中Z【満たされない想い】13回
中Z【満たされない想い】13回
12回 20190417
私(西尾和正:にしお・かずまさ:35歳)は妻(旧姓白藤:恵梨香:しらふじ・えりか:33歳)が本当に家に帰ったのかを確かめるために自宅へ向かいました。家に着くと恵梨香はシャワーを浴びた後らしく髪を乾かしています。
《同僚と寝た痕跡を流すためにこんな時間にシャワーを浴びたのか?》
その時の私の形相にびっくりして妻が尋ねてきました。
『あなた・・・・どうしたの?こんな時間に?・・・・仕事は?』
「仕事どころじゃないんだよ!!・・・・君が出張のたびに同僚に抱かれていると思うと!!」
私はいつの間にか大きな声でそう叫んでいた。
妻の恵梨香は絶句してそのまま私を見つめています。しばらくの間沈黙が続いた。
『・・・・ごめんなさい・・・・。』
静寂を破るように恵梨香がいきなりそうつぶやいた。
「いや、こっちもごめん・・・・。えっ? ご、ごめんなさい・・・・って?」
『いつかあなたに知られるって覚悟していました・・・・。』
思いがけない妻の言葉に私は何も考えられなくなっています。
「出張先で同僚に抱かれてたっていうのは、本当なのか?」
妻の恵梨香は無言のままコクリとうなずきました。私は何か言おうかと思って必死に言葉を探したが、何も言葉が出てきません。再び長い沈黙が続いた。
「ちょっと・・・・出てくるわ・・・。」
私はこの長い沈黙に耐え切れず、妻にそう告げます。
『ちょ、ちょっと待って! 出て行くなら、出て行くのは私の方よ、あなたは家にいて!』
「いや、頭を冷やしたいから外に行くだけだ。」
そう言い残すと私は家から出て行くことにした。
《恵梨香が出張の時に同僚に抱かれていた・・・・やっぱり同僚に抱かれていたんだ・・・・出張中に・・・・抱かれていた・・・・・・ 本当だったんだ・・・・・・。》
頭の中で繰り返し、繰り返し何度もつぶやきます。その後、私はあてもなく2時間近く歩き回っていた。
妻からの突然の告白に私は自分を見失って東京の街を徘徊します。歩きながら恵梨香がどんな風に抱かれていたのかをずっと想像した。ふと気がつくと私は学生時代に住んでいた街に来ます。何度も通った定食屋はいつの間にかなくなり、焼き鳥のチェーン店に変わっていた。開店の準備中だったその店に入ってみると、店主は快く迎え入れてくれます。カウンター席に座り生ビールを注文した。 14回へ続く
20190426
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