中9〖妻の写真集〗 Vol.11
中9〖妻の写真集〗 Vol.11
広田君が〔まずは撮影に慣れてもらうため洋服を着たまま撮影します。〕と告げて、妻の杏璃(あんり)の撮影が始まりました。〚いいですよ!そう!とても綺麗だ!〛小松氏はスタンドに立てられたカメラのシャッターを切り始めました。
バシッ、バシッと大きなシャッター音と共に、明るくたかれるストロボの光。私たち三人はいよいよ始まった創作の現場を目のあたりにして、ただ息を飲み込むだけでした。広田君はその間も、妻のヘアースタイルを直し、露出計で明かりを測定し、照明のセッティングを調節、そしてスタジオ内の装飾品を変えたりと、休むことなく動いています。
〚そう!今の笑顔、いい表情ですよ!〛撮影中、小松氏は絶え間なく妻の杏璃に声をかけ続けます。私(水沢修平31歳)は思いました。《女性には、誰であっても自分が主役になってスターのように注目されてみたいと考えたことがあると聞いた事があり、今がまさに妻はその時にいるのだ。》絶え間なくたかれるフラッシュの中で、グラビアモデルのように杏璃は大きくはばたいていくようでした。
〚だいぶ慣れてきたみたいですね。いい表情だ!〛30分近く費やされた洋服を着たままの撮影で、杏璃の表情はすっかりやわらかく変わり、いつも以上にやさしさに包まれた妻の美しい姿が引き出されていました。
〚よし!それでは奥様、いよいよ本番にしましょう。あちらで洋服をすべて脱いで裸になってきてください!〛その小松氏の言葉で、撮影になれて笑顔を取り戻していた妻の表情がいっぺんにこわばります。『・・・はい・・・。』妻の杏璃は小さくそう言うと、広田君と共に控え室へ下がっていきました。
《杏璃は今何を思っているのだろうか?あの控え室の中で、いよいよ妻は服を脱ぎ捨ててその綺麗な裸を晒しているのか?私の妻、私だけの杏璃が・・・私は妻の裸を頭の中で想像しながら、息が詰まる思いでその時を待っていました。》
杏璃と広田君が控え室に下がっていくと、小松氏は慌ただしく次の撮影の準備をしています。床には毛の長い白い絨毯を敷き詰め、装飾品もシンプルなものに変っていきました。あっという間に先ほどのスタジオとはまるで違う雰囲気になりました。私たちはただ黙ってそれを見ているだけです。
《あの控え室の中で、最初に杏璃の裸を見るのは広田君なのか?私の心の中で小さな嫉妬心がわいてきたのと同時に、それ以上に興奮する思いがありました。》
10分が過ぎ、15分が過ぎてもなかなか妻と広田君は控え室から出てきませんでした。しかし小松氏は一つも慌てる様子もなく、静かに準備をすすめています。控え室に入ってから20分以上が過ぎた時、突然そこから広田君だけが出てきました。広田君は小松氏のそばに行くと、こちらには聞こえない声で耳打ちをしていました。小松氏はそれをうなずきながら聞き終わると、ゆっくりとこちらに顔を向けます。
小松氏はその状況をわかりやすく説明してくれました。〚まだ奥様の決心が揺らいでいるようです。初めてのモデルさんにはよくあることです。もう少しお待ちください。〛小松氏はそう言うと広田君と共に妻のいる控え室へ入っていきました。
横に座っている浜崎(美佳と満)夫妻は、少しがっかりした表情をして夫婦間の会話をしていましたが、私にはそんな余裕はありませんでした。《杏璃が拒否している!!私は妻の今の気持ちを思うと激しく胸が締め付けられます。刹那と表現するのはまさにこの時の私の気持ちで、切ない気持ちが込み上げてきて今にも嘔吐しそうな気分でした。》
2015/06/15
広田君が〔まずは撮影に慣れてもらうため洋服を着たまま撮影します。〕と告げて、妻の杏璃(あんり)の撮影が始まりました。〚いいですよ!そう!とても綺麗だ!〛小松氏はスタンドに立てられたカメラのシャッターを切り始めました。
バシッ、バシッと大きなシャッター音と共に、明るくたかれるストロボの光。私たち三人はいよいよ始まった創作の現場を目のあたりにして、ただ息を飲み込むだけでした。広田君はその間も、妻のヘアースタイルを直し、露出計で明かりを測定し、照明のセッティングを調節、そしてスタジオ内の装飾品を変えたりと、休むことなく動いています。
〚そう!今の笑顔、いい表情ですよ!〛撮影中、小松氏は絶え間なく妻の杏璃に声をかけ続けます。私(水沢修平31歳)は思いました。《女性には、誰であっても自分が主役になってスターのように注目されてみたいと考えたことがあると聞いた事があり、今がまさに妻はその時にいるのだ。》絶え間なくたかれるフラッシュの中で、グラビアモデルのように杏璃は大きくはばたいていくようでした。
〚だいぶ慣れてきたみたいですね。いい表情だ!〛30分近く費やされた洋服を着たままの撮影で、杏璃の表情はすっかりやわらかく変わり、いつも以上にやさしさに包まれた妻の美しい姿が引き出されていました。
〚よし!それでは奥様、いよいよ本番にしましょう。あちらで洋服をすべて脱いで裸になってきてください!〛その小松氏の言葉で、撮影になれて笑顔を取り戻していた妻の表情がいっぺんにこわばります。『・・・はい・・・。』妻の杏璃は小さくそう言うと、広田君と共に控え室へ下がっていきました。
《杏璃は今何を思っているのだろうか?あの控え室の中で、いよいよ妻は服を脱ぎ捨ててその綺麗な裸を晒しているのか?私の妻、私だけの杏璃が・・・私は妻の裸を頭の中で想像しながら、息が詰まる思いでその時を待っていました。》
杏璃と広田君が控え室に下がっていくと、小松氏は慌ただしく次の撮影の準備をしています。床には毛の長い白い絨毯を敷き詰め、装飾品もシンプルなものに変っていきました。あっという間に先ほどのスタジオとはまるで違う雰囲気になりました。私たちはただ黙ってそれを見ているだけです。
《あの控え室の中で、最初に杏璃の裸を見るのは広田君なのか?私の心の中で小さな嫉妬心がわいてきたのと同時に、それ以上に興奮する思いがありました。》
10分が過ぎ、15分が過ぎてもなかなか妻と広田君は控え室から出てきませんでした。しかし小松氏は一つも慌てる様子もなく、静かに準備をすすめています。控え室に入ってから20分以上が過ぎた時、突然そこから広田君だけが出てきました。広田君は小松氏のそばに行くと、こちらには聞こえない声で耳打ちをしていました。小松氏はそれをうなずきながら聞き終わると、ゆっくりとこちらに顔を向けます。
小松氏はその状況をわかりやすく説明してくれました。〚まだ奥様の決心が揺らいでいるようです。初めてのモデルさんにはよくあることです。もう少しお待ちください。〛小松氏はそう言うと広田君と共に妻のいる控え室へ入っていきました。
横に座っている浜崎(美佳と満)夫妻は、少しがっかりした表情をして夫婦間の会話をしていましたが、私にはそんな余裕はありませんでした。《杏璃が拒否している!!私は妻の今の気持ちを思うと激しく胸が締め付けられます。刹那と表現するのはまさにこの時の私の気持ちで、切ない気持ちが込み上げてきて今にも嘔吐しそうな気分でした。》
2015/06/15
- 関連記事
-
- 中9〖妻の写真集〗 Vol.10 (2015/06/09)
- 中19『いいわよ。』第2話 (2015/06/10)
- 中10〚新しい夫婦の形〛4章第1話 21 (2015/06/11)
- 中3〚三角関数〛8話 (2015/06/11)
- 中21〖たった1度の・・・〗第1回 (2015/06/12)
- 中22〚純情〛第1章① 01 (2015/06/12)
- 中19『いいわよ。』第3話 (2015/06/14)
- 中9〖妻の写真集〗 Vol.11 (2015/06/15)
- 中11 〖家庭教師の誤算 第14回〗 (2015/06/16)
- 中10〚新しい夫婦の形〛4章第2話 22 (2015/06/16)
- 中14〖恋に恋した妻〗PART12 (2015/06/16)
- 中22〚純情〛第1章② 02 (2015/06/17)
- 中23<気持ち>第1回 (2015/06/17)
- 中24『愛の絆(きずな)』 第1回 (2015/06/17)
- 中19『いいわよ。』第4話 (2015/06/19)
コメント
コメントの投稿