中Z【満たされない想い】6回
中Z【満たされない想い】6回
5回
営業の都合をつけて、午後6時半に本社から程近い恵比寿の喫茶店で藤原諒大(ふじわら・りょうた:28歳)君と会うことにする。簡単に初対面の拶を済ませた後、藤原君に「今回私(西尾和正:にしお・かずまさ:35歳)と会うことを妻に話したかな?」と確認してみたところ、[話はしていません。]と言う。藤原君が私と会うことを妻(旧姓白藤:恵梨香:しらふじ・えりか:33歳)に話していたなら、私は藤彼の話を聞いて帰った後に腹をくくって恵梨香に今回の噂の真相を聞いてみる覚悟だった。
[いつも仕事では白藤さんにとてもお世話になっています。また、先日の出張の際には、白藤さんにとても失礼なことを申しまして反省しております。ご本人には次の週に何度もお詫びをしてお許しをいただいています。どうかご主人もお許しください。]
藤原君は私に頭を下げてそう言ってくる。
《失礼なこと? 次の週に許してもらった? いったいどういうことなのだ? 俺が知りたいのは、お前が妻を抱いたのかということだけなのだが・・・・。人の女房を寝取っておきながら、許してもらっただと?》
「別に許すも許さないもない、私は真実を知りたいだけなんだ。妻からはある程度話は聞いている。くい違いがないかを知りたい。出張の時のことを包み隠さずに全部話してほしい。」
私は経緯(いきさつ)を知ったふりをして藤原君の出方を待った。
[わかりました。知っておられるなら仕方がないですね。全部お話します。]
「ああ話してくれ。その日の朝から妻とどんな会話や行動をしたのか全部を。」
藤原君は出張の日の当日のことをすべて話し始める。
[・・・・・・それで、仕事がすべて終わったのが夜の8時でした。それまで二人とも何も食べていなかったので、とりあえずホテル近くの居酒屋に行きました。一時間半くらいお酒を飲みながら食事をしました。白藤さんがそろそろ休むと言い出したので、私たちは居酒屋の勘定を済ませてホテルにチェックインしました。当然部屋はフロアー違いの別々の部屋です。・・・・・・・・・ で、そのー・・・・。]
今までとても流暢に話していたのに、藤原君は急に口ごもりだした。
「で、どうしたんだ。」
[私がもう少し飲みたいと言い、白藤さんを自分の部屋に誘いました。]
「部屋に誘った? どういうことだね?」
[えっ、白藤さんから聞いたんでは?]
「ああ、聞いているよ。だから具体的にどんな風に誘ったかを聞いているんだよ。」
私は一瞬あせったが、再び冷静に戻り彼を問い質した。
[つまり・・・ 私の部屋でもう少し飲みませんか? と誘いました。]
「・・・・ それで?」
[白藤さんは『疲れたから早く休みたい。』って断ってきました。]
「・・・・で?」
[ちょっとだけだからと、無理やり白藤さんに頼み込みました・・・・・・。]
「・・・・・・じれったいな、いちいち話を止めないで全部言ってくれないかな?」
[わ、わかりました。私たちはホテルの自販機で缶ビールやおつまみなどを買って私の部屋へ行きました。でも30分くらいして白藤さんは自分の部屋に帰りました。本当にそれだけです。何もありませんでした。]
「おかしいじゃないか? 君は最初に失礼なことをしたと言ったのに、それだけで何が失礼なんだ。」
[す、すみません。最初に奥様から話を聞いていると西尾さんが言ったので、肝心な部分は言いませんでしたが、部屋に入ってから私は白藤さんを口説きました。酔っていたとはいえ、本当に申し訳ありませんでした。]
頭を深々と下げる藤原君の口からようやく核心部分を私は聞き出すことができた。 7回に
2018/05/13
5回
営業の都合をつけて、午後6時半に本社から程近い恵比寿の喫茶店で藤原諒大(ふじわら・りょうた:28歳)君と会うことにする。簡単に初対面の拶を済ませた後、藤原君に「今回私(西尾和正:にしお・かずまさ:35歳)と会うことを妻に話したかな?」と確認してみたところ、[話はしていません。]と言う。藤原君が私と会うことを妻(旧姓白藤:恵梨香:しらふじ・えりか:33歳)に話していたなら、私は藤彼の話を聞いて帰った後に腹をくくって恵梨香に今回の噂の真相を聞いてみる覚悟だった。
[いつも仕事では白藤さんにとてもお世話になっています。また、先日の出張の際には、白藤さんにとても失礼なことを申しまして反省しております。ご本人には次の週に何度もお詫びをしてお許しをいただいています。どうかご主人もお許しください。]
藤原君は私に頭を下げてそう言ってくる。
《失礼なこと? 次の週に許してもらった? いったいどういうことなのだ? 俺が知りたいのは、お前が妻を抱いたのかということだけなのだが・・・・。人の女房を寝取っておきながら、許してもらっただと?》
「別に許すも許さないもない、私は真実を知りたいだけなんだ。妻からはある程度話は聞いている。くい違いがないかを知りたい。出張の時のことを包み隠さずに全部話してほしい。」
私は経緯(いきさつ)を知ったふりをして藤原君の出方を待った。
[わかりました。知っておられるなら仕方がないですね。全部お話します。]
「ああ話してくれ。その日の朝から妻とどんな会話や行動をしたのか全部を。」
藤原君は出張の日の当日のことをすべて話し始める。
[・・・・・・それで、仕事がすべて終わったのが夜の8時でした。それまで二人とも何も食べていなかったので、とりあえずホテル近くの居酒屋に行きました。一時間半くらいお酒を飲みながら食事をしました。白藤さんがそろそろ休むと言い出したので、私たちは居酒屋の勘定を済ませてホテルにチェックインしました。当然部屋はフロアー違いの別々の部屋です。・・・・・・・・・ で、そのー・・・・。]
今までとても流暢に話していたのに、藤原君は急に口ごもりだした。
「で、どうしたんだ。」
[私がもう少し飲みたいと言い、白藤さんを自分の部屋に誘いました。]
「部屋に誘った? どういうことだね?」
[えっ、白藤さんから聞いたんでは?]
「ああ、聞いているよ。だから具体的にどんな風に誘ったかを聞いているんだよ。」
私は一瞬あせったが、再び冷静に戻り彼を問い質した。
[つまり・・・ 私の部屋でもう少し飲みませんか? と誘いました。]
「・・・・ それで?」
[白藤さんは『疲れたから早く休みたい。』って断ってきました。]
「・・・・で?」
[ちょっとだけだからと、無理やり白藤さんに頼み込みました・・・・・・。]
「・・・・・・じれったいな、いちいち話を止めないで全部言ってくれないかな?」
[わ、わかりました。私たちはホテルの自販機で缶ビールやおつまみなどを買って私の部屋へ行きました。でも30分くらいして白藤さんは自分の部屋に帰りました。本当にそれだけです。何もありませんでした。]
「おかしいじゃないか? 君は最初に失礼なことをしたと言ったのに、それだけで何が失礼なんだ。」
[す、すみません。最初に奥様から話を聞いていると西尾さんが言ったので、肝心な部分は言いませんでしたが、部屋に入ってから私は白藤さんを口説きました。酔っていたとはいえ、本当に申し訳ありませんでした。]
頭を深々と下げる藤原君の口からようやく核心部分を私は聞き出すことができた。 7回に
2018/05/13
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