中Ⅱ7〖妻と恋人〗 05
中Ⅱ7〖妻と恋人〗 05
04
そんなことがありながら、僕(尾崎健司:おざき・けんじ:32歳)は忙しく日々仕事をこなした。毎日電話すると、妻(尾崎有希:おざき・ゆき:27歳)はいつでも嬉しそうに電話に出てくれた。やはりあの時は、たまたま周りに人がいただけだったのだろう・・・。
そして、明後日には帰国できるというところまで来た。仕事自体はもう完了していて、細々とした引継だけになる。すでにこのプロジェクトは効果が出ていて、僕の社内的評価も相当高くなっていた。
そんな浮かれた気持ちで僕は有希に電話をかける。
『もしもし、どうしたの? そちらはまだ仕事中じゃないの?』
妻の有希はすぐに電話に出て、そう言った。
「そうだけど、もうほとんどプロジェクトは片付いているし、有希のことずっと考えていたから、声聞きたくなったんだ。」
『そうなの、うれしい・・・。私も、ずっと考えていたよ。』
有希が、泣きそうな声で言う。《そんなにも私のことを想ってくれている。》と思うと、嬉しくなる。
「早く有希に会いたいよ。」
心からそう思って言った。
『うん・・。会いたい・・・。』
有希も悲しそうな声で言う。こんなに寂しい思いをさせるなら、今度からは一緒に連れて行くことも真剣に考えた方が良いと思った。
「帰ったらさ、有希の手料理が食べたいよ。イギリスに来て、有希の料理のありがたさに今更気がついたよ。」
『ホントに、今更だね。遅いよ。でも、腕によりをかけちゃうからね。楽しみにしていてね。』
「楽しみにしているよ。」
本当に楽しみになってきた。
『んっ! あっぁ!』
有希が急に変な声を出す。
『つまずいちゃった。』
「大丈夫? 何してたの?」
心配でそう聞いた。
『うん、部屋で掃除してたの。』
有希は、すぐに答える。
「そっか、有希きれい好きだからね。あっ、もう、明後日だね。早く会いたい。」
『明後日だねぇぇん・・。早く・・・。会いたいよぉ・・・。』
有希が、オウム返しで言う。でも声が変だ。感極まって泣きそうになっているのだと思うと、こちらまで泣きそうになる。
「会えるのが楽しみだよ。」
『うん・・。楽しみだよぉ・・・。あ・・。そうだね・・・。ん・・。』
《何が『そうだね』なんだろう?》微妙に話がかみ合っていない気がする。考えてみれば、《日本は結構遅い時間だ。眠いのかもしれない。》
「遅くにゴメンね。愛しているよ。」
《もう寝かしてあげよう。》と思い、そう言って、電話を終えようとした。
『私も・・・。ア・・。愛してる・・・。』 06へ続く
2017/02/12
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そんなことがありながら、僕(尾崎健司:おざき・けんじ:32歳)は忙しく日々仕事をこなした。毎日電話すると、妻(尾崎有希:おざき・ゆき:27歳)はいつでも嬉しそうに電話に出てくれた。やはりあの時は、たまたま周りに人がいただけだったのだろう・・・。
そして、明後日には帰国できるというところまで来た。仕事自体はもう完了していて、細々とした引継だけになる。すでにこのプロジェクトは効果が出ていて、僕の社内的評価も相当高くなっていた。
そんな浮かれた気持ちで僕は有希に電話をかける。
『もしもし、どうしたの? そちらはまだ仕事中じゃないの?』
妻の有希はすぐに電話に出て、そう言った。
「そうだけど、もうほとんどプロジェクトは片付いているし、有希のことずっと考えていたから、声聞きたくなったんだ。」
『そうなの、うれしい・・・。私も、ずっと考えていたよ。』
有希が、泣きそうな声で言う。《そんなにも私のことを想ってくれている。》と思うと、嬉しくなる。
「早く有希に会いたいよ。」
心からそう思って言った。
『うん・・。会いたい・・・。』
有希も悲しそうな声で言う。こんなに寂しい思いをさせるなら、今度からは一緒に連れて行くことも真剣に考えた方が良いと思った。
「帰ったらさ、有希の手料理が食べたいよ。イギリスに来て、有希の料理のありがたさに今更気がついたよ。」
『ホントに、今更だね。遅いよ。でも、腕によりをかけちゃうからね。楽しみにしていてね。』
「楽しみにしているよ。」
本当に楽しみになってきた。
『んっ! あっぁ!』
有希が急に変な声を出す。
『つまずいちゃった。』
「大丈夫? 何してたの?」
心配でそう聞いた。
『うん、部屋で掃除してたの。』
有希は、すぐに答える。
「そっか、有希きれい好きだからね。あっ、もう、明後日だね。早く会いたい。」
『明後日だねぇぇん・・。早く・・・。会いたいよぉ・・・。』
有希が、オウム返しで言う。でも声が変だ。感極まって泣きそうになっているのだと思うと、こちらまで泣きそうになる。
「会えるのが楽しみだよ。」
『うん・・。楽しみだよぉ・・・。あ・・。そうだね・・・。ん・・。』
《何が『そうだね』なんだろう?》微妙に話がかみ合っていない気がする。考えてみれば、《日本は結構遅い時間だ。眠いのかもしれない。》
「遅くにゴメンね。愛しているよ。」
《もう寝かしてあげよう。》と思い、そう言って、電話を終えようとした。
『私も・・・。ア・・。愛してる・・・。』 06へ続く
2017/02/12
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