長G〖救いの手を〗第23回
長G〖救いの手を〗第23回
私(高坂正文37歳)はベランダから望む夕闇を見ながら、数時間後に迫った対決に、ときめきにも似た興奮を覚えていました。《恋い焦がれた初恋の相手に会える・・・》感覚的にはそんな感じだったのです。
勿論、憎しみや怒り、不信感と様々な感情が渦巻く精神状態でいた事は言うまでもありません。しかし、確かめたい事柄がボイスレコーダーの中身であったり、彩矢が身に着けている下着であったり、肉体的な変化であったりする訳ですから、この時の私の中には歪んだ欲望もあったのだと思います。
あの土曜日に妻(彩矢:あや32歳)の愛液に塗れたエロチックな下着を見付け、思わず匂いを嗅いで、その強烈なフェロモン臭に衝撃を受け、南京錠に閉ざされた疑惑の化粧箱の中をあらためて、数々の生々しい疑惑のカードを目の当たりにし、今まで体験した事の無いジェラシーを感じ、私自身の中に眠っていた形の見えない性癖が頭を擡げ始めていたのかも知れません。
ベランダからリビングに戻り、時計を確認すると時刻は18時30分を示していました。《あと1時間ちょっとか・・・いよいよだな・・・》と思っていたら、“ピンポーン・・・ピンポーン・・・ピンポ・・・ン”この時、不意にインターホンが鳴り響きます。《誰だろう?》私はインターホンの受話器を取りました。
『ただいまぁ・・・早く終わったの・・・。』
驚いた事に、予定より早く妻の彩矢(あや32歳)が帰って来たのです。
“ガチャ・・・ッ・・・ガチャ・・・バタン・・・ッ・・・”
玄関からは妻の帰宅を告げる音がします。
『あなた、ただいまぁ・・・早く終わったの・・・すぐに夕飯を作るからね。』
両手いっぱいに買い物袋を下げ、肩からは例のボイスレコーダーを仕込んだバッグを下げている。心なしか普段より血色が良く艶のある表情の妻。
「あぁ・・・お帰り・・・早く終わったんだ? どうだった?会議は・・・。」
私は努めて平静に答える。
『うん・・・ 全体の売上げが落ちているから雰囲気は最悪だった・・・でも結局みんな、やるしかないからね・・・。』
彩矢が明るく笑顔で答える。
『じゃあ私は着替えてから、御飯作っちゃうね・・・お腹空いたでしょ?』
スーツを通してでも不思議な色香が伝わって来る妻。《一体、何発やられて来たのか?》妻の言葉に、私は大袈裟に手を振り、
「まぁ、そのまま座っていろよ・・・昨日さ、帰り際に来栖(くるす)先輩にバッタリ会ってさ・・・いいワインがあるから持ってけって・・・。たまに可愛い嫁さんと一緒に飲めよって・・・。」
私は、わざとらしくキッチンから二本のワインを持って来て見せました。
「せっかく自慢の綺麗な奥様がビシッと化粧をしてキメているんだから・・・俺はそれを肴に、この戴いた上等なワインを飲みたいよ。」
妻の彩矢は一瞬、キョトンとした表情をしましたが、
『えぇ~ どうしたの?珍しい・・・ そんな歯の浮くような事を言うなんて・・・。そうなんだ・・・来栖さん、ワインくれたんだ・・・ 。 でも・・・ワインは私、酔っちゃうわよ。』
「別にいいじゃないか?まだ時間は早いんだし・・・今日この後、資料整理とかしなくてはならないのか?」
『ううん・・・今日は別に何も・・・。』
「じゃあ決まりだ。久々に飲もうじゃないか。」
彩矢は、仕方ないわね・・・といった表情で肩に下げていたバッグをサイドボードの上に置き、こくりと頷いた。
『じゃあ、パパッと、おつまみ作っちゃうわね。』と、彩矢がスーツの上からエプロンをしてキッチンに立つ。私はサイドボードの上の例のバッグを気にしながら、ワイングラスを出して、ワインのコルクを抜きました。
妻は、食欲のそそる匂いをさせながら手際良く、何品かのおつまみを作っている。エプロンから覗く彩矢の後ろ姿・・・スカート越しのヒップライン、膝下から伸びるストッキングに包まれた形の良いふくらはぎが妙に眩しい。
『はい、出来たわよ。足りなかったら言ってね。違う物も作るから・・・。』
エプロンを外しながら、彩矢がリビングのテーブルにおつまみを運ぶ。
「ありがとう・・・さぁ座れよ。良いワインらしいから美味しく戴こう・・・。」
私は妻のワイングラスにワインを注ぎます。
「乾杯・・・。」
明るく優しい笑顔の仮面の裏側を晒して、妻の本性を見極めたい・・・。いよいよ長い夜が始まりました。
2015/07/20
私(高坂正文37歳)はベランダから望む夕闇を見ながら、数時間後に迫った対決に、ときめきにも似た興奮を覚えていました。《恋い焦がれた初恋の相手に会える・・・》感覚的にはそんな感じだったのです。
勿論、憎しみや怒り、不信感と様々な感情が渦巻く精神状態でいた事は言うまでもありません。しかし、確かめたい事柄がボイスレコーダーの中身であったり、彩矢が身に着けている下着であったり、肉体的な変化であったりする訳ですから、この時の私の中には歪んだ欲望もあったのだと思います。
あの土曜日に妻(彩矢:あや32歳)の愛液に塗れたエロチックな下着を見付け、思わず匂いを嗅いで、その強烈なフェロモン臭に衝撃を受け、南京錠に閉ざされた疑惑の化粧箱の中をあらためて、数々の生々しい疑惑のカードを目の当たりにし、今まで体験した事の無いジェラシーを感じ、私自身の中に眠っていた形の見えない性癖が頭を擡げ始めていたのかも知れません。
ベランダからリビングに戻り、時計を確認すると時刻は18時30分を示していました。《あと1時間ちょっとか・・・いよいよだな・・・》と思っていたら、“ピンポーン・・・ピンポーン・・・ピンポ・・・ン”この時、不意にインターホンが鳴り響きます。《誰だろう?》私はインターホンの受話器を取りました。
『ただいまぁ・・・早く終わったの・・・。』
驚いた事に、予定より早く妻の彩矢(あや32歳)が帰って来たのです。
“ガチャ・・・ッ・・・ガチャ・・・バタン・・・ッ・・・”
玄関からは妻の帰宅を告げる音がします。
『あなた、ただいまぁ・・・早く終わったの・・・すぐに夕飯を作るからね。』
両手いっぱいに買い物袋を下げ、肩からは例のボイスレコーダーを仕込んだバッグを下げている。心なしか普段より血色が良く艶のある表情の妻。
「あぁ・・・お帰り・・・早く終わったんだ? どうだった?会議は・・・。」
私は努めて平静に答える。
『うん・・・ 全体の売上げが落ちているから雰囲気は最悪だった・・・でも結局みんな、やるしかないからね・・・。』
彩矢が明るく笑顔で答える。
『じゃあ私は着替えてから、御飯作っちゃうね・・・お腹空いたでしょ?』
スーツを通してでも不思議な色香が伝わって来る妻。《一体、何発やられて来たのか?》妻の言葉に、私は大袈裟に手を振り、
「まぁ、そのまま座っていろよ・・・昨日さ、帰り際に来栖(くるす)先輩にバッタリ会ってさ・・・いいワインがあるから持ってけって・・・。たまに可愛い嫁さんと一緒に飲めよって・・・。」
私は、わざとらしくキッチンから二本のワインを持って来て見せました。
「せっかく自慢の綺麗な奥様がビシッと化粧をしてキメているんだから・・・俺はそれを肴に、この戴いた上等なワインを飲みたいよ。」
妻の彩矢は一瞬、キョトンとした表情をしましたが、
『えぇ~ どうしたの?珍しい・・・ そんな歯の浮くような事を言うなんて・・・。そうなんだ・・・来栖さん、ワインくれたんだ・・・ 。 でも・・・ワインは私、酔っちゃうわよ。』
「別にいいじゃないか?まだ時間は早いんだし・・・今日この後、資料整理とかしなくてはならないのか?」
『ううん・・・今日は別に何も・・・。』
「じゃあ決まりだ。久々に飲もうじゃないか。」
彩矢は、仕方ないわね・・・といった表情で肩に下げていたバッグをサイドボードの上に置き、こくりと頷いた。
『じゃあ、パパッと、おつまみ作っちゃうわね。』と、彩矢がスーツの上からエプロンをしてキッチンに立つ。私はサイドボードの上の例のバッグを気にしながら、ワイングラスを出して、ワインのコルクを抜きました。
妻は、食欲のそそる匂いをさせながら手際良く、何品かのおつまみを作っている。エプロンから覗く彩矢の後ろ姿・・・スカート越しのヒップライン、膝下から伸びるストッキングに包まれた形の良いふくらはぎが妙に眩しい。
『はい、出来たわよ。足りなかったら言ってね。違う物も作るから・・・。』
エプロンを外しながら、彩矢がリビングのテーブルにおつまみを運ぶ。
「ありがとう・・・さぁ座れよ。良いワインらしいから美味しく戴こう・・・。」
私は妻のワイングラスにワインを注ぎます。
「乾杯・・・。」
明るく優しい笑顔の仮面の裏側を晒して、妻の本性を見極めたい・・・。いよいよ長い夜が始まりました。
2015/07/20
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