長G〖救いの手を〗第13回
長G〖救いの手を〗第13回
私は、妻の彩矢(あや)と会話しながら横目で、リビングのテーブルの上に置かれた、妻のボストンタイプのバッグを確認します。《良かった‥間違いなくあのバッグで行くとは思ったが、万が一違うバッグだったら大変な事だった‥ 苦労して仕掛けたデジタルボイスレコーダーが台無しになるところだった…》内心、私はホッと胸を撫で下ろしていました。
私は、そろそろ頃合いと時間を確認して、「おっ…もうこんな時間だ。それじゃ先に行くよ…明日は夜8時ぐらいになるんだろ?飯を食べないでお前が帰って来るのを楽しみに待っているから何か一緒に食べよう…。」彩矢は『嫌だわ…会議で出張と言っても私が戻る夜はいつも一緒に食べているじゃない?…なんか変よ…?』と、怪訝そうな顔をしました。
「ちょっと寂しかったから言ってみただけだよ… 。」私は暗澹(あんたん)たる内心を隠すように明るく手を振り自宅を出ます。腕時計を見ると8時25分です。さて何処で時間を潰そうか…。鍵屋が家に来るのは10時過ぎだし…妻もあと15分ぐらいで出かける筈だ。私は自宅マンションの地下駐車場に停めてある、普段は滅多に乗らぬ愛車の中で時間を潰す事にします。
この時、私は普段なら当たり前にエレベーターで地下駐車場に降りるのですが、くわえ煙草だったのでエレベーターは使わずに非常階段で地下まで降りて行きました。ゆっくりと煙草の煙りを燻らせ、地下駐車場の非常口の扉を開けるとエレベーターの真向かいに見覚えの無い、高級外車がエンジンを掛けたまま停まっています。
《誰の車かな?それにしても、しかし高そうな車だな…》駐車場は薄暗くて良く見えないのですが、運転席には人の気配がありました。この時、虫の報せだったのでしょうか…何故か私は自分の車に乗る事を躊躇して…その外車側からは死角である非常口の辺りで煙草を燻らせ続けていました。
その時です、地下駐車場に甲高いクラクションが鳴り響きます。《何事だよ?》と驚いてクラクションの主を見ると例の高級外車でした。そしてクラクションの音が合図を送った相手がエレベーターから降りて来ています。それは見間違える事など有る筈の無い、満面の笑顔で手を振りながら高級外車に近付く、妻の姿でした。
唖然として非常口横に立ち尽くす私を尻目に、彩矢は手慣れた感じで助手席に乗り込むと、その高級外車はタイヤを軽く鳴らして発進しました。私の真横を擦り抜けて出口に向かう高級外車の運転席が地下駐車場の照明に一瞬照ら仕出されました。それは望月統括部長だったのです。
妻の彩矢を助手席に乗せ、地下駐車場から走り去る望月統括部長の高級外車。私はショックの余り、その場で固まり、虚ろな視線でリアウインカーの光が見えなくなるまで追い続けていました。
「ハァ…ァ‥ァ‥‥」と絶望にちかいため息が・・・・。
《平然と私をだませるものだな・・・どうなっているのだ・・・》
疑念と疑惑の点と線が繋がる。やはりあの妻のエロチックな下着に付着した染みの原因は望月統括部長だったのだ・・妻の裏切りに・・怒りと情けなさが・・・それで暫くの間、私はその場で金縛りにあったように立ち尽くしていました。
2015/04/24
私は、妻の彩矢(あや)と会話しながら横目で、リビングのテーブルの上に置かれた、妻のボストンタイプのバッグを確認します。《良かった‥間違いなくあのバッグで行くとは思ったが、万が一違うバッグだったら大変な事だった‥ 苦労して仕掛けたデジタルボイスレコーダーが台無しになるところだった…》内心、私はホッと胸を撫で下ろしていました。
私は、そろそろ頃合いと時間を確認して、「おっ…もうこんな時間だ。それじゃ先に行くよ…明日は夜8時ぐらいになるんだろ?飯を食べないでお前が帰って来るのを楽しみに待っているから何か一緒に食べよう…。」彩矢は『嫌だわ…会議で出張と言っても私が戻る夜はいつも一緒に食べているじゃない?…なんか変よ…?』と、怪訝そうな顔をしました。
「ちょっと寂しかったから言ってみただけだよ… 。」私は暗澹(あんたん)たる内心を隠すように明るく手を振り自宅を出ます。腕時計を見ると8時25分です。さて何処で時間を潰そうか…。鍵屋が家に来るのは10時過ぎだし…妻もあと15分ぐらいで出かける筈だ。私は自宅マンションの地下駐車場に停めてある、普段は滅多に乗らぬ愛車の中で時間を潰す事にします。
この時、私は普段なら当たり前にエレベーターで地下駐車場に降りるのですが、くわえ煙草だったのでエレベーターは使わずに非常階段で地下まで降りて行きました。ゆっくりと煙草の煙りを燻らせ、地下駐車場の非常口の扉を開けるとエレベーターの真向かいに見覚えの無い、高級外車がエンジンを掛けたまま停まっています。
《誰の車かな?それにしても、しかし高そうな車だな…》駐車場は薄暗くて良く見えないのですが、運転席には人の気配がありました。この時、虫の報せだったのでしょうか…何故か私は自分の車に乗る事を躊躇して…その外車側からは死角である非常口の辺りで煙草を燻らせ続けていました。
その時です、地下駐車場に甲高いクラクションが鳴り響きます。《何事だよ?》と驚いてクラクションの主を見ると例の高級外車でした。そしてクラクションの音が合図を送った相手がエレベーターから降りて来ています。それは見間違える事など有る筈の無い、満面の笑顔で手を振りながら高級外車に近付く、妻の姿でした。
唖然として非常口横に立ち尽くす私を尻目に、彩矢は手慣れた感じで助手席に乗り込むと、その高級外車はタイヤを軽く鳴らして発進しました。私の真横を擦り抜けて出口に向かう高級外車の運転席が地下駐車場の照明に一瞬照ら仕出されました。それは望月統括部長だったのです。
妻の彩矢を助手席に乗せ、地下駐車場から走り去る望月統括部長の高級外車。私はショックの余り、その場で固まり、虚ろな視線でリアウインカーの光が見えなくなるまで追い続けていました。
「ハァ…ァ‥ァ‥‥」と絶望にちかいため息が・・・・。
《平然と私をだませるものだな・・・どうなっているのだ・・・》
疑念と疑惑の点と線が繋がる。やはりあの妻のエロチックな下着に付着した染みの原因は望月統括部長だったのだ・・妻の裏切りに・・怒りと情けなさが・・・それで暫くの間、私はその場で金縛りにあったように立ち尽くしていました。
2015/04/24
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