短Ⅲ28「終止符を打つ」第1回
短Ⅲ28「終止符を打つ」第1回
(原題:器 投稿者:Tear 投稿日:2009/09/18)
《また暴走族か・・・。うるさいな・・・。》
去年の暮れ、深夜1時を過ぎたころにバイクの排気音を響かせながら近くの国道を走り回る若者共にうんざりして目を覚ます。妻(小坂玲子:こさか・れいこ:28歳)は会社の忘年会からまだ帰ってきてはいなかった。暫く眠ろうと試みたが、バイクは近くを徘徊しているようで、その音にいらついてなかなか寝付けそうにない。
《あのバカ達(バイク)はどこを走ってるんだろ?》
ベッドから起き上ってカーテンを少しめくってみると、大量の水滴が窓ガラスにこびりついていた。ロックを外してサッシを少しばかりずらすと、外からの寒気がスーッと入りこんできます。私(小坂圭一:こさか・けいいち:33歳)はサッシに手をかけたまま顔だけ外に出し、マンションの8階からバイクの音が聞こえる方向へと目を向けた。どの辺りを走っているかは分かっても、そのバイクは見つけられません。
まあ見つけてもどうこうする訳でもないので、外の冷たい空気に顔が冷やされる感覚を心地よく感じながら、深夜の新鮮な冷たい空気を吸い込んで、《もう一度寝るか。》と、サッシを閉めようとしたその時だった。
自宅マンションへと続く路地を走ってくる車のライトに目がとまります。妻がタクシーで帰ってきたのかなと思って目でその車を追いかけていると、自宅近くの公園の横に止まって、ヘッドライトが消えた様子までは分かったが植え込みが邪魔でそれ以上は見えなかった。
30秒ほどで植え込みの影から走り出したその車が公園の街灯で照らされた姿は、タクシーではなく黒いハッチバックだったことがわかります。そのすぐあとを追いかけるように白いコートを来た女性が、歩きながら車の背後に小さく何度か手を振っていた。
公園の街灯はそれが誰であるかを教えてくれます。その女性がマンションの玄関に向かって歩いている様子を見ながら、静かにサッシを閉じた。私はベッドに横たわって大きく息を吐きだす。天井を見つめながら考えていた。
以前から妻は会社の飲み会で帰宅が1時を過ぎるという事は稀にあります。その時間に対して特に疑念は持っていなかったが、黒いハッチバックというのにひっかかった。勿論、飲まなかった人がいて、車で送ってくれたということも考えられます。しかし、マンション前ではなく、わざわざ少し離れた公園の人目につかないところで降りた・・・。
第2回に続く
2018/11/07
(原題:器 投稿者:Tear 投稿日:2009/09/18)
《また暴走族か・・・。うるさいな・・・。》
去年の暮れ、深夜1時を過ぎたころにバイクの排気音を響かせながら近くの国道を走り回る若者共にうんざりして目を覚ます。妻(小坂玲子:こさか・れいこ:28歳)は会社の忘年会からまだ帰ってきてはいなかった。暫く眠ろうと試みたが、バイクは近くを徘徊しているようで、その音にいらついてなかなか寝付けそうにない。
《あのバカ達(バイク)はどこを走ってるんだろ?》
ベッドから起き上ってカーテンを少しめくってみると、大量の水滴が窓ガラスにこびりついていた。ロックを外してサッシを少しばかりずらすと、外からの寒気がスーッと入りこんできます。私(小坂圭一:こさか・けいいち:33歳)はサッシに手をかけたまま顔だけ外に出し、マンションの8階からバイクの音が聞こえる方向へと目を向けた。どの辺りを走っているかは分かっても、そのバイクは見つけられません。
まあ見つけてもどうこうする訳でもないので、外の冷たい空気に顔が冷やされる感覚を心地よく感じながら、深夜の新鮮な冷たい空気を吸い込んで、《もう一度寝るか。》と、サッシを閉めようとしたその時だった。
自宅マンションへと続く路地を走ってくる車のライトに目がとまります。妻がタクシーで帰ってきたのかなと思って目でその車を追いかけていると、自宅近くの公園の横に止まって、ヘッドライトが消えた様子までは分かったが植え込みが邪魔でそれ以上は見えなかった。
30秒ほどで植え込みの影から走り出したその車が公園の街灯で照らされた姿は、タクシーではなく黒いハッチバックだったことがわかります。そのすぐあとを追いかけるように白いコートを来た女性が、歩きながら車の背後に小さく何度か手を振っていた。
公園の街灯はそれが誰であるかを教えてくれます。その女性がマンションの玄関に向かって歩いている様子を見ながら、静かにサッシを閉じた。私はベッドに横たわって大きく息を吐きだす。天井を見つめながら考えていた。
以前から妻は会社の飲み会で帰宅が1時を過ぎるという事は稀にあります。その時間に対して特に疑念は持っていなかったが、黒いハッチバックというのにひっかかった。勿論、飲まなかった人がいて、車で送ってくれたということも考えられます。しかし、マンション前ではなく、わざわざ少し離れた公園の人目につかないところで降りた・・・。
第2回に続く
2018/11/07
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