長G〖救いの手を〗第15回
長G〖救いの手を〗第15回
来訪した鍵の業者には、鍵のタイプを伝えてあったので作業は手際良くスムーズな物でした。“カチャッ…カチッ…ッ…パチッ…ッン…”無音のリビングに乾いた無機質な作業の音 が響きます。その作業を見つめる私は、後頭部が痺れるような不思議な緊張感と息苦しさを覚えていました。
妻の疑惑の化粧箱を、固く閉ざし守っていた南京錠は拍子抜けする程呆気なく解錠されました。私は、どんな理由であれ彩矢の持ち物を勝手に開錠した後ろめたさから、請求された作業代金に少しばかり色をつけて支払いました。鍵の業者は恐縮しながら代金を受け取り、南京錠のメーカーと裏に刻まれたナンバーを控え、「後程合い鍵をお持ちします。」と私に告げ、帰って行きました。
リビングのテーブルにはたった今解錠されて、化粧箱から外された南京錠が物言いたげに無造作に転がり、その南京錠を外された化粧箱は先程まで感じた頑強さが薄れ、いつでも開けられる状態になっていました。
逸る気持ちを抑え、私はキッチンで手を入念に洗い、グラスに注いだ冷たい水を一気に飲み干し、高揚する心を鎮め、問題の化粧箱と向き合います。《変な物が出て来なければ良いのだが…鬼が出るのか?蛇が出るか?…》正にこの時の私の心境は怖い物見たさに尽きました。
私は目の前の木製の化粧箱の四隅の縁を何かの儀式でもあるように撫でるように触り、バネ仕掛けの開閉部分に触れました。“ガシャン‥ッ…” 化粧箱の留め金が勢いよく外れた。綺麗に洗った筈の私の掌は、すでにジワッと汗ばんで、後頭部から背筋、そして肛門にかけて、“ゾクゾク‥ザワザワ”と、痺れるような緊張感がうごめき出します。私は化粧箱の縁を掴む指先に“グッ‥ッ‥”と力を込め、化粧箱の上蓋を持ち上げました。
“キッ‥ッ‥ギギッ‥”ついに疑惑の化粧箱の扉は開かれます。化粧箱は内側に紅色の美しいビロード地の生地が施され、中央部分には仕切りがあり、左右それぞれに中身を隠すように赤色と黒色のシルク地のスカーフが四つ折にされ掛けられていました。
私はこの時、この化粧箱には妻の彩矢なりの仕舞い方の暗黙のルールがあるように感じ、慌ててメモを用意し、左右どちらに何がどのような順序で納められているのかを克明に記入しながら作業をする事にしました。取り敢えず現状では、私がこの化粧箱を開けるに至った流れを彩矢に悟らせる訳には行かないのですから…。
私は左側の仕切りに被せられていた黒地のスカーフを緊張で小刻みに奮える指先で取り外します。《こ‥これは!‥》そうです、そこに納められていた物は先日、妻のベッドに隠されていたあの発情した牝の印しがベッドリと付着していたあの高級そうな黒地にシルバーやゴールドの刺繍をあしらった下着です。それらが綺麗に洗濯されキチンと折り畳まれ仕舞われていました。
更に驚いた事に、素人目にも高級そうな下着のセットが数点納められています。赤色、黒色、ゴールド・・・それらは、まばゆいばかりの派手さと淫靡さを備え、取り出して見ていた私は複雑な心境にならざる得ませんでした。彩矢がこんな物を着けて、あの望月統括部長と…朝の駐車場での出来事が鮮明に思い出され、悔しさが沸々と沸き上がり、その淫靡な下着を触る手にもついつい力が入ってしまいます。
2015/05/09
来訪した鍵の業者には、鍵のタイプを伝えてあったので作業は手際良くスムーズな物でした。“カチャッ…カチッ…ッ…パチッ…ッン…”無音のリビングに乾いた無機質な作業の音 が響きます。その作業を見つめる私は、後頭部が痺れるような不思議な緊張感と息苦しさを覚えていました。
妻の疑惑の化粧箱を、固く閉ざし守っていた南京錠は拍子抜けする程呆気なく解錠されました。私は、どんな理由であれ彩矢の持ち物を勝手に開錠した後ろめたさから、請求された作業代金に少しばかり色をつけて支払いました。鍵の業者は恐縮しながら代金を受け取り、南京錠のメーカーと裏に刻まれたナンバーを控え、「後程合い鍵をお持ちします。」と私に告げ、帰って行きました。
リビングのテーブルにはたった今解錠されて、化粧箱から外された南京錠が物言いたげに無造作に転がり、その南京錠を外された化粧箱は先程まで感じた頑強さが薄れ、いつでも開けられる状態になっていました。
逸る気持ちを抑え、私はキッチンで手を入念に洗い、グラスに注いだ冷たい水を一気に飲み干し、高揚する心を鎮め、問題の化粧箱と向き合います。《変な物が出て来なければ良いのだが…鬼が出るのか?蛇が出るか?…》正にこの時の私の心境は怖い物見たさに尽きました。
私は目の前の木製の化粧箱の四隅の縁を何かの儀式でもあるように撫でるように触り、バネ仕掛けの開閉部分に触れました。“ガシャン‥ッ…” 化粧箱の留め金が勢いよく外れた。綺麗に洗った筈の私の掌は、すでにジワッと汗ばんで、後頭部から背筋、そして肛門にかけて、“ゾクゾク‥ザワザワ”と、痺れるような緊張感がうごめき出します。私は化粧箱の縁を掴む指先に“グッ‥ッ‥”と力を込め、化粧箱の上蓋を持ち上げました。
“キッ‥ッ‥ギギッ‥”ついに疑惑の化粧箱の扉は開かれます。化粧箱は内側に紅色の美しいビロード地の生地が施され、中央部分には仕切りがあり、左右それぞれに中身を隠すように赤色と黒色のシルク地のスカーフが四つ折にされ掛けられていました。
私はこの時、この化粧箱には妻の彩矢なりの仕舞い方の暗黙のルールがあるように感じ、慌ててメモを用意し、左右どちらに何がどのような順序で納められているのかを克明に記入しながら作業をする事にしました。取り敢えず現状では、私がこの化粧箱を開けるに至った流れを彩矢に悟らせる訳には行かないのですから…。
私は左側の仕切りに被せられていた黒地のスカーフを緊張で小刻みに奮える指先で取り外します。《こ‥これは!‥》そうです、そこに納められていた物は先日、妻のベッドに隠されていたあの発情した牝の印しがベッドリと付着していたあの高級そうな黒地にシルバーやゴールドの刺繍をあしらった下着です。それらが綺麗に洗濯されキチンと折り畳まれ仕舞われていました。
更に驚いた事に、素人目にも高級そうな下着のセットが数点納められています。赤色、黒色、ゴールド・・・それらは、まばゆいばかりの派手さと淫靡さを備え、取り出して見ていた私は複雑な心境にならざる得ませんでした。彩矢がこんな物を着けて、あの望月統括部長と…朝の駐車場での出来事が鮮明に思い出され、悔しさが沸々と沸き上がり、その淫靡な下着を触る手にもついつい力が入ってしまいます。
2015/05/09
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