短Ⅲ11『挑発する妻の視線』第4話
短Ⅲ11『挑発する妻の視線』第4話
夫の早川直也(はやかわ・なおや:37歳)が3年前のピンチの時、親友の寺脇亮(てらわき・りょう:37歳)に頭を下げ、彼が出した条件は一つだった。それは、月に一度、直也の目の前で妻(早川絵梨:えり:32歳)を抱くことだった。最初、直也は亮が冗談を言っているのだと思った。だが、その後の亮のカミングアウトは、直也にとって衝撃的だった。
亮は、絵梨と直也が結婚してもなお、絵梨のことが好きだった。亮がモテる身でありながら、誰とも交際をしなかったのは、単に絵梨が心にいたからだ。その告白は、直也にとっては青天の霹靂である。直也は、亮がもうとっくに絵梨を吹っ切っていると・・・いくらでも相手がいると思われる亮なので、もう忘れている。と・・・それだけに、亮のカミングアウトを聞いて、直也はただ驚いた。その亮が〔3000万円と引き換えに、月に一度だけ思いを遂げさせて欲しい……。〕と、逆に直也に頭を下げた。そして直也には、他に選択の余地はない……。
妻の絵梨に直也がその話をした時、絵梨は何も言わずに首を縦に振った。何度も謝り、涙まで流す直也に、『私は平気です。それに、亮さんならイヤじゃないですからね。』って、明るく笑いながら言う。でも、絵梨は指が真っ白になるくらいに拳を握っていた。イヤじゃないはずがない……。絵梨は、すべてが夫の直也が初めての相手である。デートも、キスも、セックスもすべてを直也に捧げ、一生直也以外の男を知ることなく、人生を終えるものだと思っていた。
約束の日に向けて、絵梨はピルを飲み始める。まだ小さい息子を育てながら、他の男に抱かれるためのピルを飲む絵梨。直也は、その姿を見て胸が破れそうだった。そして、約束の日が訪れる。直也は、「せめて自分がいない場所で絵梨を抱いてくれ。」と頼んだ。でも、亮は同意しない。理由は教えてくれなかったが、亮は直也の前で抱くことにこだわった。
そして、その約束の日、亮が家に来る。緊張で3人ともほとんど口をきかない中、絵梨が息子を風呂に入れ、寝かしつけた。それで亮と直也は、二人きりになると、〔本当に、いいんだな?〕と、亮が短く訊く。提案した彼も、やはり緊張している。「いいもなにも、もう金は使っちまったよ。」と直也は精一杯の虚勢を張って、笑いながら言ったが、脚は震えていた。《いくら親友でも、妻は貸せない! 貸せるはずがない!》直也は、そんな当たり前の感情を持っていた。寝取られ性癖があるわけでも、絵梨への愛が醒めていたわけでもない。
心の底から惚れた絵梨が、自分の失敗のせいで他人に抱かれてしまう……。それは、血の涙が出そうな程の、辛すぎる現実である。そこへ息子を寝かしつけた妻が、バスタオルを巻いただけの恰好でリビングに入ってきた。『お待たせしました……。』うつむいて顔を真っ赤にしている絵梨が、小声で言う。そして、黙って寝室に入っていった。亮と直也はその後を追う。 第5話へ続く
2016/11/15
夫の早川直也(はやかわ・なおや:37歳)が3年前のピンチの時、親友の寺脇亮(てらわき・りょう:37歳)に頭を下げ、彼が出した条件は一つだった。それは、月に一度、直也の目の前で妻(早川絵梨:えり:32歳)を抱くことだった。最初、直也は亮が冗談を言っているのだと思った。だが、その後の亮のカミングアウトは、直也にとって衝撃的だった。
亮は、絵梨と直也が結婚してもなお、絵梨のことが好きだった。亮がモテる身でありながら、誰とも交際をしなかったのは、単に絵梨が心にいたからだ。その告白は、直也にとっては青天の霹靂である。直也は、亮がもうとっくに絵梨を吹っ切っていると・・・いくらでも相手がいると思われる亮なので、もう忘れている。と・・・それだけに、亮のカミングアウトを聞いて、直也はただ驚いた。その亮が〔3000万円と引き換えに、月に一度だけ思いを遂げさせて欲しい……。〕と、逆に直也に頭を下げた。そして直也には、他に選択の余地はない……。
妻の絵梨に直也がその話をした時、絵梨は何も言わずに首を縦に振った。何度も謝り、涙まで流す直也に、『私は平気です。それに、亮さんならイヤじゃないですからね。』って、明るく笑いながら言う。でも、絵梨は指が真っ白になるくらいに拳を握っていた。イヤじゃないはずがない……。絵梨は、すべてが夫の直也が初めての相手である。デートも、キスも、セックスもすべてを直也に捧げ、一生直也以外の男を知ることなく、人生を終えるものだと思っていた。
約束の日に向けて、絵梨はピルを飲み始める。まだ小さい息子を育てながら、他の男に抱かれるためのピルを飲む絵梨。直也は、その姿を見て胸が破れそうだった。そして、約束の日が訪れる。直也は、「せめて自分がいない場所で絵梨を抱いてくれ。」と頼んだ。でも、亮は同意しない。理由は教えてくれなかったが、亮は直也の前で抱くことにこだわった。
そして、その約束の日、亮が家に来る。緊張で3人ともほとんど口をきかない中、絵梨が息子を風呂に入れ、寝かしつけた。それで亮と直也は、二人きりになると、〔本当に、いいんだな?〕と、亮が短く訊く。提案した彼も、やはり緊張している。「いいもなにも、もう金は使っちまったよ。」と直也は精一杯の虚勢を張って、笑いながら言ったが、脚は震えていた。《いくら親友でも、妻は貸せない! 貸せるはずがない!》直也は、そんな当たり前の感情を持っていた。寝取られ性癖があるわけでも、絵梨への愛が醒めていたわけでもない。
心の底から惚れた絵梨が、自分の失敗のせいで他人に抱かれてしまう……。それは、血の涙が出そうな程の、辛すぎる現実である。そこへ息子を寝かしつけた妻が、バスタオルを巻いただけの恰好でリビングに入ってきた。『お待たせしました……。』うつむいて顔を真っ赤にしている絵梨が、小声で言う。そして、黙って寝室に入っていった。亮と直也はその後を追う。 第5話へ続く
2016/11/15
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