中Q〖あの時に変わった?〗第9話
中Q〖あの時に変わった?〗第9話
〔実はうちの重要な取引先のひとつであるハウスメーカーさんを接待する1泊の温泉旅行を企画していましてね。そこに奥さんとご主人を是非お連れしたいんですよ。〕
と神林所長が説明する。
「温泉旅行に、ですか?」私(立花慶一39歳)は聞き返しました。
〔そうです。大事な取引先でね、そのメーカーさんは。まあ、はっきり言うと接待旅行な
んです。男ばかりで参加するのも何ですので、是非奥様の美貌をお借りしたいんですよ。
何しろメーカーさんの部長さんってのがまだ若い方なんですが、いつも、女性、女性ってうるさい人でね・・・。〕
所長はそう言いながら電話越しに思わせぶりに笑う。
「しかし、妻で仕事のお役に立つんでしょうか?」
〔勿論です。ただご主人、最初にお断りしておきたいことがあります。今回のメインは接待です。申し訳ないけど奥様には多少ご無理をお願いしてもらうことになるかもしれません。〕
「無理、といいますと・・。」
〔つまり、ホステスの役目をしてもらうわけです。部長さんを存分に楽しませるんです。 まぁ女性にしかできないこともありますから・・・。〕
神林のその意味深な発言が私は気になった。妻(真紀:まき32歳)にいったい何を要求するつもりだろうか?オフィスでのセクハラまがいの行為のことが私の頭を素早くよぎる。
しかも今度は泊まりの旅行である。何か間違いが起こらないとも限らない。だが他ならぬ、神林の誘いだ・・・・。融資の件がある以上、無碍(むげ:一方的)に拒絶することは、私にはできない。不安げな私の気持ちを察知したのか、神林は続けて私に話しかける。
〔さすがに奥さんがご心配でしょう?そこで是非ご主人も一緒に招待したいと思いまして・・・。〕
「しかし私はお邪魔ではないですか・・・?」
〔もちろん夜の宴席では席を外してもらうことになるかもしれません。しかし、そのほかは奥様とご一緒です。ご主人も毎日カフェに顔を出して、なかなかお疲れでしょう?ここらで一服されてもいいんじゃないですか。なあに、費用のほうはこちらの経費で全部落としますからご心配ありません。〕
「いや、それではあまりにも・・・。」
そう言って躊躇する私に、神林は少し強い調子で私に告げる。
〔もう奥様には既に了承は得ています。『お力になれるなら』っておっしゃっていました。〕
自分(神林)の意に私が逆らえないことは、所長自身がわかっているはずだ。しかも今回は旅行への招待である。仕方なく、私はその提案について極力考えすぎないよう、軽い気持ちで了承することにした。
2015/08/06
〔実はうちの重要な取引先のひとつであるハウスメーカーさんを接待する1泊の温泉旅行を企画していましてね。そこに奥さんとご主人を是非お連れしたいんですよ。〕
と神林所長が説明する。
「温泉旅行に、ですか?」私(立花慶一39歳)は聞き返しました。
〔そうです。大事な取引先でね、そのメーカーさんは。まあ、はっきり言うと接待旅行な
んです。男ばかりで参加するのも何ですので、是非奥様の美貌をお借りしたいんですよ。
何しろメーカーさんの部長さんってのがまだ若い方なんですが、いつも、女性、女性ってうるさい人でね・・・。〕
所長はそう言いながら電話越しに思わせぶりに笑う。
「しかし、妻で仕事のお役に立つんでしょうか?」
〔勿論です。ただご主人、最初にお断りしておきたいことがあります。今回のメインは接待です。申し訳ないけど奥様には多少ご無理をお願いしてもらうことになるかもしれません。〕
「無理、といいますと・・。」
〔つまり、ホステスの役目をしてもらうわけです。部長さんを存分に楽しませるんです。 まぁ女性にしかできないこともありますから・・・。〕
神林のその意味深な発言が私は気になった。妻(真紀:まき32歳)にいったい何を要求するつもりだろうか?オフィスでのセクハラまがいの行為のことが私の頭を素早くよぎる。
しかも今度は泊まりの旅行である。何か間違いが起こらないとも限らない。だが他ならぬ、神林の誘いだ・・・・。融資の件がある以上、無碍(むげ:一方的)に拒絶することは、私にはできない。不安げな私の気持ちを察知したのか、神林は続けて私に話しかける。
〔さすがに奥さんがご心配でしょう?そこで是非ご主人も一緒に招待したいと思いまして・・・。〕
「しかし私はお邪魔ではないですか・・・?」
〔もちろん夜の宴席では席を外してもらうことになるかもしれません。しかし、そのほかは奥様とご一緒です。ご主人も毎日カフェに顔を出して、なかなかお疲れでしょう?ここらで一服されてもいいんじゃないですか。なあに、費用のほうはこちらの経費で全部落としますからご心配ありません。〕
「いや、それではあまりにも・・・。」
そう言って躊躇する私に、神林は少し強い調子で私に告げる。
〔もう奥様には既に了承は得ています。『お力になれるなら』っておっしゃっていました。〕
自分(神林)の意に私が逆らえないことは、所長自身がわかっているはずだ。しかも今回は旅行への招待である。仕方なく、私はその提案について極力考えすぎないよう、軽い気持ちで了承することにした。
2015/08/06
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