短Ⅲ11『挑発する妻の視線』第3話
短Ⅲ11『挑発する妻の視線』第3話
『今日ね、これ、すっごく安くなってたんだよ! ケースで買っちゃった!』
妻(早川絵梨:えり:32歳)は、注いだビールの缶を見せながら言う。ビールと言っても、いわゆる発泡酒だ。そして、安くなったと言っても、たかが数十円という話だと思う。今の年収なら、そんな事は気にせず、発泡酒ではなくビールでもなんでも買えると思う。
でも、絵梨はそんな事を嬉々と話してきた。あの時のピンチ以来、妻は慎ましい生活を守っている。贅沢もせず、なにかをおねだりすることもなく、発泡酒が安く買えたことに喜びを感じている絵梨。夫の早川直也(はやかわ・なおや:37歳)は、そんな絵梨を本当に愛おしく思う。
「ありがとう……。でも、普通のビールを買えば良いよ。もう、苦労かけることはないから。」
直也は、申し訳なさそうに言う。
『そんな心配してませんよ。でも私、発泡酒の方が好きだから。』
絵梨は、真っ直ぐに直也の目を見ながら、にこやかに言う。その目には、信頼と愛情があふれ出ているようで、そんな目で見つめられると、直也はより胸が苦しくなる。
胸がいっぱいになった直也は、
「ゴメン……。」
と絞り出すように言った。
『もう! 謝らない約束ですよ。それに、最近は私も、亮さんとのこと楽しんでいるんですから。』
と、少しイタズラっぽく言う絵梨。
すると、インターホンが鳴った。
『あっ、亮さんかな?』
絵梨はそう言うと、玄関に走る。すぐに、
〔こんばんは〜。今日もえりちゃん綺麗だねぇ〜。〕
と、明るい寺脇亮(てらわき・りょう:37歳)の声が聞こえる。
『もう! 口が上手いんだから! 何も出ませんよ〜。』
絵梨はそんな事を言いながらも、顔がにやけている。やはり、誉められて嫌な気はしないようだ。
〔お疲れ! これ持ってきたぜ! 飲もうか?〕
亮は、高そうなワインを手にそんな事を言う。直也は、挨拶もそこそこに、
「いいね! 絵梨、グラス持ってきてよ!」
と言う。
『いつもゴメンなさい。これ、高いんじゃないんですか?』
絵梨はそんな風に言いながらも、すでにワインオープナーで開け始めている。そんな天然な所も可愛らしいと思いながら、直也は絵梨を見つめる。
そして、3人での楽しい食事の時間が始まる。話題は、ほとんどがクライミングの話だ。今度はどこの岩場に行こうかとか、誰それが一撃で落としたとか、そんな会話をしながらDVDも見たりする。本当に楽しい時間で、直也はついつい飲み過ぎてしまう。でも・・・・。
〔じゃあ、そろそろいいかな?〕
亮のその言葉で場の空気が一変する。
『……はい……。』
少しためらいがちに返事をした絵梨は、椅子から立ち上がると、亮の横に移動した。直也は、その様子を黙って見ている。その直也の目の前で、絵梨は亮にキスをした。なんの躊躇もなく、夫の直也の目の前で亮の口の中に舌を差し込み、濃厚な大人のキスをする。絵梨は濃厚なキスをしながら、時折直也の方に視線を送る。その目は、妖しく挑発でもするような光を放っていた。
第4話へ続く
2016/10/31
『今日ね、これ、すっごく安くなってたんだよ! ケースで買っちゃった!』
妻(早川絵梨:えり:32歳)は、注いだビールの缶を見せながら言う。ビールと言っても、いわゆる発泡酒だ。そして、安くなったと言っても、たかが数十円という話だと思う。今の年収なら、そんな事は気にせず、発泡酒ではなくビールでもなんでも買えると思う。
でも、絵梨はそんな事を嬉々と話してきた。あの時のピンチ以来、妻は慎ましい生活を守っている。贅沢もせず、なにかをおねだりすることもなく、発泡酒が安く買えたことに喜びを感じている絵梨。夫の早川直也(はやかわ・なおや:37歳)は、そんな絵梨を本当に愛おしく思う。
「ありがとう……。でも、普通のビールを買えば良いよ。もう、苦労かけることはないから。」
直也は、申し訳なさそうに言う。
『そんな心配してませんよ。でも私、発泡酒の方が好きだから。』
絵梨は、真っ直ぐに直也の目を見ながら、にこやかに言う。その目には、信頼と愛情があふれ出ているようで、そんな目で見つめられると、直也はより胸が苦しくなる。
胸がいっぱいになった直也は、
「ゴメン……。」
と絞り出すように言った。
『もう! 謝らない約束ですよ。それに、最近は私も、亮さんとのこと楽しんでいるんですから。』
と、少しイタズラっぽく言う絵梨。
すると、インターホンが鳴った。
『あっ、亮さんかな?』
絵梨はそう言うと、玄関に走る。すぐに、
〔こんばんは〜。今日もえりちゃん綺麗だねぇ〜。〕
と、明るい寺脇亮(てらわき・りょう:37歳)の声が聞こえる。
『もう! 口が上手いんだから! 何も出ませんよ〜。』
絵梨はそんな事を言いながらも、顔がにやけている。やはり、誉められて嫌な気はしないようだ。
〔お疲れ! これ持ってきたぜ! 飲もうか?〕
亮は、高そうなワインを手にそんな事を言う。直也は、挨拶もそこそこに、
「いいね! 絵梨、グラス持ってきてよ!」
と言う。
『いつもゴメンなさい。これ、高いんじゃないんですか?』
絵梨はそんな風に言いながらも、すでにワインオープナーで開け始めている。そんな天然な所も可愛らしいと思いながら、直也は絵梨を見つめる。
そして、3人での楽しい食事の時間が始まる。話題は、ほとんどがクライミングの話だ。今度はどこの岩場に行こうかとか、誰それが一撃で落としたとか、そんな会話をしながらDVDも見たりする。本当に楽しい時間で、直也はついつい飲み過ぎてしまう。でも・・・・。
〔じゃあ、そろそろいいかな?〕
亮のその言葉で場の空気が一変する。
『……はい……。』
少しためらいがちに返事をした絵梨は、椅子から立ち上がると、亮の横に移動した。直也は、その様子を黙って見ている。その直也の目の前で、絵梨は亮にキスをした。なんの躊躇もなく、夫の直也の目の前で亮の口の中に舌を差し込み、濃厚な大人のキスをする。絵梨は濃厚なキスをしながら、時折直也の方に視線を送る。その目は、妖しく挑発でもするような光を放っていた。
第4話へ続く
2016/10/31
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