中Ⅱ31『しかし今だけは』第2回
中Ⅱ31『しかし今だけは』第2回
第1回 2018/05/11
山口剛史(やまぐち・つよし:22歳)と片倉樹里(かたくら・じゅり:22歳)の出会いはお互い社会人一年目の時である。いわゆる合コンと呼ばれる集団行動に、数合わせのために強引に連れられてきた二人が出会う。剛史は早く帰って、作りかけのジオラマを作りたかったし、樹里は樹里で、下心の透けた男と女のおべんちゃら合戦にうんざりとしていた。どこか輪に入りきれなかった二人が、ぽつぽつと喋りだし、そして連絡先を交換するに至ったのはまさに僥倖といえる。
その日の合コンでは、他の男性にとっても樹里は断トツの上物だったため、後日嫉妬のからかいを彼が受けたのは言うまでも無かった。それまで女性と交際経験が無かった剛史だったが、樹里のあまり女性を意識させない性格が、彼のような朴念仁には居心地が良かったのだろう。樹里もまた、そんな少し変わった、しかし誠実で優しい彼を気に入り、最初は友達感覚で続いていたメール交換は、やがて二人で遊びに出かけるまでに発展する。(こんなに楽しい休日の過ごし方があったのだろうか)と、剛史は感激すらした。そして樹里も、そんな彼を変な人と笑いながらもいつの間にか、彼と会える休日を楽しみに思うようになっていく。
そんな二人が恋に落ち、そして愛し合うまでにはゆっくりとした時間が流れた。最初は嫉妬をしていた剛史の同僚や、そしてまた樹里の友人も、そんな彼らにやきもきしてか、野次同様の応援をしだす。本人達としては、ぎゃーぎゃー五月蝿い周りなどお構いなしに、居心地の良い友達付き合いを、マイペースで続けていた。
剛史が、人生初の告白をしたのは、樹里と出会ってから半年後である。彼女の返事はあっさりとしたもので、何を今更、そんな空気すら漂っていたくらいであった。そしてプロポーズに至っては、剛史の冷蔵庫が壊れたので、二人で家電売り場を見ていて、『どうせなら大きいのを買って結婚しようよ。』って、まるで晩御飯に回転寿司を誘うくらいの軽さで、ついつい樹里が口から漏らしてしまう。剛史も剛史で、「それもそうだな。」と、何のてらいもなく返事をしていた。
そして昨年に結婚、22歳から始まった彼らの付き合いは、今年で5年になる。二人の未来に、一体何の障害があろうかと、誰もが思った。しかしそんな楽観的な未来予想図は、いとも簡単に崩れる。剛史の勤めていた会社が倒産したのだ。その事態に直面した当初、二人は慌てふためる事はなく。彼はこんな時だからこそ、どっしりと構えなければならないと覚悟を決めていた。そして樹里も、そんな夫を支えなければと、新婚気分そっちのけで気を引き締める。
しかし、この世の中、何かを捨てなければ、得る事は中々に難しい。そして独身ならともかく、守らなければならない家族がいる彼には、希望職種で我侭を言う口など有りはしなかったのだ。 第3回へ続く
2018/07/06
第1回 2018/05/11
山口剛史(やまぐち・つよし:22歳)と片倉樹里(かたくら・じゅり:22歳)の出会いはお互い社会人一年目の時である。いわゆる合コンと呼ばれる集団行動に、数合わせのために強引に連れられてきた二人が出会う。剛史は早く帰って、作りかけのジオラマを作りたかったし、樹里は樹里で、下心の透けた男と女のおべんちゃら合戦にうんざりとしていた。どこか輪に入りきれなかった二人が、ぽつぽつと喋りだし、そして連絡先を交換するに至ったのはまさに僥倖といえる。
その日の合コンでは、他の男性にとっても樹里は断トツの上物だったため、後日嫉妬のからかいを彼が受けたのは言うまでも無かった。それまで女性と交際経験が無かった剛史だったが、樹里のあまり女性を意識させない性格が、彼のような朴念仁には居心地が良かったのだろう。樹里もまた、そんな少し変わった、しかし誠実で優しい彼を気に入り、最初は友達感覚で続いていたメール交換は、やがて二人で遊びに出かけるまでに発展する。(こんなに楽しい休日の過ごし方があったのだろうか)と、剛史は感激すらした。そして樹里も、そんな彼を変な人と笑いながらもいつの間にか、彼と会える休日を楽しみに思うようになっていく。
そんな二人が恋に落ち、そして愛し合うまでにはゆっくりとした時間が流れた。最初は嫉妬をしていた剛史の同僚や、そしてまた樹里の友人も、そんな彼らにやきもきしてか、野次同様の応援をしだす。本人達としては、ぎゃーぎゃー五月蝿い周りなどお構いなしに、居心地の良い友達付き合いを、マイペースで続けていた。
剛史が、人生初の告白をしたのは、樹里と出会ってから半年後である。彼女の返事はあっさりとしたもので、何を今更、そんな空気すら漂っていたくらいであった。そしてプロポーズに至っては、剛史の冷蔵庫が壊れたので、二人で家電売り場を見ていて、『どうせなら大きいのを買って結婚しようよ。』って、まるで晩御飯に回転寿司を誘うくらいの軽さで、ついつい樹里が口から漏らしてしまう。剛史も剛史で、「それもそうだな。」と、何のてらいもなく返事をしていた。
そして昨年に結婚、22歳から始まった彼らの付き合いは、今年で5年になる。二人の未来に、一体何の障害があろうかと、誰もが思った。しかしそんな楽観的な未来予想図は、いとも簡単に崩れる。剛史の勤めていた会社が倒産したのだ。その事態に直面した当初、二人は慌てふためる事はなく。彼はこんな時だからこそ、どっしりと構えなければならないと覚悟を決めていた。そして樹里も、そんな夫を支えなければと、新婚気分そっちのけで気を引き締める。
しかし、この世の中、何かを捨てなければ、得る事は中々に難しい。そして独身ならともかく、守らなければならない家族がいる彼には、希望職種で我侭を言う口など有りはしなかったのだ。 第3回へ続く
2018/07/06
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