中Q〖あの時に変わった?〗第5話
中Q〖あの時に変わった?〗第5話
そのときに私(立花慶一:たちばな・けいいち:39歳)に手を差し伸べてくれたのが、近所で設計事務所を経営している神林雅夫(かんばやし・まさお:52歳)さんだった。神林所長は、既に20年以上の実績がある、従業員が10名ほどいる設計事務所を経営しており、私のカフェオープンの際には、その内装設計を一任したことをきっかけに付き合いを始めている。
オープン後もいろいろとアドバイスをもらっていた関係で、私がつい金銭面の苦しい状況を話すと、〔当面の融資をしてあげよう。〕と云ってくれたのだ。それは1千万円規模にもなるもので、私には夢のような話であった。
「しかし、所長、そんなことをされてしまっても、私には担保もないし、いつお返しできることか・・。」
〔いや、いいんですよ、無担保で。私はただ立花さんのカフェを助けたいだけなんです。 とても魅力的なお店ですから。〕
「しかし・・・。」
〔応援させてください。なに、3年も頑張れば、きっと固定客がついてきますよ。それに今どき銀行に3年預けても幾らもなりませんから。〕
選択肢はなかった。毎月3年で均等割りした金額と年2%の利子分を返済する契約を交わして、神林所長の好意を受けることで、私は当座の資金繰りをクリアした。
その神林所長から電話があったのは、あれから2週間程度した頃だっただろうか。何でも設計事務所の経理補佐パート従業員が急に退職したため、補充のスタッフを探しているとの事。そして〔(私の妻)真紀さんはどうですか?〕と訊いてきたのだ。
私たちはちょうど結婚8年。妻の立花真紀(たちばな・まき)は32歳。5歳の息子との3人家族です。真紀は中学、高校とバレーボール部に在籍したこともあり、身長が168センチある長身の女性である。 体育会系でもあり、余計な贅肉はほとんどついておらず、現在も非常にスリムな体形を維をしている。
真紀は手足が長く、昔鍛えられたその体はしっかりとひき締まっており、30代に入ってからは、そこに大人の色香というものも加わってきたかのようだった。バストはCカップで、20代の頃の形を完璧に維持、細みな体には意外なほどの豊満なヒップも備わっている。姿勢よく歩くその姿は人目を引くほどでもあり、私にはできすぎた妻であった。
今年、妻の真紀は息子が通う幼稚園のPTA役員に任命され、忙しい日々を送っている。同じ役員の仲間と頻繁に連絡をとりあい、なかなかに楽しそうに過ごしているようだった。
『ベルマーク係なのよ・・・。いろいろと大変だけど・・。』
「ふ~ん、ベルマークなんて、いまどきあるのか?」
『あら、まだあるわよ。マヨネーズとか歯磨き粉とか、漢字の自由帳とかにもあるんじゃないかしら。』
「なるほどなあ・・・。」
結婚後、家の中にずっといた妻が、こうやって久しぶりに外の世界に触れ、生き生きとする様を見て、私は多少の安堵感と同時に、わずかな嫉妬心も感じていた。その妻、〔真紀をパートで採用したい〕との申し出である。長男も幼稚園2年目、また私の実家がすぐそばにあるため、パートであれば働くことはできそうだ。
しかし真紀がPTA役員でいろいろと忙しいのも事実だ。実際、PTA役員の選出をする際、 日中、仕事をしている母親は、妊娠している母親、未入園児がいる母親などとともに、 その選出対象からは外されるそうだ。それほどに、役員の仕事は半端なものではないらしい。
しかし神林所長の話によれば、毎日ではなく、週3日程度で十分らしく、時間もこちらの希望で都度に調整してもらって構わないとのことだ。真紀が私の店を手伝うという選択肢もあったが、それよりも別の仕事をしたほうが経済的にははるかにものを言う。
「神林さんには融資までしてもらっているし、やってみないか真紀?」
私は、妻にそう提案をしてみた。
『そうね・・・。家からも遠くないし、それにあの設計事務所なら、しっかりしてそうだから、私、やってみるわ。』
私の気持ちを察してなのか、パート収入が家計の貴重な一助になるという事実を敢えて口にしないところに、私は妻の優しさを感じる。こうして真紀のパート勤務が始まった。
2015/07/19
そのときに私(立花慶一:たちばな・けいいち:39歳)に手を差し伸べてくれたのが、近所で設計事務所を経営している神林雅夫(かんばやし・まさお:52歳)さんだった。神林所長は、既に20年以上の実績がある、従業員が10名ほどいる設計事務所を経営しており、私のカフェオープンの際には、その内装設計を一任したことをきっかけに付き合いを始めている。
オープン後もいろいろとアドバイスをもらっていた関係で、私がつい金銭面の苦しい状況を話すと、〔当面の融資をしてあげよう。〕と云ってくれたのだ。それは1千万円規模にもなるもので、私には夢のような話であった。
「しかし、所長、そんなことをされてしまっても、私には担保もないし、いつお返しできることか・・。」
〔いや、いいんですよ、無担保で。私はただ立花さんのカフェを助けたいだけなんです。 とても魅力的なお店ですから。〕
「しかし・・・。」
〔応援させてください。なに、3年も頑張れば、きっと固定客がついてきますよ。それに今どき銀行に3年預けても幾らもなりませんから。〕
選択肢はなかった。毎月3年で均等割りした金額と年2%の利子分を返済する契約を交わして、神林所長の好意を受けることで、私は当座の資金繰りをクリアした。
その神林所長から電話があったのは、あれから2週間程度した頃だっただろうか。何でも設計事務所の経理補佐パート従業員が急に退職したため、補充のスタッフを探しているとの事。そして〔(私の妻)真紀さんはどうですか?〕と訊いてきたのだ。
私たちはちょうど結婚8年。妻の立花真紀(たちばな・まき)は32歳。5歳の息子との3人家族です。真紀は中学、高校とバレーボール部に在籍したこともあり、身長が168センチある長身の女性である。 体育会系でもあり、余計な贅肉はほとんどついておらず、現在も非常にスリムな体形を維をしている。
真紀は手足が長く、昔鍛えられたその体はしっかりとひき締まっており、30代に入ってからは、そこに大人の色香というものも加わってきたかのようだった。バストはCカップで、20代の頃の形を完璧に維持、細みな体には意外なほどの豊満なヒップも備わっている。姿勢よく歩くその姿は人目を引くほどでもあり、私にはできすぎた妻であった。
今年、妻の真紀は息子が通う幼稚園のPTA役員に任命され、忙しい日々を送っている。同じ役員の仲間と頻繁に連絡をとりあい、なかなかに楽しそうに過ごしているようだった。
『ベルマーク係なのよ・・・。いろいろと大変だけど・・。』
「ふ~ん、ベルマークなんて、いまどきあるのか?」
『あら、まだあるわよ。マヨネーズとか歯磨き粉とか、漢字の自由帳とかにもあるんじゃないかしら。』
「なるほどなあ・・・。」
結婚後、家の中にずっといた妻が、こうやって久しぶりに外の世界に触れ、生き生きとする様を見て、私は多少の安堵感と同時に、わずかな嫉妬心も感じていた。その妻、〔真紀をパートで採用したい〕との申し出である。長男も幼稚園2年目、また私の実家がすぐそばにあるため、パートであれば働くことはできそうだ。
しかし真紀がPTA役員でいろいろと忙しいのも事実だ。実際、PTA役員の選出をする際、 日中、仕事をしている母親は、妊娠している母親、未入園児がいる母親などとともに、 その選出対象からは外されるそうだ。それほどに、役員の仕事は半端なものではないらしい。
しかし神林所長の話によれば、毎日ではなく、週3日程度で十分らしく、時間もこちらの希望で都度に調整してもらって構わないとのことだ。真紀が私の店を手伝うという選択肢もあったが、それよりも別の仕事をしたほうが経済的にははるかにものを言う。
「神林さんには融資までしてもらっているし、やってみないか真紀?」
私は、妻にそう提案をしてみた。
『そうね・・・。家からも遠くないし、それにあの設計事務所なら、しっかりしてそうだから、私、やってみるわ。』
私の気持ちを察してなのか、パート収入が家計の貴重な一助になるという事実を敢えて口にしないところに、私は妻の優しさを感じる。こうして真紀のパート勤務が始まった。
2015/07/19
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