〔トライアングル〕 第5章の10〖エピソードⅢ-10〗
中A〔トライアングル〕 第5章の10〖エピソードⅢ-10〗
〔ごめん。俺、なんか変な事言ってるね。ごめん・・・・。〕
『・・・・・・・・。・・・・・・・・。』
何となく場が暗くなってしまったようだ。親友の英人(ひでと)が、〔もうそろそろ帰ろうかな。〕と言いながら立ち上がった時、ふいに妻の翠(みどり)が言った。
『まぁ、・・・・。気持ち良いよ・・・・。』
〔えっ?〕
『・・・・いいところには当たるかなって、思うけど。』
英人がベッドに戻って翠の顔を間近でガン見する。
『ちょっと、恐いよ、その顔(笑)。』
〔ごめん。いや、という事は、智浩よりも気持ち良いって事?〕
『もう!そんなに比べたいの(笑)。あのね、智浩とはそんなんじゃないの。私達、夫婦なんだもん。』
〔意味が分かんないんだけど・・・・。〕
『あのね、夫婦ってさ、いつも一緒なんだよ?朝起きても隣に智浩の顔。寝る時も智浩の腕の中。本当に安心できるんだよ?ケンカもするし、笑い合ったりもするし、一緒に泣く時だってある。智浩は私の一部だし、多分智浩も同じ事を思ってくれているはず。』
今まで聞いた事もない、正真正銘の翠の胸の内が語られ始めた。面と向かって「愛してる。」なんて事も恥ずかしくて殆ど言えない俺達だから、ここからの会話は全神経を耳に集中して聞いた。
〔なんか、難しいな。男と女って、そんなもんか・・・・。〕
『じゃあね、私達が付き合っていた時はどうだった?正直いうと、確かにセックスは良かったかもしれない。でも私、安心する事はなかったんだよ。いつも振られるんじゃないかとビクビクしていた。ゆったりとした時間なんかなかったと思う。いつも飛ばしまくりみたいな。ついて行くのが大変だった。いつも貴方の顔色を伺って、貴方に嫌われないようにしなきゃって。そればかり考えていたんだよ。』
〔ごめん、おれ我儘だったからな・・・・。〕
『ううん、いいの。私はそれでも貴方の事が好きだったんだもん。でもね、貴方に別れを切り出されて、絶対にヤダと思う気持ちと、逆に、ああー、これで解放されるかもーって。どこか安心できるかもって。そんな気持ちにもなった。凄く矛盾しているけどね。』
〔あの、気に障るかも知れないけど、おれと別れたから智浩と付き合ったの?それともちゃんと智浩の事、好きになったから?〕英人が俺の聞きたい事をズバリ翠に問い掛ける。俺は鼓動がこれ以上ないくらい激しくなり、喉も渇ききり、目がチカチカする程、感極まっていた。
『好きじゃないと絶対に付き合わないよ、私は。だから少なくとも貴方に捨てられたから智浩に、っていうのは絶対にない。私は智浩の事が大好きだし、世の中で一番大切な人。安心して一生を添い遂げられる人。』
〔ごめん、俺凄く安心した・・・・。なんか、智浩はいい奴だからな。ゴメン、俺、涙が出そう。〕
『変なの!・・・・。でもね、貴方のそういう所、私は知っていたよ。だから大好きだった。』
二人のやりとりを見て、俺も涙が出そうだった。オドオドする英人に比べて堂々と自分の思いを喋る翠が、自分の妻が誇らしくも感じた。“この女と一緒になって良かった。”と思った。
2014/12/18
〔ごめん。俺、なんか変な事言ってるね。ごめん・・・・。〕
『・・・・・・・・。・・・・・・・・。』
何となく場が暗くなってしまったようだ。親友の英人(ひでと)が、〔もうそろそろ帰ろうかな。〕と言いながら立ち上がった時、ふいに妻の翠(みどり)が言った。
『まぁ、・・・・。気持ち良いよ・・・・。』
〔えっ?〕
『・・・・いいところには当たるかなって、思うけど。』
英人がベッドに戻って翠の顔を間近でガン見する。
『ちょっと、恐いよ、その顔(笑)。』
〔ごめん。いや、という事は、智浩よりも気持ち良いって事?〕
『もう!そんなに比べたいの(笑)。あのね、智浩とはそんなんじゃないの。私達、夫婦なんだもん。』
〔意味が分かんないんだけど・・・・。〕
『あのね、夫婦ってさ、いつも一緒なんだよ?朝起きても隣に智浩の顔。寝る時も智浩の腕の中。本当に安心できるんだよ?ケンカもするし、笑い合ったりもするし、一緒に泣く時だってある。智浩は私の一部だし、多分智浩も同じ事を思ってくれているはず。』
今まで聞いた事もない、正真正銘の翠の胸の内が語られ始めた。面と向かって「愛してる。」なんて事も恥ずかしくて殆ど言えない俺達だから、ここからの会話は全神経を耳に集中して聞いた。
〔なんか、難しいな。男と女って、そんなもんか・・・・。〕
『じゃあね、私達が付き合っていた時はどうだった?正直いうと、確かにセックスは良かったかもしれない。でも私、安心する事はなかったんだよ。いつも振られるんじゃないかとビクビクしていた。ゆったりとした時間なんかなかったと思う。いつも飛ばしまくりみたいな。ついて行くのが大変だった。いつも貴方の顔色を伺って、貴方に嫌われないようにしなきゃって。そればかり考えていたんだよ。』
〔ごめん、おれ我儘だったからな・・・・。〕
『ううん、いいの。私はそれでも貴方の事が好きだったんだもん。でもね、貴方に別れを切り出されて、絶対にヤダと思う気持ちと、逆に、ああー、これで解放されるかもーって。どこか安心できるかもって。そんな気持ちにもなった。凄く矛盾しているけどね。』
〔あの、気に障るかも知れないけど、おれと別れたから智浩と付き合ったの?それともちゃんと智浩の事、好きになったから?〕英人が俺の聞きたい事をズバリ翠に問い掛ける。俺は鼓動がこれ以上ないくらい激しくなり、喉も渇ききり、目がチカチカする程、感極まっていた。
『好きじゃないと絶対に付き合わないよ、私は。だから少なくとも貴方に捨てられたから智浩に、っていうのは絶対にない。私は智浩の事が大好きだし、世の中で一番大切な人。安心して一生を添い遂げられる人。』
〔ごめん、俺凄く安心した・・・・。なんか、智浩はいい奴だからな。ゴメン、俺、涙が出そう。〕
『変なの!・・・・。でもね、貴方のそういう所、私は知っていたよ。だから大好きだった。』
二人のやりとりを見て、俺も涙が出そうだった。オドオドする英人に比べて堂々と自分の思いを喋る翠が、自分の妻が誇らしくも感じた。“この女と一緒になって良かった。”と思った。
2014/12/18
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