短Ⅲ28「終止符を打つ」第2回
第1回 20181107
飲まなかった人がいて、車で送ってくれたということも考えられました。しかし、妻(小坂玲子:こさか・れいこ:28歳)がマンション前ではなく、わざわざ少し離れた公園の人目につかないところで降ります・・・。
普通に考えると、時間帯からしても女性を送ってきたのであればマンション前まで来るだろう。しかも光のない植え込み横にではなく、数メートル先の公園の入り口近くにある街灯付近で、足元の見えやすい場所に停車するものではないのか。車が植え込みの所で止まったのは、マンションから見えないようにしたのかも・・・。
だが、遅い時間帯に帰宅したこと自体を近所の人にわざわざ見られたくなくて、この位置を選んだのかもしれない。マンション前まで来るより、公園位置の方がこの車の進行方向に合っていたのかもしれない。まだ車内に数人乗っていたということも考えられた。
車が停車しライトを消してから次に動き出すまでの30秒・・・。
何か話していたのか・・・。探し物でもあったのか・・・。
頭の中で真偽が交錯していると、静かに玄関が開いてから、何やらもたもたしている玲子の様子がうかがえた。私(小坂圭一:こさか・けいいち:33歳)も寝たふりする必要もなかったので、すぐに寝室から出て妻を出迎えます。
白いコートを着たまま玄関先に座り込んでブーツを脱いでいた妻の背中越しに、
「飲み過ぎたんじゃないのか?」
と少し嫌味まじりに声をかけながら近づいた。
『あら、まだ起きてたの、足が抜けなくて。』
少し笑った様子でチカラを込めてブーツを脱ぐと、玲子はすっと立ち上がって私の横を素通りしてリビングに入り、コートを椅子にかけます。私は妻の後からリビングに入ったが、玲子の仕草からはそんなに酒に酔った感じはしなかった。
「お前、顔あまり赤くなってないのかな。ちょっとこっち向いてよ。」
両手を自分の首の後ろに回してネックレスを外しながら、少しうつむき加減に私の正面に顔を向けた妻は、ちらっと私と視点をあわせただけです。
『もういい? お風呂に入りたいから。』
と言い残してクローゼットに服を掛けに行き、風呂場の脱衣所に入ってしまった。
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20191018
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