特名Ⅱ 〖俺と嫁 嫉妬と興奮の狭間に〗第32章
〔すいません、柴﨑(将嗣:しばさき・まさし:32歳)さん。〕と後藤和真(ごとう・かずま:30歳)さんが猿芝居を打ってきた。
「もうやりました?」
〔はい。6時位からです。美味しく頂きましたよ。〕
雰囲気作りが上手い後藤さんはいかにも食事の話っぽく話しているのだけど、明らかに嫁(柴﨑博美:しばさき・ひろみ:27歳)とセックスしたって事を示している。こういう返しがすぐに出てくるのが凄いけど、俺はその時はソファに座りながら心臓がバクバクしていて、それどころじゃなかった。
後藤さんは俺の返事もない中でに構わず一人で適当な事を話した後、〔柴﨑さん、博美さんに別の部屋をとりましたのでご安心ください。明日帰る時に又連絡します。〕と言って電話が切れる。今までの2回の経験で大分慣れたかと思ったけど、その電話の後は本当に焦った。自分が望んだ事なのに俺は苛々と焦燥感で、あーーーーー!と頭掻き毟ったり、意味もなくテレビをパチパチ付けたり消したりする。
テレビが付いていたら音が煩(うるさ)くて消してしまった。しかし静かな空間に時計の“カチ、カチ”って音が苛々する。俺は部屋の中でビールを飲みながら、何の変化もみせないスマートフォンを見つめていた。
何度も何度もこの〖貸し出し〗を後悔して、嫁のスマートフォンに何度も掛けようとする。この時が人生で一番スマートフォンを眺めた時間だったかもしれない。それでも博美にばかり罪を負わせようとしている贖罪から、「気分が良くなったら後藤にマッサージをしてもらってもいいよ。」とメールを打つ。30分くらいしてスマートフォンの着信音が鳴った。発信者は後藤さんだったから俺は一瞬で電話にでる。
スマホを耳につけた瞬間、がさがさって音の後に嫁の喘ぎ声がした。しかもバックの時の目茶目茶感じている声。博美が逝(い)く寸前の、でもこれまでこんなに大きな声は聞いたこと無いって声である。
嫁が逝く時には、『逝く! 逝く!』って何度も繰り返すのだけど電話の向こうからその逝く声が、『やだ逝くっ! 逝きそう後藤さん、逝きそう。あっ! 逝っちゃう! 逝きそう! 逝きそう!逝っちゃう!』博美の喘ぎ声と一緒に後藤さんが博美の名前を呼んだ瞬間に通話が切れた。その時は心臓が締め付けられるみたいだったけど、正直に言うと一瞬で物凄く興奮をする。これも後藤さんの俺に対する雰囲気作りだったのかもしれないと思った。(Mの感性に響く。と同時に嫁の歓喜に贖罪されて心が穏やかにもなる。)
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20200410
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