中Ⅱ17[自己犠牲と長続き]第三章その4(14)
中Ⅱ17[自己犠牲と長続き]第三章その4(14)
第三章その3(13)
間もなく、チェックインを終えた黒沢雅之(くろさわ・まさゆき:45歳)さんが戻ってきて、私たちはラウンジからエレベーターに向かいました。その時、黒沢さんの手が妻(山下芳恵:やました・よしえ:45歳)の腰に回り、優しくエスコートする。狭い空間で三人一緒に佇んでいる間も、交わす言葉なんてあろうはずもなく、妻は黒沢さんの方に寄り添いがちでした。
部屋に向かう間も、黒沢さんから少し距離を置いて後ろに続く妻の姿が、お似合いの夫婦のように見えてしまう。黒沢さんがドア口にキーカードを差し込むと、小さく灯る緑色のランプ・・・それが、二度と後戻りできない世界へ足を踏み入れることへの警報のように思え、急に、私(山下一雄:やました・かずお:49歳)は胸の動悸が激しくなってきます。
通路の浴室とクローゼットを横目に、ツインルームに入った。室内を眺め渡すと、ベッドだけがトリプルユースになっています。数十センチの微妙な距離で隔てられた、セミダブルベッドとソファベッド・・・ソファベッドの方は、二台のセミダブルベッドの足元に据えられ、それよりも九十度、向きを変えてありました。《この大きい方のベッドで妻が男の全てを受け入れる・・あぁ・・・ここで、その白い脚を開くのだ・・・その傍の小さなベッドで、妻の恥態をひっそり眺める》と思うと、隣のベッドのかけ布団のしわまでが艶めかしく見えてきます。
あれこれ思いながらも、黒沢さんの傍にちょこんと座っている妻の姿を見ているまた別の
一コマが思い浮かんできました。あの時、相手の男は黒沢さんではなかったが、男がシャワーを浴びている間、妻と二人きりになります。私は、敢えて私から遠ざかろうとする妻のことがとても愛しく思え、思わず抱きすくめようとしたものだ。
『だめっ、お願い、あなたらしくして・・・・。』
《その時、返ってきた言葉を今も忘れない・・・》今夜は、その時以上にその思いは強いはずだ。これから朝までは黒沢さんと妻が夫婦なのであって、私は、夫という立場を捨てた、ただの傍観者です。これから朝まで、三人一緒に過ごすことになるが、《今となっては、それぞれの想いが叶えられればそれでいい・・・ 》
こんなことを思いながら、その後しばらく、部屋の中でくつろいでいましたが、どうも、二人とも私に遠慮しているのか、事に及ぶタイミングを掴みづらいように見えます。ここはしばらく私が消えた方がいいと判断し、先にお風呂を使わせてもらうことにしました。
私はバスタブに身を沈めながら、一人、物思いにふけます。とうとう、くるところまで来てしまった。これから先、どんな展開が待ち構えているのか知れないが、先程聞いた妻の言葉から察するに、私の願い通りに・・・いや、自分の想い通りに、妻が振る舞ってくれることは間違いなさそうだ。問題なのは、妻の恥態を見た時の私の心構えです。きっと、息づまるような胸苦しさ、狂おしいほどの嫉妬、その他に、失望や孤独感など・・・ありとあらゆる感情が止めどなく溢れてくると思うが、後悔だけはしたくない。 第三章その5(15)に続く 2017/12/05
第三章その3(13)
間もなく、チェックインを終えた黒沢雅之(くろさわ・まさゆき:45歳)さんが戻ってきて、私たちはラウンジからエレベーターに向かいました。その時、黒沢さんの手が妻(山下芳恵:やました・よしえ:45歳)の腰に回り、優しくエスコートする。狭い空間で三人一緒に佇んでいる間も、交わす言葉なんてあろうはずもなく、妻は黒沢さんの方に寄り添いがちでした。
部屋に向かう間も、黒沢さんから少し距離を置いて後ろに続く妻の姿が、お似合いの夫婦のように見えてしまう。黒沢さんがドア口にキーカードを差し込むと、小さく灯る緑色のランプ・・・それが、二度と後戻りできない世界へ足を踏み入れることへの警報のように思え、急に、私(山下一雄:やました・かずお:49歳)は胸の動悸が激しくなってきます。
通路の浴室とクローゼットを横目に、ツインルームに入った。室内を眺め渡すと、ベッドだけがトリプルユースになっています。数十センチの微妙な距離で隔てられた、セミダブルベッドとソファベッド・・・ソファベッドの方は、二台のセミダブルベッドの足元に据えられ、それよりも九十度、向きを変えてありました。《この大きい方のベッドで妻が男の全てを受け入れる・・あぁ・・・ここで、その白い脚を開くのだ・・・その傍の小さなベッドで、妻の恥態をひっそり眺める》と思うと、隣のベッドのかけ布団のしわまでが艶めかしく見えてきます。
あれこれ思いながらも、黒沢さんの傍にちょこんと座っている妻の姿を見ているまた別の
一コマが思い浮かんできました。あの時、相手の男は黒沢さんではなかったが、男がシャワーを浴びている間、妻と二人きりになります。私は、敢えて私から遠ざかろうとする妻のことがとても愛しく思え、思わず抱きすくめようとしたものだ。
『だめっ、お願い、あなたらしくして・・・・。』
《その時、返ってきた言葉を今も忘れない・・・》今夜は、その時以上にその思いは強いはずだ。これから朝までは黒沢さんと妻が夫婦なのであって、私は、夫という立場を捨てた、ただの傍観者です。これから朝まで、三人一緒に過ごすことになるが、《今となっては、それぞれの想いが叶えられればそれでいい・・・ 》
こんなことを思いながら、その後しばらく、部屋の中でくつろいでいましたが、どうも、二人とも私に遠慮しているのか、事に及ぶタイミングを掴みづらいように見えます。ここはしばらく私が消えた方がいいと判断し、先にお風呂を使わせてもらうことにしました。
私はバスタブに身を沈めながら、一人、物思いにふけます。とうとう、くるところまで来てしまった。これから先、どんな展開が待ち構えているのか知れないが、先程聞いた妻の言葉から察するに、私の願い通りに・・・いや、自分の想い通りに、妻が振る舞ってくれることは間違いなさそうだ。問題なのは、妻の恥態を見た時の私の心構えです。きっと、息づまるような胸苦しさ、狂おしいほどの嫉妬、その他に、失望や孤独感など・・・ありとあらゆる感情が止めどなく溢れてくると思うが、後悔だけはしたくない。 第三章その5(15)に続く 2017/12/05
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