中11 〖家庭教師の誤算 第16回〗
中11 〖家庭教師の誤算 第16回〗
松本香澄は第一志望の大学に見事に合格し、彼女の見せた自信が嘘や強がりではなかったことが証明される。香澄は僕(二宮直記)が通う大学も受験をしていたが、こちらは滑り止めだった。少なくとも僕はそう思っていた。
ところが両方の大学にも受かった後、なぜか香澄は、『偏差値の高い方が滑り止めで、実は先生(僕)の大学が本命だよ。』と教えてくれた。
「どうしてそうなの?」
『決まってるじゃん。わたし先生と同じところに行くって決めていたんだもん。』
「でも、そんなのもったいないよ。」
『先生のいない学校へ行ったって意味ないもん。それにね・・・。』
香澄は言葉を続けた。
『あっちの大学を受けたのは、先生の敵討ちだもん。』
結局、香澄は偏差値の高い方は落ちたことにして、僕の通う大学を選んだ。それでも香澄のご両親は香澄が大学に合格したというだけで喜んでくれた。ご丁寧に[これも二宮先生の熱心なご指導の賜物です。]とさえお礼を述べられた。
『ほらね、最初から期待してないから、すごく喜んでくれているでしょう?』
ご両親の喜びようは尋常ではなくて、特別にボーナスまでもらってしまった。
「こんなのもらえないよ。」
香澄に言うと、いつもの悪戯っぽい目をして笑って言った。
『いいの、いいの。あの人たちはあれでご機嫌なんだから、もらっておいてあげてよ。』
そう言われてしまうと返上するとも言い出せずに、僕はそのお金を香澄との将来のためにとっておくことにする。
高校の卒業式の日、香澄がボストンバッグを抱えて僕の下宿にやってきた。
『先生、今日は泊まって行っていい?』
「えっ?」
『ダメなの?』
「いや、でも、うちには何と言ってきたの?」
『今日は高校最後の日だから、友達の家でオール(ナイト)になるって言ってきた。』
もう何度も週末を一日中一緒に過ごしてきていたので、『一晩泊まる』と言ったってどうってことないと言えばどうってことないのだけど、僕はお泊りと聞くと何だかワクワクした。
それに香澄が学校の制服を着ているのも何だか興奮した。『今日は私が家のことをするからね。』と一応女の子らしく殊勝なことを言ってくる。
香澄はトートバッグを片方の腕にぶら下げながら空いている方の腕を僕の腕に絡めて来て、僕たちは商店街に買い物に出かけた。『今日は私の卒業祝いだから、お肉にしよう!』早速、香澄の両親から頂いたボーナスを使うときが来たと思い、「よし、高級な肉を買おう。僕がお金をだすよ。お祝いだもの。」、『ねぇ、先生、ワインも買ってもいいかな?』
2015/10/23
松本香澄は第一志望の大学に見事に合格し、彼女の見せた自信が嘘や強がりではなかったことが証明される。香澄は僕(二宮直記)が通う大学も受験をしていたが、こちらは滑り止めだった。少なくとも僕はそう思っていた。
ところが両方の大学にも受かった後、なぜか香澄は、『偏差値の高い方が滑り止めで、実は先生(僕)の大学が本命だよ。』と教えてくれた。
「どうしてそうなの?」
『決まってるじゃん。わたし先生と同じところに行くって決めていたんだもん。』
「でも、そんなのもったいないよ。」
『先生のいない学校へ行ったって意味ないもん。それにね・・・。』
香澄は言葉を続けた。
『あっちの大学を受けたのは、先生の敵討ちだもん。』
結局、香澄は偏差値の高い方は落ちたことにして、僕の通う大学を選んだ。それでも香澄のご両親は香澄が大学に合格したというだけで喜んでくれた。ご丁寧に[これも二宮先生の熱心なご指導の賜物です。]とさえお礼を述べられた。
『ほらね、最初から期待してないから、すごく喜んでくれているでしょう?』
ご両親の喜びようは尋常ではなくて、特別にボーナスまでもらってしまった。
「こんなのもらえないよ。」
香澄に言うと、いつもの悪戯っぽい目をして笑って言った。
『いいの、いいの。あの人たちはあれでご機嫌なんだから、もらっておいてあげてよ。』
そう言われてしまうと返上するとも言い出せずに、僕はそのお金を香澄との将来のためにとっておくことにする。
高校の卒業式の日、香澄がボストンバッグを抱えて僕の下宿にやってきた。
『先生、今日は泊まって行っていい?』
「えっ?」
『ダメなの?』
「いや、でも、うちには何と言ってきたの?」
『今日は高校最後の日だから、友達の家でオール(ナイト)になるって言ってきた。』
もう何度も週末を一日中一緒に過ごしてきていたので、『一晩泊まる』と言ったってどうってことないと言えばどうってことないのだけど、僕はお泊りと聞くと何だかワクワクした。
それに香澄が学校の制服を着ているのも何だか興奮した。『今日は私が家のことをするからね。』と一応女の子らしく殊勝なことを言ってくる。
香澄はトートバッグを片方の腕にぶら下げながら空いている方の腕を僕の腕に絡めて来て、僕たちは商店街に買い物に出かけた。『今日は私の卒業祝いだから、お肉にしよう!』早速、香澄の両親から頂いたボーナスを使うときが来たと思い、「よし、高級な肉を買おう。僕がお金をだすよ。お祝いだもの。」、『ねぇ、先生、ワインも買ってもいいかな?』
2015/10/23
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