長I 【裏切り 第1節6章】
長I 【裏切り 第1節6章】
私の動揺を察した若者は1万円札をテーブルに置くと、〚本当は、おっさんがあの女の旦那だろ?そんな血の気が引いた顔をされたら、可哀想でこれは貰えないぜ。〛しかし私は「ありがとう。でもこれは取っておいてくれ。また何か訊きに来るかも知れないから、その時は頼む。本当にありがとう。」
若者と話していた時はまだよかったのですが、彼が出て行った後1人になると足が震え出し、意識すればするほど、震えは大きくなってしまい止まりません。頭の中では“怒り、悔しさ、絶望感”が渦巻いていました。水を飲んで落ち着こうと思うのですが、グラスを持つ手までが震えて水を溢しそうです。
私は2階のあの部屋をずっと見詰めていましたが、中で行われている事を想像すると重機を借りてきてでも、今すぐこのアパート自体を壊して無くしてしまいたい衝動に駆られます。
頭の中では、透けた小さなパンティーだけを身に着けた妻の智子(ともこ)が、男のペニスを美味しそうに嘗め回してから口に含んで、頭を前後に動かしている姿が浮かびます。男が我慢出来なくなり、妻を押し倒して豊満な乳房にむしゃぶり付いている姿が浮かびます
若者に頼んで、オートロックのドアを開けてもらえばよかったと悔やんでも、もうどこに行ったのか分かりません。私は悔しさで、智子がいる部屋をずっと睨んでいましたが、前の道を携帯電話で話しながら歩いている人を見た時、妻の携帯に電話すれば良いのだと気付き、慌てて携帯を出しました。
しかし当然なことに新しい携帯だから何も登録されておらず、スーツケースに手帳を入れてきてしまい、携帯番号が分かりません。日本に着いてから暇な時間は沢山有ったので、妻の携帯番号ぐらいは入れておくべきでした。
今にして思えば、実家の電話番号は覚えているので、智子の携帯番号を訊くという手段も有りましたし、部屋番号は分かっていたので、オートロックのドアの横に付いているインターフォンで呼び出すという手段も有ったのですが、そんな事すら気付かないほど気が動転していたのです。
若者が出て行ってから1時間もすると我慢の限界が来て、2人のいる部屋をじっと見ているだけの自分が惨めに思え、家に帰って妻の智子が帰ってきてから殴ってでも説明させようと思ったのですが、ここから離れる勇気が有りません。
スーツケースを預けたロッカーの有る駅まで戻り、妻に電話をしようと思っても、智子が男と愛を確かめ合っているので有ろう部屋が見える、この場所から離れる勇気が有りません。
その時、見詰めていた部屋からサングラスをかけた妻の智子が出てきて、それに続いて出てきた男はドアに鍵を掛けています。私は慌てて喫茶店を出ようとしましたが、こんな時に限って前のおばさんが支払いに時間がかかっています。財布の中の小銭を探していて、レジを済ませる事が出来ません。
私が「釣りはいらない。」と言い残し、おばさんを押し退けるように喫茶店を出ると、2人は車に乗り込むところです。エンジンが掛かったばかりの車の前に立ちはだかると、じっと助手席の妻の智子を睨みました。妻は最初、状況が飲み込めずにキョトンとしていましたが、私だと分かった瞬間、驚きで顔が引き攣り、声も出せずに私を見ています。
私は怒りから両手を思い切りボンネットに打ち据えると、車のボンネットは少しへこみましたが、興奮からか手に痛みは感じません。状況の分からない男はサングラスを外し、怒った顔で左の運転席から降りて来て。〔何をする!警察を呼ぶぞ!〕と叫ぶ。私は男の前に進み、何も言わずに思い切りその男を殴りました。
すると、男はよろけてボンネットに手を付き、私を異常者とでも思ったのか、殴られた左頬を手で押えたまま、脅えた目をして固まってしまっています。妻への怒りが大き過ぎて自分の中で処理し切れずに、智子を引き摺り出して殴りたい気持ちを通り越し、逆に冷静になっていく自分が不思議でした。
今私が何か言ったり行動を起こしたりするより、この後どう出るか任せた方が却って2人は困るのではないかと思い、その場を黙って立ち去ると大通りに出て、タクシーを捕まえて乗り込みました。
いつもの習慣で私のキーホルダーに付けたまま、赴任先まで持って行ってしまった家の玄関のスペアキーが、駅のロッカーに預けたスーツケースに入っているのを思い出し、途中駅に寄ってもらってから我が家に帰り、私が最初にした事は妻の服や下着を調べる事でした。
2015/04/26
私の動揺を察した若者は1万円札をテーブルに置くと、〚本当は、おっさんがあの女の旦那だろ?そんな血の気が引いた顔をされたら、可哀想でこれは貰えないぜ。〛しかし私は「ありがとう。でもこれは取っておいてくれ。また何か訊きに来るかも知れないから、その時は頼む。本当にありがとう。」
若者と話していた時はまだよかったのですが、彼が出て行った後1人になると足が震え出し、意識すればするほど、震えは大きくなってしまい止まりません。頭の中では“怒り、悔しさ、絶望感”が渦巻いていました。水を飲んで落ち着こうと思うのですが、グラスを持つ手までが震えて水を溢しそうです。
私は2階のあの部屋をずっと見詰めていましたが、中で行われている事を想像すると重機を借りてきてでも、今すぐこのアパート自体を壊して無くしてしまいたい衝動に駆られます。
頭の中では、透けた小さなパンティーだけを身に着けた妻の智子(ともこ)が、男のペニスを美味しそうに嘗め回してから口に含んで、頭を前後に動かしている姿が浮かびます。男が我慢出来なくなり、妻を押し倒して豊満な乳房にむしゃぶり付いている姿が浮かびます
若者に頼んで、オートロックのドアを開けてもらえばよかったと悔やんでも、もうどこに行ったのか分かりません。私は悔しさで、智子がいる部屋をずっと睨んでいましたが、前の道を携帯電話で話しながら歩いている人を見た時、妻の携帯に電話すれば良いのだと気付き、慌てて携帯を出しました。
しかし当然なことに新しい携帯だから何も登録されておらず、スーツケースに手帳を入れてきてしまい、携帯番号が分かりません。日本に着いてから暇な時間は沢山有ったので、妻の携帯番号ぐらいは入れておくべきでした。
今にして思えば、実家の電話番号は覚えているので、智子の携帯番号を訊くという手段も有りましたし、部屋番号は分かっていたので、オートロックのドアの横に付いているインターフォンで呼び出すという手段も有ったのですが、そんな事すら気付かないほど気が動転していたのです。
若者が出て行ってから1時間もすると我慢の限界が来て、2人のいる部屋をじっと見ているだけの自分が惨めに思え、家に帰って妻の智子が帰ってきてから殴ってでも説明させようと思ったのですが、ここから離れる勇気が有りません。
スーツケースを預けたロッカーの有る駅まで戻り、妻に電話をしようと思っても、智子が男と愛を確かめ合っているので有ろう部屋が見える、この場所から離れる勇気が有りません。
その時、見詰めていた部屋からサングラスをかけた妻の智子が出てきて、それに続いて出てきた男はドアに鍵を掛けています。私は慌てて喫茶店を出ようとしましたが、こんな時に限って前のおばさんが支払いに時間がかかっています。財布の中の小銭を探していて、レジを済ませる事が出来ません。
私が「釣りはいらない。」と言い残し、おばさんを押し退けるように喫茶店を出ると、2人は車に乗り込むところです。エンジンが掛かったばかりの車の前に立ちはだかると、じっと助手席の妻の智子を睨みました。妻は最初、状況が飲み込めずにキョトンとしていましたが、私だと分かった瞬間、驚きで顔が引き攣り、声も出せずに私を見ています。
私は怒りから両手を思い切りボンネットに打ち据えると、車のボンネットは少しへこみましたが、興奮からか手に痛みは感じません。状況の分からない男はサングラスを外し、怒った顔で左の運転席から降りて来て。〔何をする!警察を呼ぶぞ!〕と叫ぶ。私は男の前に進み、何も言わずに思い切りその男を殴りました。
すると、男はよろけてボンネットに手を付き、私を異常者とでも思ったのか、殴られた左頬を手で押えたまま、脅えた目をして固まってしまっています。妻への怒りが大き過ぎて自分の中で処理し切れずに、智子を引き摺り出して殴りたい気持ちを通り越し、逆に冷静になっていく自分が不思議でした。
今私が何か言ったり行動を起こしたりするより、この後どう出るか任せた方が却って2人は困るのではないかと思い、その場を黙って立ち去ると大通りに出て、タクシーを捕まえて乗り込みました。
いつもの習慣で私のキーホルダーに付けたまま、赴任先まで持って行ってしまった家の玄関のスペアキーが、駅のロッカーに預けたスーツケースに入っているのを思い出し、途中駅に寄ってもらってから我が家に帰り、私が最初にした事は妻の服や下着を調べる事でした。
2015/04/26
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