中Ⅱ17[自己犠牲と長続き]第二章その1(6)
中Ⅱ17[自己犠牲と長続き]第二章その1(6)
前回第一章その5
妻(山下芳恵:やました・よしえ:45歳)がそれほどまでに、頑なに守り通したいもの・・・それを、そうしてあげたい当の本人(山下一雄:やました・かずお:49歳)によって無残にも壊されたのだから、心に負った傷は深いものがあるだろう。きっと、理不尽なことを強いる夫の姿に失望したと言うより、幻滅を覚えたに違いない。
話は遡(さかのぼ)るが、妻の芳恵が、配偶者の隠していた思わぬ性癖に出くわしたのは、結婚してかなり経ってからのことだった。今はどう思っているのか知れないが、初めてその話を耳にした時は、きっと、戸惑ったというより、情けなく思ったことだろう。
近い将来、大きな代償を支払うことになるかもしれない・・・先のことを考えると、妻の“我慢の糸”が切れてしまうのでは・・? と不安になりますが、心の奥底で次第に膨らむ欲望は、揉み消すことができない麻薬性の疼きを伴って、私を後押しします。
人は誰しも、自分の主張したことを否定されて、本来とは望んでいない方向に引き摺られていくことを、不快に思わない人はいないでしょう。しばらく、夫婦間に重苦しい雰囲気が漂います。
(きっと妻にしても、今回のことがわだかまりとなって胸の奥深くしまい込まれ、これからの私たちの夫婦生活に、影を落としていくのかもしれない。)
そんなもやもやした想いを振り払うように、私は、妻を自分の布団に抱き寄せます。
「ごめん。無理なことを言って・・・ちゃんと、“約束”は守るから。それで、相手のことなんだけど・・・。」
『次は、当然、その話になると思ったわ。お目当ての人がいるんでしょ?』
「おまえが、『もう一度、抱かれてもいい』って、思っている男性だよ。」
『はっきり、言ってよ! 大体、想像はつくけど・・・・。』
「黒沢さんか稲垣だったら、構わないだろ? 彼らとはお互いに『また機会があったら逢いたい』って、約束し合っているんじゃないのか?」
『そんなことないわ。あなた、ずっと前にわたしが言った言葉覚えている? “ずるずるいきそうな自分が怖い”って・・・黒沢さんも稲垣さんも、わたしが憎からず想っている男性よ。このまま関係を続ければ、わたしがどうなってしまうか、わかりそうなことでしょ?
本当に、そうなってもいいのね?』
「あの二人だったら、長いつき合いをしてもいいと思っている。おまえにも異存はないだろ?」
『“あの二人”って、まさか、二人一緒になんてこと、考えているんじゃないでしょうね?』
「本当にそうなったら、困るのか?」
『もし、そんなことになったら、もう、あなたにはついていけないわ。』 第二章その2(7)へ続く
2017/03/07
前回第一章その5
妻(山下芳恵:やました・よしえ:45歳)がそれほどまでに、頑なに守り通したいもの・・・それを、そうしてあげたい当の本人(山下一雄:やました・かずお:49歳)によって無残にも壊されたのだから、心に負った傷は深いものがあるだろう。きっと、理不尽なことを強いる夫の姿に失望したと言うより、幻滅を覚えたに違いない。
話は遡(さかのぼ)るが、妻の芳恵が、配偶者の隠していた思わぬ性癖に出くわしたのは、結婚してかなり経ってからのことだった。今はどう思っているのか知れないが、初めてその話を耳にした時は、きっと、戸惑ったというより、情けなく思ったことだろう。
近い将来、大きな代償を支払うことになるかもしれない・・・先のことを考えると、妻の“我慢の糸”が切れてしまうのでは・・? と不安になりますが、心の奥底で次第に膨らむ欲望は、揉み消すことができない麻薬性の疼きを伴って、私を後押しします。
人は誰しも、自分の主張したことを否定されて、本来とは望んでいない方向に引き摺られていくことを、不快に思わない人はいないでしょう。しばらく、夫婦間に重苦しい雰囲気が漂います。
(きっと妻にしても、今回のことがわだかまりとなって胸の奥深くしまい込まれ、これからの私たちの夫婦生活に、影を落としていくのかもしれない。)
そんなもやもやした想いを振り払うように、私は、妻を自分の布団に抱き寄せます。
「ごめん。無理なことを言って・・・ちゃんと、“約束”は守るから。それで、相手のことなんだけど・・・。」
『次は、当然、その話になると思ったわ。お目当ての人がいるんでしょ?』
「おまえが、『もう一度、抱かれてもいい』って、思っている男性だよ。」
『はっきり、言ってよ! 大体、想像はつくけど・・・・。』
「黒沢さんか稲垣だったら、構わないだろ? 彼らとはお互いに『また機会があったら逢いたい』って、約束し合っているんじゃないのか?」
『そんなことないわ。あなた、ずっと前にわたしが言った言葉覚えている? “ずるずるいきそうな自分が怖い”って・・・黒沢さんも稲垣さんも、わたしが憎からず想っている男性よ。このまま関係を続ければ、わたしがどうなってしまうか、わかりそうなことでしょ?
本当に、そうなってもいいのね?』
「あの二人だったら、長いつき合いをしてもいいと思っている。おまえにも異存はないだろ?」
『“あの二人”って、まさか、二人一緒になんてこと、考えているんじゃないでしょうね?』
「本当にそうなったら、困るのか?」
『もし、そんなことになったら、もう、あなたにはついていけないわ。』 第二章その2(7)へ続く
2017/03/07
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