中Z【満たされない想い】15回
14回 20190427
「だれと?」
私(西尾和正:にしお・かずまさ:35歳)はたまらず妻(旧姓白藤:恵梨香:しらふじ・えりか:33歳)にメールを出すが、返信が来るまでしばらく時間がかかる。
『会社の人が4人とクライアントの人が1人です・・。』
私の頭の中では5人の男にまわされている恵梨香が喘いでいた。
「どんな風に抱かれた?」
私は我慢が出来ずメールをしてしまったが妻からの返信はありません。ビールを何杯飲んだのか、わからないが、全く酔いがまわらなかった。むしろ頭は冴えてきて、興奮してきている。開店した店の中もだいぶお客さんが入ってきて騒がしくなってきた。
ようやく恵梨香から返信がくる。
『ごめんなさい、私の方が出て行きます。』
《妻がいなくなってしまう・・・・私の妻が・・・・。》
妻を傷つけてしまった後悔と、恵梨香を失ってしまう恐怖心が同時に押し寄せてきて、私はたまらず勘定を済ませるとタクシーをつかまえて家に向かった。
2時間近く歩いたのに車なら20分で家に着く。しかし、私にとっては死ぬほど長く感じられる20分だった。家に入ると妻は身支度を整えて家を出て行くところである。
「出て行かないでくれ恵梨香! 頼む! 頼む!」
私は頭を下げて妻に嘆願した。
『やめて、あなたが頭を下げるなんて・・・・。悪いのは・・・ わたしです。』
恵梨香があわてて私の肩を抱く。
『あなた、わたしが・・・・。』
「いいんだ・・・・と、とにかく、君は何も言わなくて・・・・そ、そうだ・・・腹減ったな・・・・今日は私が作るから・・・君はそこに座っていればいい・・・・えーと、何を作ろうかな? おっ、焼きそばがあった・・・・よし、焼きそばを作ろう・・・・上手いぞ・・・・俺の作った焼きそばは・・・・。」
私は涙を流す恵梨香をなんとかリビングのソファに座らせると、必死になってしゃべり続けた。途中で手伝おうとする妻を制して、何度も失敗し黒くこげた焼きそばを作り、恵梨香と二人で食べる。その後も私はしゃべり続けた。とにかく沈黙が怖かった。
『あなたは、わたしを許すことが出来るの?』
さすがに1時間もしゃべり続けると、話すこともなくなり、沈黙の時間が長くなり始めた時に恵梨香が私へ質問をしてくる。
「許せるかどうかなんてまだわからない。今日はまだ結論を出したくない。それより私はそれもこれも全部ひっくるめて、恵梨香のことがより一層愛おしくてたまらないんだ。」
そう言うと私は妻の手を引きベッドルームへ行った。 16回につづく
20190603
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