大きくなったね。直樹くんももうすっかりお兄ちゃんだ。〛
「あ、こんにちは、おやすみのところお邪魔します。」
〚どうぞ、さぁ入って入ってぇ~。〛
『ねぇ、あなたどう? すごいお宅でしょう。ここに親子三人で暮らしているんだからほんと贅沢よねえ。』
美咲さんばかりを褒め称えているが、うちの奈緒もなかなかどうして結構美人の部類に入ると思う。夫のひいき目かもしれないが、少なくとも“素材”の良さという点なら美咲さんにもそれほど引けをとらないはずだ。ただ、圧倒的な経済力の違いがものをいうのか、女としての”仕上がり”という点になると、かなりの差があると言わざるをえない。一部上場企業の重役である和久井有一(わくい・ゆういち:44歳)氏と、中小企業の係長の僕とでは、3倍以上の年収の違いがあるはずで、そこに親の遺産が転がり込んだとなれば、生活レベルの差はそれこそ月とスッポンである。 第4回に続く
2017/12/08
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