中Ⅱ17[自己犠牲と長続き]第三章その3(13)
中Ⅱ17[自己犠牲と長続き]第三章その3(13)
第三章その2(12)
この場のように、心の中に負い目とときめき・・・・それぞれ、異なる心持ちの三人の男女が顔をそろえると、これから始まることに、胸をときめかせている者どうしの会話が幅を利かせても仕方がないのでしょう。
それに、私(山下一雄:やました・かずお:49歳)の方が取り違いしているのかもしれないが、黒沢雅之(くろさわ・まさゆき:45歳)さんが妻(山下芳恵:やました・よしえ:45歳)に言った〔だいじょうぶですか?〕という言葉は、多分、私のことが気がかりじゃないかと尋ねているのだと思う。
でも、今夜、枕を並べることになる男の口から出た言葉ともなれば、妻が、その労わりの言葉が自分の方に向いていると思っても不思議ではありません。妻に対するそんな僻(ひが)みが、言葉になって表れるのでしょう。食事中 妻が私に相槌を求めてきても、ついつい、見捨てたような・・ 妻を困らせるような返事しかできませんでした。
そうこうしているうちに、気まずい感じの食事が終わって、私たちはホテルに到着します。宿帳には黒沢さん夫婦の名前を書き、続柄は関係ないが、車二台でやって来たので、もし、何か言われた時は、私は妻の兄ということにしてあった。
黒沢さんが、ホテルのフロントで、チェックインの手続きをしている間、やっと、妻と二人だけになれる時間が訪れます。
《妻と二人っきりになれる時間・・・・そんな貴重な時間は、この先あるはずもない・・・・妻と話すことに制約があるという意味では今もそうかもしれないが、私たちに与えられた部屋に足を一歩踏み入れた時から、夫という私の肩書は、完全に消え失せてしまう》
「もうすぐ、部屋に入るんだけど、心の準備はできてんの?」
『う・・ん、あなたの方こそ、だいじょうぶ? だって、今夜、三人一緒よ。』
「その場になってみないとわからないけど、我慢するさ。」
『そ・・う? わたしは、多分・・・・そうなっても、我慢できないと思う。きっと、あなたにつらい思いをさせるわ。』
「そんなこと、気にしなくていいよ。体が感じるまま、素直になれば・・・。」
『ほんとに、どうなっちゃうか自信がないの・・・・それでもいい?』
「いいさ。それが、俺の願いなんだから・・・。」
『でも、約束・・・・ちゃんと守ってね。』
「おまえの方こそな・・今夜は、黒沢さんが旦那なんだってこと、忘れるなよ。」
『そんな風に思えるかなぁ。だって、これまで、いい人はあなた一人だけだったもん。』
「俺のことは忘れて、再婚したんだって思えよ。」
『うん、そうする。でも、そんな言葉 聞くと、何だか胸がどきどきしてきたわ。』
実際に、妻が再婚するようなことにでもなったとしたら・・・心にぽっかり穴が開いたような状態になることはわかりきっているのに、そんな言葉を妻に投げかける私・・・そして、私のことを愛おしく思いながらも、私との夫婦生活では味わえない、別次元の悦びに身を任せようと心を定めた妻・・・私たちの会話はほんの片言でしたが、これから後に妻との間で交わされた会話に比べれば、とても満たされたものでした。 第三章その4(14)に
2017/11/19
第三章その2(12)
この場のように、心の中に負い目とときめき・・・・それぞれ、異なる心持ちの三人の男女が顔をそろえると、これから始まることに、胸をときめかせている者どうしの会話が幅を利かせても仕方がないのでしょう。
それに、私(山下一雄:やました・かずお:49歳)の方が取り違いしているのかもしれないが、黒沢雅之(くろさわ・まさゆき:45歳)さんが妻(山下芳恵:やました・よしえ:45歳)に言った〔だいじょうぶですか?〕という言葉は、多分、私のことが気がかりじゃないかと尋ねているのだと思う。
でも、今夜、枕を並べることになる男の口から出た言葉ともなれば、妻が、その労わりの言葉が自分の方に向いていると思っても不思議ではありません。妻に対するそんな僻(ひが)みが、言葉になって表れるのでしょう。食事中 妻が私に相槌を求めてきても、ついつい、見捨てたような・・ 妻を困らせるような返事しかできませんでした。
そうこうしているうちに、気まずい感じの食事が終わって、私たちはホテルに到着します。宿帳には黒沢さん夫婦の名前を書き、続柄は関係ないが、車二台でやって来たので、もし、何か言われた時は、私は妻の兄ということにしてあった。
黒沢さんが、ホテルのフロントで、チェックインの手続きをしている間、やっと、妻と二人だけになれる時間が訪れます。
《妻と二人っきりになれる時間・・・・そんな貴重な時間は、この先あるはずもない・・・・妻と話すことに制約があるという意味では今もそうかもしれないが、私たちに与えられた部屋に足を一歩踏み入れた時から、夫という私の肩書は、完全に消え失せてしまう》
「もうすぐ、部屋に入るんだけど、心の準備はできてんの?」
『う・・ん、あなたの方こそ、だいじょうぶ? だって、今夜、三人一緒よ。』
「その場になってみないとわからないけど、我慢するさ。」
『そ・・う? わたしは、多分・・・・そうなっても、我慢できないと思う。きっと、あなたにつらい思いをさせるわ。』
「そんなこと、気にしなくていいよ。体が感じるまま、素直になれば・・・。」
『ほんとに、どうなっちゃうか自信がないの・・・・それでもいい?』
「いいさ。それが、俺の願いなんだから・・・。」
『でも、約束・・・・ちゃんと守ってね。』
「おまえの方こそな・・今夜は、黒沢さんが旦那なんだってこと、忘れるなよ。」
『そんな風に思えるかなぁ。だって、これまで、いい人はあなた一人だけだったもん。』
「俺のことは忘れて、再婚したんだって思えよ。」
『うん、そうする。でも、そんな言葉 聞くと、何だか胸がどきどきしてきたわ。』
実際に、妻が再婚するようなことにでもなったとしたら・・・心にぽっかり穴が開いたような状態になることはわかりきっているのに、そんな言葉を妻に投げかける私・・・そして、私のことを愛おしく思いながらも、私との夫婦生活では味わえない、別次元の悦びに身を任せようと心を定めた妻・・・私たちの会話はほんの片言でしたが、これから後に妻との間で交わされた会話に比べれば、とても満たされたものでした。 第三章その4(14)に
2017/11/19
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