中Q〖あの時に変わった?〗第4話
中Q〖あの時に変わった?〗第4話
『でも綺麗よ・・・・・・。何か、肌のつやとかますます磨きがかかった気がするけど。千春さん、最近いいことあったの?』と立花真紀(まき32歳)が訊く。
〚べ、別にないわよ・・・。〛
真紀に指摘され、有田千春(ちはる32歳)はまた、春川との行為を想い出す。(自分の本当の姿を知ってしまった女は、やはり何か違った風に見えてしまうのだろうか・・・・。)そんな思いを打ち消すかのように、千春は真紀に言葉をかける。
〚真紀さんだって、そんなにスタイルいいくせに・・・・。だからパートを始めたら人気出るわよ男の人に、絶対に誘われるわ。〛
『冗談はやめてよ~。』
〚でも、とにかく楽しみね、そのお仕事。〛
『うーん、まあ、お仕事より、頂けるお給料が楽しみなの~(笑)。』
〚そりゃそうね(笑)。〛
同世代の友人と他愛もない会話をしながら昼食をとる。そんな当たり前だけど、子供がいる母親にはなかなか手が届かない幸せを、2人は今、感じていた。
40歳を前にし、私(立花慶一)は、周囲の反対を押し切り、それまで15年近く勤めてきた中堅商社を退職し、自宅近くで小さなカフェ<ミナスジェライス>を始めた。元々飲食業には興味はなかったが、昨年、同期入社の社員が突然病死し、それ以降、自分の人生に
ついていろいろと考えた末の決断である。
中間管理職としての職務、意味の無い長時間の会議、朝晩の殺人的な通勤ラッシュ、その全てに対する疑問を、大半の人々はうまくやり過ごしながら、退職の日まで“完走する”のだろう。しかし私には、どうしてもそれができなかった。
私が会社を辞めるきっかけを探し始めたとき、たまたま仕事の絡みで、とある南米の珈琲園主と知り合い、日本への進出を図りたいということで、こちらから一方的に提案をし、いつのまにか退職、そしてカフェ開店の準備へと一気に突き進んでしまった。『大変だと思うけど、応援しているからね。』退職以降、妻の真紀はその不安を隠しながら、夫である私に励ましの言葉をかけ続けてくれる。
そして、私のカフェ<ミナスジェライス>はオープンした。駅からはやや離れてはいるが、通行量の多い幹線道路からの便はよく、近くには小さな短期大学もある。開店当初は思った以上のにぎわいを見せ、会社時代の同僚社員たちも多く訪問してくれた。女子大生のアルバイトも採用し、滑り出しはなかなかに順調といえた。
しかし、オープン1年も経たないうちに店の経営は行き詰まり、先行き不透明なものとなっていく。想像以上にランニングコストがかかり、当初用意した資金も急速になくなる。 これ以上の融資を銀行から獲得するのも難しく、店をたたむか、悪質な金融業者に手を出すしかない状況に私は追い込まれていた。
2015/07/09
『でも綺麗よ・・・・・・。何か、肌のつやとかますます磨きがかかった気がするけど。千春さん、最近いいことあったの?』と立花真紀(まき32歳)が訊く。
〚べ、別にないわよ・・・。〛
真紀に指摘され、有田千春(ちはる32歳)はまた、春川との行為を想い出す。(自分の本当の姿を知ってしまった女は、やはり何か違った風に見えてしまうのだろうか・・・・。)そんな思いを打ち消すかのように、千春は真紀に言葉をかける。
〚真紀さんだって、そんなにスタイルいいくせに・・・・。だからパートを始めたら人気出るわよ男の人に、絶対に誘われるわ。〛
『冗談はやめてよ~。』
〚でも、とにかく楽しみね、そのお仕事。〛
『うーん、まあ、お仕事より、頂けるお給料が楽しみなの~(笑)。』
〚そりゃそうね(笑)。〛
同世代の友人と他愛もない会話をしながら昼食をとる。そんな当たり前だけど、子供がいる母親にはなかなか手が届かない幸せを、2人は今、感じていた。
40歳を前にし、私(立花慶一)は、周囲の反対を押し切り、それまで15年近く勤めてきた中堅商社を退職し、自宅近くで小さなカフェ<ミナスジェライス>を始めた。元々飲食業には興味はなかったが、昨年、同期入社の社員が突然病死し、それ以降、自分の人生に
ついていろいろと考えた末の決断である。
中間管理職としての職務、意味の無い長時間の会議、朝晩の殺人的な通勤ラッシュ、その全てに対する疑問を、大半の人々はうまくやり過ごしながら、退職の日まで“完走する”のだろう。しかし私には、どうしてもそれができなかった。
私が会社を辞めるきっかけを探し始めたとき、たまたま仕事の絡みで、とある南米の珈琲園主と知り合い、日本への進出を図りたいということで、こちらから一方的に提案をし、いつのまにか退職、そしてカフェ開店の準備へと一気に突き進んでしまった。『大変だと思うけど、応援しているからね。』退職以降、妻の真紀はその不安を隠しながら、夫である私に励ましの言葉をかけ続けてくれる。
そして、私のカフェ<ミナスジェライス>はオープンした。駅からはやや離れてはいるが、通行量の多い幹線道路からの便はよく、近くには小さな短期大学もある。開店当初は思った以上のにぎわいを見せ、会社時代の同僚社員たちも多く訪問してくれた。女子大生のアルバイトも採用し、滑り出しはなかなかに順調といえた。
しかし、オープン1年も経たないうちに店の経営は行き詰まり、先行き不透明なものとなっていく。想像以上にランニングコストがかかり、当初用意した資金も急速になくなる。 これ以上の融資を銀行から獲得するのも難しく、店をたたむか、悪質な金融業者に手を出すしかない状況に私は追い込まれていた。
2015/07/09
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