中10〚新しい夫婦の形〛4章第1話 21
中10〚新しい夫婦の形〛4章第1話 21
妻の希美(のぞみ)が今週、園部(祐太)君と出張する。園部君にしてみれば、妻は出張先で同僚に抱かれることがあるかもしれないと、まだ多少の疑いと、ともすれば期待もあるかもしれないが、そのことは旦那である僕がすでに知ってしまっている。
ましてや、前回の出張の時に妻に関係を迫ったことまで僕に白状してしまった。そして今回の出張のことも僕に内緒にするわけにもいかなくなっている。今でも園部君は希美と関係を持ちたいと思っているに違いないが、この状況下では前回のように妻に迫ることはとても出来ないだろうと思う。
また、妻の希美にしてみれば、園部君と僕が自分のことで情報交換をしていることを僕から聞いて知っている。同じ同僚の人間と、自分が出張先で寝たことを園部君は佐々岡から聞いて疑っていることも。これだけ複雑な状況下で、二人が出張先の一夜で結ばれるのだろうか?僕はいろいろと思案をめぐらせた。
『ひょっとして園部くんから聞いているかもしれないけど、今週の金曜日に松本に出張することになったの。』
その日の夕食の時間に希美は僕に言ってきた。
「ああ、聞いているよ。」
『やっぱり・・。』
「気がすすまないのかい?」
『ううん、べつに・・仕事だから・・エキシビションなのでもともとは園部くんが一人で行くことになっていたんだけど、部長がどうしても私も同行するように言うから・・・でも、園部くんとは前回あんなことがあったから、なんとなく気まずくて・・。』
「心配することないさ、きみの事は彼には何も言ってないから・・・それより彼は本当にきみのことを心配しているし、とてもいい奴だよ。」
『どういう意味なの?』
「別に深い意味はないさ、ただ出張中にきみと彼が結ばれたとしても、きみの心さえ奪われなければ、僕はいいと思っている・・。」
『え?あなた・・・そんなこと絶対にないわ・・。』
「それならばいいさ、僕は無理にきみと園部君が結ばれるのを望んでいるわけではない。きみの身体が彼を欲すれば無理に我慢することはないと言っているだけなんだ。」
僕はそう言うと出張の話をそれで打ち切った。その日の夜、めずらしく希美の方から僕を求めてきた。しかし、僕は妻の出張が終わるまでは交わるのはよそうと思い、「疲れている。」と希美の求めを拒否してみる。それから僕らはあまり会話をしなくなった。
いよいよ金曜日の朝になった。妻は一泊の出張の支度を終えてスーツ姿になっていた。
『じゃあ、あなた、今日は泊まりで明日のお昼すぎに帰ってくるわ。』
「ああ・・。」
僕はそっけない返事をした。希美はずっとこっちを見ている。結局僕はその後妻に声をかけることなく、妻の希美は仕事先へと出かけて行った。
結局その日は一日仕事にならなかった。僕は外回りをするといって外出したが、得意先へ行くわけでもなく、ただぼーっと時間をすごしてしまう。何度か園部君に電話をしてみようと思ったが、結局しなかった。僕は家の近くのいきつけの居酒屋で夕食を済ませると、希美のいない家に帰る。そして、その日の夜はいつまでも寝付くことが出来なかった。
2015/06/11
妻の希美(のぞみ)が今週、園部(祐太)君と出張する。園部君にしてみれば、妻は出張先で同僚に抱かれることがあるかもしれないと、まだ多少の疑いと、ともすれば期待もあるかもしれないが、そのことは旦那である僕がすでに知ってしまっている。
ましてや、前回の出張の時に妻に関係を迫ったことまで僕に白状してしまった。そして今回の出張のことも僕に内緒にするわけにもいかなくなっている。今でも園部君は希美と関係を持ちたいと思っているに違いないが、この状況下では前回のように妻に迫ることはとても出来ないだろうと思う。
また、妻の希美にしてみれば、園部君と僕が自分のことで情報交換をしていることを僕から聞いて知っている。同じ同僚の人間と、自分が出張先で寝たことを園部君は佐々岡から聞いて疑っていることも。これだけ複雑な状況下で、二人が出張先の一夜で結ばれるのだろうか?僕はいろいろと思案をめぐらせた。
『ひょっとして園部くんから聞いているかもしれないけど、今週の金曜日に松本に出張することになったの。』
その日の夕食の時間に希美は僕に言ってきた。
「ああ、聞いているよ。」
『やっぱり・・。』
「気がすすまないのかい?」
『ううん、べつに・・仕事だから・・エキシビションなのでもともとは園部くんが一人で行くことになっていたんだけど、部長がどうしても私も同行するように言うから・・・でも、園部くんとは前回あんなことがあったから、なんとなく気まずくて・・。』
「心配することないさ、きみの事は彼には何も言ってないから・・・それより彼は本当にきみのことを心配しているし、とてもいい奴だよ。」
『どういう意味なの?』
「別に深い意味はないさ、ただ出張中にきみと彼が結ばれたとしても、きみの心さえ奪われなければ、僕はいいと思っている・・。」
『え?あなた・・・そんなこと絶対にないわ・・。』
「それならばいいさ、僕は無理にきみと園部君が結ばれるのを望んでいるわけではない。きみの身体が彼を欲すれば無理に我慢することはないと言っているだけなんだ。」
僕はそう言うと出張の話をそれで打ち切った。その日の夜、めずらしく希美の方から僕を求めてきた。しかし、僕は妻の出張が終わるまでは交わるのはよそうと思い、「疲れている。」と希美の求めを拒否してみる。それから僕らはあまり会話をしなくなった。
いよいよ金曜日の朝になった。妻は一泊の出張の支度を終えてスーツ姿になっていた。
『じゃあ、あなた、今日は泊まりで明日のお昼すぎに帰ってくるわ。』
「ああ・・。」
僕はそっけない返事をした。希美はずっとこっちを見ている。結局僕はその後妻に声をかけることなく、妻の希美は仕事先へと出かけて行った。
結局その日は一日仕事にならなかった。僕は外回りをするといって外出したが、得意先へ行くわけでもなく、ただぼーっと時間をすごしてしまう。何度か園部君に電話をしてみようと思ったが、結局しなかった。僕は家の近くのいきつけの居酒屋で夕食を済ませると、希美のいない家に帰る。そして、その日の夜はいつまでも寝付くことが出来なかった。
2015/06/11
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