短Ⅲ11『挑発する妻の視線』第5話
短Ⅲ11『挑発する妻の視線』第5話
第4話
寝室に入ると、すでに間接照明だけになっており、薄暗い中、妻の早川絵梨(はやかわ・えり:32歳)はダブルベッドに寝ていた。そしてベッドの奥には、ベビーベッドに眠る息子が見える。それを見て、夫の早川直也(はやかわ・なおや:37歳)の後悔は限界を超えるほど大きくなった。大声を上げて、二人を止めようとした瞬間、直也は絵梨の視線に気がついた。タオルを巻いた状態で、ベッドの上から直也の目を見つめる絵梨の目は、“大丈夫”と語っている。
直也はそれを見て、腰が抜けたようにへたり込み、心の中で何度も愛する妻に謝罪を繰り返していた。そして夫の直也が見ている中、親友の寺脇亮(てらわき・りょう:37歳)がベッドの横に立ち、服を脱ぎ始める。それを見つめる絵梨は、緊張で顔がこわばっていた。あっという間にパンツ一枚になると、亮はベッドの上に上がる。〔絵梨さん、そんなに緊張しないで。本当にイヤなら、今日は止めるよ。〕
絵梨は、戸惑っていた。今、この状況でもまだ現実として受け止め切れていなかった。妻にとって亮は、クライミング仲間であり、仲の良い友人。それが今、お金と引き換えに絵梨を抱こうとしている。絵梨は、冗談だと思いたかった。でも、最後の一枚のパンツを脱ぎ、自分に近づいてくる亮を見て、絵梨は現実だと理解する。
『平気です……。』って妻は、小さな声で答えた。それが合図だったように、亮は絵梨を抱きしめキスをする。唇と唇が触れた瞬間、絵梨は直也を見た。そして、直也も絵梨を見る。絵梨は、泣きそうな目で直也を見つめ、直也は実際に涙を流しながら絵梨を見つめた。
亮は、それに気がつかないように、絵梨の口の中に舌を差し込む。そして、舌を絡めるキスをした。その動きは優しく滑らかで、亮が女性に慣れているのがよくわかる。亮の中には、ずっと絵梨がいたために、特定の彼女は作ることがなかった。だが、排泄行為のような感覚で、たくさんの女性と関係を持った。願いが叶えられない哀しみを、たくさんの女性を抱くことで消そうとしているかのように、感情もない相手とも関係を持った。
そんな亮の願いが、長い時間を経て、歪(いびつ)な形ではあるがかなえられようとしている。亮は、本当に慈(いつく)しむようにキスをした。絵梨とキス出来るのが、嬉しくて仕方ないのが伝わってくる。
覚悟していたとはいえ、目の前で妻が自分以外の男とキスをする姿を見て、直也は歯を食いしばるようにして拳を握っていた。悔しさ……。そして、自分自身へのふがいなさで、涙が止まらない。 第6話へ続く
2017/01/02
第4話
寝室に入ると、すでに間接照明だけになっており、薄暗い中、妻の早川絵梨(はやかわ・えり:32歳)はダブルベッドに寝ていた。そしてベッドの奥には、ベビーベッドに眠る息子が見える。それを見て、夫の早川直也(はやかわ・なおや:37歳)の後悔は限界を超えるほど大きくなった。大声を上げて、二人を止めようとした瞬間、直也は絵梨の視線に気がついた。タオルを巻いた状態で、ベッドの上から直也の目を見つめる絵梨の目は、“大丈夫”と語っている。
直也はそれを見て、腰が抜けたようにへたり込み、心の中で何度も愛する妻に謝罪を繰り返していた。そして夫の直也が見ている中、親友の寺脇亮(てらわき・りょう:37歳)がベッドの横に立ち、服を脱ぎ始める。それを見つめる絵梨は、緊張で顔がこわばっていた。あっという間にパンツ一枚になると、亮はベッドの上に上がる。〔絵梨さん、そんなに緊張しないで。本当にイヤなら、今日は止めるよ。〕
絵梨は、戸惑っていた。今、この状況でもまだ現実として受け止め切れていなかった。妻にとって亮は、クライミング仲間であり、仲の良い友人。それが今、お金と引き換えに絵梨を抱こうとしている。絵梨は、冗談だと思いたかった。でも、最後の一枚のパンツを脱ぎ、自分に近づいてくる亮を見て、絵梨は現実だと理解する。
『平気です……。』って妻は、小さな声で答えた。それが合図だったように、亮は絵梨を抱きしめキスをする。唇と唇が触れた瞬間、絵梨は直也を見た。そして、直也も絵梨を見る。絵梨は、泣きそうな目で直也を見つめ、直也は実際に涙を流しながら絵梨を見つめた。
亮は、それに気がつかないように、絵梨の口の中に舌を差し込む。そして、舌を絡めるキスをした。その動きは優しく滑らかで、亮が女性に慣れているのがよくわかる。亮の中には、ずっと絵梨がいたために、特定の彼女は作ることがなかった。だが、排泄行為のような感覚で、たくさんの女性と関係を持った。願いが叶えられない哀しみを、たくさんの女性を抱くことで消そうとしているかのように、感情もない相手とも関係を持った。
そんな亮の願いが、長い時間を経て、歪(いびつ)な形ではあるがかなえられようとしている。亮は、本当に慈(いつく)しむようにキスをした。絵梨とキス出来るのが、嬉しくて仕方ないのが伝わってくる。
覚悟していたとはいえ、目の前で妻が自分以外の男とキスをする姿を見て、直也は歯を食いしばるようにして拳を握っていた。悔しさ……。そして、自分自身へのふがいなさで、涙が止まらない。 第6話へ続く
2017/01/02
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