中23<気持ち>第9回
中23<気持ち>第9回
第8回 2016/01/10
隠し事を持っていると、些細な事にもビクビクしなければなりません。どんなに旨く隠しているつもりでも、もしもと思う気持ちが働くのでした。今の妻(来栖有紀:くるす・ゆき:39歳)は、その恐怖に怯(おび)えているのかも?
「この前の電話だけどな、誰だか分かったよ。見せたいものがあるんだ。」
私(来栖正敏:くるす・まさとし:43歳)が着替えも済ませずソファーに座り、深刻な声で溜息を吐きながらですから都合の悪い話なのは感づいているはずです。こちらに目を向ける妻の表情に不安の色を隠せないのが分かりました。
「悪いとは思ったが、色々調べさせてもらったよ。」
有紀の視線に落ち着きがありません。
「電話の話をした時、有紀は誰だか分かっていたんだろう?」
『・・・いいえ・・・。』
その後に何か続けたかったのでしょうが、言葉を飲み込んだようでした。これから私がど
んな話をしようとしているのか分からない以上、余計な事を話さない方が得策だと思ったのでしょう。
「回りくどい話はしない。」
興信所の調書を妻の前に突きつけたのでした。
「食事に誘った時に見ちゃったって言ったよな。変な電話の後だったんでな。まさかと思いながらも疑ってしまった。あの後電話も来ないし、お前の様子も不自然だった。真面目(まじめ)過ぎたものな。それで今回の出張に目を付けたんだ。何かあるんじゃないかとね。でも、信じたいと思う気持ちが強かった。だから調べさせていたんだよ。ちゃんと目を通して答えてくれないか。」
有紀はゆっくりと封筒を開いて中の調書を見ている表情が暗くなり、顔色がみるみる青白くなっていきます。
「この前の男(石川信夫:いしかわ・のぶお:27歳)と一緒だったんだな。」
『・・・・・・。』
「黙っていたって、そこに全てが記されている。ホテルの部屋も一緒だったんだろう。言い逃れは出来ないよな。」
何か良い言い訳を考えようとしても、興信所の調書は完璧でした。言えば言うほど墓穴を掘るでしょう。そのくらいは妻も気付いていました。
『何時から疑っていたの?』
視線を逸らし、時には合わせて聞いてきます。
「あの電話からだ。俺の番号を教えたのは、お前か?」
『違うわ。教えたりしない・・・。』
「そうか。まぁ、いいや。だけど何時から、こんな関係になった?」
『・・・・・・。』
「俺と別れたいのか?」
『・・・そんな事、思っていないわ・・・。』
妻の有紀はうつむいて呟くように答えました。 第10回に続く
2017/06/02
第8回 2016/01/10
隠し事を持っていると、些細な事にもビクビクしなければなりません。どんなに旨く隠しているつもりでも、もしもと思う気持ちが働くのでした。今の妻(来栖有紀:くるす・ゆき:39歳)は、その恐怖に怯(おび)えているのかも?
「この前の電話だけどな、誰だか分かったよ。見せたいものがあるんだ。」
私(来栖正敏:くるす・まさとし:43歳)が着替えも済ませずソファーに座り、深刻な声で溜息を吐きながらですから都合の悪い話なのは感づいているはずです。こちらに目を向ける妻の表情に不安の色を隠せないのが分かりました。
「悪いとは思ったが、色々調べさせてもらったよ。」
有紀の視線に落ち着きがありません。
「電話の話をした時、有紀は誰だか分かっていたんだろう?」
『・・・いいえ・・・。』
その後に何か続けたかったのでしょうが、言葉を飲み込んだようでした。これから私がど
んな話をしようとしているのか分からない以上、余計な事を話さない方が得策だと思ったのでしょう。
「回りくどい話はしない。」
興信所の調書を妻の前に突きつけたのでした。
「食事に誘った時に見ちゃったって言ったよな。変な電話の後だったんでな。まさかと思いながらも疑ってしまった。あの後電話も来ないし、お前の様子も不自然だった。真面目(まじめ)過ぎたものな。それで今回の出張に目を付けたんだ。何かあるんじゃないかとね。でも、信じたいと思う気持ちが強かった。だから調べさせていたんだよ。ちゃんと目を通して答えてくれないか。」
有紀はゆっくりと封筒を開いて中の調書を見ている表情が暗くなり、顔色がみるみる青白くなっていきます。
「この前の男(石川信夫:いしかわ・のぶお:27歳)と一緒だったんだな。」
『・・・・・・。』
「黙っていたって、そこに全てが記されている。ホテルの部屋も一緒だったんだろう。言い逃れは出来ないよな。」
何か良い言い訳を考えようとしても、興信所の調書は完璧でした。言えば言うほど墓穴を掘るでしょう。そのくらいは妻も気付いていました。
『何時から疑っていたの?』
視線を逸らし、時には合わせて聞いてきます。
「あの電話からだ。俺の番号を教えたのは、お前か?」
『違うわ。教えたりしない・・・。』
「そうか。まぁ、いいや。だけど何時から、こんな関係になった?」
『・・・・・・。』
「俺と別れたいのか?」
『・・・そんな事、思っていないわ・・・。』
妻の有紀はうつむいて呟くように答えました。 第10回に続く
2017/06/02
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