長G〖救いの手を〗第16回
長G〖救いの手を〗第16回
私(高坂正文)は悔しさを抱いたまま、他に何か無いかと仕切られた箱の左側の部分を調べて見ると、箱の隅に何枚かのタグと小さく折り畳まれたメモがある事を発見しました。タグは二枚あり、一枚目のタグには聞き慣れないメーカー名が刻まれ、裏には【アンダー70E カラー G 】と記載されていて、もう一枚の同様のタグの裏には、【サイズ M カラー G】の記載がありました。これは何か下着のタグのようです。
次に私は小さく折り畳まれたメモ紙を手に取り、慎重に開き、中を確認したのです。そこには血圧が上がり、額の血管から血飛沫が飛び散りそうになるような文章が記載されていたのでした。 〘愛する彩矢へ 絶対似合うから今回は プレゼントしたこの下着を身につけて来てね。来週が待ち遠しい。眠らせないよ。〙
《何なんだこれは!?》妻の彩矢(あや)に対する疑いは危険水域を越えました。私は気持ちを静める為にテーブルの上に置いたペットボトルの水をグビクビと飲み、手にした煙草に火を着けました。 《本当に笑えない・・・離婚云々では済まさんぞ!あの二人をどん底に叩き落としてやる!!》
私の憎悪に似た怨念めいた物が吐き出す煙りとともにリビングに充満して行くのが分かりました。私は高ぶる感情のままで化粧箱の右側のスペースに掛けられた赤いスカーフを外します。そこに有った物は見た目には、派手で淫靡な下着でも妖し気でいかがわしい物でもないように見えました。おそらく左側のスペースにあったタグの下着を包装してあったと思われる下着店の綺麗なラッピング用の包装用紙と複数の封筒です。
私は一枚一枚、重ねられた封筒の順序を間違えないようにしながら中身を確認しました。一通目の封筒には産婦人科の診察券と額面5千円程度の領収書です。二通目には、エステティックサロンの会員証と、かなりの額の束になった領収書。これらは妻の口から一切聞かされていない物でした。
《産婦人科…何の為に行ったのか? 彩矢に婦人科の具合が悪いなどと私は聞いていませんでしたし、見た目には体調が悪いようには思えませんでした。エステティックサロンにしても妻は一体いつ通っているのでしょうか? この領収書の束を見る限り、かなりの回数を通っている訳です。正に、知らぬは亭主(私)ばかりなりです。》
そして、三通目の封筒は私の住む地方都市の役場の物でした。私には非常に見覚えのある封筒です。私はそこに入っていた薄っぺらい用紙を取り出して見て愕然としました。何とそれは“離婚届”だったのです。それも妻の記入欄には必要項目全てに記入があり、捺印までされていたのでした。
《な、な、何だよ?コレは?どう言う事だ?》ある意味これは、あの発見してしまった妻の牝の印しが染み付いた淫靡な下着よりも…今朝の駐車場で見た彩矢と望月の姿よりもショッキングでした。これには私も我を失い、しばし呆然となり、思考回路が全て停止してしまいました…。
封筒の中の“離婚届”…ご丁寧に妻の記入欄には必要項目全てが書き込まれ捺印まで為されている。私は体から骨を抜かれてしまった人形のようでした。力が入らず、思考も定まらず、脱力感しかありません。人間は怒りや屈辱感や失望感が限度を超えると、咄嗟には反撃に転じる力など失せてしまうのかも知れません。
2015/05/17
私(高坂正文)は悔しさを抱いたまま、他に何か無いかと仕切られた箱の左側の部分を調べて見ると、箱の隅に何枚かのタグと小さく折り畳まれたメモがある事を発見しました。タグは二枚あり、一枚目のタグには聞き慣れないメーカー名が刻まれ、裏には【アンダー70E カラー G 】と記載されていて、もう一枚の同様のタグの裏には、【サイズ M カラー G】の記載がありました。これは何か下着のタグのようです。
次に私は小さく折り畳まれたメモ紙を手に取り、慎重に開き、中を確認したのです。そこには血圧が上がり、額の血管から血飛沫が飛び散りそうになるような文章が記載されていたのでした。 〘愛する彩矢へ 絶対似合うから今回は プレゼントしたこの下着を身につけて来てね。来週が待ち遠しい。眠らせないよ。〙
《何なんだこれは!?》妻の彩矢(あや)に対する疑いは危険水域を越えました。私は気持ちを静める為にテーブルの上に置いたペットボトルの水をグビクビと飲み、手にした煙草に火を着けました。 《本当に笑えない・・・離婚云々では済まさんぞ!あの二人をどん底に叩き落としてやる!!》
私の憎悪に似た怨念めいた物が吐き出す煙りとともにリビングに充満して行くのが分かりました。私は高ぶる感情のままで化粧箱の右側のスペースに掛けられた赤いスカーフを外します。そこに有った物は見た目には、派手で淫靡な下着でも妖し気でいかがわしい物でもないように見えました。おそらく左側のスペースにあったタグの下着を包装してあったと思われる下着店の綺麗なラッピング用の包装用紙と複数の封筒です。
私は一枚一枚、重ねられた封筒の順序を間違えないようにしながら中身を確認しました。一通目の封筒には産婦人科の診察券と額面5千円程度の領収書です。二通目には、エステティックサロンの会員証と、かなりの額の束になった領収書。これらは妻の口から一切聞かされていない物でした。
《産婦人科…何の為に行ったのか? 彩矢に婦人科の具合が悪いなどと私は聞いていませんでしたし、見た目には体調が悪いようには思えませんでした。エステティックサロンにしても妻は一体いつ通っているのでしょうか? この領収書の束を見る限り、かなりの回数を通っている訳です。正に、知らぬは亭主(私)ばかりなりです。》
そして、三通目の封筒は私の住む地方都市の役場の物でした。私には非常に見覚えのある封筒です。私はそこに入っていた薄っぺらい用紙を取り出して見て愕然としました。何とそれは“離婚届”だったのです。それも妻の記入欄には必要項目全てに記入があり、捺印までされていたのでした。
《な、な、何だよ?コレは?どう言う事だ?》ある意味これは、あの発見してしまった妻の牝の印しが染み付いた淫靡な下着よりも…今朝の駐車場で見た彩矢と望月の姿よりもショッキングでした。これには私も我を失い、しばし呆然となり、思考回路が全て停止してしまいました…。
封筒の中の“離婚届”…ご丁寧に妻の記入欄には必要項目全てが書き込まれ捺印まで為されている。私は体から骨を抜かれてしまった人形のようでした。力が入らず、思考も定まらず、脱力感しかありません。人間は怒りや屈辱感や失望感が限度を超えると、咄嗟には反撃に転じる力など失せてしまうのかも知れません。
2015/05/17
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