中Q〖あの時に変わった?〗第2話
中Q〖あの時に変わった?〗第2話
細かく刻んだ長葱(ながねぎ)の入ったチキン風味のスープを飲みながら、『そうだけどね~、でもやばいのよ。ほんと、うちの店。』と立花真紀(まき32歳)が有田千春(ちはる32歳)に答える。真紀が言うには、彼女の夫(立花慶一)は15年近く真面目に勤めていた中堅商社を昨年突然退職し、自宅そばに小さなカフェをオープンした。
商社員時代のコネクションを利用し、南米から輸入した珈琲豆を自家焙煎するのが売り物のその店は、オープン当初は物珍しさもあり客で溢れかえったのだが、数カ月も経つうちに、少しずつ客足も遠のき、現状では相当苦戦をしている。
〚そんなに深刻なの?〛と問う千春に、『うん。マジでやばいって感じなの。』って真紀が答える。そのあっけらかんとした様子からは、深刻さがどの程度なのか、千春にはなかなかつかみかねた。
〚ご主人も大変でしょう?〛
『いいのよ、あの人は。マイペースでやっているんだから。私のことなんかいつもほったらかしよ。』
その突き放したような言い方にも、千春は、真紀の夫に対する愛情を感じ取る。
真紀はそう答えながら、ふと告白するかのように、千春の目を見て言った。
『実はね、急なんだけど、私、働こうかなって思っていて・・・。』
〚えっ!真紀さん働くの?〛
蒸したチキンを辛目の特製ソースにつけていた手を思わず置き、千春は驚いてそう言った。
『うん・・・・。と言うか、もう決めちゃったんだけど・・・。』
〚ちょっと待って、真紀さん! じゃ、ベルマーク係はどうなっちゃうのよ!!〛
千春が冗談めいて、真紀に迫る。
『千春さんに任せた!・・・それは冗談でさ、ははは。大丈夫よ。あのね働くと言ってもパートで、毎日じゃないみたいだから。』
薄いピンクのポロシャツに、白いタイトジーンズという格好の真紀が、千春にそう説明する。ローライズのそのジーンズは、ちらちらと真紀の背中の白い素肌を見え隠れさせている。
『主人がね、声かけられたみたいなの、奥さんをパートで働かせてみませんかって。』
〚へえ!〛
『何でも主人のカフェへの援助が絡んでいるみたいでね。その仕事先はカフェの内装をした事務所なんだけど。』
〚あら、よさそうな仕事じゃない。〛
レストランの店内では、コールドプレイの曲が上品な音量で流されている。 話を弾ませる2人のテーブルは、窓際に置かれていた。夏を思わせるような日差しが、窓から差し込み、テーブルをまぶしく照らしている。窓からは忙しげに歩き去る人々、そして狭い道を乱暴に進む車の姿が見える。ランチを共にする2人の人妻。ともに長身でスラリとした体型に、整った顔立ちをしていた。レストランの中でも2人はひときわ目立ち、数人でランチをとる営業途中の会社員のグループも、先程からちらちらと視線を投げかけていた。
2015/07/04
細かく刻んだ長葱(ながねぎ)の入ったチキン風味のスープを飲みながら、『そうだけどね~、でもやばいのよ。ほんと、うちの店。』と立花真紀(まき32歳)が有田千春(ちはる32歳)に答える。真紀が言うには、彼女の夫(立花慶一)は15年近く真面目に勤めていた中堅商社を昨年突然退職し、自宅そばに小さなカフェをオープンした。
商社員時代のコネクションを利用し、南米から輸入した珈琲豆を自家焙煎するのが売り物のその店は、オープン当初は物珍しさもあり客で溢れかえったのだが、数カ月も経つうちに、少しずつ客足も遠のき、現状では相当苦戦をしている。
〚そんなに深刻なの?〛と問う千春に、『うん。マジでやばいって感じなの。』って真紀が答える。そのあっけらかんとした様子からは、深刻さがどの程度なのか、千春にはなかなかつかみかねた。
〚ご主人も大変でしょう?〛
『いいのよ、あの人は。マイペースでやっているんだから。私のことなんかいつもほったらかしよ。』
その突き放したような言い方にも、千春は、真紀の夫に対する愛情を感じ取る。
真紀はそう答えながら、ふと告白するかのように、千春の目を見て言った。
『実はね、急なんだけど、私、働こうかなって思っていて・・・。』
〚えっ!真紀さん働くの?〛
蒸したチキンを辛目の特製ソースにつけていた手を思わず置き、千春は驚いてそう言った。
『うん・・・・。と言うか、もう決めちゃったんだけど・・・。』
〚ちょっと待って、真紀さん! じゃ、ベルマーク係はどうなっちゃうのよ!!〛
千春が冗談めいて、真紀に迫る。
『千春さんに任せた!・・・それは冗談でさ、ははは。大丈夫よ。あのね働くと言ってもパートで、毎日じゃないみたいだから。』
薄いピンクのポロシャツに、白いタイトジーンズという格好の真紀が、千春にそう説明する。ローライズのそのジーンズは、ちらちらと真紀の背中の白い素肌を見え隠れさせている。
『主人がね、声かけられたみたいなの、奥さんをパートで働かせてみませんかって。』
〚へえ!〛
『何でも主人のカフェへの援助が絡んでいるみたいでね。その仕事先はカフェの内装をした事務所なんだけど。』
〚あら、よさそうな仕事じゃない。〛
レストランの店内では、コールドプレイの曲が上品な音量で流されている。 話を弾ませる2人のテーブルは、窓際に置かれていた。夏を思わせるような日差しが、窓から差し込み、テーブルをまぶしく照らしている。窓からは忙しげに歩き去る人々、そして狭い道を乱暴に進む車の姿が見える。ランチを共にする2人の人妻。ともに長身でスラリとした体型に、整った顔立ちをしていた。レストランの中でも2人はひときわ目立ち、数人でランチをとる営業途中の会社員のグループも、先程からちらちらと視線を投げかけていた。
2015/07/04
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