中A〔トライアングル〕 第6章の11〖エピソードⅣ-8〗45
中A〔トライアングル〕 第6章の11〖エピソードⅣ-8〗45
第6章の10〖エピソードⅣ-8〗45
黙ってもくもくと何度も手を洗う妻の山路翠(やまじ・みどり:27歳)に俺(山路智浩:やまじ・ともひろ:30歳)は思いきって言ってみた。
「最後なんだから、心置き無く抱かれろよ。昔を思い出してさ。」
『智浩・・・。どういう事?』
「恋人同士に戻ったつもりでさ・・・。愛を囁くとか、な? あるだろ、そういうの。」
手を洗い終えた翠が、真正面から俺を見つめながら言った。
『なんで?なんで私にそんな事をさせたいの?』
「う、ん・・・。なんか、身も心も英人に捧げていた頃の翠を見てみたいんだ・・・。」
『変だよ!・・・こんなことで興奮するの?』
「する、と思う・・・。お前も感情移入すればもっと感じられるんじゃないのか?」
『・・・そういう問題?・・・私達夫婦だよね?・・・私は智浩のお嫁さんなんだよ?』
「そうだよ、分かっている。俺はお前を絶対に離さない。今日が最後だから、だからさ・・・。」
『本当に・・・智浩は変態だよ・・・。』
俺は、翠が悲しそうな表情をしたのを見逃さなかった。そして翠はすぐに顔をあげてこう言った。『私・・・心が壊れちゃうかもよ・・・いいの?』翠の瞳がこれ以上無いくらいに潤む。俺が「うん。」と返事をすると同時に涙が一粒こぼれ落ちた。翠はそれを拭うと、何も言わずに俺の前を通り過ぎ、あぐらをかいて座る英人の元へ向かった。
『英人、私にも頂戴!』翠はいきなり英人の膝の上に向かい合って座った。英人はキョトンとしながら事態が飲み込めていない。『ねえ、英人。前みたいに私にも飲ませて。喉乾いた!』英人はドギマギしながらも、お茶を口に含むと、翠の顔を抱えて口移しで飲ませる・・・。
その間、津田英人(つだ・ひでと:30歳)はこの急展開な事態が呑み込めずに俺の方を見ていたが、もはや俺は苦笑いしながらOKサインを出すしかなかった。でも、その指は震えていたかもしれない。
〔翠ちゃん・・・どうしたの?〕
『もう呼び捨てでいいよ。ねえ、隣いこ?』
声も全然違った。さっきまでのぶっきらぼうな喋り方とは正反対、甘える様な可愛い声で英人に話しかける翠だった。
『ねえってばぁ、ね~ぇ英人、隣でイチャイチャしよう?』
それで英人は吹っ切れたように笑顔になり、翠(みどり)をお姫様抱っこして俺達の寝室に入って行った。しかし、あまりの翠の急変ぶりに、俺の心臓は飛び出しそうになっていた。「あの二人はこんな風に付き合っていたのか・・・。」完全に女が男に依存した関係、主従の関係と行ってもいいのかもしれない。普通はどちらかが一方を圧倒的に想っていないと、こんな付き合い方にはならないはず。二人の場合、以前英人に聞いてはいたが、明らかに翠が英人を好きで好きで堪らないって感じ。
寝室に消えた二人をただ目で追うだけの俺。二人は入るとドアを閉めてしまった。閉めたのは翠です。その瞬間、自分の立ち位置が危うくなり、自分の家なのに居場所を見失いそうな感覚になった。自分が置いてきぼりを食らった、なんて生易しいものではなく、自分の存在を二人に否定されたとさえ思えた。
でもここはやっぱり俺の家、【寝取らせ】も俺の考えた事。翠と英人はそれを了知(よく理解する)しての事、そう考えると、少し勇気が出てきた。まぁ、こんな時に勇気云々と言っている時点で馬鹿馬鹿しいけどね。そう言いながらも正直、何となく気が引けたというか、おかしな話だけど、遠慮しながらそっと俺は寝室に一歩踏み入れた。 第6章の12〖エピソードⅣ-9〗46
2015/03/03
第6章の10〖エピソードⅣ-8〗45
黙ってもくもくと何度も手を洗う妻の山路翠(やまじ・みどり:27歳)に俺(山路智浩:やまじ・ともひろ:30歳)は思いきって言ってみた。
「最後なんだから、心置き無く抱かれろよ。昔を思い出してさ。」
『智浩・・・。どういう事?』
「恋人同士に戻ったつもりでさ・・・。愛を囁くとか、な? あるだろ、そういうの。」
手を洗い終えた翠が、真正面から俺を見つめながら言った。
『なんで?なんで私にそんな事をさせたいの?』
「う、ん・・・。なんか、身も心も英人に捧げていた頃の翠を見てみたいんだ・・・。」
『変だよ!・・・こんなことで興奮するの?』
「する、と思う・・・。お前も感情移入すればもっと感じられるんじゃないのか?」
『・・・そういう問題?・・・私達夫婦だよね?・・・私は智浩のお嫁さんなんだよ?』
「そうだよ、分かっている。俺はお前を絶対に離さない。今日が最後だから、だからさ・・・。」
『本当に・・・智浩は変態だよ・・・。』
俺は、翠が悲しそうな表情をしたのを見逃さなかった。そして翠はすぐに顔をあげてこう言った。『私・・・心が壊れちゃうかもよ・・・いいの?』翠の瞳がこれ以上無いくらいに潤む。俺が「うん。」と返事をすると同時に涙が一粒こぼれ落ちた。翠はそれを拭うと、何も言わずに俺の前を通り過ぎ、あぐらをかいて座る英人の元へ向かった。
『英人、私にも頂戴!』翠はいきなり英人の膝の上に向かい合って座った。英人はキョトンとしながら事態が飲み込めていない。『ねえ、英人。前みたいに私にも飲ませて。喉乾いた!』英人はドギマギしながらも、お茶を口に含むと、翠の顔を抱えて口移しで飲ませる・・・。
その間、津田英人(つだ・ひでと:30歳)はこの急展開な事態が呑み込めずに俺の方を見ていたが、もはや俺は苦笑いしながらOKサインを出すしかなかった。でも、その指は震えていたかもしれない。
〔翠ちゃん・・・どうしたの?〕
『もう呼び捨てでいいよ。ねえ、隣いこ?』
声も全然違った。さっきまでのぶっきらぼうな喋り方とは正反対、甘える様な可愛い声で英人に話しかける翠だった。
『ねえってばぁ、ね~ぇ英人、隣でイチャイチャしよう?』
それで英人は吹っ切れたように笑顔になり、翠(みどり)をお姫様抱っこして俺達の寝室に入って行った。しかし、あまりの翠の急変ぶりに、俺の心臓は飛び出しそうになっていた。「あの二人はこんな風に付き合っていたのか・・・。」完全に女が男に依存した関係、主従の関係と行ってもいいのかもしれない。普通はどちらかが一方を圧倒的に想っていないと、こんな付き合い方にはならないはず。二人の場合、以前英人に聞いてはいたが、明らかに翠が英人を好きで好きで堪らないって感じ。
寝室に消えた二人をただ目で追うだけの俺。二人は入るとドアを閉めてしまった。閉めたのは翠です。その瞬間、自分の立ち位置が危うくなり、自分の家なのに居場所を見失いそうな感覚になった。自分が置いてきぼりを食らった、なんて生易しいものではなく、自分の存在を二人に否定されたとさえ思えた。
でもここはやっぱり俺の家、【寝取らせ】も俺の考えた事。翠と英人はそれを了知(よく理解する)しての事、そう考えると、少し勇気が出てきた。まぁ、こんな時に勇気云々と言っている時点で馬鹿馬鹿しいけどね。そう言いながらも正直、何となく気が引けたというか、おかしな話だけど、遠慮しながらそっと俺は寝室に一歩踏み入れた。 第6章の12〖エピソードⅣ-9〗46
2015/03/03
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