中Q〖あの時に変わった?〗第1話
中Q〖あの時に変わった?〗第1話
(原題:覗かれる妻~裕子の決意~ 投稿者:のりのり 投稿日:2008/07/01)
有機栽培された食材を使用した週替わりのメニューが売り物の小さなレストラン。そこでランチを食べながら、立花真紀(たちばな・まき:32歳)は、『あ~、うちの店もこれくらいおいしいもの出さないとやっぱり駄目よね~。』と友人の有田千春(ありた・ちはる:30歳)にそう話しかけた。
今週のランチ、《シンガポール・チキンライス(海南鶏飯)》を注文した2人は、チキンの茹で汁を使って炊き上げたご飯を堪能しているところだった。
真紀と食事を共にする友人、千春はテーブル越しに真紀を見つめ、微笑みながら〚でも、レストランというよりもカフェなんでしょ、真紀さんのお店は。〛そう声をかける。
千春は長女が通う幼稚園で知り合った真紀に初めてランチを誘われ、駅前の裏通りにオープンしたばかりのレストランにやってきた。2歳になる下の娘は実家の母親に預けてきた。4歳になった長女は今日もまた幼稚園だ。入園して2カ月、すっかり幼稚園に慣れた長女は、毎朝、はしゃぎながら通園バスに乗り込んで幼稚園に通っている。
有田浩介と千春が今のアパートに越してきたのは、次女が産まれてからである。実家がそれほど遠くないとはいえ、近所には千春の同年代の友人はなかなかいなかった。勿論、公園で娘たちを遊ばせていれば、自分と同じような世代の女性に出会うことも多かったが、 特に深く付き合うというわけでもなかった。しかし、今春の長女の幼稚園入園をきっかけに、それは少しばかり変わりそうであった。
千春は、今後友人となれそうな女性達、何人かに出会うことになる。それは千春が幼稚園PTAの役員になったことが大きかった。PTA役員は全部で25名ほど。当然、どの役員も子供を幼稚園に通わせている母親ばかりだ。
役員になってまだ1カ月程だが、既に会合は頻繁に開かれ、互いの親密度は一気に増している。千春は〘ベルマーク係〙として、子供たちから集められるベルマーク(商品の包装紙やパッケージにつけられたベルマークを切取り、学校・団体ごとに集めて財団に送ることにより、1点あたり1円がそれぞれの団体のベルマーク預金になり、貯まった預金で自分の学校・団体の設備品などを購入することができる。)の集計とりまとめ、という役割を担うことになった。
意識しない人間にとっては、もはや疎遠なものといった印象だが、“ベルマーク”は食品、文房具、洗顔商品その他、依然として多くの商品に着いている。子供たちはそれを切り取り、教室内の専用箱に随時提出をしている。ポイント数、形も様々であり、その仕分け、集計作業は簡単なものではない。金銭が絡んでくるだけに、ミスを許されない業務だ。
どう進めるべきかいろいろと試行錯誤する中、一緒に相談をする相手が、同じ〘ベルマーク係〙となった真紀であった。
真紀には、今年5歳になる、年中クラスに通う息子がいる。真紀と千春は、お互いの家はやや離れていたが、連絡を取り合うことも多く、互いの境遇についても少しずつ語り合う仲となっていた。話題はやはり子供のことが中心であった。性格、食べ物の好み、好きなTV・キャラクター、そして病気のこと・・・。語り合うことはいくらでもある。男の子と女の子では随分と違いがあり、それがまた面白く、話を弾ませた。
そんな子供達の会話が一段落したときに、真紀が口にしたのが、『あ~、うちの店もこれくらいおいしいもの出さないとやっぱり駄目よね~。』というレストランの食事を褒めるそのセリフであった。千春の〚でも、レストランというよりもカフェなんでしょ、真紀さんのお店は。〛に『そうだけどね~、でもやばいのよ、ほんと、うちの店。』と真紀が答えた。
2015/01/15
(原題:覗かれる妻~裕子の決意~ 投稿者:のりのり 投稿日:2008/07/01)
有機栽培された食材を使用した週替わりのメニューが売り物の小さなレストラン。そこでランチを食べながら、立花真紀(たちばな・まき:32歳)は、『あ~、うちの店もこれくらいおいしいもの出さないとやっぱり駄目よね~。』と友人の有田千春(ありた・ちはる:30歳)にそう話しかけた。
今週のランチ、《シンガポール・チキンライス(海南鶏飯)》を注文した2人は、チキンの茹で汁を使って炊き上げたご飯を堪能しているところだった。
真紀と食事を共にする友人、千春はテーブル越しに真紀を見つめ、微笑みながら〚でも、レストランというよりもカフェなんでしょ、真紀さんのお店は。〛そう声をかける。
千春は長女が通う幼稚園で知り合った真紀に初めてランチを誘われ、駅前の裏通りにオープンしたばかりのレストランにやってきた。2歳になる下の娘は実家の母親に預けてきた。4歳になった長女は今日もまた幼稚園だ。入園して2カ月、すっかり幼稚園に慣れた長女は、毎朝、はしゃぎながら通園バスに乗り込んで幼稚園に通っている。
有田浩介と千春が今のアパートに越してきたのは、次女が産まれてからである。実家がそれほど遠くないとはいえ、近所には千春の同年代の友人はなかなかいなかった。勿論、公園で娘たちを遊ばせていれば、自分と同じような世代の女性に出会うことも多かったが、 特に深く付き合うというわけでもなかった。しかし、今春の長女の幼稚園入園をきっかけに、それは少しばかり変わりそうであった。
千春は、今後友人となれそうな女性達、何人かに出会うことになる。それは千春が幼稚園PTAの役員になったことが大きかった。PTA役員は全部で25名ほど。当然、どの役員も子供を幼稚園に通わせている母親ばかりだ。
役員になってまだ1カ月程だが、既に会合は頻繁に開かれ、互いの親密度は一気に増している。千春は〘ベルマーク係〙として、子供たちから集められるベルマーク(商品の包装紙やパッケージにつけられたベルマークを切取り、学校・団体ごとに集めて財団に送ることにより、1点あたり1円がそれぞれの団体のベルマーク預金になり、貯まった預金で自分の学校・団体の設備品などを購入することができる。)の集計とりまとめ、という役割を担うことになった。
意識しない人間にとっては、もはや疎遠なものといった印象だが、“ベルマーク”は食品、文房具、洗顔商品その他、依然として多くの商品に着いている。子供たちはそれを切り取り、教室内の専用箱に随時提出をしている。ポイント数、形も様々であり、その仕分け、集計作業は簡単なものではない。金銭が絡んでくるだけに、ミスを許されない業務だ。
どう進めるべきかいろいろと試行錯誤する中、一緒に相談をする相手が、同じ〘ベルマーク係〙となった真紀であった。
真紀には、今年5歳になる、年中クラスに通う息子がいる。真紀と千春は、お互いの家はやや離れていたが、連絡を取り合うことも多く、互いの境遇についても少しずつ語り合う仲となっていた。話題はやはり子供のことが中心であった。性格、食べ物の好み、好きなTV・キャラクター、そして病気のこと・・・。語り合うことはいくらでもある。男の子と女の子では随分と違いがあり、それがまた面白く、話を弾ませた。
そんな子供達の会話が一段落したときに、真紀が口にしたのが、『あ~、うちの店もこれくらいおいしいもの出さないとやっぱり駄目よね~。』というレストランの食事を褒めるそのセリフであった。千春の〚でも、レストランというよりもカフェなんでしょ、真紀さんのお店は。〛に『そうだけどね~、でもやばいのよ、ほんと、うちの店。』と真紀が答えた。
2015/01/15
- 関連記事
-
- 中Q〖あの時に変わった?〗第1話 (2015/01/15)
- 中Q〖あの時に変わった?〗第2話 (2015/07/04)
- 中Q〖あの時に変わった?〗第3話 (2015/07/08)
- 中Q〖あの時に変わった?〗第4話 (2015/07/09)
- 中Q〖あの時に変わった?〗第5話 (2015/07/19)
- 中Q〖あの時に変わった?〗第6話 (2015/07/26)
- 中Q〖あの時に変わった?〗第7話 (2015/07/30)
- 中Q〖あの時に変わった?〗第8話 (2015/08/03)
- 中Q〖あの時に変わった?〗第9話 (2015/08/06)
- 中Q〖あの時に変わった?〗第10話 (2015/08/26)
- 中Q〖あの時に変わった?〗第11話 (2015/12/12)
- 中Q〖あの時に変わった?〗第12話 (2017/01/30)
- 中Q〖あの時に変わった?〗第13話 (2018/07/01)
コメント
コメントの投稿